お悩み相談のロポンギー
前回、ループ報告をくださった方々、ありがとうございました。
「どうも、このあいだは、お世話に、なりました」
「久しぶり、ってほどでもないですけどお元気そうで――とも言えないか」
らむらむさんにメールを貰い、直接相談があるということで工業都市の喫茶店で会ってみることになった。ちなみに、アリスちゃんも付いてきたのだが……なぜかサングラスをかけて僕の横でふんぞり返っている。
「えっと、そちらの方は?」
「メールを貰っていた時に、一緒にクエストをしていたんだけど……なぜか乙女の危機ですとか叫んでついて来ちゃって」
「アリスのことは気にせず、どうぞお話を進めてくださいです」
「は、はぁ……」
「いやホントすいません」
ごめん、今回はアリスちゃんの行動が理解できない。いや、彼女が何に危機感を抱いたのかは分からないでもないんだけど、サングラスかけて背後にゴゴゴゴゴって効果音を出現させている理由がわからない。っていうか、何それ? え、新しいエフェクト系のアイテム?
「非常に、気になる、けど」
「いやホント……スルーしてください」
「うん、わかった――で、話なんだけど、最近、PKって、疑われていて」
「あー例の真っ黒集団のぬれぎぬ着せられた感じ?」
「うん、そう――集団?」
「ああ……ついさっき襲われて、爆殺してきた。複数人の真っ黒いのが取り囲んできて、ごちゃごちゃうるさかったから爆弾で処理したんだけど……」
「…………噂、下火になる、かな?」
「ならないだろうなぁ」
結局アイツらがなんでPKしていたのかがわからないし。
「っていうか、そもそもらむらむさんだって職業が【アサシン】なだけでしょ? なんで疑われているの?」
「…………掲示板で、女性アサシンを、探す流れが」
「ごめん。もうわかった。力士だろ。力士のせいだろ」
「……はい。以前、あたしが、ミスして、キルしたせい、でもあるけど」
「そもそも力士が話を大事にしたのが悪い――いや、僕がそれ言っちゃ駄目か」
僕にもそういうところあるし、人のこと言えないか。
でも、今回は力士がやらかしたせいだよな。
話を要約するとこうだ。まず、真っ黒いヤツらとらむらむさんでは別のPK事件だ。いや、事件って言うほどのことじゃないけど。
らむらむさんのほうは話は単純。間違ってフレンドリーファイアを起こし、PKしてしまった。で、その時斬られた快感を忘れられなかった変態力士が、らむらむさんについて少し調べていた。後々力士さんについて調べたときに分かったことだが、変態的な言動はしていたけど積極的に探していたわけではなかったんだけどね。でも、彼が掲示板で尋ねていたために女性のPKがいるという話が広まった。
同時期に真っ黒い人たちがPKを行い始めた。こいつらは当初極力姿を隠しながらPKを重ねていた。キルされた側からはシステムログと、使われたスキルからの推察で下手人が【アサシン】であることを見抜いた。やられたプレイヤーもそこそこの数がいるし、話も相応に広まっている。しかし、意図的に一人であるように見せかけたり、極力目立たずに静かにおこなっていたために人物像があやふやだった。
で、問題なのはどちらも【アサシン】でPKであるという点。しかも、話が大きくならない噂話であったこと。
「二つの話がかみ合っちゃって、一人の犯人像として広まっている、ということ?」
「黒い人たちが、男性、って話もあるので、そこまで大きくはない、けど……ちょっと、視線が」
「真っ黒い奴らはおそらく男性ってレベルだったから疑われているわけね」
「でも、そのうち疑いは晴れると思うですよ」
「はい、それはそう、でも……ここ数日、被害が、増えている、らしくて」
「集団で取り囲んで襲い始めているからな……理由は知らないけど」
「そもそもお兄ちゃんが撃退しちゃったです」
うん。もうちょっと手加減して話を聞きだせばよかったな。ミスったミスった。
一番手っ取り早いのは黒い人たちにPKをやめさせることだな。
