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掲示板の皆さま助けてください  作者: いそがばまわる
3.夏が来たよ、村長
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このままじゃ終わらない夏

※この作品はフィクションです。

 ログイン前。あの死闘から一夜明けて、『BFO』の夏イベントキャンペーンの一つで、SNSを使った懸賞に応募(ここ最近の日課)を済ませてからVR機器を準備する。

 アリスちゃんは1週間いないし、みょーんさんとめっちゃ色々さんはリアル側で忙しくなるためしばらく不在。和風コンビも武者修行だとかで【ビーチファイターズ】の間は村を離れることに。

 色々と気力も尽き果てた状況。今日はログインするのやめようかなとも思ったが……装備の修理だけでもしておこうと結局はログインするのであった。


 @@@


「はーい、いつものゲーム内の自室ですよ――あれ? メールが来ている……『イチゴ大福』さんから?」


 怪盗さんことイチゴ大福さん。

 なぜ彼からメールが……一言しか書いていないし。なんだよ「トゥギャザーしようぜ」って。


「…………気にしても仕方がないし、いったん外に出るか」


 武器と防具、とりあえず修復しておかないとなぁと家から出ると外には見覚えのあるシルクハットの男が。


「やあ、待っていたよ村長君」

「なんでいるんですか……」

「今日はログインせんかと思っておったぞ村長よ」

「あらー。結局インしたんですねー」

「耐久値は減ったから修復ぐらいはしておこうかなって」


 この前のベヒーモス戦と同じく、クラーケンはイベント仕様のためかデスペナがない。ただ、流石に装備の耐久値は減るので忘れないうちに済ませようと思ったのだが……


「怪盗さんがなぜここに? いや、村にいるのはこの際別にいいんだけど。あのメールは一体どういうことなのか聞きたいんだけど」

「それを説明するためにも、ぜひついてきてほしいんだ。島の西に船を用意してある」

「特に予定はなかったから別にいいんだけど」

「ワシらも詳しい理由は聞いておらんのじゃが……」

「嫌な予感するんだけどなぁ」


 イチゴ大福さんに連れられて島の西側に来てみると、そこそこの大きさの船があった。大きさは、漁船と言われて一番最初に思い浮かべるぐらいの大きさだろうか。木造だが、見た目も似ている。

 船を見ていると、その中から二人のプレイヤーが出てくる。一人は男性で、黒いローブを着ていて背中に羽が見える。男性で種族フェアリーって珍しいな……

 もう一人は女性。露出度の高い格好をしている。ベリーダンス衣装と言えばいいのだろうか? ただ、素材の所々がみょーんさんの【水のドレス】みたいな質感になっている。種族はケットシーで、ネコミミだった。


「あれ? 二人ともどこかで会いました?」


 なんとなく見覚えがあった。特に、ベリーダンスさんの方はインパクトの強い何かがあったような気がするのだが……


「ほらあれじゃよ。豚の丸焼きの」

「ああ――豚さん!」

「誰が豚よ! アタイはあるたん! ってクラーケン戦にもいたでしょうが! 覚えておきなって言ったでしょうが!」

「ちなみに、ワタクシはヤンバルクイナと申します――まあ、クラーケン戦でも会いましたけどね」

「――――ああ!」


 だからどこかで見覚えがあったのか。ネクロマンサーの人だ。

 クラーケン戦とか忘却の彼方だったから忘れていた。


「村長、クラーケン戦のこと忘れたいからってそのときあったこと全部忘却しておるぞ」

「バレたか」

「ある意味羨ましいですねー」

「というか、何の御用で?」

「アタイたちも理由も知らされないまま連れてこられたのよね」

「同じくです」

「フレンドの中で、ヒルズ村の教会に訪れたことがあるのが二人だけだったからだね」

「だから連れてきた理由を答えろと」

「――それは、行けばわかる!」


 イチゴ大福さんはそう言うと、僕たちを船に乗せて出港した――って、何この早業!?


