アリスの挑戦
修正間に合っていなかった部分があったのでちょこっと変わっています。
「ついに私も奥義スキルを習得しましたよ」
「へぇ、良かったじゃないですか」
アリスです。お兄ちゃんが今日は用事で遊べないと言っていたので、寂しいとです。いや、別行動は結構ありますけど、最初から会えないのもつらいとです。今日はログインボーナスを受け取りに来ていたので、もう明日にならないと会えません。
アリスです。めっちゃ色々さんが奥義を覚えたそうです。これで村のみんなは全員奥義を覚えたとです。
アリスです……アリスです。アリスです。
「なんでそんなに興味なさそうなんですか」
「逆にどう話せというのです……色々さんってアリスのお父さんぐらいの歳なんですよ?」
「な、なにを根拠に」
「30代ですよね? その時点で一回り以上は離れているです」
「――――そうか、私も年を取りましたね」
他の皆さんも各々したいことをしているので、今村にいるのはアリスと色々さんだけです。なぜか二人並んで釣り糸を垂らしています。
まあ、釣りでもイベントポイントが入るのでいいですが。
「公式サイトの方にさらっと書かれていたので見逃していましたが、釣りでも結構いいポイント稼ぎになりますね」
「そうですね」
「…………暇ですね」
「ならダンジョンにでも行けばいいじゃないですか」
「いや、人が込んでいますしソロにはきついですよ」
「野良でも組めばいいのです」
「はっはっは…………ゲームにまでリアルな人付き合い求めてないんですよ」
「ならなんでVRMMOにしたですか」
いくらオンラインゲームだからって、リアルな人付き合いが嫌ならそもそも遊ばないと思うのです。
「それはそうなんですけどね。いや、ほら――冒険って、憧れますよね」
「言いたいことは分かるです。でも、オンラインじゃないタイトルだってあるじゃないですか」
「…………生の声が、聴きたいんですよ」
「矛盾しているです」
「たしかに……でも、人の考えってそういうものですよ」
「アリスにはよくわからないです」
「いつかわかりますよ。好きなのに、嫌だと思う。嫌なことなのに、いざそれがなくなると寂しい。生きていると、そんなことばかりですよ」
その横顔は、何となく寂しそうな感じでした。
色々さんにも悩みとか、そういうものがあって当たり前です。お父さんと普段あまり会話できていなかったからでしょうか、なんとなくその悩みを聞いて見たくなりました。
「なにか、悩んでいるのならアリスに話してみればいいのです」
「悩み、と言われても」
「何もなければ、アリスに向かってそんな寂しそうな顔をしませんです」
「……いえ、まだ君には早い話です。できれば一生知らなくていいことなんですよ」
「でも、言わなければ何も変わりませんよ」
「本当に、世の中には知らない方がいいこともあるんです」
そう言った、色々さんの顔は悲痛なような……でもうれしいような複雑な顔でした。
「それも、矛盾した話なのですか?」
「ええ――嫌だと思っている。でも、うれしいと思う自分もいるんです」
「…………わかりました。もう聞かないです。でも、すこし遊んで気晴らしするです」
「ええ、そうですね――――」
釣りも飽きたですし、イベントポイントで交換したアイテムを使いましょう。さっそく準備をしようと移動したことで、アリスはめっちゃ色々さんが最後にぽろっとこぼした言葉を聞き逃しました。
「流石に言えませんよね……彼女が私をモデルにしたBL同人を書いているのを知ってしまったなんて。
他の男を使っていなかったことがうれしいけど、やっぱりそういうもののモデルにされるのはなぁって複雑な心境だなんて……あの子に言うには早すぎますよ」
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【後半戦】イベント座談会・夏の陣4【はっじまるよー】
44.名無しのテイマー
スレタイの後半戦は間違ってないか?
