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掲示板の皆さま助けてください  作者: いそがばまわる
10.騒ぎ立てる、忍者
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ヒルズ村高校生同盟

 ほどほどにBFOとゴルフを行ったり来たりする今日この頃。ログイン時間は合計で日に6時間なのでペース配分が重要だ……いや、学生の身としては休みの日ぐらいしかフルにログインすることはないんだけども。

 だとしても、1日に遊べる時間というのは限られている。思えばBFOでやたらとファストトラベル地点が増やされたり、ジェット移動は全く規制されなかったり、移動手段が増えていったのはログイン制限があるからこそだったのかもしれない。いや、そういえばこの前ゲーム雑誌での特集にインタビューが載っていたわ。移動のスムーズさには気を配っているとか記事に書いてあったわ。思えば何度も明言されてた。

 今現在僕がいるのはヒルズ村の自室。しばらくほったらかしにしていたアイテム整理を行っているんだが……もっと低レベル帯で使っていたポーションとかいつまでインベントリに入れているんだ、僕。回復量が追い付かなくて使っていないというのに、細かい回復には使うかも。とか考えて入れっぱなしにするもんじゃないな。実際に使うことはなかった。


「……あらかた整理終わったし、どうするか。あ、そういえばあれがあったな」


 先ほど思い出した雑誌の件でひとつ思い出したことがある。雑誌付録でガチャチケのシリアルコードが付いていたので、事前に入力してあったのだ。フルダイブ型だとシリアルコードの類はログイン前に入力しないといけないからね。ゲーム内でどうやってシリアルコードを確認するんだよって話だけれども。

 というわけで、貰ったガチャチケを使う。出てきたウィンドウのガチャボタンを――ポチっとな。


「あれ? なんだかいつもと演出が違うような…………これは⁉」


 キラキラ輝くエフェクトと共に表示されたガチャ結果、そう! 最上級レアの、重ね着装備――しかし、この見た目は……いや、取引不可アイテムだから使わなかったら倉庫の肥やし、いやでもなぁ……この見た目を男が装備するの? いくらゲーム内だとアニメ調ゆえに可愛い系の顔立ちになっているからといって、僕にだって男としてのプライドが――あ、この重ね着って攻撃のエフェクトが特殊仕様になるのか。しかも、装備に合わせてカラーリングが自動的に切り替わるから、ちぐはぐな色にならないと。


「――ハッ⁉」


 気が付いたら、僕は手に入れたアイテムを装備してしまっていた。いや、こういう見た目の装備はアリスちゃんかあるたんさんがつけるべきだろうに、自分の面白そうと思った瞬間に行動してしまうところが恨めしい。

 それはそれとしてみんなの反応が気になるのでこのままいくが。

 というわけで村の自室から外に出ると、広場では幾人かのプレイヤーが会話をしているのが見えた。バレンタインということで、わが村にもNPCが在駐しているため、他プレイヤーもここ最近はクエストを進めるためにやってきてくることが増えた。いや、この前僕が掲示板で別に村民以外も施設やNPC利用しても大丈夫だからねと書き込んだだけなんだけど。


「あ、村長さん……妙な格好しているね」


 話しかけてきたのはケチャップソースさん。よかった。普段通りの格好だ。この前みたいなハジケた見た目じゃない。


「ケチャップソースさん…………実はヒャッハーズの一員だったりしない?」

「え、なんで?」


 …………そりゃ、ゴルフゲームでの豹変ぶりを見ていたらそう思うよ。

 周りのみんなもあーという顔をしているあたり、どうやらスポーツゲームで性格が変わってしまうことは知っているみたいだ。


「なんでスポーツゲームの時はあんなことに?」

「えへへ、なんだかテンションが上がっちゃうんだよね」


 可愛く笑っているけど、実態はナマモノになっているだけだからね。

 とりあえず、ケチャップソースさんたちは再びカカオ狩りに向かったのでその場で見送ったが……今日の彼女の印象のままゴルフの世界で再び会ったとき、温度差で風邪をひきそうだ。どうリアクションしていいのかわからない。


「…………さて、スルーしようと思っていたんだけど、やっぱり気になるからツッコミいれるね。何してんの?」


 広場の片隅にいた、ライオン丸さん、あるたんさん、らったんさんに向かってそう言ったが……肉を丸焼きにする行動をしているのは分かるのだが、なぜか肉の位置にあるたんさんがいる。じっくりと火を通してどうするんだ。


「みてわからんかのう……あるたんをこんがり焼いておる」

「んゆー? うけるー」

「違うんだニャ。もっとこう、ごちそうを前にしたようニャ表情で、じっくりと焼いてほしいんだニャ」

「なんでBFOってドMが多いの?」

「あれじゃろ。いくら痛みがないとしても、実際に自分が切られたり食べられたりなんて状況、ドMでもなければ楽しめんぞ」

「そもそもネトゲニャんて大ニャり小ニャりマゾニャ状況を楽しめる人じゃニャければ遊ばニャいニャ」

「うわぁ、暴論」


 渋いドロップ率のアイテムを手に入れるまで周回したり、分からなくもない場面はあるけど……だからって僕までそのくくりに入れられるのは誠に遺憾である。


「ところで村長、そのアタイたちケットシーのお株を奪う装備はニャんだニャ」

「んゆー? 可愛い猫耳フード……あれ? マフラーとくっついてるのー? 新しいマフラー?」

「なんじゃ、まーたガチャでレアが出たんか」

「あ、ライオン丸さんはこれ知っているんだ。今のバレンタイン期間限定のガチャアイテムで、装備品に合わせてカラーリングが変わる猫耳フードマフラーだよ。ちなみに、頭の重ね着です」

