消波ブロック
長らくお待たせいたしました。
いろいろと忙しい出来事がジェットストリームアタックをしかけてきたり、体調がよろしくないことになったり、他にももろもろありましたけど私は元気です。
消波ブロックというものをご存知だろうか?
海岸線などに設置をする波を打ち消すためのものだが、間違ってもファンタジー世界にあっていい代物ではない。いや、原理自体はシンプルだからアリといえばアリか? どのみち雰囲気が壊れるからナシか。
というわけで、今回の議題は突如として現れたその消波ブロックについてである。
「なんでこんなものアプデで実装したんだ運営」
「さぁ……消波ブロックが好きなスタッフがいるとかですかね」
「だとしても意味がわかんないんだけど」
めっちゃ色々さんと2人、素材集めのためにアクア王国南側の海岸線でモンスターを狩っていたら以前は見覚えのなかった消波ブロックが出現していたので、困惑中。
近づいてみてもクエストが発生する訳でもない。釣りポイントという訳でもなく、極々普通のものしか釣れない。
なんでこんなものを実装したのか、上の人は止めなかったのか、疑問は尽きない。たぶん気にしたら負けなやつ。
「あ、もしかしたら他でフラグ発生させるとか」
「現状それぐらいしか思いつきませんね
だけれども、そういうことを気にするタイプの人だからこそネットゲーマーをやっているわけだが。
「というか、それこそ掲示板で聞いてみればいいのでは?」
「……あ」
「忘れていたんですか……とりあえず、目に留まるスレッドということでこれでどうです?」
@@@
【これが】ネクストキーアイテム【勝利の鍵だ】
1.名無しの海賊
最近アクア王国南側に出現した消波ブロック、誰か詳しいことを知っている人はいませんか?
気になりすぎて夜しか眠れないです
2.名無しの魔法剣士
妙なスレタイに惹かれて来てみればくそスレだったの巻
3.名無しの陰陽師
って言うか、アンタ村長だろ
4.名無しの狩人
また妙なこと言い出して……それより消波ブロックって?
5.名無しの演奏家
ggrks
6.名無しの武闘家
ググれ、と言いたいところだけど一度ログアウトしないといけないのか……フルダイブ系の面倒なところだよな、調べ物があるときはログアウトする必要があるの
7.名無しの魔法使い
ああ、そういえばそうか……ネットで攻略情報調べながらってわけにはいかなくなったんだよね。完全に記憶だより
8.名無しの海賊
消波ブロックだけど、リアルの海岸線沿いなどで見られるもので、主に海岸線の浸食を防ぐためのもの
ざっくりいえば、大きなまきびしみたいなブロックを海岸などにおいて、波の衝撃を和らげるために使う
9.名無しの魔法剣士
まきびしw
10.名無しのサモナー
いや、言いたいことは分かるけど
11.名無しの狩人
あー、あれのことか……なんでファンタジー作品にあるんだ
12.名無しの鍛冶師
たまに妙なものあるんだよなこのゲーム
この前、BFO山岳倶楽部でハイキングをしているときにヘリポートみたいな広場を発見した
13.名無しの剣士
ヘリポートも気になるけど、山岳倶楽部ってなんだ
14.名無しの探偵
BFO山岳倶楽部:BFO内の山登りを楽しむやんごとなきグループ
本当にただただ談笑やスクショをしながら山登りをするだけの方々
15.名無しの力士
ゲームもそうだけど、なんでニッチなプレイヤーも多いんだ
16.名無しの海賊
運命、ですかねぇ
17.名無しの狩人
筆頭が何か言っているわん
18.名無しの釣り人
まったくっすね
19.名無しのアサシン
とても……ブーメラン
20.名無しの旅人
鏡見て言えよな
21.名無しの忍者
まったく村長はふざけているでござるなぁ
22.名無しの剣士
今村長にツッコミいれた連中、全員鏡見てこい
23.名無しの魔法剣士
アクの強い人たちばかりなんですが
24.名無しの探偵
それよりも消波ブロックのことだが……正直わからん
25.名無しの海賊
オイ(;・∀・)
26.名無しの踊り子
アクア王国なら今クエストを回しているところなんだけど、それっぽい話は聞いていないなぁ
27.名無しの仕立て屋
この前、アプデがあったけど新イベントのためのデータ実装とか言っていたし、それじゃないの?
