友達の友達は会話のきっかけが大事
らったんさんも別のフレンドに呼ばれたらしく、次の日には周辺の探索から離脱。僕はそのままエルフの森のほうへ進むことにした。昨日は暗かったからわかり難かったが、エルフの森の北側も山脈あるの忘れてたんだよね……幸い、海である南側からは進入できたから良かったけど。
らったんさんもこのあたりイベントポイントの効率悪かったから、彼女自身がポイント効率のいい場所を探しに行くことだろう。あとらったんさんのフレンドをスクショで見せてもらったが……ギャルプレイヤー何人いるんだよ、このゲーム。まさか全員JKルックとは……
それはさておき、エルフの森である。この間見た湖も気になるので、ひとまずはその方向へ。以前のアップデートでマップも使いやすくなり、目的地にピンを打てるようになった。おかげで方向は分かるが……結構歩きにくいな、このあたり。
「モンスターもそこそこ強いし、厄介だなぁ」
というか水属性の効きが悪い。ジャックランタンがいて良かったよ。アイツ、炎属性で攻撃するからこのあたりのモンスターって大抵植物系だからダメージ大きいし。
マーメイドで補助して、ジャックランタンで攻撃。時々僕が動きを阻害する戦法で何とかなっている。
「さて、このあたりのはずなんだけど……お、見えてきた」
実際に湖に来てみると、かなりの大きさであることがわかる。
ヒルズ村のある島より余裕で大きい…………工業都市と同じくらい大きいんじゃないか? あそこもかなり広いんだよなぁ……まだ探索しきれていないし。
とりあえず、釣り糸を垂らして適当に何か釣れないか試してみる。武器強化に一度戻ってみてもいいが……釣りで派生強化に必要な素材が手に入るかもしれないからなぁ……この前のアプデで、単純な強化はやりやすくなったけど、別の武器への派生強化は要求素材が多い。簡単に強い武器を作れないようにってことだろうけど。
「……お、引いている」
釣り竿に動きがあった。力を入れてみると、あっさりと釣り上げることに成功したが……なんだ、この魚? 目が白くて白い斑点みたいな模様が……ってこれシーラカンスだ!?
まって、こんな湖で釣れていい生き物なのコレ!?
「えっと、アイテム名……【古代のシーラカンス】いや、シーラカンスなのはわかっているから…………ん?」
種別、古代兵器。
「装備アイテムなのコレ!?」
「――――なんか、大きな声がしたけど……」
「……あ、村長さん」
僕の声に反応したのか、二人組の女性プレイヤーが現れた。えっと、前に会ったことがあるな……たしか、ディントンさんのフレンドだっけか。
ちょっと会釈をするけど、どうにも気まずい。友達の友達って話しかけづらいんだよね。
「…………」
「…………」
「……釣り、してたんですか?」
「は、はい」
「ちょっと、ヨっちゃん、いきなり話しかけるとかアンタ勇者なの?」
「……あまりかしこまるのも変かなって」
「そうかもしれないけど」
なんだろう、いつもはこっちがぐいぐい行くから新鮮な感じ。
「えっと……ディントンさんのフレンドの人ですよね」
僕のその問いかけに、背の高いほうのプレイヤーが答えた。金髪で片目が隠れていて、どことなく雰囲気はらむらむさんに似ているが、この人のほうが口調がハッキリしている。
「は、はい。わたしがロミロミで、こっちのゴスロリ着ているのがヨ▽ヨです」
「え、なんて?」
「……読み方は、ヨターンデルタヨ」
「分かりにくいからみんなヨっちゃんって呼んでいます」
「へ、へぇ……まあよろしく、ロミロミさん、ヨっさん」
「ぷふッ」
「……その呼ばれ方は初めてだった」
「ひ、響きが……オッサンに聞こえてッ」
「……ロミロミはあとでつぶすから」
「え、ゴメン」
でも笑いはこらえているロミロミさん。どうやらツボにはまったらしい。
とりあえず、この問題のシーラカンスは後で調べればいいかとインベントリにつっこんでおく。一瞬見ただけなんだけど、壊の文字もなかったしなぁ……アプデで古代兵器に関してもテコ入れがあったからその関係だと思うけど。
「……それで、村長さんはなんでここに?」
「スクショコンテストの題材探しがてら、あちこちブーラブラー! していただけだから」
「ぷふっ、言い方他になかったの」
「……むしろワザとでしょ」
ワザとだよ。
まあ実際あちこちいい撮影場所ないか探してはいるんだけど、なかなか見つからなくて……後で時間帯変更アイテム交換しようかな……ハロウィンイベント期間中はずっと夜の設定だから、夏の時とは逆で日中に変更するアイテム【目覚めのお守り】がポイント交換に存在している。
「そういえば村長さんはレイドボスには挑まないの?」
「なんかあったっけ?」
「……ドッペルゲンガーって強いのが実装された」
「ポイント対象だし、結構な人が挑んでいるんだよね」
「へぇ……知らなかった」
「……ベヒーモスとクラーケンで暴れ回った人が知らなかったのは意外」
「そもそも、ハロウィンじゃなくてスクショのほうに参加しているのも意外なんだけど」
とは言っても、僕も積極的にイベント参加しているわけじゃないからなぁ……ベヒーモスの時はそうでもしないと他プレイヤーと会えなかったってのが一番の理由だし。
