密室で二人、何も起きないはずもなく
今回はいつもと若干毛色が違う内容となっています。
面倒を見ると言った手前、多少攻略スピード落ちるのも仕方がないかなぁとは思っている。それに、なんだかんだ1カ月以上も周りに人がいない状況でのプレイは結構きついものがあったのだ。
だからこそ、彼女を手助けしようなんて考えてしまったんだろう――数年後、僕はその選択を早まったよなぁって考えるわけだが、それはまた別の話だ。
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「どっ、せい!」
掛け声とともにゴーレムを吹っ飛ばす。アリスの職業はレベル上げ優先で旅人のままだ。装備は僕が使わなくなったものをいくつか渡した。元々倉庫に置きっぱなしでも構わないようなものだったし、役立ててくれるなら幸いだ。
それに資金繰りもそろそろきつくなるかもしれない。流石に1カ月以上も経つと、他の採掘スポットが確立してくる。このあたりで採れるものでアドバンテージになるのは最高レアの鉱石と宝石ぐらいだろう……というか今の今まで誤解していたんだが、レアリティが高いからって高性能なわけじゃないのだ。
本当に単純にレアリティの表記が五段階ってだけで、性能を示すわけじゃないのである。
まあ鉄鉱石などにしても産出量が段違いだからまだしばらくは大丈夫だろうけど。
「失敗したです……魔法がカッコ良さそうだからって、フェアリーにしましたがアリスには全然向いてません。もっと単純に早く動いて殴った方がやりやすかったです」
「結構バイオレンスだな君……それならケットシーにするべきだったんじゃないの?」
「です……本当はフェアリーで軽く動かして気に入らなかったらケットシーにするつもりだったんです。でも、あの幽霊たちがッゾンビがッなまはげがッ」
「うん、僕もだけど君も大概妙な引きの悪さだね――え、なまはげ?」
いるの? なまはげいるの?
「っていうか墓場に出るモンスターとしてあっているのそれ?」
「よくわからないです……HPが多かったのだけは覚えてますけど」
初期エリアでもHPが多いって言うと…………もしかしてランダム出現してフィールドを徘徊しているボスのことだろうか?
今まで外に出たことなかったからその類は見たことないからはっきり言えないけど。
「とにかく基本方針として、まずはレベルを上げつつ動きに慣れることだね。僕も【農家】のレベル上げをしないとだから、とりあえずは一緒に遊べるけど……」
「アリスを見くびらないでほしいです! これでも色々なゲームを遊んでいますし、レベル上げだってちゃんとできます!」
「うん、話していて色々と詳しいのはわかったけどさ、危なっかしいんだよ君」
目の前の石に気が付かないで歩いていたので、石を取り除いてあげる。
さっきから何度か転びそうになっては助けているのだ。いい加減慣れてきた。
「うぅー、子ども扱いするなです」
「大人扱いしてほしかったらもう少し周り見ようね」
「戦闘になったら、アリスのことを見直すはずですッ」
「そうならいいんだけど……」
知識ばかりが先行しているよなぁ…………
と、ゴロゴロと何かが転がってくる音が聞こえた。ばくだんいわか、ローリングゴーレムの音だろう。時々、ひき逃げアタックしかけてくる奴らだ。最初のころは煮え湯を飲まされた相手だが、流石にもう慣れたもので、幼女を小脇に抱えナックルで殴り飛ばした。
「ひゃわわわ!?」
「だから周りを見なって。特に、音はよーく聞いておいた方がいいぞ」
「お、おろしてですー!」
とりあえずアリスを地面におろし、周りを見回す。このあたりはほとんど一本道だし、敵もそこまで強くはないんだが……どこかで突発的に大量発生したかな? いや、大量発生の時はもっと轟音が鳴り響いているから違うか。
プレイヤーの数が変わったせいなのか、モンスターの出現パターンが変化した気がする。1人で遊んでいた時より、出現率が高いように感じるのだ。
「とりあえずアリスのレベルが10を越えたら、職業を炭鉱夫にしておくか。そうしないとこの先はきついだろうし」
「うう……洞窟の中は大変です…………どうしてアリスにそこまでしてくれるですか」
「うーん……そこまで理由があるってわけでもないけど、なんか放っておけなかったし。それに、一人より二人の方が楽しいかな、って思ったから」
結局、それが理由なんだろう。この前、レイドボス戦でみんなで遊んでから一人よりも大勢でと思ってしまったのだ。
思えば最初に掲示板を開いたのもそういった理由だろう。まあ、一回は作り直しできるのに最初にその行動をしたのは我ながらアレだとは思うが。今となってはレアアイテム多いし作り直す方がもったいないけど。
「――――お兄ちゃん、笑うと可愛いです」
「男としてはそういう感想を抱かれるのはちょっとアレなんだけど」
「…………みつけた、です」
「?」
「いえ、こっちの話です」
なんだろう、彼女の雰囲気が少し変わった。少し目が細くなり、僕のことをじっと見つめている。妙に背中が冷えるからあんまりそういう感じで見てほしくないんだが……なんなんだ?