前半の後半が始まるんだろうが
45.名無しの大名
そうは言うても、他に書きようがなかったんや
あんまり長すぎてもいかんし
46.名無しの探偵
せやかて案件ですぞ
47.名無しの探偵
せやかて
48.名無しの探偵
せやかて
49.名無しの大名
ワイが書き込むたびに職業をわざわざ変えて書き込むのやめーや
50.名無しの怪盗
なぜ、【怪盗】は一人も増えないのか
51.名無しの剣士
そりゃあんた、現在わかっているジョブの中でも最もマゾプレイ要求されるようなの誰もなりたがらないって
52.名無しの怪盗
強いのにー
53.名無しの重戦士
知っている。でも自分が使いたいかは別
あと、スレチだから職業相談スレで語ってどうぞ
54.名無しの怪盗
そうするー
55.名無しの盗賊
大名さんがまだいたら聞きたいんだけど、フィールドマスター系で次のイベントに何かあるって本当?
【農家】でクエスト進めていたら【村長】の転職フラグ立てたから聞きたいんだけど
56.名無しの剣士
そういえばそんな噂があったな
57.名無しの釣り人
そんな話あったんだ
58.名無しの大名
ノーコメント……ってこれだと語るも同然やな
簡潔に言えばある。ただ、今転職してもたぶん間に合わんよ
フィールドマスター系、早い者勝ちみたいなところあるし、転職する分にはいいんでないかな
59.名無しの盗賊
そうか、イベントには間に合わない感じか
まあ、とりあえず転職だけはしておこう。さびれた村でお使いクエスト進めるだけだったし……ただ、要求素材の量多いんだけど
60.名無しの釣り人
固有職、っていいのかなぁ……早い者勝ちとか
61.名無しの踊り子
気になって運営に問い合わせたことがあるけど、村づくりに興味がなければ【頭領】に転職していただければ、フィールドマスター系のスキルの大半が使えますって帰ってきた
領地がなくとも転職可能ですって
62.名無しの剣士
あ、教えてくれるんだ
63.名無しの農家
私も気になって聞いたことがある
今後のアップデートで条件緩和と定員無制限化とかも予定しているって
64.名無しの演奏家
まあ、ネトゲって少なからず早い者勝ち要素あるし
先行するプレイヤーが出るのはある意味当たり前というか……
65.名無しの木こり
ダンジョンと同じでインスタンス化とかそのあたりがまだ調整できていないんだろうな
イベントでダンジョンに列ができている……つらい
66.名無しの重戦士
人も増えてきたし、サーバーを増やすか混雑しないような調整が入るか対応はやく
67.名無しの踊り子
確かに混雑がきついのよねー
68.名無しの騎士
クエスト進めていたら、妙な情報を見つけた
港町でNPCたちが海に巨大なモンスターが現れたって言い出している
ただ、海に潜ってもそんな姿は見つからない
69.名無しの漁師
たしかに、他の乗組員たちもそんなこと言っているな
70.名無しの釣り人
【漁師】、だと
71.名無しの漁師
水棲系モンスターと戦えるかと思って転職したら地雷だった
まさか、船に無理やり連れ込まれて遠洋漁業に行くことになるとは……島流しである
72.名無しの怪盗
ナカーマ
確かに【怪盗】も楽しんだけど、そろそろ別の職業でも遊びたくなってきた
73.名無しの盗賊
時々クエストクリア必須な職業あるからな、このゲーム
74.名無しの魔法剣士
そんなことより情報をお願い
75.名無しの漁師
把握
まあ、巨大なタコやイカのようなモンスターをNPCが見たとか、奴が、奴が来るっておびえた感じなっているとかそんなんばかりなんだけどな
76.名無しの剣士
もしかして:【わだつみのしずく】
水着イベント後半で使えるアイテム。まだ使用方法不明なんだけど、これ関連かな
77.名無しのテイマー
これはクラーケンですね
78.名無しのサモナー
クラーケンだよな、たぶん
これでクラーケンじゃなかったらクトゥルフ的な何かだけど
79.名無しの狩人
クラーケンの方がいいな
エルダーの見た目がアレだからその親玉的なのとかどんなのだよ
80.名無しの騎士
たぶん大丈夫だろう
火山でエルダー(炎)と戦ったけど、炎で出来た魔人だったし
()に書いてある性質によって見た目と攻撃方法が違うっぽい
81.名無しの大名
ワイもエルダー(森)と戦ったで
木の体にツタが巻き付いていて、手足の部分が葉っぱでおおわれとる
82.名無しの剣士
やっぱクラーケンかな
83.名無しの狩人
クラーケンだとして、まだ戦えないとはどういうことなのか
