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掲示板の皆さま助けてください  作者: いそがばまわる
9.新たな日常の、祈祷師
133/191

相談(気が付かないところで関係性は深まった)

 @@@


「なんだか昨日からみょーんさんが上の空です」

「そうねー、何があったのかしらー?」


 うっかり集める素材を間違えた翌日、本日はみょーんさんもログインしているがなぜか上の空だった。頬に手を当てて溜息をついており、悩んでいるようにうにも見える。


「とりあえず直接聞いたほうが早いって」

「お兄ちゃん、いきなり突撃ですか!?」

「いや、下手に放っておいても面倒なことになるだけだから。よほどの地雷でもない限りは大丈夫でしょ」

「楽天的ー」


 ディントンさんとアリスちゃんにいかがなものかって顔で見られるが、そんなことは気にせずにみょーんさんの下へ。

 さすがに近づいたか気が付いたのか、みょーんさんの視線がこちらへ向いた。


「あら? 村長、どうかしたの?」

「いや、みょーんさんが何か悩んでいたみたいだから」

「あー……顔に出ていたかしら?」

「思いっきり。ため息ついていたし」

「そうね、心配かけさせたみたいだけど……いえ、大したことじゃないのよ。昔、一緒のゲームで遊んでいた知り合いと久しぶりに連絡を取り合ったんだけどね」


 へぇ……何ともタイムリーな話だな。

 うちの両親もそんな話をしていたが……と、そこでみょーんさんが話をつづけた。


「それが妊娠したらしくて、いろいろとワタシも思うところがあったわけよ」

「あー、そういう」

「あらー。みょーんさん、子供欲しいのー?」

「まあ、ワタシもいい年だしね。なんだかんだ趣味に生きてきたし、旦那とも長いから……家族が一人増えるのもいいなーって思ったのよ」

「へぇ……」


 と、そこでアリスちゃんがなぜか微妙な顔をして僕のほうを見ているが……いや、なんでこの話の流れで僕のほうを見るんだ?

 あ、そうだ。気になっていたことがあったから確認するか……


「ところで、何のゲームだったんですか?」

「前に話したでしょ。DWOよ」

「あー……」


 もしや、両親が話していたのってみょーんさんじゃないだろうな? そう思ったが……さすがに妊娠していたら僕にも教えるよな。

 だったら違うか……


「いえ、僕の両親もDWOのプレイヤーと同窓会するとか言っていたんで関係あるかなって思ったんですけど、妊娠したとか欠片も聞いていないし違うかって」

「そうねー。さすがにあの人たちも息子に妊娠した事実を隠すようなことはしないわよ。まあ、当時の面子で同窓会開くような連中は大体顔見知りだし、案外知り合いかもしれないけど……他にも結婚した夫婦はいるから違う人だと思うわよ」

「ですね」

(そこで実名出して確認すれば事実が――いや、でもネットリテラシー……いっそアリスが真実を公表するですか? いえ、それやったらアリスが名前伏せて近くにいることがバレるですし……そもそも偶然出会っただけですよ!? なのにこのタイミングで明かしたらストーカーみたいじゃないですか!? くっ……どうすればいいですか? お兄ちゃんのお母様もメールで同窓会するーって送ってきたですし、そのせいでまたアリスだけが真実を知ってしまっているじゃないですか!? 本当、これどうしたらいいです!?)


 なぜかアリスちゃんが難しい顔で唸っているんだが……なにか嫌なことでもあったのだろうか?

 あと、時々僕のことを気の毒そうな顔で見てくるのはいったいなぜなのだろうか? 疑問は尽きない。


「お兄ちゃん、強く生きてくださいね」

「さっきからなんなの!?」

「はははははは!!」

「ディントン、笑い過ぎよ。っていうかアリスちゃんこそどうしたのよ」

「いえ、世の中は無情って思っただけです」

「確かに人の世ははかないし、移り変わるものだけど」

「いえ、そっちの無常じゃなくて……つらい現実だなって」

「ああ、無情のほうね……VRだとチャットじゃなくて会話が基本だから字がわからないのよね――って何を思ってその悟りにたどり着いたのよ貴女は」

「いえ、お気になさらず」


 気になるんだけどなぁ……だが、アリスちゃんは言う気はないらしく口を閉ざしてしまった。本当に何があったのだろうか?

