血を感じるです。
感想で質問があったので。
ライオン丸とみょーんが出会ったのはDWOとは違うゲーム。
DWOサービス終了間際みょーん結婚
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数年後別ゲームでみょーんとライオン丸が知り合う
↓
DWOサービス終了から10年。BFOでみょーんとライオン丸再会
公式放送で楽しそうにしているお兄ちゃんを見て癒されておきます。目の前の現実に立ち向かう勇気をアリスにください。
「それでー、うちのゆっくんにどのタイミングで妹が出来たことを告げればいいのかいい案がある人ー」
「そもそもまだ性別がわかる段階じゃないんじゃろ? なんで断言しておるんじゃ……」
「前にゆっくんと話して、弟と妹なら妹と言っていたものな」
「ねー」
「理由になっておらん……」
「気にするだけ無駄よ。しかも適当に言っているハズなのに妙に的中するから恐ろしいのよこの人。ワタシの結婚のタイミングだって的中させたんだからね」
「懐かしいな。うちのギルドに入った時にサービス終了ごろに、大きな結婚式を挙げることになりそうだなって思ったんだったか」
「むしろ先輩たちが盛大な結婚式にしてくれましたけどね! お返しに息子さんへのサプライズ協力してやりますとも」
「みょーんさん、落ち着いてください。変な方向に振り切ってはダメです」
「離してアリスちゃん! ワタシは、やらねばならないことがあるのよ!」
「少なくとも、ご夫婦の息子さんにそのやるせない思いをぶつけることではないです!」
「でもまあ、面白そうじゃし案を出すだけ出してみるかの」
「ですね」
やめるです!? サプライズくらいならいいかなーって軽いノリで了承していいことではないのです。
その善意によってダメージを喰らう人が身近にいるんですよ……お兄ちゃん、アリスは頑張るです。頑張って、なんとか皆さんの参戦だけは食い止めないと――ッ。
と、そこでディントンさんがおもむろに何かをインベントリから取り出したのが見えました。マネキンのようなそれは、装備をセットすることで家具のように設置できるアイテム――【マネキン】でした。って、ようなもなにもなかったですね。用途も見た目もただのマネキンです。
「えっと、ディントンさん? それ、どうするです?」
「マネキンなんだからー使い方なんてただひとつよー。こんな感じの服装でカミングアウトするってのはどうー?」
ディントンさんがマネキンに着せたのは……セーラー服。
「お父様もー、学ランを着てー『家族が増えました』とか言う感じでー」
「なるほど。冷や汗ものだな」
「見た目的にも倫理的にもアウトですよ!? その微妙に不謹慎なネタはどこから出てくるですか!?」
「っていうかアリスさんが一番やりそうですよね、それ」
「キャラ的にな」
「色々さん、ライオン丸さん、さすがのアリスもそのあたりはわきまえているですからね!?」
「っていうかアリスちゃん、赤ちゃんがどこからくるのか知っているのかニャ?」
「さすがに分かりますよ!? なんだと思っているですか!?」
「んゆー? コウノトリが運んでくるんじゃないのー?」
……え?
その時、周囲の空気が凍ったです。その発言をしたのは、あろうことからったんさん。え、黒ギャルの見た目でとんでもないこと言いませんでしたか、この人。
「…………えっと、らったん? ギャグで言ったんだニャ? そうだよね? そうだと言って!」
「えー、でもー。うちのパパンとママンがコウノトリさんが運んでくるんだよーって」
「よーし、予定変更! さすがにこのままはマズイわよ!」
「そんなもの、男と女が×××すればいいのよ」
「先輩!?」
「お母様!?」
お兄ちゃんのお母様がとんでもないことを言いやがったです!? っていうか、直接的すぎやしませんか!?
「んゆー? そうなのー? それでいいんだー」
「ってその行為自体は知っているのかです!?」
「なんでそっちは知っていてメカニズムのほうは分かんないのよ……」
「彼ぴっぴとするラブ的なあれかなーって」
「間違ってはないけども……」
「あははー。なんでそんな半端なことになっているかなー」
「ディントンさん、笑い事じゃないですからね……ほら、男性陣が耳をふさいで蹲っちゃったです」
っていうか、ライオン丸さんはともかくめっちゃ色々さんは彼女さんいましたよね? その反応はおかしいのでは?
