即席トリオ
たまには野良パーティーもいいものです。
さて、即席パーティーも組んだことだし改めて探索を開始する。
このゲームにおいてはクエストも複数人同時に進められるけど、今回受けているもののように特殊なトリガーが存在しているクエストの場合はパーティーメンバーが同じクエストを受けていないと一時的に進行できなくなる。
その点はクリアしているのでこの場合気にしなくても大丈夫だが。
探索中も考えていたのか、指輪職人さんがふと思い出したようで、疑問をぶつけてきた。
「結局のところ、このクエストの受注条件って水底系の装備とあと何がトリガーなんだろうな」
「明るい時は、おじいさん、いなかった」
「たぶん時間帯でしょうね。夏イベントの時に時間帯を昼で固定するからその対応されていましたし、時間帯が条件として存在するのは有名ですから」
「あー、【夜のとばり】だっけか? 時間帯を夜扱いにするアイテム」
「そんなの、あったね」
「だから時間帯で受けられるクエストが変わるのは確定ですし――問題の入り口も時間帯で開いたり閉じたりする?」
「かもなぁ。そう時間を経ずに日が昇っちまうし急いだほうがいいか? いや、日が出てからの可能性もあるが」
現実世界では今、0時半か。ということはゲーム内では3時……たしかゲーム内の日の出は5時だよな。
と言うことは、あと30分もしないうちに日が昇る。現実世界の1時がゲーム内の6時だし。
「夜にのみ入り口が開いているとかだと、今日は無理かもしれませんね。さすがに一戦ぐらいしか余裕ないし」
「そうだなぁ。リアル的な意味でもう夜も遅いし、明日に響く」
「あたし、この時間帯が、主戦場」
「ああうん。そんな感じはしていた」
らむらむさんだけ動きが機敏だし。
僕と指輪職人さんはちょっと眠気があるせいなのか、時折動きがカクッとしている。
「どうだ? 見つかりそうか?」
「うーん……」
「……条件は、水底装備」
「うん?」
「装備が、教えてくれる、とか?」
「あー、そういうパターンか」
「? よくわかんないんですが」
「ああそうか、そもそも村長はクエストはあまりやっていなかったんだよな」
掲示板で動向が知られているので、こういう時に話が早いが……ちょっと釈然としない。自分からこういうプレイスタイルにしたわけではない。嬉々としてやっていたが。
「特殊なトリガーで受注したクエストなんかでたまーにあるんだけどな、アイテムを使うと行くべき道を教えてくれるとかそういう感じのやつだよ。コンシューマーのRPGにもよくあるだろ?」
「今回も、そのパターン、かなって」
「なるほど……なら、これを掲げればいいのかな?」
手を前に突きだす。指についている【水底の指輪】がきらりと光り――細い光の線が城壁の一点を指示した。
「あら、あっさりと」
「ほー。俺のも一応」
「あたし、も」
指輪職人さんはベルト、らむらむさんがイヤリングに手を当てると同じように光の線がまっすぐに伸びる。そして、僕の指輪から出ている光と同じ場所を指し示した。
「正解だな」
「とりあえず、中に入れるか試してみますか」
「ワクワク」
光の指す壁へと近づいていくが見た目に変化は無い。とりあえず手を当ててみると――スッと中に手が入ってしまった。
「うおわ!?」
「隠し扉?」
「いや、見えない壁――じゃねぇや。ホログラム的なアレだろ。壁に見えるけど、実際は何もないってやつ」
「条件を満たすと貫通できるってやつかもしれませんけど」
「ああ、そのパターンもあるな……試してみるか?」
「変にバグったら嫌なんでこのままいきましょう」
さすがにいい加減にしろって怒られそうだからね。
壁の中に入っていくと、下へと続く階段があった。暗くてよく見えないが、なかなか深そうだ。
とにかく、中へと降りていく。少し降りると、ゆっくりとカーブを初めて螺旋階段になっていた。
ふと、気になったことがあったので二人に尋ねる。
「……今更ですけど、装備とか大丈夫ですか?」
