炭鉱夫、大地に立つ
開始すると言っておいて、まだ顔合わせ回。
なお、ステータスに関しては深く考えないで大丈夫です。
あくまで目安としてだしているだけなので、おそらく今後小説内で出すことはほとんどないです。
ついにイベント開始である。本日、イベント開催3日目。
【レイドボス「ベヒーモス」を討伐せよ】という、まあ今後行われるレイドボス戦に向けてのチュートリアルみたいなものなのだが。
開催期間7日間の中で参加したい時間を選択して、同じ時間に登録した人たちとレイドボスと戦うという形式をとっている。情報の出そろっていない1日目の方が報酬が良く、後の方になるにつれてランクが下がっていくらしいが……取得した人の情報を見るに、最初から少し装備品が強化されているとかそういったおまけ程度だったようだ。荒れてんなぁ…………外野は草生やしているが。
「攻略情報もそこまで出ていないなぁ」
わかっていることはせいぜい、かなりの巨体であること。ライオンに角をくっつけたような見た目らしい。初レイドボスということを加味してか、属性攻撃はない。弱点属性もない。物理攻撃と衝撃波、地面をえぐるような動作で岩をぶつけてくるなどシンプルな攻撃方法主体。
弱点や行動パターンなどは不明、物理攻撃も魔法攻撃も効果の差はあまりないらしい……戦った人たちのコメントや、スクショやプレイ動画を見る限りヘイトが最も高いプレイヤーの職業に合わせて行動変化している節がある。
「…………予測は無理か」
このゲーム職業すさまじく多いし、いちいち行動パターン気にしていられないかもしれない。
それに、みんなラストアタック欲しさでメインで遊んでいる職業で挑んでいたから……すごく混沌としているし。僕たちなんか特にそうなるだろう……僕をはじめ、戦闘するための職業なのか怪しい人たちがいるし。
ちなみにだが、ラストアタック時にはその時の職業に合わせたアイテムが手に入る仕様になっている。
前回の巨大ゴーレム時、僕は新しいナックル系の装備を手に入れた。
というわけで、現在の僕の装備がこれだ。
基礎レベル20 職業レベル【炭鉱夫18】
・頭【なし】(あとでヘルメットを金鉱石と交換予定)
・上半身【深紅のマフラー】俊敏値にプラス10、防御力5 星2
・下半身【渚の海水パンツ】俊敏値にプラス15、防御力7(上半身に装備制限) 星2
・足【雅なビーチサンダル】俊敏値にプラス8、防御力1(悪路での俊敏値ダウン緩和) 星2
・アクセサリー
【守護の指輪】防御力にプラス4 星1
【守護のイヤーカフス】防御力にプラス4 星1
【爆発のリストバンド】爆発物の威力を1.05倍する 星3
【翡翠のブローチ】MPをプラス20 星3
・武器
【ダイヤモンドストライク】種別:スコップ 星5
ダイヤモンドによる強化を重ねられたスコップ。魔力を宿したことで杖としての性能を獲得した
物理攻撃力200 魔法攻撃力180
セット奥義【マジックドリル】
使用可能スキル:剣・槍・斧・盾・杖・魔法・採掘
【守護者の鉄拳】種別:ナックル 星3
はじまりの炭鉱の守護者を討伐したものに贈られる拳
物理攻撃力80 魔法攻撃力1 防御力にプラス10
セット奥義【なし】
使用可能スキル:拳・魔法
・称号【か弱い生き物】装備品を除いた俊敏値を1.05倍する
ということになる。これを見た人がいたら武器についてツッコミを入れたくなることだろう。
説明すると、どうもあのはじまりの炭鉱は外に出るまでが非常に大変である代わりに鉱石が最高品質まで出る仕様になっているみたいだ。さらに、外から入るのも大変なのだろう。いまだに誰も見つけていないし。
まあ、失敗作や大量の素材と引き換えではあるものの、星5を炭鉱の設備で作れた時点で今後レアリティがさらに上のが出そうだが。性能強化は炭鉱の設備じゃできなかったので+はつかなかったけど。ちなみにピッケルも強化して、【きらりんピッケル】に強化した。名前の通りふざけた性能で、物理攻撃力が1の代わりに魔法攻撃力が500というとんでもない代物だ。だが、重すぎて装備できなかった……ちょっと悲しい。
アクセサリーを装備可能数の限界までつけたが、これでどこまで防御力を伸ばせるか。いっそ特殊効果狙いに絞るべきだったかもしれない。
