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掲示板の皆さま助けてください  作者: いそがばまわる
9.新たな日常の、祈祷師
136/191

1階層(真面目なつもり)

 一階層目はスケルトンが出現する。何度かアプデで調整が入っているらしいが、現在は前に挑戦したときと同じくスケルトンがバリエーション豊かに出てくる階層となっている。

 そのため武器にはシールで聖属性を付与してある。まあ、気休め程度だけど……それに、効果もそこまで高くない使い捨てにするつもりのシールなので惜しくもない。今回、僕はメインにスコップ。サブ武器でブーメランを装備している。なお、ブーメランはサンタとの戦いに使っていたものとは別のもので、最初から聖属性を持っているものを製作した。


「まず、スケルトンが3ウェーブだっけか?」

「そうね、事前情報だとわらわらとスケルトンが攻めてくるからタゲ取りである程度攻撃のパターンを狭めることが重要よ」

「……タゲ取りって、誰が担当だっけ?」

「…………ライオン丸?」

「シャウト系のスキルも使えるから、タゲをとれないことはないが今回は防御役じゃぞ」

「いや、防御役こそタゲ取り担当だと思うけど」

「それもそうじゃが、さすがに物量が多すぎるぞ」

「っていうかもうポップしてるですよ」


 アリスちゃんの言う通り、すでにスケルトンたちがわらわらと出現していた。

 仕方がない。ライオン丸さんと二人、シャウトスキルを発動して敵の攻撃を引き付ける。僕はマーメイド、氷の女王、ヤタガラスを召喚して回復補助と足止めを行う。


「うおおお!! とりあえず引き付けつつガードはする! ディントン、さっさと攻撃するんじゃぞ!」

「わかってるー! 首おいてけー!」

「首っていうか、しゃれこうべだけどね」

「そもそも浮いているですよね。首から切り離せるんです?」


 ダメージエフェクトこそ出ているものの、部位破壊は発生しない。っていうかザコ敵扱いだから部位破壊はそもそもないか。あれは基本的にボス級の敵だけだし。


「バフかけるニャー」

「アリスの演奏も完了です! 攻撃に参加するですよ」

「ワタシも魔法発動準備完了したわ。いつでもぶっ放せるわよ」

「よし、前衛後退! みょーんさんの攻撃でダメージを与える!」


 前回と同じくスケルトンたちは攻撃力の高い武器を使っていたが、僕らのレベルも上がり、装備も更新されている。おかげでダメージを受けつつもそれなりに戦えている状況だったが遠距離攻撃や魔法攻撃を仕掛けてきそうなスケルトンもいたため、広範囲殲滅が可能なみょーんさんの魔法のために時間稼ぎをしていたのだ。

 前に出ていたライオン丸さんとディントンさんと共に後方へ下がりみょーんさんの放った落雷魔法の効果範囲外へと出る。発動時に青いリングで効果範囲が表示されるから避ける分には問題なかったが……


「これってフレンドリーファイアありだっけ?」

「残念ながらあるのよね……広範囲なうえに威力が高いからそのデメリットで」

「溜めも長いんじゃデメリット多くないかの?」

「短縮方法も近々実装予定なのよ」


 なるほど、そちらのデメリット緩和予定ならフレンドリーファイアは残すか。

 とりあえず、電撃で麻痺状態になっているみたいだしサクサクとダメージを与えていく。アリスちゃんとあるたんさんのおかげで上がったステータスで一斉掃射。ライオン丸さん、ディントンさん、アリスちゃんもスキルを使って一体一体破壊していったが……


