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掲示板の皆さま助けてください  作者: いそがばまわる
8.〇〇の、魔法剣士
109/191

乙女たちの邂逅

「ところで皆さんは魔王軍襲来はどこまで進められました?」

「……え、なにそれ」


 青空教室もひと段落してめっちゃ色々さんからそんな言葉を投げかけられたのがきっかけだった。

 彼も疲れていたのであろう。学生組はそもそも大型アプデ前後はそんなに遊べなかったのを忘れていたからこそ、そんな質問を投げかけてしまったのだろうが……それが僕たちに火をつけることになる。


「ほら、魔王城の実装前に魔王軍が各地に現れるので、倒して報酬を獲得しようってイベントが――あ、そういえばその時皆さんは……」

「こちとら期末試験中じゃったんじゃぞ」

「アタイもだニャ」

「忘れていたなアンタ!」

「あ、あはは……めっちゃ色々さん、少し休んだ方がいいですよ……(言えないです。アリスは結構早い段階でテストも終わったから、少しだけですけど参加できていただなんて)」


 おのれ…………そんな面白そうなイベントを見逃していたとは。しかも第一弾はもう終わった後である。逃した魚は大きい……報酬も良さげなものがいくつもあるし。

 僕とライオン丸さん、あるたんさんは地面に手をついてうなだれていた。二人も報酬に欲しいものがあったらしく、すでに後の祭りである。


「ま、まあ年明けに第二弾がありますから。しかも、超大型のレイドボスが企画されているんですよ!」

「えぇ……それ、クラーケンの時に散々な目に遭ったじゃないか」

「またあの悪夢を繰り返すのか……」

「どうせまたプレイヤーが蹂躙されるだけだニャ」

「みなさん思考がネガティブになっているです」

「ああ……失言でしたかねぇ」

「確実に」


 なんだろう、気力がなくなっていく……メニュー画面からニュースを見ているが、やはり魔王軍襲来イベントは終わっていた。ストーリー的にも魔王城の前哨戦だっただろうし、やっていればもうちょっととっつきやすかったかもしれない。

 このままゆっくりと地面に横たわってのんびりと雲の動きを眺めていよう……


「…………」

「お兄ちゃん? ちょっと、お兄ちゃん!?」

「ダメですね……気力を使い果たしたようです」

「使い果たしたというより、拗ねているだけな気も……どうにかしないと」

「どうにかって、どうするんですか?」

「こんな時は……そうだ、安価です!」

「――――アリスさん!?」


 @@@


【急募】落ち込んだ人を元気づける方法【求ム】


1.あなたを元気にし隊

 リアルの都合で魔王軍襲来に参加できなかった仲間たちを元気づけたいです

 いい方法を>10


2.名無しのアサシン

 面白いスレないかなと思ったらw

 相談スレだと思ったのにw


3.名無しの釣り人

 最近、脈絡のない安価スレ減っていたから楽しみだ


4.名無しの祈祷師

 まともに元気づける気はないの?


5.名無しの魔法剣士

 ……私も元気づけてほしいなぁ


6.名無しの剣士

 加速


7.名無しの破戒僧

 元気づけてほしい人はマダムストレッチャーのお悩み相談スレに行くといい


8.名無しの探偵

 また妙なスレが……

 安価ならアゴクイで「俺のものになれよ」とささやく


9.名無しの狩人

 相談ならアチキがのるわよん

 安価ならラップバトルを仕掛ける


10.名無しの漁師

 適当に一緒に落ち込んであげる


11.名無しの剣士

 あんかならやきそばたべる


12.名無しのアサシン

 PVPモードを仕掛けて無理やりにでも戦わせる


13.名無しの探偵

 決まったか……解決はしなそうだが


14.あなたを元気にし隊

 …………ダメです、無反応です

 そして、このままだとスレが終了します

 次なる案を求めます>20で


15.名無しの重戦士

 ダメっぽいな……


16.名無しの釣り人

 っていうか安価近いw

 親方、空から女の子がって叫んでみる


17.名無しの旅人

 初安価とるぞ!

 一緒に、エッチなチャットしましょうって誘う


18.名無しの怪盗

 んゆー? 適当なダンジョンに引っ張り込むー


19.名無しの戦士

 実家に帰らせてもらう


20.名無しの怪盗

 帝国まで行って、皇帝のカツラを奪ってきてプレゼントする


21.名無しの剣士

 www おいw なんだそれw っていうか皇帝w


22.名無しの探偵

 待ち構えていたら面白い安価がw


23.あなたを元気にし隊

 あ、安価は絶対ですから……オノレェ! っていうか、怪盗なんてこのゲームに実質二人しかないじゃないですか! しかも両方いるですよね!? 安価とった初代怪盗は恨むです!


