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掲示板の皆さま助けてください  作者: いそがばまわる
7.ぶらりと、サモナー
103/191

男のロマン

これにて7章終幕。

あと、数話って言ってごめんなさい。書いていたら普通に終わったわ。

 僕が古代遺跡を攻略してから、数週間後。

 すでにハロウィンイベントとスクリーンショットコンテストも終わっていて、今日はその結果発表の日だ。

 ハロウィンイベントについてだが、遺跡攻略後も適当にポイントを集めながら景品交換をしていたんだけど、ラインナップを見ているとアレも欲しい、コレも欲しいと欲が出てきたのでアンデッド系が多く出る地下墓所ダンジョンに挑んだりしていた。アリスちゃんも誘ったが……さすがに断られたけど。やっぱりホラー系のダンジョンは無理なのか。

 他にも大量に交換する理由が出来たりもしたが……とりあえず、ある程度満足いくまでアイテム交換を済ませることができたのでこうしてのんびりと結果発表を待っている。消費したアイテムを掘りに行かなくて済んでほっとしているともいう。

 と、そこで閉じたり開いたりしていたウィンドウに変化が見られた。


「…………お、ページが更新された」

「村長、そこまでかじりついて見ないでもいいと思うんじゃが」

「いいじゃないか。渾身の一枚だったんだぞ」

「結局ワシらどんな作品を応募したのか聞かされていないんじゃが」

「そうよねー。ワタシたちだって気にはなっているのよ」


 本日は久々にヒルズ村に全員集合しており、みんなで結果発表を待っている。ライオン丸さんとみょーんさんにツッコミを入れられているけど、知っているんだからな。二人も何か応募していたこと。

 というか、僕以外も全員何かしら応募はしているんだが。


「せっかくですからね。入賞するかもしれませんし」

「んゆー? 適当に、自撮りを一枚応募したよー」

「この前個人的に開催したー、ファッションショーの様子を応募したわよー」

「ディントンさん、何していたんですか……」

「拙者は月夜をバックに分身したところを応募したでござる」

「某は、妖怪系のモンスターの群れを見つけたので、百鬼夜行とタイトルをつけて応募したでござるよ」

「それ、ハロウィン部門か?」

「うむ」

「拙者のはキマった一枚でござる」


 ハロウィン部門は言わずもがなゴースト系モンスターやハロウィンコスを中心にしたスクショを応募する部門で、キマった一枚部門はモンスターの大技や、プレイヤーの奥義、スキルの組み合わせで演出した一枚を応募する部門である。

 そして、最後に特にテーマの決まっていないフリー部門があるのだが……僕は3つすべてに応募してある。ハロウィン部門はジャックランタンを墓場で撮影したものを。フリー部門にはUMAモードを応募した。

 本命はキマった一枚部門だが……よし!


「入賞したぞー!」

「お、マジか村長」

「しかも三部門とも賞を貰ったぞー!」

「すごっ!? アタイも全部応募したけどダメだったニャ……」

「どんなの応募したんですか?」

「ハロウィン部門が車田飛びをするゾンビで、キマった一枚部門が車田飛びをするゾンビで、フリー部門が車田飛びをするゾンビだニャ」

「全部同じじゃないのよ!」


 スパーンとみょーんさんがハリセンであるたんさんの頭をはたく。

 っていうか全部同じなのアリなの?


「一応全部バージョン違いニャんだニャよ!」

「いや、だからって同じ構図だけってアウトでしょ」

「そもそも車田飛びなら私もやりましたし、入賞しましたよ」

「……ニャン、だと」

「ほら、これです」


 そう言い、めっちゃ色々さんはウィンドウを可視化して僕たちに見せてきた。

 そこに写されていたのは見事な飛び方をしているモンスターたち。しかも、どうやったのか擬音がしっかりと表示されている。


「え、加工はできニャいハズニャよ!?」

「いえいえ。これはアクセサリーで擬音を発生させるものがありまして、それを使いました」

「そんニャもの、あったかニャ?」

「あるわよ。課金アイテムで」

「……結局金の力かニャー!」


 地面をたたいて悔しがるあるたんさん。

 いや、僕は課金しないで三部門とも入賞したんだけど……まあ、あるたんさんの場合は同じ構図でより完成度が高い相手がいたから負けたのだろう。

 お金をかけたほうが面白い写真をとれるのはまあ、分からなくもないが。ちょっと悔しい。一番である金賞を狙っていたわけでもないので、そこまで表情には出さないけど。


「他に入賞した人いる?」

「あ、ワシが入っておるな……いつぞやのハーレムが」

「オイコラ」


 なお、タイトルは『四等分の大岡裁き』だった。最後のほう、両手両足を引っ張られていた時のやつか……自分では気が付かなかったが、引っ張られている影響なのか体の中央が十字に光っている。そこから裂けそうになっていたのだろう。