28.名無しの剣士
まあ、それが妥当なところか
29.名無しの海賊
近代的なものを実装か……何のイベントだろう
30.名無しの探偵
大々的に言わないあたり、ちょっとしたものかもしれんが
31.名無しの力士
だとしても、作業自体は大がかりだしなぁ
32.名無しの踊り子
まあ、そのうちわかるでしょ
@@@
「結論、分からない」
「みたいですねぇ……それで、なんで釣り糸を垂らしているんですか?」
「いや、試行回数が少ないのかなって」
「そうかもしれませんが、結局普通のものしか釣れていないじゃないですか」
「まだだ、たとえ魚しか釣れなくても、倉庫の肥やしになる生魚ばかりでも、あきらめるわけにはいかないんだ!」
「倉庫に入れたままだと腐りそうですよね」
「なんて恐ろしいことを言うんだ――くそっ、また長靴が釣れたよ……ゴミも増えるなぁ」
「――――うん? まってください、長靴?」
「長靴。ほら、この黒いゴム長靴。一応素材扱いなんだけど、海のゴミ釣りあげるとテンション下がる」
「…………ゴム素材?」
「……あ、新素材か」
「もっと早く気が付いてくださいよ!?」
「いや、ある意味ゴミが釣れるって当たり前すぎて。ほら、釣りのハズレ枠って大概ゴム長靴じゃん」
「わかりますけど、これが幼少期からゲームに触れている人の弊害か……」
とりあえず、掲示板に書き込んでおこう。直後に、アホの言葉と新素材を手に入れるためにこちらへ向かうというコメントが多数届き、ほどなくして見知った顔を含めたプレイヤーが大勢やってきた。
ああ、僕の釣り場がコミケ会場になってしまう。
「抜け駆けは許さないっすよ!」
「抜け駆けしているつもりはないんだけどなぁ……」
「そもそも今、この場をコミケ会場とか言い出さなかったかしらん?」
「失敬な。口には出していない」
「心の、中では、思った、のね」
「そりゃ……こんだけバラエティー豊かな見た目のプレイヤーたちに囲まれたらね。コスプレイヤーの集団にしか見えない」
みんな思い思いの格好をし過ぎである。半裸な僕が言えたことじゃないけど、海岸線な分まだミスマッチ感はない。他のメンツだが、釣り人そのままなマンドリルさんはともかくとしてピンクのレオタードのオカマ、ロンドンにいそうな探偵、袈裟を纏ったお坊さん、力士、13日の金曜日に現れそうなホッケーマスクの男など様々だ。
いや、確実に僕が会ったことのないプレイヤーもいるんだけど……いつの間にかバラエティー豊かになりましたね。
「……向こうには戦隊ヒーローチックな人たちもいるし、なんか妙な衣装増えてない? 前はもっとファンタジー感強かったのに、だんだんとカオスな流れに……」
「ガチャアイテムも増えましたからねぇ」
「ああ、重ね着……ディントンさんの立つ瀬ないんじゃないの?」
自分で装備アイテムを作るプレイヤー、特に見た目にこだわっている勢は肩身が狭いかもしれない。
「いえ、公式で採用する衣装コンテストも開催しますし、さらにテンションが上がっていましたよ」
「そんなのやるんだ……」
「一周年イベントの一つらしいですね」
「ああ、そういうキャンペーンか。まあ、そのあたりの絵心とかのない僕には関係ない話ですよ――っと」
釣り糸を垂らし、ヒットを待つ。そうか、もう一周年か。時が経つのは早いものだ。いや、この一年結構濃密だった気もするけど。一周年イベントの概要とか予告とかもう公開されているみたいだし、後で確認しておこう。すっかり忘れていた。
そして話は変わるのだが、もう一つ気になったことがあったのを思い出した。
「ところで、ヘリポートの謎が新たに発生したわけだが、何か知っている人」
「…………」
隣を見る。めっちゃ色々さんは無言だった。
他の方々を見る。事情通なはずのポポさんですら無言――そうか、マジで誰も知らないのか。
謎の現代建造物シリーズ、意味はあるのだろうがアナウンスが何もない。このまま謎の路線変更とかになるとゲームが過疎化しかねないんだけど……誰も知らないとはこれ如何に。