「え、まって? 今どうやったんだこれ!?」

「この男、嬢ちゃんみたいにジェット移動しおったぞ!? しかも、かなり精密かつ彼女よりもずっと速く」

「ありえねー……あれってアリスちゃんレベルのセンスがあって初めて運用可能な技法なのに。それ以上って、VR適性アリスちゃんより上な人がいたなんて」


 よく考えたら、廃人プレイヤーじゃないのにPVPのソロ部門で優勝している人だった。

 ニー子さんとポポさんはアクの強い人物で、才能があるからにも見えるが……アホみたいなプレイ時間になっていることが有名なんだ。特にニー子さんはリアル大事にと言われまくっているらしい。

 イチゴ大福さんは一般的なプレイ時間――目撃情報も基本的に午後から深夜前まで――だからステータスに開きがあるはずなのに、勝っている。


「……もしかしてアリスちゃんの上位互換なのかこの人」

「あの子が知ったらショック受けるわよー」

「村長、絶対に嬢ちゃんの前で言うんじゃないぞそれ」

「流石に言わないよ……っていうか、この船もどうやって移動しているんだ?」

「爆弾岩と火炎瓶とあと、船の内部に仕込んだ杖を使ってジェット噴射している」

「違った、僕らの上位互換だこの人!」

「どうやって作ったんじゃそんなもの」

「ああ。ワタクシが先ほど見ておりますけど、巨大な大砲が中に積んであったんですよ。なぜ船の後方に向いていたのか疑問であったのですが……このためか」

「アタイも、なんでこうなったのか……唐突に呼び出されて船に乗せられたんだけど。

 あ、村長に聞きたいんだけど、なんであんな変な儀式をさせられたの?」

「さぁ…………僕が聞きたいんだけど、そのあたりどうなのディントンさん」

「んー? ああ。あの時の事ねー。えーっと…………反応が可愛かったからー、なんか、こう……その場のノリで。ちょうど村の真ん中のモニュメントどうしようかなーって話していた時期だし」


 そういえばそうだったな。変な仮面、縁日の飾りのために準備していたものの中にあったな。まあ、早い段階で浴衣の販売とか決めていたからストレートに和風のオーソドックスな縁日の形にすることになって仮面は倉庫の肥やしになったけど。


