アイテムが増えてくると、出所がわからなくなる
久々の古代遺跡である。噂では今年中にハードモードが追加される予定だとか。正気の沙汰じゃない。今の状態でも難易度アホみたいに高いのに。これでも出てくる敵のレベルが下がっているハズなのだけど……
「うおおおお!!」
絶賛オートマタから逃げている最中です。
「ちょ、やめてぇ!」
ギギギと嫌な音を立てながらオートマタ達が僕を串刺しにしようと迫ってくる。古代遺跡では出現モンスターはランダムという特徴がある。といっても、出てくる敵の種類自体は決まっているが。敵の出現ポイントが決まっていて、そこに出てくる敵が毎回ランダムなのだ。
砲撃型ゴーレムの時もあれば、獅子王の小さい感じの敵だったり、今回みたいなオートマタが相手の時もある。僕的に一番のハズレは、オートマタ。攻撃力が高くてとても素早い。
「自分より速くて火力のある敵って一番苦手なんだけど!?」
防御力紙ですから、攻撃を避けきれない相手ってステータス的にも相性悪いんだよね。
だからこそ今まで古代遺跡では死にまくっていたわけだが。
「いーやー!?」
情けない声を上げながら全力で走って逃げる。ソロだからこそ、みっともない声を上げながら遊べるのだ。
何度かトライする中で、床の色でモンスター(機械系もモンスターって言っていいのか微妙だが)にもテリトリーが決まっていることが分かった。
こいつらは、テリトリーを越えないのだ。だから、ある程度逃げ切れば追いかけてこなくなる。
「だらっしゃー!」
スライディングで床の色が変わった場所まで滑り込む。その瞬間、頭から数センチずれたところで金属音が響き渡った。あぶねぇ……ギリギリで躱せたようだ。というか、頭に当たっていたらクリティカルで一撃死だった…………スライディングも多用しないようにしておこう。
後ろを振り向くと、オートマタたちが帰っていくところであった……ふぅ、一安心。あとHPを回復しておかないと…………残り数ドットだったんだけど(泣)。
「今回は下見だから死に戻り前提だけど、出来るだけ奥に進んでみないとね……」
そもそもマッピングも終わっていない。
自分で踏破しないとマップが書き込まれないからなぁ……まだまだ未踏破エリアが結構残っている。古代遺跡はそもそも通常のダンジョンとは異なる仕様らしく、セーフティエリアや補給ポイントなども存在している。下見も数日かけそうならそこまでは到達しておきたい。ログアウトするならそこがベストだし。
「HPも回復したし、さあ次に出てくる敵さんは……」
スチャっと上からマネキンのような敵――オートマタが降ってきた。
「またかよ!?」
再び、全力疾走による逃走劇が始まったが……今度は通路も狭く、曲がり角も多かったせいであえなく撃沈するのであった。
……もうちょっと別の方法考えないとダメだよなぁ…………
@@@
「ハァ」
「どうしたんじゃ、村長」
「あーライオン丸さん。おひさー」
「大体一週間ぐらいかの。顔を合わせておらんかったのは……溜息なんて、何かあったのかの?」
「古代遺跡で連続でオートマタを引いて死に戻った」
「それはまた……」
ヒルズ村の広場のベンチでたそがれていると、ライオン丸さんが隣に座ってきた。
そういえば村のみんなとはタイミングが合わなくてあまり会っていなかったよなぁ……オートマタの凶悪さはライオン丸さんも理解しているので、苦笑している。
「あれはタンクがいないと厳しいじゃろ。硬いプレイヤーがヘイトを集めて、他のみんなで一気に倒さんときついぞ」
「わかってはいるけど、ソロで突破したいんだよ。獅子王はガントレットで対処できるし、倒せなくてもノックバックさせれば逃げて先へ進めるし」
「そもそもアイツもランダム徘徊じゃからな」
それに、アップデートで行動範囲変わったから前よりは厄介さは薄れた。
それでも凶悪なボスなのには変わりないが。
古代遺跡に関してはザコ敵のほうが厄介なのだ。ザコなんて呼べないほどの火力があり、素早い。しかも魔法攻撃が効きづらい敵も多い。
「走り抜けた感じ、手数があればある程度攻撃を抑え込めるとは思ったんだけど……」
「ソロでそれはきつくないかの」
「うん、ただ【サモナー】ならいけるかなって」
「なるほどのう……確かにソロで挑むならアレが一番手数が多そうじゃしな」
