とある朝からの始まり
久々の更新です。
それと書籍版も読んでくださった皆様ありがとうございます。
キラキラとした汗が光る。
アリスには勝たねばならぬ相手がいる。この前のPVPイベントで敗北を味わった相手。あの『イチゴ大福』を料理してやるのだと誓ったのだ。
「……イチゴ大福を料理とかマズくなりそうですよね」
至極どうでもいいことも考えていたが。
彼に勝つためには何か強力な武器が必要だ。アリス自身の技術か、実際にゲーム内の武器でもいい。それか強力なスキルか。いや、スキルではダメだ。今もイチゴ大福は難易度の高いクエストをこなして強くなっていることだろう。
だからこそこうしてアリスは現実において体の動きを高めていた――ダンスで!
「スプラッシュ!」
謎の掛け声を上げるが、彼女は真剣である。とりあえず何か参考にしようとして読んだ漫画で『そうだ、ダンスの動きを取り入れよう』と思い至ってしまったのが原因だ。
成功すれば確かに独特の動きとリズムで相手を翻弄しながら戦えるかもしれない。しかし、今の段階ではただ踊っているだけだった。
「…………いや、そうはならないでしょ」
「なってるじゃない」
そんな彼女の様子を叔父と母親は見守っていた。なお、叔父のほうはスマートフォンで『姪っ子がふしぎなおどりを踊っています。助けてください』とスレを立てていた。最近、どこかの誰かに影響を受けている彼である。とりあえず、現実世界ではあるがMPがガンガン削れている……ような気がする。
桜井アリス。類稀なる運動能力と格闘センスの持ち主であるのだが……自分で創作ダンスをすると珍妙な動きをするあたり、そのあたりの美的センスはなかったらしい。
「エクセレント!」
「さっきから何なん? あの掛け声」
「さぁ? 表現の発露じゃない?」
「だとしても最後が荒ぶる鷹のポーズになるのはわからない」
なお、アリスは小さく足でリズムをとっている。どうやらまだフィニッシュではなかったようだが……さすがに見ていられないと叔父が止めに入り――蹴り飛ばされた。
「何故!?」
「ふっ……ボウヤだからよ」
「意味が、分からないッ」
そのままブレイクダンスを始めるアリス。なお、母親が足を掴んで止めた。
「ああ!? 何をするですか!?」
「コラ! 家具に当たったら足を痛めるわよ」
「あ……ごめんなさいです」
「その前にボクに言う事はないのかな?」
「まったく。ほら、手を洗ってきなさい。今日はオムライスよ」
「わーい!」
「あ、無視ですか……」
と、そこでアリスのスマートフォン(プリペイド)にメッセージが届いた。着信音を聞き、画面を開いて返信を済ませた……若干顔をホクホクさせながら。
「あら? お友達?」
「まあ、そんなところです。メル友のとあるマダムですよ」
「……いや、どういう繋がり?」
「あまり迷惑はかけないようにねー」
「姉さんも簡単に流すね!?」
(…………なんでアリスはお兄ちゃんのお母様とメル友になったですかねー)
マダムの息子の写真に釣られたからである。
なお、ホクホク顔も新しい写真が増えたからだ。案外と欲望に弱かった。
「さてと……それじゃあボクは仕事に戻るから」
「はーいいってらっしゃーい」
「そもそもなんで叔父さんはウチにいるですか?」
「最近ストーカーに追いかけられているらしいわよ」
「……しょうがないですね。お母さん、お見合いをセッティングしてあげてくださいです」
「あら? 助け舟出してあげるの?」
「お相手はお父さんの幼馴染の妹さんで」
「それ、トドメ刺すやつ」
ストーカーとは言うが、結局知り合いが不器用にアタックしているだけである。まだ身を固める気がないので逃げ回っているともいう。なお、他にも似たような相手がいるそうな。
追いかけられているのも単にデートの約束を取り付けようと先回りしている人たちに疲れから過剰に反応してしまっているだけだが。
「まったく。叔父さんも大概ラブコメ体質ですよね」
「――いや、貴女がいうことじゃないから」
誰に似たのかしらとぼやくアリスの母親であったが……あ、自分たちかと過去のことを思い出して苦笑いした。
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アリスちゃん大勝利!