「おう。俺は平気だぜ」
「あたしも、大丈夫」
「まあ、僕も夏イベント装備を強化したモノですし、そもそもこれが一番性能が良いから変えようがないけど」
しいて言うなら、ガントレットとグローブどちらにしたほうがいいかな? ってことぐらい。まあ、うまく歩けないからいざって時に殴り飛ばせるガントレット一択か。
ただ問題が一つ。めでたく修正が入ってしまった。いや、ガントレット自体には修正入らなかったんだけど、落下ダメージが想定以上に出てしまうからとそのあたりが修正されたのだ。
プレイヤーのほとんどは上方修正って喜んでいたけどね。落下ダメージ減るから。僕にとっては弱体化だけども。
「チクショウめ」
「いきなりどうした!?」
「いえ、こっちの話です」
「ふふふ、暗くて、じめじめしたとこ、好き」
「…………やべぇ、この二人とパーティー組んだの早まったかも」
「ヒドイ言い草ですね」
「訴訟も、辞さない」
「そういうところが怖いんだよ!」
解せぬ。
「あ、それはそうと二人の職業はなんですか? 一応、戦法を考えておかないと」
「また唐突に話を変えるんだな……俺は【重戦士】だよ」
「え、【クラフター】かと思っていた」
「……そんな職業あったのか」
「僕は使えないんですけど、奥義スキルの『スクラップ砲』ってのが強いんですよ」
ちなみに、ビームキャノンなあたり、古代兵器関連ではないかと噂されている。古代兵器とは言っているけどビーム兵器とか普通にあるから、そういう考察もある。ニー子さんの使っているハンドガンがその類だね。
「生産職、だよな?」
「ええそうですけど」
「…………生産職とは?」
ちなみに、最近上方修正でクールタイムが減った。ただ、アリスちゃんは今更来てもちょっと困るですって言っていたけど。
「いや、俺がこんな名前だから言いたいことも分かるぞ? なんで生産職じゃないんだってことを言いたかったんだろ?」
「じゃあなんでそんな紛らわしい名前……」
「俺も最初は生産職で遊びたいなと思ってこうしたんだが……合わなくてさぁ、結局は普通に戦闘メインになっちまっていてよぉ」
「あー、なるほど」
確かに、遊んでいてなんか違うよなぁってなることはあるな。他のゲームでの話だが、転職システムのあるRPGで、期待していたのと違っていたってパターンはよくあるものだ。
あとは育成ゲームとかもそういうの多い。強くなったけど、思っていたステータスや見た目じゃないとか。
「というわけで、今は戦士系上位職の【重戦士】ってわけだ。見ての通り、斧がメインウェポンだな。サブでこいつも使うが」
そう言うと、指輪職人さんは腰に提げているキューブを触る。
古代兵器の待機状態。そして、これ見たことあるヤツ。
「アックスですか……斧に斧を合わせるとか」
「近場だし、このあたりにいるプレイヤーなら所持自体はしているけどな」
まあ【古代のアックス】はエルダー(海)にトドメを指せば確定ドロップだし。そのため、最近アクア王国にたどり着いたプレイヤーは、数人でパーティーを組んで全員分出すまで周回するのが定番化したらしい。
アクア王国にたどり着いたプレイヤーはまず教会に行ってファストトラベルを行えるようにするので、夏アップデート以降に到達したプレイヤーのほとんどはあのクエスト受けているから。大司祭様、お元気だろうか……いや、NPCにそんなこと言っても意味は無いが。
「あたしも、もっては、います。使いは、しませんが」
「まあ僕もアレはあまり……レジスト不可の防御力デバフは強いけど」
「なかなか使い勝手がいいんだけどなぁ……使い手が少なくて悲しい」
「まあ僕は既に一枠古代兵器だし」
「あたしは、スキルを、つなげて、戦うから」
「たしかにそういう戦い方もありますからねー。見た感じ、短剣二本装備だし」
「うん。あたしは、【アサシン】だから、身軽な感じ」
らむらむさんは【アサシン】だったのか……たしか、盗賊系の上位職だっけか?