「案外あっさり倒せるね。前の死闘は何だったのか」

「基礎レベル80以降はステータスの上昇量が跳ね上がるからね。前に比べて装備も良くなったんだから当然楽になっているわよ」

「あー、なるほど。まあ一階層目で苦戦していたら攻略なんて夢のまた夢なんだけど」

「そのとおりじゃ――おかわり来たぞ!」

「おかわりもいいぞー!」

「よくはないです!」


 続いてきたスケルトンだが、先ほどよりも数が多い。なおかつ杖を持った個体が多くなったような……


「魔法攻撃しそうなやつが多いな。ライオン丸さん、さっきと同じで協力してタゲをとって――」

「すまん、ワシ魔法攻撃相手にはめっぽう弱いんじゃよ。耐性があるのはあくまでも火炎と爆発だけであって、普通の魔法を防ぎきるのは無理じゃ」

「オイ!」

「仕方がないわね。ワタシが防御魔法使うから、そっちで対処して」

「みょーんさん、ありがとうです」

「すまんのう……今度から魔法耐性のある装備用意しておく」

「最初から用意しなさいよ」

「それじゃー、さっそく蹴散らすよー」


 ディントンさんが突撃し、再び首を刈り取っていく。いや、骨だから刈り取る首も無いんだけど。首のところで浮いているし。

 僕らも適当にスキルを発動させて攻撃を与えていくが……なんていうか、地味では?


「元々、積極的に動くようなプレイスタイルでもない限り地味な戦いになるわよ」

「ええぇ……」

「現代日本に住んでいる人がそう簡単に戦えるような動きができるわけないでしょうが! ゲーム内の一般的な戦い、これすなわち地味なスキル連発ゲーよ! 近接職ならそれでも動き回るし、レベルが上がった後衛職も派手なスキルが使えるから爽快感自体はあるけど」

「でも僕の周り普通に戦えている人ばかりだったけど?」

「そりゃ初期から遊び続けているような人種は慣れているからに決まっているじゃない。初めから苦行を楽しめる村長や、リアルスペックのおかしいアリスちゃんみたいな例外を除いて、最初の内は結構地味に慣れる作業から始まったのよ!」

「慣れてきた頃合いでベヒーモス戦じゃったからなぁ……あとは、他VRゲームで慣れていた連中もいたからそれなりに早い段階でプレイヤーの動きも良くなったが」

「初期は地獄絵図も繰り広げられていたニャ」

「よくサービス続いたですね……」

「ええ、本当よね。いや、プレイヤー側の暴走のせいでもあったんだけどね。地獄絵図については」

「何があったんだ……」

「あれは凄かったのう……あの、朝焼けに沈む松村さん事件は」

「マジで何があったのか気になるんだけど」

「すまんけど後にしてほしいニャ。ディントンさんが一人で蹴散らしているけど、限界が近いニャよ」

「あ、そうだった魔王城戦だったわ」

「すまん。すぐに引き受けるぞー」

「じゃあ、アリスも範囲攻撃仕掛けますね」

「はいはい、マジックバリアマジックバリア」

「それ、どういうスキルニャ?」

「抵抗力のバフね。あと、数秒間だけ状態異常無効よ」

「強いニャね」


 というわけで、僕らも突っ込んで攻撃に参加する。バフのおかげで被弾は気にせずに攻撃を仕掛けられるし、一階層なら楽に終わるんじゃないか?

 ほどなくして魔法系のスケルトンが多いウェーブも終わり、10数秒のインターバルを挟んで次のウェーブが始まる。物理攻撃が多い組、魔法攻撃が多い組、そして3ウェーブ目は……おそらく、両方。


「はい、次きたわよ」

「装備が豪華になっておるの」

「数も多いニャ」

「大体、物理と魔法が半々くらいかなー?」

「ですね。で、どうやって戦うです?」

「ちょっと防御力は上がっているだろうけど、基本的にやることは同じ。ひたすら引き付けて攻撃を仕掛けるしかないかな。HPが危険そうな人がいたら回復メインに切り替えるけど、大丈夫そう?」

「ワタシは平気よ。あと、開幕雷撃ぶち込むから下がって」


 みょーんさんが範囲攻撃の準備を済ませていたので、僕らは後ろに下がる。さすがに倒しきれないだろうけど、これで結構楽に進めるはずだ。先ほどと同じスケルトンたちが麻痺状態になったのを確認し、手ごろな相手から消していく。