「そもそも力士を止めればいいのですよ?」
「それやっても、PK集団がいる以上噂に尾ひれがついて広まるよ。やっぱ根元から叩くか、より大きな話で上書きするしかないんじゃないかな」
そもそも誰も違法なことしているわけじゃないのだ。
今回の騒動は、あくまでも個人的な動きが妙にかみ合っているだけのこと。PKだって推奨されていないだけで、そういった行為は可能だし、現状らむらむさんだって大きな被害を受けたわけじゃない。
「結局のところ、ゲームを遊ぶうえでちょっと面倒なことになったなぁぐらいの話だ。みんな思い思いに遊んでいるだけで、楽しみ方は人それぞれなんだよ。だから誰が相手でも、遊び方そのものは否定できない――よし、PK潰すか」
「お兄ちゃん!?」
「村長、さん、いいの?」
「ちょ、貴女もなんで期待したようなまなざしで!?」
「人に、親切にされるの、うれしい」
「これたぶんそういうのじゃないですよ。っていうか、顔を赤らめてお兄ちゃんに近づかないでください。お兄ちゃんも、あまりイケメン顔は――って違う、マッド顔です」
「遊ぶのに煩わしいものは排除しよう――決して、この新型爆弾を試してみたいとかそういう話じゃないんだ。『操船』スキルを使って面白いことが出来そうとか、そういうことを思いついたわけじゃないんだ!」
「目を輝かせて言う事じゃないです! 否定できないんですよね!?」
「そう――僕がどう遊んでもいいはずだ! 爆破欲を満たしたい!」
「悪い方向に目覚めないでくださいです! 誰か、誰か止めて――そうだ、掲示板に助けを求めればッ」
そうしてアリスちゃんが掲示板を開いたが……何やら気になる記事が。
「なんだこの……救援要請スレって?」
「――い、嫌な予感がするです」
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【HELP】救援要請スレ【HELP】
58.名無しの剣士
真っ黒い奴らがおそってきた――
59.名無しの魔法使い
なんなのアイツら!? 何がしたいんだよ!?
60.名無しの盾使い
ちょ、PVPモード以外でプレイヤーに攻撃する方法分かんねぇんだけど!?
61.名無しの狩人
応戦しているけど、取り囲まれて一瞬で斬られる
いや、アイツらマジでなんなの?
62.名無しの盾使い
誰か救援を求む! 場所は帝国領、砂漠近くの宿場町『レキア』だ!
63.名無しの盗賊
これは聖戦であるとか叫んでいるのめっちゃ怖い――ごめん、ただシュールなだけだわ
だってアイツら自分たちのこと暗黒四天王とか言っているし
64.名無しの魔法使い
まあ、黒タイツが襲ってきているだけだし、正直緊張感はないよなぁ
65.名無しの遊び人
決めるぜ、俺の必殺――あ、ファンブル。ギャー!?
66.名無しの剣士
遊び人が自爆したw
67.名無しの魔法使い
犯人集団がなぜか遊び人の自爆にビビっているんだがw
68.名無しの狩人
爆発を警戒しているのか? まあ、効果はありそうだしとりあえず投げておく――ダメだ、ビビりまくって逃げ出しやがる
69.名無しの探偵
救援に来たが……ふむ、吾輩のスキルでは少し厳しいな
というか何故彼らは大規模な動きをしているのだ?
70.名無しの剣士
聖戦を、爆撃に我々は屈しないとか叫んでいた
71.名無しの盗賊
アイテム強化していたんだ――フル強化できるところだったんだ、それが……俺の+10が
誰か、俺のアイテムの仇をとってくれ!
スレ見ながら強化していたのにこんなカオススレを開かせやがって!
72.名無しの剣士
よそ見していたほうが悪いw
73.名無しの魔法使い
っていうかマジで誰か助けて! こいつら近づいてくると怖いんだけど!?
あと、探偵さんにターゲット行ったよ
74.名無しの探偵
ふむ……目的はおおよそ理解でき…………スマン、一貫性が無い当たり適当にふざけているだけの連中かもしれん。よくわからん
75.名無しの怪盗
助けに、来たぞ!