24.名無しの剣士

 がんばれw


25.名無しのネクロマンサー

 寝ようと思っていたら、なにやら面白い気配が……でも起きれそうにないから、明日確認する


26.名無しの盗賊

 このゲーム、職業いくつあるんだろうな……就いている人が少ない職業はすぐに誰だかわかるし


27.名無しの剣士

 とは言っても、類似というかスキルやステータスが少し違うだけでおおよそ同じってものが多いんだけどね。サムライは剣士の亜種みたいな感じで


28.名無しのアサシン

 今、帝国にいるんだけど桃色の悪魔さんが初代怪盗さんの名前を叫びながら城までダッシュしていたw


29.名無しの重戦士

 オイw >1は貴女でしたかw


30.名無しの怪盗

 あー、そういえば村長さんたち魔王軍襲来の時見かけなかったな……ログインできない状況だったか


31.名無しの探偵

 まあ、各々都合があるからね。吾輩もクリスマス前後は忙しくてログインできないかもしれない

 あと、永遠の旅人さんみたいにログイン制限に何度も引っかかったせいでしばらくログインできない人もいるだろう


32.名無しの祈祷師

 そこまでやらかすのは極わずかよw

 あと、うちの最年少ちゃんはいったい何をしているのよ……あと村長も


33.名無しの狩人

 いっそそこまで正体がバレそうな書き込みをするならコテハンつけてもいいと思うわよん


34.名無しの釣り人

 人のこと言えないっすよ……


35.あなたを元気にし隊

 ああ!? ヅラを手に入れたのはいいですが、衛兵に取り囲まれたです!?


36.名無しの探偵

 言い忘れていたけど、それ超高難易度のミニイベントだから

 しかも手に入るアイテムも頭用装備の【やんごとなきカツラ】だけだし


37.名無しの剣士

 ヒデェw なんてことをやらせているんだw


38.名無しの舞妓

 律儀に実行するほうも大概やけどな


39.名無しの仕立て屋

 生きてるー?


40.あなたを元気にし隊

 あ、光が見えるです


41.名無しの剣士

 ダメっぽいな


 @@@


 今、アリスの目の前で皇帝がふよふよと空中浮遊をしているです。そして、魔法陣が展開されてアリスを狙っています……衛兵にも取り囲まれてるですし、これ詰みですかね?


「だ、誰か助けてくださいです! ほら、掲示板を見ている人、近くにいるですよね!?」


 しかし返信はワロスのみ。ふざけるなです!

 というか外で野次馬がちょっと笑っているの聞こえているですよ! こうなったら、イフリートを召喚するか自爆特攻でも仕掛けるか……ただ、【演奏家】のままなのでスキルの準備に時間がかかるですし、やっぱりもうだめですかねー。

 そんな諦めかけたその時でした。キラキラ光る粒子をまき散らしながら、小柄な影――とは言っても、今のアリスと同じくらいなので大体150センチですかね。いや、同じくらいというかほぼ同じです。ちょうどアリスの隣に着地し、ハッキリと身長がわかりました。

 見た目は金髪に銀のメッシュが入ったポニーテール。髪色が特殊なので何かのイベントで染髪したか課金したか。背中に半透明の羽が見えるので種族はフェアリー……そして、以前に見たことがある人です。


「たしか……銀ギーさん?」

「村長のところの子、だよね。思ったより厄介そうなことになっていたから手助けしたけど、必要なかった?」

「いえ、助かったですけど……まだおかわりきているです」


 目の前には大量の衛兵たちが。あと、皇帝も魔法を放ってきています。


「余の宝を持ち逃げするとは、不届き者どもよ、滅してくれる!!」

「顔こわいです……」

「無茶をするから……ほら、ついて来て」


 彼女に手を引かれ、城の中を走り抜けます。っていうか、外に逃げるんじゃないんですか!?