「あれ装備できたんだ」

「顔アクセサリー扱いで、ステータスはないんだけどねー」

「もったいないし、色々用意しておいてお面屋でも作るか」

「じゃな」

「何の話なのか気になるんだけど……っていうか、結局アレはその場のノリってだけなのね。なんか流れで色々貰ったからどうしたらいいのかわからないんだけど」

「んー、特に気しなくても大丈夫よー。私たちも好き勝手やっただけだしー」

「ほんとにね。あのスクショ何なんだよ」

「楽しい話は結構ですが、そろそろ目的地に到着しますぞ!」

「ああうん――ところで、イチゴ大福さん。なんか口調とかテンションおかしいけどどうしたの?」

「今更それ聞くんですね」

「普通は最初に聞くこと……」

「ああ!」

「いや、ああじゃなくて…………」

「ああ!」

「…………イチゴ大福さん、クラーケン戦の後ログアウトしました?」

「我は闘争を求めている!」

「もしかしてあの後一睡もしていないんじゃないの!?」

「有給取れたからと意気込んだクラーケン戦、それがあんな大敗――こんなのじゃ満足できねぇぜ!」

「アタイ、このあたりで帰りますんでー」

「逃がさないぞそこのネコミミ。ネコミミなら語尾にニャをつけるのだ!」

「なんで!?」

「さあ早く!」

「――なんでニャ」

「うわぁ……何この暴君」

「どうするんじゃ村長。おぬしが始めたクラーケン戦のせいでこうなったんじゃぞ」

「いや、これ僕のせいなの?」

「とりあえず彼の気が済むまで付き合ってあげるべきでは?」

「アタイもここまでやったんだニャ。お前らも逃がさないニャ」


 そうして僕らはヒルズ村の西の方にある島へと降ろされたのであった。そういえば、遠くに島が見えるなぁとは思っていたが……ここがそうか。


「ワシがクエストで船に乗っていた時は、近くを通るだけで特に見てはおらんかったんじゃが……なにかあるのかの」

「そういえばライオン丸さんは北ルートでアクア王国まで――いや、村に直接来たんだっけか」

「私は南ルートよー」

「あれは南じゃなくて空ルートだろうが」

「アタイは北ルートニャ。あれが一番安全なのニャ」

「…………悲しんでいたのにノリノリですね」

「元々、露出度高い格好もギリギリを責めるのが好きだからニャ。でもこの語尾も……そのさげすんだような視線も、なんだか、興奮してきて――――」

「ハイアウトー!」

「ここにまともな人は一人もおらぬのか!?」

「初めて会ったときから思っていたの――素質あるって」

「こっちもやべぇんだけど」

「嫌じゃ……もう帰りたくなったんじゃが」

「おとなしく、罰をうけるのです」

「あ、やっぱりこれそういう感じのノリなんですね」


 途中からそうなんだろうなぁって思っていた。

 クラーケン戦、アホな規模にした制裁イベントだって。


「じゃったら他の面子にも声をかけんかい!」

「一番規模が大きくなった原因は、やはり村長でしょうから。とりあえず実況スレで皆さんに中継しますので」

「このネクロマンサーもグルだったのか!? アンタ本当は知っていただろ!」

「アタイは知らニャかったんニャけど!?」

「リアクション面白い方がいた方がいいでしょう?」

「畜生! 味方がいねぇニャ!」

「ここの島の中央には井戸があって、中にはゴースト系のレベル60のボスモンスターがいます。ボス部屋しかないダンジョンという、すさまじい設定ですが――強いですよ」

「俺たちならやれる。村長、鍛冶屋さん、頑張っていこう!」

「こうなったら一蓮托生、いくぞ」

「帰りたい」

「骨は拾ってあげるわねー」

「ディントンさんも来るの!」


 というかなんでこんな高レベルの相手なんだ!?


「クラーケンだって頑張ればいける――このレベル60のボスを倒せばそれが証明できるだろう」

「うん。バカなのかな」


 @@@


【お仕置き部屋】白いワンピースの幽霊との決戦【WITH村長】


45.名無しのネクロマンサー

 というわけで、戦闘開始です。

 夜中もぶっ通しでモンスターを狩りまくったせいでテンションがおかしなことになった怪盗紳士プレゼンツ、村長と行く【クイーンレイス】との決戦ですよ


46.名無しの盗賊

 ポイントはもったいなかったけど、怒っているわけじゃないんだけどなぁ……


47.名無しの剣士

 どうしてこうなったのか


48.名無しの旅人

 なぜこうなったのだろうか……PVPで負けたのが恨めしくて、煽ったせいだろうか


49.名無しの祈祷師

 おいこらニー子

 大分前のネタを引きずるな


50.名無しの旅人

 違う! リベンジ戦でも負けたからだ!


51.名無しのネクロマンサー

 どちらにしてもしょうもないのでよそでやってくださいねー


52.名無しの演奏家

 しょうもないのはどっちも同じなんだよなぁ


53.名無しの盗賊

 っていうか、書き込み見ながら戦えるの?


54.名無しのネクロマンサー

 職業的に、自分は動きませんから

 村長も人魚を召喚して似たようなことできるみたいですけどね。召喚しておいて自分で殴りに行っていますけど


55.名無しのサモナー

 いいなぁ。人魚、釣りで低確率出現なんだけどなかなかでないんだよねぇ……

 効果がわかるなら教えてほしい


56.名無しの剣士

 村長、いつの間に召喚獣スキルなんて取得したんだ……召喚獣出せるなら【サモナー】にもなれるのかあの人。


57.名無しのネクロマンサー

 バフと、水魔法による支援攻撃ですね

 鍛冶師さんが「そんな便利なものなんで今まで使わなかったんじゃ」って言っていますね。で、それに対する村長の返しが「【サモナー】で使わないと育たないんだよ! だから今までソロでちまちま育てていたの! 最近ようやく実戦レベルになったんだよコレ!」