「骨が折れる作業だなぁ」

「見たまんまですね!」

「折れるっていうか、折っているじゃな」

「実際にはポリゴン片にニャっているだけだニャ」

「はははー! 首おいてけー!」

「なんだろう、いつもよりまともなプレイスタイルなのに言動のせいでまともに見えない恐怖」

「結局、そこをどうにかしないとダメなのか……みょーんさん、どうやればまともに見えますかね」

「なんで最近村長は真面目に、とかまともにってこだわっているのかわからないけど……ハッキリ言うわね。無理よ」

「ああ……やっぱりそうか。仕方がない」


 召喚獣が自動的に消える。僕がとったのは奥義発動用に設定したモーションだ。ヌンチャクのようにスコップを振り回し、腰に構える。


「ホォ……」

「お兄ちゃん? 何しているです?」

「うん? なにかデカい魔法陣が……うぉ!? 巨大ロボ!?」


 出現したのは、古代兵器みたいなデザインが盛り込まれた巨大なゴーレム。

 マッシブな体型に、太い腕、顔の部分は単眼の巨人がスケルトンたちを殴り飛ばす。


「デカいゴーレムね。ああ、前にスクショコンテストで入選していたやつか。って、それ出すのになんで召喚獣が消えるのよ」

「『サモン・エンシェント』! あと、これ奥義スキルだから召喚すると他の召喚獣消えるんだよ! 消費MPも多いけどね」


 あと【サモナー】の奥義スキルは他の職業とは違い、別のスキルと組み合わせることができない。完全に単発の強力なスキルという扱いである。元々汎用性が高すぎるからこそだろう。

 エンシェントの能力はシンプルで、高い攻撃力の拳と目から放たれるビームだ。召喚獣自体の防御力も高く、少々鈍足ながら巨体ゆえに攻撃範囲も広い。能力バランスが非常にいい召喚獣である。欠点は僕のセリフにあるように消費MPが多いので多用が出来ないこと。


「まあ、パーティー組んでいれば回復チャンスもあるし、階層ごとにインターバルで回復すればいい話か……あれ? この先、エンシェントを使えば案外楽に進めることが出来るのでは?」

「村長、真面目にはどこに行ったの?」

「仕様にのっとって進めているから真面目に遊んでいるよ!」

「ええ……」


 みょーんさんはそう言いつつも強力な魔法を放ってスケルトンたちを吹き飛ばしていた。

 他のみんなもそれぞれ攻撃に参加、もしくはサポートのためにスキルを使っていた……しかし、やはり硬いのかすぐには倒せていなかった。そこで、エンシェントがビーム攻撃を仕掛ける。


「薙ぎ払えー!」

「お兄ちゃんノリノリですね」

「でも正直、アレはワタシも使ってみたいわね」

「わかる」

「村長、それ取得条件ニャんだっけかニャ」

「【サモナー】で古代遺跡の攻略。ちなみにどこでもいいっぽい」

「どこも難易度高いですよ」

「むぅ、【サモナー】か……いや、奥義スキルなんじゃから当たり前と言えば当たり前か」

「ああ、他の職業で使えないように奥義になっているのね。スケルトンたちがあっさり消えていくぐらい火力高いし」


 あー、その理由もあるか。

 ほどなくしてスケルトンたちの殲滅が終わり、部屋の中央にウェーブクリアの文字が浮かんだ。一息ついてスキルを解除するとエンシェントも消えるが……さて、装備の耐久値チェックしよう。


「スムーズにメニュー画面開いたわね」

「いや、やっぱり装備が壊れたら洒落にならないし」

「そうじゃな。直せる範囲でさっさと直すぞ」

「っていうか、ダンジョン内で直せるんです?」

「魔王城はちょっとした例外エリアなのよ。ウェーブクリア後なら可能よ」


 このあたり、このゲームの仕様でややこしい部分なのだが、装備修復はダンジョンやオープンフィールドの一部エリア以外なら可能なのだ。まあ、基本的にモンスターの出てこないエリアなら装備修復が出来るということで考えればいい。なお、装備強化は村や町などのセーフティエリアでのみ可能だ。