 とりあえずそのところを議論していても仕方がないのでみょーんさんの話に戻る。


「で、結局みょーんさんはどうしたいんですか?」

「うーん……本格的に子供を作るとなると、ゲームを続けるのもどうかって話になるじゃない? 引退も考えるべきかなーって思うのよ」

「ネトゲプレイヤーの引退って、口に出すと少しの間離れるってだけですよね」

「そうよねー。基本的に帰ってくるやつー」

「この場合はその基本とは外れるでしょ」


 まあ、そりゃそうか。ちなみに本当に引退する場合は何もメッセージを残さずに静かに消えていくパターンだ。飽きたとかそんな理由だろう。これが一番多いと思う。

 でもVRMMOの場合は直接会話するわけで、引退するにしても案外宣言してやめる人が多いって話だ。まあ、割合的に増えたってだけでいまだに無言で去る人のほうが多いだろうが。


「いつかの盾使いとその奥さんだってその理由で去りましたし、別段気にする必要ないんじゃないですかね」

「……でも、ワタシがいなくなったらアンタたち暴走しそうなのよね」

「まったく信用ないですね」

「そうよー。私達だってそこまでバカじゃないわー」

「欠片も信用度がないのよ! っていうかワタシの目を見て言いなさい! 目をそらすな!」


 だって、確約できないし。


「すでに手のかかる子供が複数いる気分なのよ……今からこれだと子育てが不安になるわ」

「むしろ今この経験を得たからこそ、素晴らしいママになれるんじゃないでしょうか」

「いよっ、日本一のママー!」

「……いい加減にしないとキレるわよ」

「ヒエッ」

「これはマジの顔だー」

「お二人とも、もう少し手心を加えてくださいです」


 アリスちゃんに注意され、ディントンさんと二人自主的に正座する。

 さすがにからかいすぎた。ショボン顔で頭を下げる……あ、見られてた。


「こいつら、顔がショボンだったんだけど」

「根っこが真面目にし続けると拒否反応起こすんじゃないですかね……」

「失礼なー。私はこれでもキャラ作っているんだぞー」

「その割には最近、そっちが素になってない?」

「……たしかにー、リアルでも間延びした喋り方になったようなー?」

「現実が浸食されているじゃないですか!?」

「アリスちゃんは大丈夫なの?」

「あー……いえ、大丈夫です。アリス、特にキャラとか作っていないですから」

「その喋り方、素だったのね」

「……今までキャラ作っているって思っていたですか」

「まあ、特に問題ないのなら別にいいんだけどね」

「…………あれ? 僕には聞かないの?」

「村長はどうせ普段からそんな感じでしょ」

「うん」

「なら聞かないでよ……」

「っていうか、結局なんの話だったです?」

「みょーんさんが引退するかどうかって論点だっけか」

「そんな感じだねー。でもー、旦那さんと話し合ってから決めるべきではー?」

「まあ、そのとおりね……っていうか今思ったんだけど、村長。この場に男一人なのになんで妊活事情聴いても顔も赤らめず平然としているのよ」

「…………うちの両親、平気で僕の前で子供増やすかとか言っちゃう人だから慣れた」

「ああ…………それなりに苦労しているわけね」

(たしかに、言いそうな人でした……お父様もそんな感じっぽいです)

「まあ、頑張ってー」

「時にはやさしさのほうがダメージ大きいんだぞ……で、みょーんさん。結局は自分たちで考えないといけないけど、どうにも踏ん切りがつかないってところでいいの?」

「まあ、そんな感じで」

「……ならば、することは一つ!」


 @@@


【調査】引退する時ってどんな時?【コメント求む】


1.ヒルズ村海賊団船長

 ちょっと話をしたいなって感じでスレを立てた

 ネトゲを引退する時ってどんな時だい?