「帝国の場合は外に衛兵がポップする。むしろ中のほうが防御が薄い。だからこうして城の中を走り抜けて高い所の窓から脱出するのが正解」

「へぇ……」

「まあ、どこぞの怪盗が発見したルートだけどね」

「絶対知った上で安価とりましたよね、あの人」

「スレの流れは見ていたけど……まあ、基本的に皆楽しいこと好きだからね」


 その時、アリスはこの人の言葉に少し違和感を感じたです。まるで、自分は楽しいことが好きではないみたいな。でも、なんとなくそれは違うとも思ったのです。だから、違和感だけがアリスの中に残りました。ちょっとおかしな話ですけど、心にとどめておいたほうがいいかなって……と、そこで後ろのほうで爆発音が響きました。


「何事です!?」

「……ああ、アイツか」

「アイツって…………何ですかアレ!?」


 爆発音と共に現れたのは巨大なゴリラでした。頭上に表示されたモンスター名はゴリラモットゴリラ。何ですかそのふざけた名前……


「ちなみに、ニシゴリラの学名は『ゴリラ・ゴリラ』だ。そしてニシローランドゴリラの学名は『ゴリラ・ゴリラ・ゴリラ』だ」

「だから何だって言うですか」

「いや、元ネタ解説を……」

「そういうのよりも対処法を教えてほしいんですけど!」

「対処法はない。アレはダメージを与えたそばから回復する倒すのはほぼ不可能のモンスターだ。というか、この城の侵入者用のトラップみたいなものでな。アイツ相手には逃げる以外の選択肢がない」

「だったら悠長に説明していないでとっとと逃げるですよ!」


 銀ギーさんと二人、全力で駆け抜けて窓を突き破り城から脱出します。後ろではドラミングの音が響いていて……っていうか何を思ってあんなモンスターを実装したですか。


「そもそも城からの脱出系はアウトローなプレイをしないと発生しないものが多いから、こういった悪ふざけ系のイベントが多くなっているんだ」

「ああ、そうですか……でもこれで皇帝からの好感度下がったですよね。大抵王様系のNPCって好感度を上げるといいことがあるですし、早まったですかね……」

「大丈夫だろう。ガンガー帝国皇帝の好感度報酬は称号【皇帝のおもちゃ】だけだ。効果は幸運値の大幅低下だからな。どうせ【遊び人】での幸運値調整ぐらいにしか使わない代物だ」

「うわーいらないです」


 ハラパ王国の国王様の好感度報酬称号【王様の懐刀】の効果はクリティカル率上昇ですよ。差が大きすぎですけど……


「……あ、お礼にこのヅラいります?」

「大丈夫だ。すでに持っている」

「…………なんで持っているですか。っていうか、元気づけてくださいって書き込んだわりには銀ギーさんもエンジョイしているじゃないですか」

「――――なぜ、あの書き込みが私だと分かった?」


 先ほどスレで書き込んでいた魔法剣士、それが銀ギーさんだと分かったことについてですよね? まあ、簡単な話なんですけど……


「スレを見ていなければ、助けには来れないですし。それにレスの数も多くなかったですから、たぶんそうなんじゃないかなって……ほとんど勘ですけど。ぱっと思いついた魔法剣士の人が銀ギーさんだけだったってのもあるですけどね」

「そうか…………私は、結構エンジョイしていたのか」

「えっと、大丈夫ですか?」


 なにやら絞り出すように声を出していたので、心配になったですが、銀ギーさんは少しだけ晴れやかな顔でアリスにお礼を告げました。


「いいや。ありがとう……おかげで、いい気分転換になったよ」


 そう言って、銀ギーさんは去っていきました。


「こちらこそ、助けてくれてありがとうです!」


 アリスの声が聞こえたのか、こちらには背を向けたまま手だけを上げて左右に小さく振っているです……なんですか、あのカッコいいさよならのポーズ。今度マネしよう……と、そうじゃないですね。

 目的は達成したので、安価スレを再開…………冷静に考えたらお兄ちゃんたちを元気づけるために始めたことですよね?


「…………とりあえず、村に戻ってヅラを被って見せて……いえ、乙女的にやめておくですか。戦利品ですって言って見せるだけでもいいですかね」


 スレのほうにはその方向で動くことだけを書き込んで、失敗したらまた安価をとるですよと告げておく。ほどほどにしておかないとまた変なことになりそうですからね……案の定、変なことをさせようとしていた人が多かったです。誰ですか、水着でお兄ちゃんに抱き着けと書いた人は……いえ、別に実行する気はないですよ? と、誰に言っているかもわからない言い訳をしながら村に戻りました。

 その後、ヅラを手に入れるまでの経緯を聞いたお兄ちゃんたちが爆笑して元気づけることには成功したですが…………水着、いえ、なんでもないのです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新乙い [一言] 水着で幼女に抱き着かれる…… 恐怖しか感じないな!!!!
[良い点] 安価怖えー下手したら事案発生じゃないですかwww
[一言] 水着ハグやりたかったのか
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