84.名無しの探偵
やぁ、本家本元の探偵だよ
盛り上げるためだろうね。終盤戦、ポイント巻き返しのチャンスみたいな形で……ただ、おそらくレイドボスと戦うためのアイテムだろうが
イベント交換アイテムに【ベヒーモスの思い出】というものがある。これは、ベヒーモス戦を自分の好きなタイミングで発生させることが出来るものだ
おそらく【わだつみのしずく】も似たようなアイテムなのだろう
85.名無しの狩人
そうか、レイドボスか……そういえば正式実装したのに発見報告全然なかったんだよな
87.名無しの剣士
みんな苦い思い出ばかりだし、リターンも少ないからベヒーモスはスルーしていたし
88.名無しの錬金術師
そうだよな、せっかく正式実装したのに使わない手はないよな
ポイントを大量に獲得できるけど、多人数前提かよ
89.名無しの狩人
一人で黙々とあつめるか、協力してポイントを稼ぐか
90.名無しの探偵
まだ推定だがね
91.名無しの魔法使い
レイドか……ベヒーモスの時はまだこのゲームやっていなかったから、未体験なんですけど、アイテム交換してやってみた方がいいんでしょうか
体験してみた方がいいのかどうか
92.名無しの剣士
うーん、ポイントがもったいないな
【わだつみのしずく】がレイド挑戦用アイテムならそっちが始まってからでもいいぞ
93.名無しの盗賊
ベヒーモスは人数揃えてもきついからやめな
調整ミスったとしか思えない鬼畜さだから
94.名無しの魔法剣士
報酬もそんなに良くないからね
おすすめはしない
95.名無しの魔法使い
そこまでか……おとなしくイベントポイント貯めることにします
96.名無しの探偵
それが良いだろう
やりあうにしてももっとレベルを上げた方がいいだろうな
@@@
今、アリスの目の前には巨大なモンスターがいるです。場所はコロッセオ。そう、今アリスはベヒーモスと戦っているのです。
アリスがこのゲームを始める前に、お兄ちゃんたちが戦ったというベヒーモス……話には聞いていましたが、大きいですね。
職業は【演奏家】のまま。大聖堂のクエストを進めていたら、それが奥義スキルの条件だったらしくて、【演奏家】の奥義も習得したのでこいつと戦えるかなって、思っていたところでした。
「…………一人で、いけるですかね」
前々からやってみたかった、レイドボスのソロ討伐。装備もできる限り強化してあるです。エルダー(海)から大量に素材を手に入れていたですので、それで水着を上位の装備に改造してもらいました。
武器、というか楽器も新調して【渚のウクレレ+10】です。バトルブーツもフル強化済み、なんなら防具も強化できるだけしてあるのです。
まあ…………強化失敗で犠牲になった装備も多いですが。
「グォオオオオ!!」
「それじゃあ、頑張るですよ!」
ウクレレを弾きながらジェット移動でベヒーモスの攻撃をかわします。距離が離れると、空気の塊みたいなものをぶつける。近ければ直接爪で攻撃するか、噛みつきをする。
弱点は背中のコブ。もしくは、おなかの中。
「おなかの中は難しいですね――跳んで背中を狙った方がいいですか」
「ガアア!!」
「時間かかりそうですよね――いえ、確か人数で強さが変わるんでしたっけ」
どれぐらい変わるかはわかりませんが、お兄ちゃんたちが戦った時よりは弱いはずです。
ステータス的にはその時のお兄ちゃんたちより今のアリスの方が上ですし。
「まあ、やってやれないことはないですよね!」
「ガアアア!!」
爪による切り裂き。ジェット移動でかわしますが、続いて空気の塊が降ってきました。
「ちょ、連続ですか!?」
幸い、演奏の効果で防御力が上がったおかげでダメージはそれほどでもないですが……続いてタックルを仕掛けられたのです。
ノックバックが発生して、アリスは壁へと激突しました。
「ちょ、タンマタンマ! タンマです!」
「ガアアアア!!」
「食べられる!?」
ぱくりんちょ。
@@@
リスポーンは2回までなので、もう一回突撃しにいったですが……ひたすら回避と背中への攻撃でHPを半分まで減らして、咆哮により吹き飛ばされて再び死んだです。
「テイクスリー……はやめておくですか」
メニューを開いて、この場を離脱(クエスト扱い。破棄すると離脱)して再び村に戻ります。
「…………やっぱり一回じゃ無理です」
奥義を使うのに、攻撃パターンを見ておきたかっただけですから、別にいいですが。
とりあえず、今の感じで組んでおけば行けるですかね?