「しかし、これがあと6階層分もあるのか」

「7階層目は魔王よ」

「どちらにせよ、クリアまで残り6階層あるんじゃぞ」

「失敗したらやり直しニャ」

「うわぁ……」

「でもまあ、最初の内は苦戦するのっていつものことだし」

「それ、村長だけじゃぞ」

「…………え?」

「あくまでもゲームじゃしな。ほとんどのエリアはある程度慣れれば戦える程度の難易度に決まっておるじゃろ。魔王城はプレイヤースキルも必要じゃから難しいんじゃが」


 先ほどのみょーんさんのスキル連発ゲー発言にも関わっているが、大多数にプレイヤーは戦うのに慣れていないわけで、その補助や遊びやすくするためにある程度難易度は抑えられているのだ。

 僕の場合は初期はPCのスペック関係と、暗い炭鉱スタート、あと物理防御力の低いヴァンパイアだったことなど様々な要因が重なった結果苦行状態で遊んでいただけである。


「いやでも、他にもいろいろと苦戦していたし。クラーケン……は僕らのせいだとしても、この前のサンタとかエルダーとか強かったじゃん」

「エルダー系はストーリーにも関わるモンスターじゃから強めじゃぞ」

「イベントも基本的に祭り感重視で難易度高めなのよね」

「あとは、難易度の高いところでばかり遊んでいたですから」

「……あー」


 よくよく考えれば、これまでニッチな方向に戦っていたことを思い出す。この前のサンタしかり、古代遺跡、魔王城、超強化クラーケン……たしかに、通常プレイでは戦わない高難易度を相手取ったことが多かった。

 でも他にも苦戦したボスがいたはずだ。通常ボスで、ほら、リヴァイアサン……は、古代兵器があったから苦戦していないか。うん、そういえばそんなにきついとは思わなかったな。


「それに、エルダーもそうじゃが初回は苦戦したりもしたが、普通に周回で来ていたじゃろうが」

「たしかに一部は難易度高いわよ。でも、全部難易度鬼畜だったらプレイヤーが残っていないわよ」

「時間やプレイヤースキルがあればより強くなれるのがオンラインゲームじゃが、大多数のプレイヤーが一定水準までは戦えるようになる設計なのもまた、オンラインゲームの特色じゃ。時間が経てば低レベルプレイヤーのレベル上げ支援イベントなども展開されるんじゃろうな」

「そもそもー、レベルは100で打ち止めだって話だからねー」

「たしかにニャ。今後はレベル100まで上げた人対象の高難易度ダンジョンとかが増えるんだろうけどニャ、逆に言えばプレイヤーにコンテンツを遊んでもらうために、レベル100にしやすくしていくんだろうニャ」

「まあ、早い段階でそれをやると前線を駆け抜けたプレイヤーの顰蹙(ひんしゅく)を買うだろうし、しばらくの間はやらないでしょうけどね。最前線を駆け抜けているプレイヤーは課金している人が多いだろうから、運営側にとってもお得意様だろうし」

「じゃな」

「さて、現実逃避もここまでにして……どう攻略するです?」


 回復も次の階層に上がる前に出来るし、エンシェントで殲滅……いや、それはそれで面倒だな。


「うーん…………よし、爆弾でザコを吹き飛ばして突き進むか」

「だから、まともな攻略方法で――いや、爆弾は別に裏技的なやり方じゃなくて一応正規の方法か。主に近距離メインのプレイヤーが使う遠距離攻撃や、ノックバック攻撃の手段なわけだし」

「ってことで、爆弾解禁で!」

(あ、これ一個ずつ解禁していって、最終的に外道な方法をとるやつじゃな)

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― 新着の感想 ―
[一言] 苦戦して解禁とかならともかく こんな気分で適当に解放するなら 最初から攻略だけ目標にして縛りなんてしなきゃ良いのに
[一言] サブタイが既に物語っているw
[一言] これはどう頑張っても、正道的・王道的な戦闘な無理なやつですね
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