センサー異常
後半戦始まるよー。
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どうも。頭のおかしい村の村長していますロポンギーです。
「お兄ちゃん、いきなりどうしたですか?」
「いや、この前アップされたみょーんさんの動画がね」
「ああ……コメントでも散々なこと書かれていたですね」
「魔王様思ったより修正入らなかったんだけどなぁ」
「そういう問題でもないと思うですよ」
「それもそうか」
今回はあらかじめ撮影する前提で動いていたので、全員キャラのデータ含めてしっかりと映像に映るように設定しており、音声もちゃんと入っていたのだが……動画で自分の声を聴いてみたけど、思ったより高い声でもうちょっと男らしい声出したいなと思う。ライオン丸さん的な。
「実際、リアルと同じ声のはずですよね?」
「正確には違うんだけどね」
「あれ? そうなんです?」
「ほら、電話の声と同じだよ。電気信号で再現しているから限りなく本人の声に近いけど、実際には微妙な違いがあるらしい……ちなみに、意図的にトーンを変更できたりもする」
「あー、キャラ作った頃にそんな設定があったですね、そういえば」
そのあたりの設定登録やらに時間がかかるうえ、最初の頃はサーバーも若干弱かったからこそ、このゲームではキャラの作り直しに制限があった。なお、いつからかは知らないが今はそのあたりの制限もない。お金払ってキャラ作り直した人は購入分のポイント返還も行われている。アプデで解消もされたからこそいじれる項目が増えたのだ。
まあ、そのあたりいじっていないから僕もすっかり忘れていたけど。
アリスちゃんもそうだが、ロールプレイに力を入れていない人は変更したとしてもちょっといじる程度の人が多い。まあ、そもそもキャラクターがアニメ調だからリアルとは異なる顔をしているわけだが。声まで完全に変えると違和感が凄いとの話も聞く。
なので、そのあたりのキャラクリアプデがあった際、プレイヤーたちにキャラクリ調整が行えるアイテムが配布されているのだが……何というか今のキャラクターに慣れ過ぎて今更変える気もなくなっていた。種族も基本的に変えることはないだろう。
「じゃあ、声の高さ変えればいいと思うですけど」
「いや、それはそれで寂しいものがあるから」
「結局どうしたいんですか?」
「…………リアルで渋い声になりたいんだ」
「ひとつ聞いておくですね。何に影響されたです?」
「ハードボイルド探偵のドラマ」
「あー……最近放送しているやつですか。お兄ちゃん、いいこと教えてあげるです」
「?」
「似合わないからやめたほうがいいですよ」
「ぐはっ――」
「お兄ちゃんは、そのまま元気なほうが似合っているですし、アリスも好きです――あ、ショック受けすぎて聞いていないですね……そこまで本気だったですか」
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魔王城攻略以降、なかなか全員で集まる機会がない。リアル側の事情からログイン時間が被るであろう学生組以外はどうにも時間が合わなくなっている。
みょーんさんもここ最近はリアルの知り合いがBFOを始めたらしくてそちらのレクチャーなどにかかりきりだ。主婦だから割といろんな時間で見かけたのだが、そもそも村に現れないと遭遇しないからなぁ。フレンドリストからログインしているのは分かるのだが。いや、フレンドリストじゃなくても村民は別枠で見れるけど。
「アイテム整理も楽じゃない」
「製作プレイヤーの悲しい所じゃな」
「村長は製作プレイヤーだっけかニャ?」
「アリスは【クラフター】のスキルを増やすのに、時々モノづくりしているですけど、お兄ちゃんも【料理人】とか【村長】で【鍛冶師】のスキル使っていたりとか、結構手を出しているですよ」
「あー、そういえばそうだったニャ」
「ところでらったんさんはどうしたです?」
「宿題忘れてたせいで補習だニャ」
「またですか…………大丈夫です? あの人」
「第二のニー子にニャらニャいことを祈るニャ。幸いめっちゃ色々さんが勉強見てくれたおかげで最悪の事態は避けられそうだけどニャ」
というわけで、本日集まったメンバーはヒルズ村学生組(ギャルを除く)である。
増えすぎたアイテムを整理するために時間がつぶれそうだが。
「かれこれ1時間ぐらいずっと倉庫整理しているじゃニャいか」
「スキル解放条件のためにアリスも演奏し続けていたですし、あるたんさんも踊り続けていたですけど……もう達成しちゃったですよ」
「ああ、やっぱりそういう時間系の条件あったのね」
「はい。奥義スキルでもこの手の条件はよくあるですから」
「普通にクエスト進めて、ひたすらスキルを使い続ける系の条件が出たときは目の前が真っ暗にニャったニャ」
「手持ちを鍛えて、また挑もう」
「それ別のゲームだニャ」
「この前やったのは真っ白になった、でしたです」
「それあるバージョンだけ……って、別ゲーの話はもういいニャ! そろそろダンジョンでもクエストでもなんでもいいから遊ぼうニャ! 村長、そんな作業だけの日常でもいいのかニャ!?」
「……いや、僕も楽しく遊ぶほうがいいけど。それでもやらなくちゃいけないことってのはあるんだ。たまに、有用なアイテムをしまいっぱなしで忘れているし」
「ワシも使う予定の素材をすでに持っているのに倉庫に入れたままで忘れていて、素材集めに走りまわったりのう……もっと早くに気が付いておれば」
「あはは。あるある」
「あちゃー、これ完全にオフモードです」
「オフモード?」