ログインしてから数分後、アリスが叫びそうになったセリフだ。
「何事じゃ!?」
ライオン丸が言うのも無理はない。アリスがログインして少し談笑をしていたら、唐突にロポンギーが走って来てアリスに抱き着いたのだ。思わず頬をつねった自分はおかしくない(なお、ゲーム内なので特に痛くはなかった)。
「それで、いったいなんでこんなことになっているです? アリス的にはこのままでもどうにかしないと全然かまわないわけでお兄ちゃん大丈夫ですか?」
「バグってるニャ。とりあえずアリスちゃんが落ち着けだニャ。表情もすさまじいことにニャっているから」
「嬢ちゃんに会心の一撃だったんじゃな」
「むしろ痛恨では? 顔色が赤くなったり青くなったり、筆舌にしがたいことになっていますよ。しかも高速で切り替わるから見ていて怖いですし……リアル百面相か」
「少なくともリアルではないじゃろ。ゲームなんじゃから」
「それもそうか」
なお、ロポンギーは生まれたての小鹿のように震えている。目からも涙がこぼれており、相当怖い目に遭ったことがうかがえた。
「いや、マジで何があったんじゃ」
「村長がこんなことになるなんてー、滅多にないけどー」
「調子に乗って魔王城地下の古代遺跡に挑んだとか?」
「あるいは知らずに入った酒場がオカマバーだったとか」
「大好物を食べ損ねたとか、そんなくだらないオチだったりしてー」
「……村長ならありうると思ってしまいましたね」
「じゃな」
好き勝手言っている周囲にもロポンギーは反応しない。普段なら、口には出さずとも覚えてろよぐらいのことは考える彼であったが、今回はそんな余裕もないようだ。
そのおかげで役得なアリスは興奮する自分を律して、何があったかを聞きだす。
「お兄ちゃん、どうかしたです? 大丈夫ですか?」
「……」
「大丈夫ですよ、ほら。周りには怖い人たちもいませんからね。だから安心して話してくださいです」
「なんじゃろう、この倒錯的な光景」
「若干犯罪臭がするニャ」
「外野、うるさいです。お兄ちゃん、もしかしてさっきのTELモードと関係あるです?」
「……うん」
ロポンギーがようやく口を開いた。声は震えており、まだ脅えが残ってはいたが、話すことが出来る程度には回復したらしい。
ここでアリスの発言したTELモードとはBFOにおける新機能で、手を電話の形にすることでフレンドと通話を可能とするコミュニケーション機能だ。今まではショートメッセージやメール、掲示板を使った不特定多数とのコミュニケーション機能は存在していたが、声によるやり取りを行うためにサーバー強化されてようやく実装されたのである。
「そういえば、何やら慌てて通話しておったの」
「一体全体、何があったのー?」
「実は……」
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イベントも終わって、ちょっと街中を探索してみようとぶーらぶらーと歩いていた時だった。鼻歌交じりに、現実の季節に合わせて雪が積もっている場所があるなぁと眺めていたんだけど……唐突に、背後に嫌な気配を感じたんだ。
「――!?」
「……ハァハァ」
どMがじっと見ていた。建物の陰に身を潜めて、自分をじっと……そのあまりの恐怖に、思わず助けを求めてしまった。
「……もしもし警察ですか?」
警察、というかアリスちゃんにだったが。
さすがにアリスちゃんも困惑したのか『いきなりどうしたです!?』と叫んでいたのを覚えている。もっとも、その後に自分が何を口走ったのかはわからない。
ただ、よだれをたらしながら迫る彼女と、少し戦闘まがいのことになったのは記憶にある。あえて喋らなかったり、いっそヒドイ暴言も吐いたと思うのだが……燃料を投下するだけだった。
「ああん! そんな塩対応もまた素晴らしいですわ!」
「くっそ、無視しようが邪険に扱おうが、喜びやがる」
「ちなみに優しくされてもそれはそれでうれしいですわ」