行動パターンをどう組むかが問題だが、現状可能性があるのが【サモナー】しか思い浮かばない。ステータス補正は全部マイナスだから【旅人】よりも貧弱だけど。まあ手数が多いからこそ、そうやってバランスをとっているからだけど。
ただ、それでも一手足りないんだよね。
「あとは小回りもきいて、素早く動く方法なんだけど」
「それはシーフ系のスキルが有効じゃろう」
「三角飛びとかあればいいんだけど……あれ系ってシーフ系専用じゃん」
「……【サモナー】とは併用が出来んか」
「そもそも僕はシーフ系職業は転職できないから」
まだ条件満たしていない。たとえ転職したとしてもレベル上げが必要である。しかもスキルに対応した装備を持っていない。なので、思い付きはしたが候補から外したのだ。
倉庫にいらんアイテムが数多く入っているのにピンポイントにそこだけないのはどういうことなのか。
「だから【サモナー】のまま素早く動く方法を考えているんだよ。単純に走るより速くて、小回りもきく方法を!」
「そんな都合のいい方法があるかのう」
「ないよなぁ……爆風で自分を飛ばしたり、ジェット移動で調整できないか試してみたりしたけど狭い通路の多い古代遺跡じゃ不向きなんだよね」
「そうじゃろうな。壁に激突して落下ダメージで死ぬじゃろう。そうなると、いつもとは違う方法を試してみるしかないじゃろ」
「どうにも行き詰まっている……ひとまずはスクショコンテストのほうに集中するかな」
「それがいい。いつだったか、村長が言っていたことじゃがゲームなんじゃから楽しんだほうがいいんじゃよ」
「それもそうか……さて、じゃあ次に撮影する題材を考えるか」
「部門は決めておるのか?」
「とりあえずはフリー部門で狙っているけど……キマった一枚も題材は考えている」
「ハロウィン部門のほうは考えておらんのか?」
「そっちは全く思いついていない」
ジャックランタンがいるが、ベタすぎて逆にいまいちパッとしない感じになってしまった。カボチャ畑に浮いている姿を撮影したんだけど……なんというか、普通という感じで…………ハロウィン魔女の服装のらったんさんが自分のジャックランタンと自撮りしていたけど、あれに負けるだろうからなぁ。
「それで、考えている題材とは?」
「モンスターの攻撃の瞬間を、かっこよく撮ってみようって考えている」
「ほう。いい題材じゃが……生半可な相手じゃネタがかぶると思うんじゃが」
「うん――だから、どでかいやつを狙いに行こうと思っているんだ」
「どでかいやつ?」
「そう……アクア王国の地下にいるやつを!」
「――え、あのでかいのを?」
@@@
とりあえずまずは一戦やってみようということでライオン丸さんと共にアクア王国の地下――すなわち、リヴァイアサンへ挑むことになった。
「なんでワシまで……」
「乗り掛かったフネ的な」
「じゃからってコイツ面倒じゃろうが」
「防御力強化できるよ」
「もう倒したから意味ないんじゃよなぁ……」
たしかに。しかも防御力強化アイテムを手に入れるだけならドラゴン種をどれか一体でも倒せばいいからなぁ……でもレアドロップは狙えるし、素材もあるよ。
「レアドロップは何じゃ?」
「これ」
右手に掲げるはデッキブラシ。
「デッキブラシ以外には?」
「さぁ……」
「……仕方がないのう。一回ぐらいなら付き合うぞ」
「そう来なくっちゃ……ただ、目的はスクショだからね。倒しきるとマズいし、出来ればツノは残したままブレス攻撃をさせたい。そのほうが見栄えが良いし――すなわち、僕たちがすることはただ一つ」
「なんじゃ?」
「ツノ残したまま戦う。縛りプレイだ!」
「そうきたかぁ……確かに見栄えはいいじゃろうが」
「というわけで、魔法は使えないな。そもそも属性的に僕の魔法じゃ効果そこまで出ないんだけど」
「ワシも魔法はあまり使えんぞ」
使えたとして『チャージビーム』だけだし。なので、今回の縛りは古代兵器は出来るだけ使わないようにということだ。あれ使うとすぐにツノ破壊しちゃいそうだし。
使うにしてもトドメ刺す時だけ。なので時間はかかりそうだが……いや、そもそもの目的がスクショだからいいんだけど。
なので今回の僕の武器はデッキブラシにブーメランである。
「…………うん? ブーメランなんていつの間に手に入れたんじゃ?」
「倉庫漁っていたら見つけた。どこかでドロップしたモノだとは思うんだけど……マジで記憶がない」