使えそうな魔法を選んで――よし、行ってくるです!
「レッツゴー」
何度か挑戦したのでダイジェストでお送りするです。
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「これが新たに覚えた奥義スキル『歓喜の歌』です!」
言わずと知れた第九。
「演奏しきれば、範囲内のプレイヤーのステータス上昇、あと演奏内の音符の組み合わせを魔法スキルの発動キーワードに登録できるですから、演奏しながらでも攻撃可能です!」
「ガアアアアア!!」
「――MPが枯渇するです!? ジェット移動もするからMPがぁ!?」
この回はMP管理ミスしておだぶつでした。
その次、行きましょう。
「MPブーストポーションも用意したです。これでいけるです!」
いいところまでいけたですが、HP残り三割で凶暴化しました。
スピードも急に速くなっていたので対応できず、アリスは消し飛びましたです。
いい加減どうにかしたいので、次の回です。
「流石に疲れてきたです」
「ガアアア!!」
「とびかかりはもう結構です」
防御強化、スピード強化、攻撃力強化とどんどん重ね掛けしていきます。
奥義はMPの消費が激しいので、ここぞという時までとっておくのがいいとわかったので、とにかくコブを蹴りまくります。
ジェット移動も使いすぎるとMPがなくなりますし……MPの自動回復旋律を覚えていなかったら危なかったです。
「やっぱり、一人で相手するとHPが少ないですね」
「ガアアア!」
空気の塊を連続で発射してくるので、躱すことに専念します。
そろそろ残り3割。お兄ちゃんたちは3割になってすぐ、奥義などでHPを一気に減らしたと言っていましたし、スピードアップさせずに倒した――それかイベントの時よりパワーアップしているのか。
「と、来るですか」
スピードがアップするのがわかっているので、アリスもスピード強化の旋律を切らさないように注意しながら攻撃をかわすです。
何度か攻撃したら、隙が出来るのでそこで奥義『歓喜の歌』を発動しました。
「みょーんさんの魔法を見ておいてよかったですね。高い所を狙うのに落雷魔法が便利です」
演奏の途中で落雷が降ってくるです。連発すると奥義に必要なMPもなくなるので多用はできませんが――このあたりでいいですか。
「全能力強化完了です! 一気に、決めるですよ」
ベヒーモスの背中に飛び乗り、コブを連続で踏みつけます。
「おりゃりゃりゃりゃりゃ!」
――そして、決着がつきました。
キラキラとした光の粒になってベヒーモスが消えていきます。リザルト画面には、アイテム類とラストアタックボーナス……ま、まあこんなものですよね。決して微妙とかそういう話でなく……いえ、ここまで苦労してこの報酬は微妙です。
でも、もう一つ。称号が手に入りました。
「【ジャイアントキリング】ですか……条件はソロでレイドボス攻略ですね」
効果、セット中すべての攻撃にダメージボーナスが入る。
「おお、いいじゃないですかいいじゃないですか」
これが手に入っただけでおつりがくるですね。
イベントの残り期間、頑張っていくですよー!