58.名無しの錬金術師

 意外と、そういう作業もしているんだな


59.名無しの盗賊

 あんまり知られていないけど、アナグラ生活時代からそうだよ

 突拍子もないことするけど、書き込んでいないところで入念な準備をしている人


60.名無しの魔法使い

 ベヒーモス戦の時も武器に素材つぎ込んでいましたからねぇ……防具もマーケットでそろえていたし


61.名無しのネクロマンサー

 目の前で暴れ回っている怪盗も似たような人ですけどね

 あ、貞――じゃなかった【クイーンレイス】が鍛冶屋さんを殴り飛ばした


62.名無しの剣士

 スレタイで薄々察してはいたけど、やっぱりそういう見た目なのな


63.名無しの大名

 まあ、井戸に白いワンピの幽霊って時点でお察しだけどね


64.名無しのネクロマンサー

 村長が、「やられてなるものか! ドリルから放つ魔法を味わうがいい――ああ!? 四方八方にチャージビームが飛び散っていく!?」

 ちょ、こっちにまで流れ弾がくるのですがw


65.名無しの盗賊

 なんか村長、調子悪いんだろうか


66.名無しのネクロマンサー

 しかし、この状況でも誰も乙っていないのは素晴らしいですね

 誰か一人はHPなくなって倒れるかと思ったのですが


67.名無しの重戦士

 ハチャメチャパーティーでなんで戦えているんだ


68.名無しの剣士

 アホなノリで戦いを始めた割には善戦していますよね


69.名無しのネクロマンサー

 怪盗紳士も強いですからね。村長たちも普通に強いですよ

 あと、ネコミミダンサーがさっきから「にゃあああ!?」としか叫んでいません


70.名無しの戦士

 その人完全にとばっちりじゃないかw


71.名無しの盗賊

 ナム


72.名無しのネクロマンサー

 村長が「いいや、限界だ! 押すね!」とか言いながら爆弾岩を大量にとりだしたんですが


73.名無しの盗賊

 その困ったら自爆やめーやw


74.名無しの魔法剣士

 まーたそうやって死に急ぐ


75.名無しのネクロマンサー

 いや、なぜか無事だったんですけど


76.名無しの盗賊

 自爆特攻で、犠牲者0だと


77.名無しの魔法剣士

 なぜ!?


78.名無しの旅人

 なにがおこったのか


79.名無しのネクロマンサー

 ああ【鍛冶師】の奥義スキルですね。鍛冶屋さんが説明してくれました。発動すると装備を含めた自分自身に炎と爆発の耐性を付与するそうです。しかも最高位

 習得条件は延焼ダメージの累計が一定以上だとか


80.名無しの騎士

 自爆戦法が、自爆しない戦法になった……だと


81.名無しの剣士

 っていうか【村長】なのに【鍛冶師】の奥義使えるの?


82.名無しのネクロマンサー

 フィールドマスター系は自分の領土や登録されている職業の奥義が使えますからね。もちろん条件は満たす必要がありますが

 鍛冶屋さんが「ワシのアイデンティティ……」って呟いています


83.名無しのネクロマンサー

 村長さん「自爆戦法は譲れんのだ!」

 鍛冶屋さん「ワシだってやってみたかったんじゃけど!」

 村長さん「なら二人なら二乗のパワー!」

 鍛冶屋さん「なるほど!」

 服屋さん「おいこらー」


84.名無しのネクロマンサー

 怪盗紳士「討伐完了!」

 その一言で、あああああとなるみんな


85.名無しの盗賊

 情報量が多いw


86.名無しの剣士

 討伐しちゃったのかよw


87.名無しの騎士

 ヤバいスレだと思った。その通りだった


88.名無しの怪盗

 みんな、見てくれたかい?

 この通り、たとえ格上の相手でもやろうと思えば、なんとかなるんだ!


89.名無しの剣士

 ああうん。そういう流れだっけ?


90.名無しの重戦士

 よくわからないまま始まって、よくわからないまま終わったんだが


91.名無しの怪盗

 だから俺は再び奴に、クラーケンに挑戦しようと思う!

 我こそはと思う者よ! 我に続け! 30分後にまた会おう!


92.名無しの盗賊

 …………え、どういうこと?


93.名無しのネクロマンサー

 つまり、たとえ格上でもがんばれば倒せるってことを証明したかったんでしょうねー

 やる気のある方、30分後にどうぞー


94.名無しの剣士

 え、嫌なんだけど


95.名無しの盗賊

 がんばってどうぞ


96.名無しの重戦士

 人、あつまるんですかねぇ…………


次回で3章も終わりかな。

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― 新着の感想 ―
[一言] 猫さんの叫びを見るたび某実況動画を思い出す… 「にゃあぁぁん」
[気になる点] 掲示板58が『名無しの村人』ですが、そのつぎが『おいこらにー子』なので、村人じゃなくて旅人では?と。 ただ、掲示板系はなんでもそうですけど、人物としての描写がないので実際にミスなのか、…
[一言] 何故また集めるのか……
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