今となっちゃ行動範囲が広がったおかげで、別にそこまで積極的に参加しなくてもいいかなぁって思う。ランキング狙っているわけでもないし。
「ほどほどに欲しいアイテムが手に入るくらいの頑張りで十分だよ」
「それもそっか」
「……ところで、何かいいもの釣れたの? 大声上げていたみたいだけど」
「そうだ、それで気になってきたんじゃん」
「あー……後で調べようと思っていたんだけど、コイツ」
まあ隠すほどのものでもないだろうと、インベントリから【古代のシーラカンス】を取り出す。二人とも目を丸くしていたが、やはり驚くか。
「え、ナニコレ? シーラカンス?」
「……時々釣れるのは知っていたけど……でも、これ見たことないやつ」
「なんかこれ、装備アイテム扱いなんだよ。古代兵器の一つみたいなんだけど」
「……それは初耳」
「どういうものかわかるの?」
「えっと……」
とりあえずインベントリを表示して、アイテム詳細を確認する。やはりこの前のアプデで追加されたものらしい。古代兵器ではあるが、説明文が特殊と言うか何というか……
「一言で言うなら、召喚獣の古代兵器版だね」
装備アイテム扱いだが、使用方法は召喚獣と同様だ。武器スロットに装備し、専用スキルで呼び出せる。また、【サモナー】以外でも通常召喚獣とは別枠で召喚可能らしい。装備枠使うんだから当たり前か。というか、扱いはON/OFF系のスキルだ。
「つまり、ロボット兵器みたいな感じなのね」
「あー、それが一番近いか」
「……じゃあ、他にも同じようなのがあるのかも」
「かもなぁ……今度古代遺跡行ってみるかな。何か追加されているかもしれないし、そもそも攻略してなかったわ」
「ヒルズ村の炭鉱地下でしょ? あそこ死にゲーじゃん……」
「……私達も夏イベ最後の時に大勢で挑んだの参加していたけど、最後消し飛ばされた」
「今は難易度下がったから何とかなるかもしれないし……まあ、ソロで挑んでみて無理そうならレベル上げしてからになるけど」
「なんでソロで挑むの前提なんだ?」
「……徘徊している『鋼の獅子王』を倒す手段があるなら、ソロのほうが効率がいい。最奥のボスの強さは人数で変動するから」
「あー、そっか。ダンジョンのボスって基本的にそういう仕様だっけ……でもあそこの敵ってやたらと攻撃力高くて囲んでくるよね? しかも硬いし。獅子王倒したところで、囲まれたらアウトだと思うんだけど」
「機動力が欲しいんだよね。ジェット移動もいいけど、あれ動きが直線的すぎるから他の高速移動手段が欲しいんだけど……やっぱり【古代のウォッチ】を探したほうがいいかな」
「……探偵さんが持っているヤツね。他に持っている人知っているけど、アレは開発のネタアイテムとか言っていた。制御できるか、こんなものって言ってた」
「そこまで言うか……いや、実際ポポさん相当練習したらしいからなぁ」
チラッと聞いた話だと強力だけどほぼすべてのプレイヤーにとっては産廃アイテムとのことだ。まあ、ものすごいスピードで動けるようにはなるけど制御が難しすぎるんだからそりゃそうなんだけど。
移動には使えるかなと思って探してはいるが、ランダム出現で条件もよくわからないから探しようがない。ポポさんも偶然入手したから入手方法の検証もできないって言っていたし。古代兵器は一度手に入れると再入手できない仕様だからね。そもそも壊れないし取引不可だし。
ちなみに、手に入れるとインベントリに専用の枠が追加される仕様となっている。
「そもその装備できるシーラカンスって、わたしたちでも使えるのかな?」
「……どうです?」
「大丈夫みたいですよー。扱いは装備品ですし……ただ、これ強化できないのか」
メニュー画面からニュースのページを開き、更新情報を探す。最近のアップデートで追加されたはずだから、それっぽい項目がすぐに見つかると思うんだけど……あ、あった。
やはり最近追加されたもので、改造型古代兵器というシリーズに分類されるとのことだ。今はまだ未開放だが、今後のアップデートで性能調整を行うことができるようになるのか。
「まあ、今はそのまま使えるってだけのアイテムだな」
「強いのかな……」
「……威力は?」
「自分の周囲を漂って、敵に自動射撃してくれる。威力はレベル35ぐらいの初級魔法程度かなぁ……」
前にアリスちゃんがエルダー(海)のダンジョンで使った炎の矢より少し弱い程度。他の古代兵器と違って、エネルギー切れは起こさないし、あると便利って程度だな。
サブ武器使わない人には重宝しそう。
「……とりあえず、手に入れられるものは手に入れておこう」
「そうだね。あ、村長さん。これからどうするか決めているの?」
「もう少し釣りをしてから、エルフの里に行こうかなって思ってる」
「じゃあさ、わたしたちも適当に釣りしたら行くから一緒に行かない?」
「道に迷いそうだし、出来ればお願いしたいかな」
その後、適当に釣りをしながらある程度満足するまで成果が出たところで、二人にエルフの里まで案内してもらうことになったのでした。
新装備二つ目、シーラカンス(ファンネル)
高速移動手段は考えてありますが、出すのは何話か先になります。
7章中には出しますが。