たぶんめっちゃ色々さんと爆殺祭りしたときにドロップしたモノだと思う。ドロップ率は低くなっても何も手に入らないわけじゃないし、そもそもモンスターを倒した数が数だから品数だけは多かったから……
「そんな出所不明のアイテムがあと100種類ぐらいあるんだ」
「多すぎじゃろうがバカタレ」
「正直やりすぎたかなぁとは思っている」
「そんなんじゃから最近のあだ名が爆弾魔なんじゃよ」
「……でも後悔はしていないから!」
「なお悪いわ! 暗黒四天王を爆破したときにPK数トップになったじゃろうが! 推定じゃけど」
「今はマスコットの乱のせいでアリスちゃんが間違いなくトップだけどね」
「割と最近、おぬしらお似合いじゃないかと思っておる自分がおるんじゃが」
「…………所業だけ見ると否定できないから困る」
「自分で所業って言っておったら世話ないんじゃよ」
……これからは自重、出来ないな。僕だし。
「まあとにかく行ってみようやってみよう」
「ノリが軽いのう」
「行動パターン自体は覚えているから。懐かしのエルダー(海)ほどじゃないけど周回したし」
「そう言えば、装備も少し変わっておるの」
「ベースは同じだから見た目が少し変わった程度だけどね」
リヴァイアサンの素材で派生強化出来たから、それなりに周回はしていた。古代兵器があればあっさり倒せたのもあって素材が充実している。
ブーメランも派生強化できないか試してみたのだが……
「必要素材持っていないヤツばかりでさぁ……上位のものに出来なかったんすよ。そのままでも結構強いけど」
「ちなみに名前は?」
「えっと……【星空のブーメラン】だね」
「名前でドロップ先がわからないタイプか……」
「そうなんだよね」
「まあ、そのうち強化できるじゃろ」
「それもそうだね」
と、そんな無駄話をしているのにも理由がある。リヴァイアサンの出現エリアまでの螺旋階段がそこそこの距離があるからだ。
今の今まで階段を下りながら暇つぶしに会話していたようなものだから。
「さてと……作戦は?」
「適当に戦って激写。満足したら武器変えてさっさとトドメ刺す」
「了解じゃ」
というわけで、突入。相変わらずの巨体が出現した。
まずスクショを何枚か撮って、ブーメランでけん制しつつデッキブラシで叩く。遠距離攻撃手段が限られているが、そこは適当に攻撃して相手のブレスを待つ。
「来たぞ!」
「パシャパシャっと……よし、回避!」
「手慣れたものじゃなぁ」
「ライオン丸さんも結構手慣れているように見えるけど?」
「素材おいしいからの」
「自分だって周回したんじゃないか……」
「強力な装備作りたいじゃろうが!」
「わかるけども」
「それで、どうする? まだスクショ撮るかの?」
「うーん……アルバムをゆっくり確認する暇はないからなぁ…………」
リヴァイアサンが距離をとっている。あの動きは……突進攻撃だな。アレも横から撮影したいな。
「僕はもうちょっと撮影するー」
「ワシは適当にダメージを与えておるぞー」
「なんならスキルを放つ瞬間を撮影しようか?」
「それもアリじゃの――よし、最近習得した奥義『ビッグインパクト』を使うから、ベストなタイミングで撮影してくれ!」
「どんな奥義?」
「ハンマーの巨大化じゃ」
「おお、シンプルでわかりやすい。しかも見栄え良さそう――よし、カメラ構えた!」
「スキル準備はオーケーじゃ!」
「リヴァイアサン来てるよ、ベストなタイミングで来てるよ!」
「どりゃあああ!!」
「リヴァイアサンの突進と、ライオン丸さんのハンマーがぶつかって――ホームラーン!」
ライオン丸さんのほうが。
「ら、ライオン丸さーん!?」
「さすがに真正面は力負けしてしもうたぁぁぁ……」
声が遠くなり、ライオン丸さんがぐるぐると縦回転しながらふっとんでいく。
とっさに魔法で泡を出して受け止めようとするが、自分が泡の効果で滑ってしまいうまく動けない。
「やべっ、ミスった!? っていうか水に浮くんだから水中じゃ上手く使えないのわかるだろうに! 僕のバカ!」
そして、その場にとどまってしまったことでターゲットがこちらに移ったためか、ギロリと僕をにらみつけるリヴァイアサン。
「…………えっと、食べてもおいしくないと思うの」
直後、ぱくりと丸呑みにされました。ベヒーモスの時を思い出して何だか懐かしかったけどね。
さすがにこれ以上おふざけは出来なかったので、蘇生アイテムで回復してもらい装備もすぐに変えてリヴァイアサンを倒したんだけど。どうにも締まらないなぁ……