ステータスの面では俊敏値が高い。攻撃力、というよりクリティカル時のダメージが高いのが特徴で、このゲームにおいては数少ない運のステータス(クリティカル率に関係)が重要になってくる職業だ。ちなみに、他に運が重要な職業は【遊び人】などがある。
「で、村長は【村長】だろ?」
「そうだけど、言葉にすると変な感じだなぁ」
生産系上位職の一つ、【村長】。現在は【炭鉱夫】、【農家】、【釣り人】、【鍛冶師】の四つのスキルを習得可能になっている。職業専用のスキルをいくつも使えるのは結構便利である。特に【炭鉱夫】は『上位採掘』が使えるし、【鍛冶師】の『目利き・鉱物』のおかげで一回の採掘で手に入る量が増える。シナジーがあって便利なのだ。
まあ、その分素のステータスは低いんですけどね……戦闘でもスキルの組み合わせが一部とはいえエグイことになるからステータス低くしないとバランス崩れるのは分かるけど。
「考えてみると、三人とも上位職なんだな」
「今日から、9月になったし、ゲームがリリースされて、5カ月近くだから」
「それもそうか……使っているかは別だが、上位職自体はそれなりの人数いるか」
「ですよね……あれ?」
ヒルズ村の上位職って……僕と、みょーんさんと、あとは…………いない?
「…………村民たちが上位職になっていない人多すぎ問題」
「ま、まあそういうプレイヤーも多いから」
「ちなみに、ご職業は?」
「えっと……キャラ名は省くけど、僕ともう一人上位職がいて、その人が【祈祷師】だね」
みょーんさん、それなりに顔が広いプレイヤーだから二人もあの人かってすぐに思い至ったようだ。ゲーマー歴も長いし、ネトゲ自体かなりの期間やっているから別ゲームの知り合いも多い。ライオン丸さんもその口だしね。
「あとは【鍛冶師】と【錬金術師】、【サムライ】と【忍者】に【踊り子】、【仕立て屋】そして【演奏家】ですね」
「またバラエティー豊かな面子だな……でも、それ【踊り子】以外は直接の上位職は無かったと思うぞ」
「え、無いのもあるの!?」
「はい。特に【サムライ】と【忍者】は、有名」
「素のステータスの伸びは落ちるけどよ、特殊なスキルを覚えるから最終的には上位職レベルに強くなるらしいな」
「なるほど……」
【村長】って上位職だけど、位置づけは特殊だからなぁ。【鍛冶師】や【農家】が前提条件にあるけど、直接の上位職ってわけではない。なので、他にも正しいルートの上位職があると思っていたのだが……そうか、無いパターンもあるのか。
ちなみに、後で調べて分かったことだが【クラフター】は生産系スキルをいくつ使えるかが転職条件なんだが、別に生産職でなくてもいいらしい。スクロールで覚えてもいいとのこと。
「まだまだ知らないこといっぱいあるなぁ……っていうかこのゲーム、いくつ職業あるんだ?」
「さぁ……ユーザーもそのあたり把握していない」
「公式サイト、にも、そこまでは……」
「攻略サイトも迷走しているからなぁ……最近はPK騒ぎもあってそっちを調べている奴も多いからな」
「PK騒ぎ?」
PK、すなわちプレイヤーキラー。言い方は悪いけどこのゲームってそういった行為にメリットなかった気もするが? それに、フレンドリーファイアも一部のスキルだけだし。
PVPモード以外でプレイヤーを倒してしまうと経験値が結構減ってしまうのだ。しかも一定時間バッドステータス呪いが発生する。この呪いは教会で解除できない上に、全能力値が大幅ダウンという効果だ。こういったペナルティがあるからそういう行為は今まで出ていなかったんだけど……
「MPKとか?」
まあざっくり言えばモンスターを使ったPKのことだが、そういった方法を使ったのだろうかとも思ったが違うらしい。まぁ、そもそも前にポポさんがそれは難しいって言っていたけど。
「そうじゃなくて、プレイヤーが直接プレイヤーを倒して回っているって話だ」
「よくやるなあ……やり過ぎるとレベルダウンするんじゃない?」
「ああ。その可能性もある」
「確かめてみないことには分かりませんけどね」
「……」
「うん? どうしたんだ、らむらむさん」
「なんでも、ないです」
PKの話が出てから指でクルクルと糸を巻くような動きをしているけど……どうしたのだろうか? いや、口下手な人みたいだし、会話に参加しづらいだけか。
「でもなんでPKなんかしているんだろうか……」
「さぁな。よくわからん」
まあ、会わないことを祈ろう。
でも普段、作者は野良ばかりなり