「ふふふ、それじゃあ一度ギルドに戻って職業変えましょうです」
「たしかに、戻りながらならちょうどいいぐらいか。アイテムも揃えなきゃだし」
「それじゃあ頑張りましょう――ダーリン」
「そうだなー……今、なんて?」
「見つけたからには逃がさないです――マイダーリン」
そう言い切った彼女の瞳は、まるで肉食獣のようだった。
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【幼女じゃなくて】マジで助けてください【雌豹だった】
1.名無しの農家
偶然手を貸すことになった幼女が、獲物を狙う目で僕を見ているんだがどうしたらいい?
2.名無しの剣士
くそスレ乙
3.名無しの盗賊
釣りでしかない
4.名無しの旅人
妄想書いてないでレベル上げにでも戻りなさい
5.名無しの農家
マジなんだって、何が琴線に触れたのかダーリン呼びしてくるんだって
うれしいとかよりも恐怖の方が強いんだけどマジで誰か助けて
6.名無しの剣士
本当のことだったとしたらそんな羨ましい状況ギルティでしかない
7.名無しの狩人
マジならロリコンとして末代まで祟る
ぶっ殺
8.名無しの探偵
www よもや吾輩の眼をもってしてもそんな展開は予想外であったぞw
なつかれるだろうなぁぐらいには思っていたがw
9.名無しの盗賊
探偵さんが何か知っている風ということはマジだな
10.名無しの戦士
色々知っている探偵さんがこの反応……ロリコンは滅する
11.名無しの農家
ロリコンじゃないよ、ロリが距離を詰めてきているだけなんだよ……
流石に守備範囲外だからこそ、どうにかして諦めてほしいんだが…………気まずくならない方法で回避する案を募集したい↓10で
12.名無しの剣士
安価w 滅する方法を考えたけどこの流れでそれw
13.名無しの探偵
吾輩が断言しよう。こいつ、幼女に迫られているのもマジであるし、こういう状況で安価するような奴であるとw
14.名無しの盗賊
探偵さん本当に例の探偵か? と思ったけど……よく考えたら探偵さん一人だけだったな
15.名無しの戦士
条件わかっていても他になりたがる奴いないからね、アレ。面倒だし
16.名無しの怪盗
探偵に聞いて見にきたらなんだこのスレw
>1.正体隠したいんだろうけど、バレてるからな
そうか、あの後そうなったのか
17.名無しの武闘家
怪盗さんも来たってことはマジな話なのか
18.名無しの釣り人
祭りの会場はここと聞いて
安価なら抱きしめてあげなさい
19.名無しの忍者
面白いことになっていると聞いて
安価ならキレのあるダンスをするでござる
20.名無しの農家
私は別の農家ですよー
それはそれとして安価なら、水着着用の上で抱きしめてあげなさい
21.名無しの盗賊
いつものスレでも良かったんじゃねぇかなぁ……
安価なら気持ちは嬉しいけど、そういうのはさすがにやめようと優しく諭す
22.名無しの鍛冶師
いっそのことやり過ぎた方がいいんじゃよ
prprして引かれる
23.名無しの魔法使い
また妙なことに……
安価なら君の瞳に乾杯とか言っておいて変な行動を起こしなさい
24.>1
好き勝手言いすぎではないだろうか……あと、いつものスレとか言われてもわかりませんので、ええ決してわかりませんので
>21.まともなので心底ほっとしているありがとう
というわけで、正面から男らしく説得しようと思う
25.名無しの怪盗
また大分混乱していたんだな……たんこ、農家クン
26.名無しの魔法使い
やっぱり奇行に走るわよね、彼
一人ぼっちじゃなくなって浮かれていたところに予想外のセリフ言われて混乱したのね
26.名無しの盗賊
そもそも農家になっていて、幼女といっしょでって時点でわかる人にはわかるだろうに
27.名無しの探偵
吾輩に見つかったのが運の尽きであるな
28.名無しの剣士
なんか知り合いばかりが集ってませんか?