称号もセット可能なのは一つだけなので、恩恵が得られなくなる【一匹狼】ではなく【か弱い生き物】にしてある。
そんな僕のステータスだが……なんでこうなったんだろうなぁ。
HP:152
MP:212(+20)
筋力値:151
防御力:52(+31)
魔力:187
抵抗力:140
俊敏値:376 (+33)
器用度:157
幸運:50
と、なったわけだが。まあこれだけだと分かりづらいだろう。
参考までに上げると、現在の剣士系の人でもレベルは大体15ぐらいか。そこまでステータスの差はでないのだが、いかんせん僕の場合は俊敏がとがり過ぎている。俊敏値以外のステータスが装備込みでも一つのステータスが300を超えるようなことにはなっていない。精々が200だ。
逆に、レベル15以上で防御力(これは物理に対しての防御力である)が100越えていないのも相当珍しいだろう。最前線は150は確保しているらしいし、ほとんど半分程度だ。
魔法系ステータス(抵抗力は魔法に対しての防御力)が高いのは種族特性によるものだろう。
まあ職業補正が無かったら防御力はさらに下がるわけだが…………一度旅人に戻したとき、あまりの低さにうわぁって声が出たし。ちなみに、俊敏値が逆に上がった。どうやら炭鉱夫は俊敏値にマイナス補正がかかっているらしい。
…………今後、種族変更が可能になったら変えることも考えておこう。
@@@
「ああ、太陽はここにあったんだ」
「炭鉱夫さん、うれしいのは分かるけどその恰好とかどうにかならないの?」
いかにも魔女な格好のお姉さんに声をかけられる。流石に日光浴を楽しむのもほどほどにするか。ちなみにこのゲームのヴァンパイアだが、あくまで吸血能力を秘めた種族というだけで別にリアルの吸血鬼の伝承は関係ない。
なお、吸血能力については未実装である。
「そのいかにも魔女な格好、魔女は奥様さんですね」
「ええ。プレイヤーネームは『みょーん』よ。よろしくね」
「…………なんですかその気の抜ける名前」
「『ロポンギー』に言われたくはないわよッ!」
それもそうだ。
「盛り上がっとるのう」
「ひげもじゃの巨漢!?」
「んー、そちらは髭の鍛冶師さん?」
「おうとも。ワシは『ライオン丸』。見ての通り……って巨体でわかりにくいじゃろうが、ドワーフじゃ」
「そういやリアルからあまり体格差が出ないようにある程度制限があるんだっけか」
「リアルはもっとでっかいからのう」
ライオン丸さん、たぶんドワーフに合わせて爺口調なんだろうなぁ。
と、金鉱石と防具を交換する予定だったのでライオン丸さんと握手をする。
このゲームでは握手をすることでプレイヤー間の取引やフレンド登録などを行うことが出来る仕様となっている。というわけで、さっそく交換した。
「で、つけてみましたが」
「似合わんのう」
「似合わないわね」
「ハハハ。ぬかしよる」
頭防具【安全第一ヘルメット】防御力8 (気絶耐性) 星3
異界の知識を用いて作られた、頭の守り神。黄色い輝きがニクイ。
「これ、性能的には?」
「ぼちぼちじゃな。防御力は低めじゃが、気絶耐性がかなり有効。ただ、俊敏型はそもそも攻撃を喰らわない立ち回り故あまり意味はないかもしれんが」
「だよなぁ……」
「それでも装備するのね」
「「当然」」
「なんなのよその一体感。っていうかライオン丸さんも?」
「うむ。ワシのは白くした」
染色は別料金か。まあ、黄色い方がらしいからそのままにするが。
まだ待機時間もそれなりに残っているし、それらしき人達に挨拶して回るか。あとは事前に話し合ったとおり、スレの民でパーティーを組むことになる。
1パーティー最大6人。メンバーは僕、髭の鍛冶師、服屋農家、怪盗紳士、永遠の旅人、エルフの錬金術師である。
…………大丈夫かこの面子。
「やべぇ、今から不安になってきた」
「明らかに戦闘職じゃない連中で組まされた感があるんじゃが」
「探偵か釣り人がいたらそいつらのどっちかと錬金術師を入れ替えていたかもしれないわね」
「なんと恐ろしいことを」
「こんな恐ろしい所にはいれん。行くぞ炭鉱夫」
「おうよ、鍛冶屋のじっちゃん」
「なんで初めて会ったのにそんなに息ピッタリなの……」
以前から会話はしていたからでは?