「……本当、ごめんなさいです」

「らったんもごめんねー?」

「…………これが広まったわけか」

「なんかスマンの、村長」

「いや、別にいいんだけど」

「いいんかい」


 なんかもう、今更な気がして。

 よくよくかんがえたら自分の応募した作品のほうが相当だわ。


「……村長、この馬面なによ」

「UMAフォームのこと? って、そっか。入賞作品みれるから探せばわかるか」

「一時期騒がれていた不審者ですね。何してんですかアンタ」

「村長、結局奇行していただけでござるな」


 ちなみに四等分もUMAもネタ賞に入っている。どうやら、一発ネタ系の作品に与えられる賞で一番下の入賞であった。賞品は経験値ブーストアイテム。


「あって困る物ではないしのう」

「だからといって、うれしいかと言われると微妙な位置」

「いいじゃないのよ。もらえるだけマシよ」

「そうですよ。アリスも入賞はできなかったですから……確かに、自分でも面白いものは撮れませんでしたから、ダメ元で応募したですが」

「らったんもダメだったー」

「拙者は入賞したでござる。スポンサー賞でござるが」

「某は銅賞でござるな。なかなかいいものを貰えるでござるよ」


 スポンサー賞はコラボアバターアイテムが貰えるらしい。引き換えチケットが送られてくるので、それを使って好きなものを貰えるのだとか。

 銅賞の賞品はたしか……スキルスクロールか。しかも召喚獣のものだ。


「これはいいものだ」

「よぐそとさんが感極まって泣いているわ」

「今まで不憫な目に遭っておったからのう……」

「たとえばどんな?」

「宝箱を開けようとすればミミックに遭遇は当たり前、爆弾を投げつければ撃ち返されて逆に爆破される、フィールドボスを倒したと思ったら、おかわりがやってくるなどいろいろじゃよ」

「うわぁ……」


 他にもどんな目に遭っているのか。最近は一緒に遊んでいなかったから知らなかった。基本的に和風コンビとは別行動が多いからなぁ。


「ところでどんな召喚獣のスキルスクロールなんです?」

「ヤタガラスでござるな……詳細は実際に貰うまでわからないでござるが、かなり強力そうでござるよ」

「あ、私詳細知っていますよ」

「なぜ色々さんが知っているでござるか?」

「ハラパ王国の王立図書館でのクエストだったのですが、召喚獣のデータを閲覧できるものがありまして、そこでたまたま見ました。前にスクショで撮りましたので探してみますね……えっと、これです」


 そう言ってめっちゃ色々さんが見せてきたのは……レーダーチャート付きで紹介された召喚獣の性能だった。これ、後で僕も調べに行こうかなぁ……あと、ヤタガラスえっぐい性能しているんだけど。


「なにこれ、すさまじく強いじゃん」

「参考までに、アリスさんのイフリートがこちらです」

「……強いけど、二歩ぐらい劣るね」

「なんだか悔しいです――うん?」

「どうかしましたか?」

「いえ、ちょっとヤタガラスに戻してくださいです」


 アリスちゃんが何かに気が付いたのか、めっちゃ色々さんに画像を戻してほしいと頼む。

 それを受けて前の画像に戻ったが……何に気が付いたのだろうか?