「チクショウ、どうしようもねぇ!」
「ところで結婚システムについて何ですが――」
「転移!」
「ああ!? テレポートですって!? 課金しないポリシーだったのではないのですか!?」
「そのポリシーは去年までの話だ!」
彼女は捕食者の目をしていた。そして、思い知ったのだ。今この瞬間において、自分はただの餌でしかないのだと。
このままでは、無残な最期を遂げてしまう。そして、気が付いたらああなっていたんだ。
@@@
「以上です」
「ああ……なるほど。結婚システムが実装されてついに動き出したんじゃな」
「前々からやらかすんじゃニャいかニャとは思っていたんだけどニャ」
「ついにやりやがりましたか」
「お兄ちゃん……まだ足が震えているですよ」
「くっ……静まれ、僕のジェニファーとロドリゲス」
「なんで足に名前つけているんですか」
「どっちがどっちなんじゃろうな」
「いや、どうでもいいニャ」
会う度に危険度と身にまとう瘴気が増していくんだアノ人。というか、感情表現のシステムがバグったのか、マジで瘴気を身にまとっているように見えるのが困る。
あとホントいい加減膝の震えが治ってほしい。さっきからがくがくと震えているせいで、ジェニファーとロドリゲスが連続キスシーンをお披露目してしまっているんだが。
「誰か、助けてください。あとさっきから掲示板に書き込んでもリア充氏ねのコメントしか返ってこないんだ」
「当たり前なんじゃよなぁ」
「むしろ今までよくもまあー、上手くいっていたわねー」
「最近、掲示板の民の間ではゆろんさんの人気がうなぎのぼりでのう」
「え、初耳なんだけどニャ」
「ほら、この前のPVPイベントがあったじゃろ。そこで、妙に人気に火がついてしまったらしくて彼女から狙われている村長は今、周りが敵だらけなんじゃよ」
「……そ、そんな!?」
「っていうか村長はいつまでアリスちゃんに抱き着いているつもりニャのか。アリスちゃん、葛藤しているニャよ」
それは分かっている。ブツブツとアリスの中の天使と悪魔がとか言っているし。というか、悪魔側が優勢らしくてああ、天使の羽が黒くって叫んだ。
「最近我慢していたことも多いですし、もっと進んだことをしても良いんじゃないかって―――天使がそんなこと言っていいんですか!? え、堕天使? 知ったことじゃないんですよ! 沈まれ、アリスの煩悩!」
「なにひとり芝居しておるんじゃろうな」
「っていうか全部筒抜けだニャ」
「村長ー、こんなこと言っているけどー?」
「だからこそ、ある意味信用している」
やがて、アリスちゃんの中で結論が出たのか、滅茶苦茶いい笑顔で僕のほうに向きなおった。
「…………大丈夫です。お兄ちゃん、アリスがいるじゃないですか。ゆろんさんが何のそのですよ」
アリスちゃん――そのまま、ひしっと抱き合う。
この時にアリスちゃんがある画面を表示させており、彼女の意図を理解したが……一瞬、それにためらう。だが、たぶんこれを避けて通るともっと面倒なことになるからさっさとオーケーしておく。
「うわー……久々にーアリスちゃんが黒い笑顔をしているわー」
「村長も分かっておるじゃろうに、なぜそれで抱き着きにいったのか」
「さぁ? まあ、本人たちがそれでいいんならいいんじゃないですか? これ以上関わるのは面倒ですし」
あと、外野がうるさい。
そしてシステムメッセージが表示されて――僕とアリスちゃんが結婚状態になった。
「――んん!?」
「まって!? 今のエフェクトはニャんだニャ!?」
「アリスとお兄ちゃんが結婚状態になったことのエフェクトですけど」
「いやいやいやいやいやいやいや!? あっさりし過ぎですよね!?」
みんなが驚くのも無理はない。アリスちゃんは本懐を遂げたようなものだろうになんでそんな反応なのかと問い詰めたいのも分かる。
「よくよく考えたら、結婚状態になったからって、メリットってあるですっけ?」
「いや、キャラクタープロフィールに項目が増えて……それだけじゃな」