「いえ……若い子のそういった話を聞かされるのって妙なダメージが」
「――――」
「ってライオン丸さんが消えたです!?」
「あれね。いろいろな感情がオーバーヒートして強制ログアウトを喰らったのよ」
「そんなアホな……」
げんなりとした顔をして、数分後。ライオン丸さんが無事にログインし直してきたですが……なんで頭を上に向けているですか?
「いや、なんとなく……」
「ライオン丸君、若いですね」
「?」
「あ、そういうところは年相応なのね」
「アリスちゃんも推定小学生だからニャ」
いや、推定もなにも小学生……いえ、お兄ちゃんのご両親がいる前でリアルのアリスにつながる情報を出さないで欲しいのですが。ほら、今も首をかしげてこっちを向いているじゃないですか。
何か……何か話題を変えないと。今までの会話の流れで興味を引くこと。そして、ここ最近あった出来事から何かないかを考えるのです。アリス、今こそ記憶の扉を開くのです――見えた!
「そういえばミニゲームの話をしていたですけど、この前お兄ちゃんと桃子さんと一緒にやったですよ」
「あら? そうなの……でも村長が興味をもつミニゲームか。それこそカジノとか?」
「いえ、チーズ転がし祭りです」
「なんて?」
「チーズ転がし祭りです」
ありますけどね、BFOにもカジノ。規模は小さいですが。
もっとも、お兄ちゃんはカジノに行っちゃ駄目なタイプなのですけれども。
「またすさまじい代物を……あるんですかBFO内にチーズ転がし祭り」
「へぇ……それは楽しそうね。得意料理チーズフォンデュのわたしに対する挑戦かしら」
「ふむ。元ネタをどこまで再現しているか試してみたくなるな……よし、行くか。面白ければ近くの河川敷で開催し、その流れでゆっくんにカミングアウトするのも面白いかもしれない」
あ、お兄ちゃんへのサプライズはそれはそれで忘れていなかったですか。
しかし、アリスへの疑い的な視線はそれで逸れたようです……って、お兄ちゃんへのサプライズがより混沌としたら意味ないですよ!?
やってしまったと思いつつも、結局チーズ転がし祭りの会場へ向かうアリスたちなのでした……っていうか、ご両親はゲームプレイ開始からそんなに日数経っていないのに会場となっている場所へもう行けるですか。いえ、オープンワールドですので一部の制限エリア以外は自由に進めることが出来るですけどね。ヒルズ村にやってきている時点で結構な攻略ペースみたいですし――いえ、もしかしたらみょーんさんのパワーレベリングかもしれませんが。それでも、ここまでたどり着いたのは凄いことです。
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会場近くのワープポイントへとファストトラベルを完了し、そのまま流れるようにミニゲームを開始するです……以前と同じく、転がっていくチーズと追いかけっこをするわけですが…………何かとんでもないものが見えるのです。
「転がっていく必要などないのよ! そう、空を駆け抜けてゴールにいち早くたどり着けばそれでいいの!」
「あのご婦人、空中を走っていますが……みょーんさん、どういうことですか?」
「ワタシに言われても困るわよ! 旦那のほうに聞きなさい!」
「その旦那も側転で転がっているニャ」
その行動に意味はあるのですか?