76.名無しの旅人
我ら、BFOトップ3!
77.名無しの探偵
名乗った覚えはない
78.名無しの剣士
なんか黒い奴らが余計に興奮していないか?
好機、好機とか叫んでいる
79.名無しの探偵
ふむ…………そういう理由か
はた迷惑なことには変わりないが――すまないが誰か手伝ってくれ
さすがに一人でこいつらを相手にするのは厳しい。対策も取られている
80.名無しの旅人
ウザい、こいつら一定距離を保って攻撃をさばきやがるッ
っていうかオレのスキルじゃフレンドリーファイア起こすの少なかったw
81.名無しの怪盗
俺も。爆弾投げたところで警戒していてかわされるんだけど
82.名無しの探偵
――――HELP
83.名無しの狩人
探偵さん!?
84.名無しの剣士
もうだめだ、おしまいだ
85.名無しの鍛冶師
ふざけているのか、マジでピンチなのか
86.名無しの探偵
こいつらの目的はおおよそ分かったが、そうなると我々が負けるのはよろしくない
なので、HELP
87.名無しの魔法使い
いや、PVPトップ3助けに行けるプレイヤーなんてそうそういないんだけど
88.名無しの海賊
ここにいるぞ! 助けを求める声を聞いてやってきた!
89.名無しの剣士
え、だれ!?
90.名無しの狩人
マジでどなた?
91.名無しの僧侶
なにやら空を動く物体を発見
92.名無しの怪盗
あ、俺にも見えた――ボート?
炎の魔人的なのがジェット噴射して飛んでいるんだけど
93.名無しの旅人
俺も視認。PK達がなぜか慌てふためいているんだが……あと、なんでボートが水の上を進むようなエフェクトを――あ、人魚がボートの前にいる。アレが水を出しているのか?
94.名無しの探偵
全員PK達を逃がさないようにしたまえ
転移用アイテムを使われたら元も子もない
95.名無しの海賊
これよりPKを殲滅する
出来る限り抑え込んでほしい
96.名無しの剣士
よくわからんが分かった!
97.名無しの盾使い
正直、なんでこんな状況になって、しかもよくわからないままよくわからない何かがやってきたのかわからないがゲシュタルト崩壊して、ゲシュタルト崩壊もよくわからないけど分かった!
98.名無しの盗賊
なにその長文w
抑え込むの了解
99.名無しの怪盗
え、逃げちゃダメ? たぶん、飛んでいるのあの人だよね?
100.名無しの旅人
死なばもろともだな
PK達は抑えたからやっちゃって村長
101.名無しの狩人
え、海賊だよね? え、村長なの――ってよく見たら裸マフラー!?
102.名無しの剣士
マジだw
103.名無しのサモナー
相方から皆様にご連絡するです
大きな音が鳴り響くのでご注意くださいです
104.名無しの剣士
なんか空から降ってきた――え、ナニコレ?
105.名無しの狩人
小さい樽?
106.名無しの魔法使い
えっと…………これはなにかなーって
107.名無しの海賊
新型の爆弾。小さな爆弾をまき散らして、連鎖して爆発するっていう代物
爆殺の経験値効率やドロップ率が落ちたせいでお蔵入りになりかけていたアイテム
そもそもドロップも何もないなら損はないよね
たくさん爆弾を作ってきて、解放されたレシピが火を噴く時が来た
108.名無しの剣士
暴論w まって、これ俺らもヤバくね――
109.名無しの旅人
爆発オチなんてサアッー!?
110.名無しの遊び人
リスポーンして戻ってみたら……なにこのスゴイ爆音
っていうか火の海が広がっているんだけど――あ、おさまった
111.名無しの海賊
…………やっべ、やり過ぎた
112.名無しのサモナー
あ、あとで一緒に謝ってあげるですから
113.名無しの海賊
ホントゴメン
次回で5章は終わりかな
今までの話を読んでくれているのなら、ロポンギーの発言や行動でおや? と思うかもしれませんが、次回で拾います。