2.名無しの武闘家

 誰かと思ったら村長さんか。何の話をしているのか……

 あ、その質問なら受験シーズンで一回やめたゲームがある。復帰しようと思ったらサービス終了していた苦い思い出


3.名無しの魔法剣士

 なかなかエグイ質問を……まあ、飽きたときね


4.名無しの力士

 かわいい子が減った時


5.名無しの釣り人

 特に理由とかは無いっすね。他にやりたいゲームがある、フレンドもみんなやめた、そう大した理由はないっすよ


6.名無しの遊び人

 運営が最終集金体制に入った時


7.名無しの剣士

 リアルで何かあった時とか?


8.名無しの狩人

 結局はゲームなんだから好きにしたらいいのよん

 自分が満足したら、そこでおしまい。まだ遊びたければ遊ぶ。それだけの話なのよん


9.ヒルズ村海賊団船長

 まあ、それもそうか


10.名無しの踊り子

 っていうかなんでこんな話を?


11.ヒルズ村海賊団船長

 参考にしたいって人がいるだけー

 特に何か大きなことをはじめますって話には関係ないから


12.名無しの剣士

 なんだー、大きなことすると思ったのにー


13.ヒルズ村海賊団船長

 まあ、そこまで話を広げる気もないから今回はここで下がるね

 ありがとーノシ


14.名無しの力士

 うむ。頑張りたまえ


15.名無しの武闘家

 どんな目線だアンタ……村長、まだいるー?


16.名無しの武闘家

 あ、返事がないっぽい。1分待ったけど返ってこない


17.名無しの剣士

 掲示板閉じたみたいですね


18.名無しの釣り人

 なにか話があったっすか?


19.名無しの武闘家

 いや、大きなことをはじめますって話には関係ないって言い回しおかしくないか?


20.名無しの魔法剣士

 たしかに。なんだか、この質問とは別に大きなことするつもりみたいな…………(´・ω・`)


21.名無しの狩人

 実際何かするつもりなんじゃないかしらん?


22.名無しの遊び人

 まあ、今気にしていても分かんないでしょ。そのうちアクションを起こすだろうし


23.名無しの剣士

 それもそうですね


 @@@


「というわけで、どう? 参考になったかな」

「うーん……結局、好きにしろって話よね」


 ウィンドウを閉じて、みょーんさんに話を振ったが、まあ結論から言えばその通り。そもそもみょーんさんのリアルの話なので自分で決めていただくしかないわけである。

 もう結構な付き合いだからこうしてリアルの相談も乗っているけど、本来ならあまりゲーム内でしない話だし。


「まあ、悩んでいても仕方がないわね。旦那と話してみるかー……あと、先輩からも子供生まれたあと生活がどう変わったか聞いておこう」

「えっと、それって例の同窓会でお会いするっていう方ですか?」

「そうよ。けっこう若い時に結婚して子供も生まれた人たちでね、ワタシも昔はそのご夫婦の近所に住んでいたのよ。で、赤ちゃんもだっこさせてもらったことあるし、なんだったらおしめも変えたことあるんだから……ゲーム内だけじゃなくて、リアルでもお世話になったなぁ」


 …………何だろう。悪寒がしたんだが。何故だ? あと、なぜアリスちゃんは僕のほうを微妙な顔で見ているのだろうか?


「へ、へぇ……そうなんですか。信頼されているんだったら、なおのこと相談してはいかがですかね…………(まあ、参考になる意見が聞けるかは別でしょうけど)」


 あ、今度はすすけた表情になった。いったい彼女に何があったのだろうか?


「とにかく、この話はおしまいにしましょうか。今は素材集めにいそしみましょう。村長とアリスちゃんもPVPイベントに参加するんでしょ」

「あ、そうだった。そっちの準備もしておかないといけないのか」

「イベントって言っても緩い感じの催しものみたいですけどね」

「それでも、今回は運営側に協力する形だから、時間のことは考えておかないと」

「ですね」


 とりあえず、スケジュールを思い起こしながら準備をしておく。

 まあ、その前に魔王城に挑戦することになりそうだが……さて、どうやって攻略するべきか。

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― 新着の感想 ―
[一言] 過去におしめを変えられた事実によるダメージと おしめを変えた子がこんなにも大きくなってる事実のダメージ いったいどちらが大きいのやら
[良い点]  村長が気がつかないうちにじわじわと外堀と内堀が埋まっていく感じが実にイイっ(笑)
[一言] カウントダウンが始まってる感がすごく面白い
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