「むしろ周りからの反応って『ですよねー』ぐらいにしかなりませんし、当人たちの気持ち次第というか何というか」
「これ自体に意味ってあまりない気がして……だったら、あまり意味はないのかなーって――あれ? ディントンさん? あるたんさん? なんでアリスの両腕を掴んだです?」
「乙女として大事ニャものを失ったとき、女子会が始まるニャ!」
「みょーんさんたちも緊急招集してー、乙女とは何かを叩き込むからー。最近、アリスちゃんはそのあたりの大事なものを失っていると思うのー。というわけでー、アディオスー!」
なんでですかーという叫びと共にフェードアウトしていく女性陣達。ごめん、何か妙な問題を発生させて本当にごめん。でも、こっちも助けに行けそうにないや。
「それで、年下の子にかばってもらった形の村長さんはどうするんじゃろうなぁ」
「というかいいんですかね、こういうの。ねえ、小学生と結婚(仮)した村長さん」
「ハッハッハ。ゲームにマジになり過ぎでは?」
「ロリコンのアドベン茶(初期組の盗賊プレイヤー)に連絡しておいたぞ。良かったな、こっちはこっちで男子会の開催じゃ」
「なんてことを」
「ついでに知り合いも呼んでおきますね。なーに、村長の話を酒の肴に盛り上がるだけですから」
「なんてことを」
なんてことを。
「いつになく放心した顔をしておるな」
「とりあえず酒場を確保したので、連行しましょう」
「ええいこんなところにいられるか。僕は部屋に戻るぞ!」
「ところがそうはいかないんだよなぁ」
肩を掴まれる。バカな。無理やり掴んだところでプレイヤーを拘束できないんだぞ!? ここは現実ではなくゲームの中。だからこそ、ただプレイヤーの体を拘束しただけではあまり意味はない。適当にシステムメニューから脱出コマンドを入れるか、音声入力するだけで脱出可能なのだが……なぜか全く体が動かないんだが。
「――村長もなかなかいいアイテム使いだって話だが、まだまだ甘いぜ。この俺、アドベン茶の状態異常の世界へようこそ」
「ただの石状態じゃがな。あと、パーティー組んでおるからワシらの転移に自動でついてくることになるから諦めるんじゃな」
ノー!? っていうかこのコンボ、いろいろと問題行動に使えるのでは? 犯罪臭のすることとか。
「YESロリータNOタッチの精神を裏切った村長に言われたくはねぇぜ」
別にその精神を持っているわけではないのだが!? ただ結婚しただけじゃないか、なぜこんなことをされなければならないのか。
あれよあれよという間に連れさられる――とりあえず、このコンボは危険だから運営にメールを送ることを心に決めた。悪いことに使われるといけないからね。
「なぜじゃろう。この男、キメ顔で引きずられておるぞ」
「あ、表情だけは動くのか……なんかムカつく顔しているんだけど」
キリっとしているでしょ。
「……なんだか殴りてぇ」
「まずは尋問からじゃな。ほら、ついたぞ」
ああ、ついに処刑場へたどり着いてしまったか。
酒場にはすでに役者がそろっており、よぐそとさん、めっちゃ色々さん、ポポさん、イチゴ大福さん、マンドリルさん、ヤンバルクイナさんが席に座っていた。なお、全員組んだ手を口元に手を当てて物々しい空気を出していた。
「問題ありません」
「すべてはアーレの計画通りに」
「いや、どういう状況!?」
状態異常も終わり、口を開けるようになった。何やらコントを始めたのでツッコミを入れてしまったが、適当に遊んでいるだけである。あと、表示させたウィンドウで運営へメールを入れておいた。もちろん先ほどの状態異常で悪用できますよーって件を。
素早くタイピングしたので周りからは何も言われず――いや、どこぞの司令ごっこが急に恥ずかしくなったのか照れだしたから見ていないだけだった。
気を取り直して、尋問が始まってしまう。
「さあ、キリキリ話してもらおうか」
「……言わなきゃダメかな?」
「ダメじゃぞ」
「むしろ僕は何を言えばいいのかという気分ですらあるんだけど」