「まあ、吾輩の予想になってしまうが……近々行われる大型アップデートの前準備だとは思う」
「大型アップデートって、少し前にやったばかりだと思うけど」
「より正確に言えば、正式版のリリースが始まるのだよ。今まで遊べていた範囲はそのまま基本無料になるが、パッケージ版か月額かはわからないが有料マップが追加され、システムまわりも今までのデータを基により遊びやすくなる」
「……有料化するの!?」
「初耳なんすけど」
「まだ決まりではない。だが、ほぼ確実にその流れになるだろうな。一番無難なところで有料のプレミアムプランが追加されて、プレミアム倉庫の追加、プレミアム優先のチャンネル、ログインボーナスの増加、経験値増加、レアドロップ率増加、それに加えて先ほど話にあった新マップへの移動券などではないかね」
「あ、ありそうな話を……」
「まあゲーム作っているほうも商売ですからね。あまり高額にしすぎるとプレイヤーが離れますが、あまりにもお金を集められなければサービス終了ということも……」
「個人的にはそっちのほうが嫌なんだけど」
せ、せめて5年ぐらいは続いてほしいんですが。できれば10年。意外と多い、10年続いているオンラインゲーム。なお、早々に消えたのも多い。
「最終的にはプレイヤー数次第ですから、何とも言えませんが」
「しばらくは大丈夫だと思うっすけどね」
「あれ? そうなの?」
「ほら、国産のフルダイブ系オンラインゲームって他にはあまり目立ったものがないっすから」
「開発が難航しているのもそうなんですが、多くのプレイヤーが接続しつつそれを運営できる環境を持っている会社自体があまり多くなくて……」
「そういった設備を持っている他会社は別のジャンルを得意としていたのも理由の一つである」
「あー、そういう理由か……」
それに、海外企業の作品を日本サーバーを開設して運営するといった流れもあるにはあったが……暴力表現などの基準が異なったのと、フルダイブ系だとリアルすぎて受け付けないという人も多く、日本ではあまり流行らなかったという話も聞く。
そういったリアルなものが好きという人もいるので、需要はあったのだが――多くの場合、リアル系を望む人はFPSやバトロワ系のゲームに流れていったのでファンタジーなアクションRPGとはそもそもの話需要が異なるのだ。
「で、結局のところ……アップデートまでゴム素材は集めたほうがいいのだろうか?」
「…………装備に、利用できるんですかね」
「レシピは更新されているし、使えはするんだけど――よし、適当に作ってみよう」
「あれ? 村長って製作職だったっすか?」
「職業の【村長】は製作スキルが使えるでしょうけど――いや、今はスキル統合などが行われたので、別職でも使えはしますか」
なお現在というか普段は【海賊】である。
スキル強化のために他職業でも遊んではいるが、特にそういったことがない時は基本的にパイレーツ村長。
「――出来た! 足用装備アイテム【長靴】!」
「そのまんまじゃないっすか」
「ま、まだ性能がわかりませんので――」
「装備レベル、1! 初期装備以下の性能!」
「ゴミからゴミ作っただけじゃないっすか」
「まあ、そういうこともありますよね。オンラインゲームって」
うんうんと、周りにいたみんなが頷く。どうやら似たような経験がおありのようだ。
「まあ、気長に強化してみるしかないかぁ」
「たしかに初期はゴミでも強化して大化けする可能性もありますからね」
「期待しないで待っておくっすよ」
…………あ、今気が付いたんだけど、強化派生の項目に強化値最大にしてから派生可能になる欄がある……どうせ他の誰かも気が付くだろうけど、面白そうだから黙っていよう。
そして、可及的速やかに強化を完了して派生先見てしまおう。楽しみが増えた。具体的には、後でねえどんな気持ちって煽れる楽しみを。
ストック的な意味でまだ不定期な更新が続きますが、まだ話は続いていきますのでよろしくお願いいたします。