とりあえず、僕のほかにもう一人目立っている男がいたのでそちらに向かった。
浅黒い巨体に上等なスーツ、シルクハット……そしてマント。うん、わかりやすい。というか種族オーガだったのか。
「えっと、怪盗紳士さんですよね」
「炭鉱夫さん、初めましてですね。俺は怪盗『イチゴ大福』です」
「魔女さんもだけど、そちらもなかなかパンチのある名前で」
「というかなんでオーガでその名前にしたのか小一時間といつめたいんじゃが」
そちらは鍛冶師さんですねと、二人が挨拶をかわすのを眺めながら他の面子を探す。それなりに人数がいるから探しづらいが……向こうからは僕らを見つけやすいんだろうな。スレ民なら僕の装備は知っているだろうし、怪盗紳士さん改めイチゴ大福さんも相当目立つ。
だからだろう。僕らの方にエルフのプレイヤーが男女それぞれ一人ずつ近寄ってきた。
「あー! 炭鉱夫さんと怪盗さん、それに鍛冶師さんであってますか?」
「うん、合っているけどッ――!?」
「なん……じゃと」
男性の方は問題ない。おそらくエルフの錬金術師さんだろう。隣にいる女性を見ながら、僕たちに気持ちはわかると頷いている。
女性エルフの背丈はかなり小柄だ。元の身長も相当低いんだろう。比較的背が高めになるエルフでここまで小さいとは……だが、年齢はそれなりのはずだ。なにせ、胸部装甲がすさまじい大きさである。非常識というほどではないが…………あまり直視しない方がいいだろう。ハラスメント行為になって「犯人」にはなりたくない。
「えっと、エルフの錬金術師さんがそちらでいいんですよね」
「はい。『めっちゃ色々』と申します」
「…………あんたも変な名前勢だったのか」
スレだとまともな返しの多いエルフの錬金術師さん、お前もか。見た目は柔和そうな雰囲気で、眼鏡をかけたこう……事務職だけど実力者みたいな感じである。
そして問題の女性エルフだが、どっちだ? それとも別の人?
「どうもー、服屋農家の『ディントン』です!」
あ、名前案外普通だった。
「それにしても……ふへへ、水着にマフラー。いいものですね」
「やべぇ、背筋が凍るんだが」
「うらやましいような、うらやましくないような」
これは明らかにラブでコメディーな視線とは違うよ。たとえるなら、ごちそうを目の前にした獣の眼だよ。そういえばこの人も安価の時水着推してたな。
「と、とにかく残りは永遠の旅人さんだけですね」
「うーむ、それっぽいのはおらんが……」
「永遠の旅人なんて言っている人ですし、それっぽい人なのでは?」
「初期装備はいませんね。旅人のままですしレベルは高そうですが」
「最前線級だと仮定するとレベル幾つだろう」
「40ぐらいでしょうか? 流石に廃人クラスですが」
と、そこで背後から声がかかった。声色が高く、最初は頭に入ってこなかったが。
「ハズレー。流石のオレもそこまではいかないよ。精々30だった。流石にこれ以上は旅人のままだとキツイね」
「えっと…………どちら様で?」
「やだなぁ。永遠の旅人、プレイヤーネームは『ニー子』だよ。よろしくね、皆さん」
「あのぉ、私が言うのもなんですが、色々反則じゃないですかね」
「んふふー、何のことかなぁ――――うぉっ!? おっぱいデカッ!?」
どうどうと驚くニー子さん。ハッキリ言ってるあたりハラスメントじゃないのとも思わなくないが、同性だと多少緩くなるんだろう。
このさい永遠の旅人とか言っているニー子さんが女性なのは置いておくとしよう。問題はその見た目だ。ひらひらとした装飾が多く、それでいて派手過ぎない――いかにも深窓の令嬢といった感じの外見なのだ。黒いストレートヘアーと整った顔立ちがさらにその雰囲気を強調している。
「それでオレとか言っちゃうのどうかと思う」
「これはオレのスタイルなの。このギャップがたまらないでしょ?」
「わからんなぁ…………」
「この異色集団に囲まれるの、後悔してきたんですが」
「めっちゃ色々さん…………名前がそれの時点でこっち側だよ」
「ですよねー」
「あと、スゲェ呼びづらいから今後職業で呼び合いません?」
「「「「「異議なし」」」」」
そして、上空にデジタル時計の表示が現れる。残り5分でレイドボス戦の開始。
いよいよ、僕らの最初のイベント戦が始まろうとしていた。
他の掲示板常連プレイヤーもちゃんとプレイヤーネームなど設定してありますが、すぐに出てくることはないと思います。
この場にいる掲示板メンバーはボス戦中、もしくはリザルト時に出す予定。
あと、レイドが終わればもう少しの間ソロが続くことでしょう。