「そう簡単に最高レアリティを出しおって……」

「いくら僕でもそうポンポン最高レアは出さないよ」


 引きが強い自覚はあるけど、だからって最高レアしか出ない、とかそういうわけでもない。

 あと、思ったより淡泊な反応を返されたし、この装備はあまり使わないかもしれないなぁ。

 …………いや、淡泊は違った。らったんさんはおもむろにスクショモードに入り、一心不乱に撮影している。


「……何してんの」

「? アルバムの1ページ増やしてんの」

「1ページどころじゃなくない?」

「1冊、が妥当じゃな」

「そういう問題かニャ。っていうか、勝手に撮っても反映されるのかニャ」

「ああ、そのあたりの制限は外しているから普通に他人のスクショに写るよ」

「うわぁ、オープンだニャ」

「別に今更の話だし……で、結局みんなは何をしていたの?」

「花の高校生、世間はバレンタインデーだってのにこんなところでグダグダと遊んでいていいのじゃろうかと思っての……」

「んゆー? 彼ぴっぴ欲しいなーって思って、じゃあ儀式をしようってなった」

「とりあえず、アタイを丸焼きにすればそれでいいんでニャいかニャー、ニャんて」

「意味が、わからない」


 どうしてそうなったのか本当にわからない。というか、時期が時期だしそういう発想が出てもおかしくはないが、だからといって儀式とかちょっと何を言っているのかわからないです。


「あれじゃよ。黒魔術的な」

「ゲームでやっても意味ないんじゃないかなぁ……」


 そもそも恋人がほしいなら、なおのことゲームにログインしっぱなしなのはどうなのかと思う。いや、ここで出会いを探すというのもありなのかもしれないが。フルダイブ系なら文字だけのチャットよりかは人となりがわかるし。

 ふと思ったのだが、高校生組の誰かで付き合えばいいのではないだろうか?


「案外、そこの高校生組で誰かくっ付けばいいんじゃない? 割と3人とも恋人欲しいって言っていたと思うけど……うわぁ、嫌そうな顔」

「失礼だニャ。ライオン丸はこんニャ美少女の何が不満だニャ」

「分かっておるじゃろうが……村長、世の中にはな、決して男女の仲になりえない異性というものがいるんじゃよ!」

「んゆー? あーしにも選ぶ権利ってあると思うのー」

「なんじゃとコラ!?」

「それはアタイもだニャ」

「ワシだって選ぶ権利ぐらいあるわい!」


 とりあえず、地雷を踏んでしまったのは間違いないらしい。どうやら僕の知らないところで何かあったようだ。

 この3人、年齢が近いからよくパーティーを組んで一緒に遊んでいるんだけど……いや、だからこそ恋人は無理と思うような何かがあったということなのか。


「何か譲れないものがあるんだね」

「猫言葉とか黒ギャルとかワシの趣味じゃない」

「髭もじゃとか勘弁だニャ。あと、もっと線の細い美男子がいい」

「あはははは。マジウケる」


 らったんさん、目が笑っていないんだけど……ちょっと足が震えた。


「なんじゃとゴラァ!」

「かかってくるがいいニャ!」

「んゆー?」


 そのまま3人でPVPモードを起動して……なんか泥沼になってきたんだけど、これって僕のせい?

 呆然としていると、呆れた顔をしながらみょーんさんがログインしてきた。いきなり目の前の惨状を見ればそういう顔にもなるだろうけど、姐御、あとは任せます。


「身重のワタシに任せないでよ。まあ、どうせくだらないことで収拾つかなくなっているんだろうけど」

「……争いは同レベル同士のものでしか発生しないのです」

「で、原因は?」

「かくかくしかじか四角いほにゃらら」

「まじめに」

「はい」


 とりあえず、こうなった経緯を説明するが……みょーんさんは呆れた顔をさらに眉をゆがめてこめかみに指をあてた。呆れ度が3割増し。


「正直アタシにもどうにもできないわね。村長はどうするつもりだったの?」

「そのうちやめるか、PVPモード起動して決着つけるだろうから放っておくしかないかなと。面倒だし」

「そうね。ところで村長、アイテム集めに付き合いなさい。ちょっとストレス発散がてら軽くでいいからイベント進めたいのよ」

「うぇぇ……なんで僕が」

「いいから」

「はーい」


 うーん、なぜだかわからないがみょーんさんに強く言われると逆らえない自分がいる。

 とりあえず、この3人についてはまあ、なるようになるということでひとつ。桃子さんが最近ピンク色の瘴気を纏っているから思考が恋愛的な方向にそれていたけど、必ずしもそちらに行かないケースもあるよね。


「ところでその猫耳フード、イメチェン? 新年は萌えキャラ路線でいくの?」

「たまたまガチャで出ただけです……やっぱやめようかな、これ」

「でもバレンタイン期間のガチャアイテムよねそれ……ステータスにボーナスはつかなくても、カカオのドロップ数増えなかった?」

「よし、ロポンギー君バレンタイン中はもうこのフード脱がない」

「あなたも大概現金よね」


 多少の恥で高効率になるのなら、喜んで恥をかかせていただきますとも。


 @@@


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