アリスとしてはお兄ちゃんの様子を確認したいのですけれども、ここで席を外しても妙なことになりそうな予感に従い、とりあえずチーズを追いかけますが……しびれを切らしたのか、ライオン丸さんがチーズにとびつきました。
「こんなもの、さっさとチーズを確保すれば終わることじゃと――」
「ライオン丸さんが死んだ!?」
「この人でなし!」
ゲーム開始前に、説明はしたはずなんですけどね……転がっているチーズに触ると死ぬって。魔王様と同じ追放属性攻撃だって。前に挑戦した後お兄ちゃんが調べたですが、トップスピードの時のみ追放属性が付与されるそうですが、トップスピードでなくても恐ろしいほどの威力が発生するそうです。なので、よほどの防御力を持っていてなおかつトップスピードでは無い時でないと途中で確保することはできないのだそうです。
ライオン丸さんはアリスたちの中でもかなりの防御力を持っていますが、それでも死んだということはトップスピード……ではないですね。ドワーフなので少し遅いですから。となると、ライオン丸さんの防御力でも耐えきれなかったという事。
「あ、ライオン丸からメッセージが……『こういうのはよぐそとさんの役目じゃろ』だって」
「だったらなんで人の話を聞かずにとびついたですか」
「とりあえず放置しておくわね」
そんなーというメッセージが視界の端に見えたですが、スルーして坂を駆け下ります。
お父様は相変わらず側転。お母様もその空中ダッシュどうやっているですか……あ、足の裏が小さく放電しているです? いえ、よく見たら小さく赤く発光しているですね。炎属性のエンチャントも付いているですか? たぶん同時に2種類のエンチャントを使っているんでしょうけど……あれ? でもどうやって…………たぶん、武器はバトルブーツでしょうけど。
「属性をひとつシールでエンチャントするにしても、MPが持つわけないんですが……」
「あれ、どうやっているんだろうニャ」
「簡単な話だと思うわよー」
「ディントンさん、分かるですか?」
「バトルブーツをふたつ装備して、それぞれに違う属性をシールでエンチャントしているんだと思うー」
「盲点だったニャ」
「裏技にもほどがあるです」
属性値の低いシールなら安価で手に入るですし、バトルブーツの二重装備も可能ですから低レベルでも可能な方法です。それに、MPも使用しないし……これ修正されるんじゃないかです?
「されると思うわよー。さすがにー」
「あのみょうちくりんニャ方法を思いついたら試す姿勢、村長みたいだニャ」
……血を感じるですね。
「んゆー? じゃあ修正される前にやってみる?」
「んー……私はいいかなー」
「装備枠を使ってまですることじゃニャいからニャ。あと、コントロール難しいかもしれニャいからニャ」
「アリスちゃんはどうするー?」
「遠慮しておくです」
タイミングがシビアなのか、お母様は足を滑らせてそのまま地面に落下して消滅しました――って即死!?
「レベル低いからニャ、HPも当然少ニャい」
「ああ、そういえばそうでしたね」
「でも村長と戦えてたよねー?」
「PVPではステータスが50レベル相当になるみたいだからニャ。装備もある程度PVP用に性能が調整されるみたいだし」
「んゆー? たしかに互角に戦えてた」
そういえば、らったんさんはアリスたちよりも少しレベルが下なんですよね。たぶん1周年を迎えるころには基礎レベル100に到達していそうですけど。このゲーム、案外レベル上げやすいですから。その分職業が多いのでそれぞれを上げてスキルを増やすのに時間がかかるのですけれども。
ところで……お父様は急に棒立ちになってますけど、どうしたのでしょうか?
「…………ふーむ」
「先輩、どうかしたんですか?」
「いやなに。チーズの転がるスピードと、減速のタイミング、そしてプレイヤーの走る速度を考えればここで一度立ち止まってから減速し始めたタイミングで駆け出せば難なく確保できるはずだ。むしろこれ以降の傾斜だと加速し過ぎて体の動きを制御できないだろう――というわけで、確保に向かう」
お父様はそういうと、坂を駆け下りて減速し始めていたチーズの下へと向かい、宣言通りにあっさりとチーズを確保したのでした。
「これにてクリアだ」
「ざっと見ただけですぐにクリアしたです!? アリスたちがあんなに苦労したのに!?」
「この人、見ただけで大体の攻略ルートを予想して、それっぽい感じでやれば行けるとか言い出すリアルチート野郎なのよ……当時、どれだけワタシたちが理不尽に思ったことか」
「理不尽すぎるニャ! ほら、隅っこで全力疾走したせいで転んだめっちゃ色々さんが落ち込んじゃったニャよ!」
「こういう人なのよ。諦めて」
「んゆー? 村長よりヒドイ感じ?」
「上には上がいるものねー」
やっぱり、血を感じるです……声を大にして言いたいですが、後々のことを考えるとそれもできないですので、結局心の中でツッコむアリスなのでした。
伏線の玉突き事故