「はい。お兄ちゃん、たまに遊ぶことを放棄して、積んでいる作業に取り掛かることがあるですよ。大抵、何かしら現実逃避している時か、別の考え事をしているから黙々とできることをしたい時になるモードです」
「ニャんだニャその生態。っていうか、現実逃避ニャのかニャ」
「今回は違うよ。今度のPVPイベントのスケジュールどうしようかなーって考えているだけだから」
「あー……運営側で参加するってアレかニャ」
「うん。アリスちゃんとコンビで出るんだけどね」
「運営側のプレイヤー、ガーディアンって呼ばれることになるですけど……普段とはちょっと違うキャラで挑むことになるです」
「こっちの時間の都合もあるわけで、何時ごろとかあらかじめ報告しておかないといけないわけでして」
「そのあたり悩んでいるんじゃな」
「あとはトークイベントにも呼ばれているですよね?」
「そっちはもう時間が決まっているから。ガーディアンの時の時間をどうするか悩んでいるだけ」
「アリスちゃんも一緒なら、相談しニャいのかニャ?」
「アリスがログインできない時間はお兄ちゃんとほとんど同じですし、あとの調整はお願いしているです」
そんなわけで、他の人との兼ね合いを考えながら調整している次第。
あと、みんなには言っていないが、運営から貸し出されるアイテムについての調整かな……こっちはほとんど決まったようなものだが、最後の調整というか、使うアイテムもいくつか種類があるのでその中から選ぶことになっている。アリスちゃんは自分で使う分は早々に決めたからこそ特に気にしていないというのもあるが。
「…………アリスちゃんはアレを使うんだし、真逆のコンセプトにしてみるか」
「? どうかしたのかニャ」
「いや、こっちの話。とりあえず、あとで運営にメール送っておくか」
「ようやく決められたのかニャ……で、クエストとか行くのかニャ?」
「どこか適当に行ってみようかなとは思うけど……ライオン丸さんはどうする?」
「…………倉庫を整理していたら、素材が足りないことに気が付いた。スマンが素材集めに付き合ってくれ」
「よくあるよくある」
「1個足りないとか、本当によくあることですよね」
「妖怪1足りニャいは何事にも発生するニャ。で、ニャにが足りニャいんだニャ?」
「む、無限の魔眼じゃ……」
えっと、たしか…………あれ? 倉庫を名前順にしてみても出てこない。インベントリに入っているということもないし、見たことがない?
「? アタイも知らニャいアイテムだニャ」
「アリスも知らないです」
「あー……ボスの極レアドロップアイテムじゃからな。知らなくても無理はないじゃろ…………って、そうじゃ。村長も散々周回しているんじゃし、一つぐらい恵んでくれんか?」
「いや、持ってないけど」
「……え?」
「だから、持ってないよ。並び替えて調べてみたけど、倉庫にもないね」
「…………マジかぁ……」
「どっちの物欲センサーですかね?」
「ライオン丸のほうだろうニャ。村長は別に必要ニャかったみたいだし」
「聞こえておるぞ!?」
でも、散々周回した相手となると……どっちだ?
「リヴァイアサン? エルダー?」
「エルダーのほうじゃ」
「あー、そっちか」
「ハードモードで挑むとドロップ率上がるし、そちらで集めに行くしかないかのう」
「だね。手っ取り早いし海のほういくか」
「ですね。エルダーって弱点なんでしたっけ?」
「弱点はニャい」
「むしろ古代兵器が効きづらいから普段の戦法がなかなか決まらない。とりあえず高火力装備でいいよ」
「じゃあ一番強いやつでいいですね」
僕は普段の水着マフラーに、デッキブラシとブーメラン。アリスちゃんは黒サンタに禍々しいブーツとタクト。あるたんさんは最近手に入れたという黒猫シリーズの防具(踊り子仕様で露出度が相変わらず高い)。で、ライオン丸さんは【鍛冶師】専用の装備シリーズであるブラックスミスシリーズ。職業専用シリーズって総じて高性能な傾向にあるから、かなり強いんだけど……
「なんで見事に全員黒いんだよ」
「アタイはアリスちゃんのブーツにツッコミを入れたいニャ。ニャんだニャ、その禍々しいの」
「【魔王の足跡】っていう装備です」
「レアドロしていた、だと……」
その名の通り、魔王城クリア時に手に入れた装備だそうだ。しかも強化済みで、エグイ性能を誇るとか。呪いの装備じゃないの?
「デメリットで、防御力と耐久力がダウンするです」
「デメリット付きって呪いの装備じゃん」
「嬢ちゃんの場合、避けるからあまりデメリットの意味がないんじゃけどなぁ」
「物欲センサー仕事しろニャ」
「別に欲しくて挑んだわけでもないですから、そもそも対象外です」
「リアルラックが恨めしい!」
「そもそも物欲センサーとか都市伝説じゃけどな」
「でも真のラスボスは?」
「物欲センサー」
「結局信じてるじゃん」
「とにかく、時間的にもさっさと行かニャいとドロップしニャいまま朝日を拝むことにニャるから早く行くニャ!」
「その前にログイン制限に引っかかって強制ログアウトになるですけどね」
「平気平気。その前にドロップするでしょ」
「不穏なフラグを立てないでくれるかの!?」
なお、ライオン丸さんだけドロップしなかった模様。
終盤意地でも自分でドロップさせてやると意気込んではいたが、最終的に泣きそうな声で素材を求められたのであった……いや、だから早い段階で渡すって言ったのに。
ちなみに、ハードモードのボスを一定数撃破が条件だったので【海賊】の奥義スキル入手しました。
「物欲センサーッ!?」
「あ、ライオン丸が発狂したニャ」
「無理もないです……なんでトドメ刺したですか」
「いや、なんとなく」