29.名無しの盗賊
身内感が強まっている。状況がわからないと面白くないんだけど
30.名無しのサムライ
といっても、説明しづらいでござる
31.名無しの旅人
w ハッキリ言った方がいいかw
32.>1
別に僕とは関係ないけど、別スレの話題は出さないで頂きたい
とりあえず幼女を説得したが、今度はハイライトが消えた瞳で
「誰の入れ知恵です? 別の人の気配を感じました。他の女ですか?」
って聞いてくるんだけど……(´・ω・`)
33.名無しの盗賊
え
34.名無しの魔法使い
お、おう
35.名無しの錬金術師
うわぁ……
36.>1
「別に他の女性と仲良くしても構わないのです――でも、ダーリンは○○の手を引いてくれました。その可愛い笑顔を他の人に向けてほしくないのです
もし他の人に向けたら○○はどうしてしまうかわかりません……ああ、ここがゲームで良かったです」
音声入力をオンにした自分を褒めたい。今ギルドで彼女が職業変えているところ
戻ってきたらなんとかしてこの状況を打破したい
さあ、安価は↓15で
37.名無しの剣士
ゲームで良かったって……何をするつもりなんだ
38.名無しの魔法使い
この期に及んでまだ安価をとるつもりなの!?
39.名無しの盗賊
正直あまりかかわりたくないんだが……もう受け入れたら?
40.名無しの探偵
色々と大丈夫かね、君
41.名無しの怪盗
もうあきらめた方がいいのでは?
42.名無しのサムライ
受け入れれば楽しいかもしれないでござるよ
43.名無しの忍者
開き直って受け入れればいいのではないでござるか?
どのみちゲーム内でのことでござるし
44.名無しの魔法使い
まあ、相手の年齢的に「犯人」にされるかもしれないけどねw
45.名無しの騎士
このロリコンめ
46.名無しの盗賊
頑張ってくださいとしか言いようがない
安価なら爆発瓶で自爆して死に戻り逃げ
47.名無しの怪盗
諦めたら?
48.名無しの鍛冶師
心に決めた人がいるんだと言って回避する
49.名無しの魔法使い
大人になったときまで気持ちが変わらなかったらね、と言っておく
50.名無しの戦士
気持ちは嬉しいけど、ゲームに持ち込みたくないと言う
51.名無しの炭鉱夫
気持ちは嬉しいですが、ゆっくりお互いのことを知るべきです
52.名無しの探偵
流石にまだ早いよとかわす
53.名無しの剣士
僕に勝てたらいいよと、PVモードを使う
54.名無しの魔法使い
意外とまともな感じね
55.名無しの怪盗
なかなか悪くないのでは?
というか流石に自分で考えなさいよこういうのは
56.>1
>51.
たしかに、真摯に向き合うべきか。動揺していたのが少し落ち着いた
とりあえず彼女の反応しだいで出方をうかがう
57.名無しの盗賊
返しがどうなっているか
58.名無しの戦士
でもまあ、解決するんじゃないか?