「そもそもなんで結婚システムが導入されて即籍を入れたのか」
「うーん……流れで?」
「嬢ちゃんもあっさりオーケーしておったしのう……おぬしらの考えがよくわからなくなってきたんじゃが」
「吾輩としては、何をどうしたらそんなウルトラCを決める事態になるのか疑問なんだが」
「ほら、ポポさんが放心した顔をしているじゃないか。レアだぞ」
イチゴ大福さんが大丈夫ですかーとポポさんの肩をゆする。マンドリルさんもこちらをみて「マジかー」って呟いているけど、アリスちゃんに聞かれたらまた消し飛ばされるぞ。
ヤンバルクイナさんは……クエストログを眺めている。ってなんでこの場に集まったんだろう? 話を聞く気ゼロだ。
「……他人の惚れた掘られたは割とどうでもいいから」
「――――いや、掘られたって何!?」
「ああ、悲しい事件だったな……」
「あのランナーBさんによる、力士ドッキング事件じゃな。事故とはいえ、ランナーBさん3日間のアカウント停止じゃぞ」
ランナーBさん(オカマ)と力士の間に何があったというのか……というか事故で処分喰らうって本当に何があったのか気になるんだけど。
「…………南無」
「え、マジで何があったの? ねぇ!? 僕の話なんかより、そっちのことのほうが重大事件なんじゃないの!?」
「村長にはまだ早い! 年齢制限に引っかかる!」
「おかげで私の彼女の守備範囲がさらに広がってしまったんですよ! まさか、たまにはログインするかなと遊んでいた日に目の前であんな惨劇を起こさなくてもいいでしょうに!」
「……なんというか、ご愁傷さまです」
よし、この騒ぎに乗じてパーティー状態は解除した。そして、さっさとログアウトボタンを――と、そこで勢いよく酒場の扉が開いた。
「我、参上」
「特別ゲストの茶プリンさんじゃ」
「ついに年貢を納めたと聞いて、笑いに来てやったぞ」
「ゲーム内結婚に騒ぎすぎじゃないですかねぇ」
「安心しろ。ただ村長をからかいたいだけじゃ」
「うん、知ってた」
だから暴走を始める前に逃げたいのだが、茶プリンのヤツが入って来たせいで逃げるタイミングを失った。おのれ、明日学校で練りからしを口にぶち込んでやる。
「ロポンギー、明日妙なことをしたらタバスコ口にぶち込むぞ」
「くっ……さすがに読まれているか」
「おぬしらどういう関係なんじゃ……」
「それは置いておいて、ロポンギーよぉ。どういうことかさっさと言おうか」
「単純に、結婚システムの実装で暴走した人が約1名いたからさっさとアリスちゃんと結婚状態にしたほうが面倒ないかなーって」
「っていうか嬢ちゃんもそれでいいんじゃろうか?」
「うーん……アリスちゃんもそのあたりは承知の上なんだろうけど」
タイミング的にも。
黒い笑顔だったのは、ゆろんさんへのけん制だろう。
いろいろとひどい流れだなぁとは思うけど、たぶん先延ばしにしても結局同じ結論に到達することになるので、グダグダ悩むよりは良いかなと思う。
「村長、その辺りドライじゃな」
「結構冷めているところありますよね。さすが水属性」
「いや、あんまり関係ないかなって」
「嬢ちゃんは炎属性じゃぞ」
「……一考の余地があるか」
え、あるの?
なぜかそこからメイン属性と性格の関係性の話になる。うん、男子学生の休み時間か何かかな? この特に中身のない話題で盛り上がる感じは。
と、そこでシステムメッセージが流れて緊急メンテナンスを行うので30分後までにログアウトしてくださいという表示が……あ、さっきの報告か。最近運営仕事早いなぁ。
「なんか水を差されたんじゃが!?」
「あ、村長への尋問がまだでござった!」
「こうなれば時間いっぱいまでって逃げた!?」
「メッセージに気を取られた隙にログアウト作業したのか」
ほら、運営にも悪いしさっさとログアウトしないとね。決して助かったとか思ってないよ。ホントダヨ。
今後も更新は不定期気味になりますが、引き続き書いていきますよー。