59.名無しの鍛冶師
どうなることやら
60.>1
「そう、ですよね。いきなりこんなこと言われても困りますよね。わかりましたです。でも、○○はあなたのことをダーリンと呼びたいです。それだけでもゆるしてくれませんか?」
……ほだされそうな自分がいるんだがどうしよう
61.名無しの盗賊
いいんじゃないのそのくらい?
62.名無しの戦士
まあ、大人に憧れるって思えば可愛いものだし
63.名無しの魔法使い
そのくらい良いでしょ別に
64.名無しの鍛冶師
安価じゃなくて自分で決めればいいと思うが?
真剣に言っているみたいだし、自分の言葉で言った方がいいじゃろう
65.名無しの怪盗
自分の言葉で伝えた方がいいだろうなやっぱり
66.>1
そうだよな。自分でちゃんと考えていった方が良いよな
気が動転してバカなことをしたわ。まだ小さい子でも、ちゃんと向き合ってあげないとな
今回はありがとうみんな。僕なりに向き合ってみるよ ノシ
67.名無しの魔法使い
まったくびっくりしたじゃないの
長い間穴掘りばかりしていた上に、掲示板に書き込む癖がついていたせいで咄嗟にここに来たんでしょうけど
68.名無しの盗賊
1カ月も掘っていたからなぁ
69.名無しの錬金術師
相変わらず読めない人だ
70.名無しの戦士
薄々そうなんじゃないかなぁと思っていたけど、書き込んでいる人の職業で>1の正体わかったわw
71.名無しの盗賊
自分のスレでやればいいのにw
72.名無しの魔法使い
恥ずかしかったんでしょ。まあ探偵が私たちにリークしたせいでバレバレだったんだけど
73.名無しの剣士
探偵さんw ヒドイw
74.名無しの騎士
炭鉱夫さんスレ見てきたw 炭鉱夫さんが面白いことになっているぞって祭り状態になっていやがったw
75.名無しの盗賊
ひどい人たちであるw
76.名無しの探偵
……ふむ、まだ人がいるようなら一つ聞きたいことがある
77.名無しの戦士
どうしましたー?
78.名無しの盗賊
聞きたいことがあれば何でもどうぞー
79.名無しの探偵
今、職業が炭鉱夫はどのくらいいるか見当がついている人はいるかね?
80.名無しの剣士
炭鉱夫にジョブチェンジできるギルドってあまり見つかっていませんから、そんなには
81.名無しの盗賊
そんなにはいなかったはず。そもそも制作時ぐらいにしか使わないから普段は別職がほとんど
82.名無しの探偵
そうか……いや、今回吾輩は最後の安価とる自信があったのだよ。書き込んでいるだろう人数からして、このタイミングなら取れるのではないかな? といった感じで
実際>51と52はほとんど差がない
83.名無しの盗賊
あ、ほんとだ。1秒もないな
84.名無しの武闘家
つまり、どういうことだってばよ
85.名無しの探偵
何も確証はないし、勘でしかないのだが……どうにも気になってな
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可愛い笑顔だけでなく、予想外のことが起こると妙な行動に移ってしまうところも可愛いと思う。それにアリスが困っているとすっと手を差し伸べてくれるのもカッコ良くて好きだ。
彼に見つからないように開いていた掲示板をそっと閉じて、にこりと笑う。
「それじゃあ、まずはお友達からですねダーリン!」
「それも出来れば控えてほしいんだけどなぁ……」
「このぐらいはいいって言ってくれたです!」
「それはそうなんだけど……」
今はまだ、これぐらいで良いです。
アリスもまだまだ子供なのはわかっているです。
ふふふ、ふふふふふ。
でも、向こうから好きになってもらえるように動くのはいいですよね?
ふふふふふ。
あーはっはっはっは、ゲホッゲホッ……
捕食者系裏工作押し掛け女房幼女ヒロイン「桃色アリス」
※ただしポンコツ入ってる
なお、実は年齢差は3歳程度です。そのあたりやるとしたら作中で1年以上後でやるかもしれないオフ会編とかそのあたりなので、リアル側の話は拾うか微妙です。
少しアリスの掘り下げする感じが続きます。