「……あ、やっぱり」

「どうしたでござるか?」

「いえ、ここ。下のところに小さく『デバフ:幸運値減少』ってあるですよ」

「……Really?」


 なんで急に英語なんだ……しかし、どうやら強力な性能を持つ代わりにデバフが発生するらしい。召喚獣の中にはそういったものもあるという事か。


「…………幸運値減少をうまく使えば、【遊び人】で狙って追加効果を出したりとかできないかな?」

「さすがに焼け石に水だと思いますよ。あと、処理的にはスキル発動中に召喚できませんから」

「あ、そっか。結局意味はないか……あと、よぐそとさん固まっているけど」

「不幸を突きつけられたようなものですから」

「よぐそと殿ー!?」


 とりあえずよぐそとさんは桃子さんに任せよう。

 あとは僕の入選作品だが……ジャックランタンのほうが銅賞で、スキルスクロール…………


「ヤタガラス、おかわり入りましたー」


 見たところ銅賞は思ったより入選した人が多い。けっこうばらまかれているな。

 というかデバフといっても幸運値減少は一部の職業以外はそこまで影響受けないし、キツイものでもない、精々が追加効果の発生確率とクリティカル率に影響を受けるだけだ。

 たぶん他に何か面倒な項目があるな……ヤタガラスは大器晩成型とかそんな感じのが。

 あと、僕の発言でみんながお腹を抱えてしまった。そこまで笑うこともないと思う。


「……そ、それで、最後の一枚はどうですか」

「アリスちゃんまでそこまで笑うとは……」

「いえ、タイミングがツボに入っただけです」

「わからないでもないけど……最後のは審査員特別賞だね。これで【海賊船】が貰える」

「あれ? それ、銀賞とか金賞じゃなかったですか」

「さすがにそこまでガチだったら無理だよ」


 ちなみに銀賞はプレイヤーホームの引換券で、金賞が有料ポイントを10000円分。豪華ゆえにそのレベルはガチな写真家クラスの人が狙っていたようだ。なお、後日判明したが結構なネタかぶりをしたらしく、票割れみたいな状態になったとかなんとか。


「それで、結局審査員特別賞は何だったんじゃ? キマった一枚部門が残っておったはずじゃが」

「うん。まあ……コレ」


 見せたのは、古代遺跡を突破したことで手に入れた【サモナー】の奥義スキルで召喚した召喚獣。その攻撃の場面を使って撮影したものだ。

 召喚獣の名前は『エンシェント』で、見た目は古代遺跡で最後に戦ったボスに似ていた。見た目からも古代遺跡ダンジョンの攻略が条件なのが分かりやすい。

 どうやら、古代兵器系統の召喚獣を召喚できるスキルらしいのだが、この召喚獣を出している間は他の召喚獣は出せず、なおかつ召喚時にMPをすさまじく消費する。

 しかし持続時間が長く、すごく強い。下手したら最初に戦った時のベヒーモス並の火力は出せるかもしれない。攻撃方法はパンチとビームだけというシンプルなものだが、シンプル故に強力だ。


「……なんじゃ、こりゃぁ」

「なにって、見たままだよ」

「タイトル『ロケットパンチ』とは……」


 やったことは簡単。余っていた【ベヒーモスの思い出】を使って闘技場に行き、エンシェントを召喚してパンチをする。なおかつ、僕がガントレットを使う。更に、炎魔法でロケットパンチのエフェクトをそれっぽく再現する。

 で、ベヒーモスを殴りつけている場面をスクリーンショットのタイマー撮影モードで撮っただけだ。

 言うのは簡単だが、タイミングを合わせるが難しかったし、ガントレットの巨大化と炎魔法のタイミングを合わせるのも大変だった。自分の姿が上手く隠れるようにしないといけないし。巨大化させたガントレットをロケットパンチに見立てているので、炎のエフェクトによるエンシェントの腕隠しと自分の姿を見えないようにするコツをつかむまでが長かったのだ。

 しかもMP消費がヤバいし、ガントレットの制限時間もあったので撮影には数日かけてしまった……古代兵器のエネルギーを回復するため、何度もハロウィンイベントの交換所にはお世話になりました。


「これこそネタ賞じゃないのよ」

「なんてことを――みょーん殿は男のロマンをわかっておらんでござる!」

「あ、よぐそとさんが復活したわー」

「そうじゃ! ロケットパンチは男のロマンなんじゃぞ!」

「右にしかり!」

「そうです!」

「アンタら……いや、だからこその審査員特別賞なのね。こういうノリで選考されたんでしょうけど……アリスちゃん、貴女までなんで?」

「……アリス的には魔法少女とかよりも、そっちのほうが好きですから」

「ジェット移動やらグラップラーなのも納得ね」


 ちなみに僕は知っていた。


「さて、これで海も自由に渡れるようになるし……前から気になっていたんだけど、よぐそとさんたちが転職した島に行きたいなって思っていたんだ」

「そういえば言っていたですね。一応転職するだけしておきたいって。ヒルズ村の南のほうにある島ですよね」

「うん、ボートでもいけたんだけど時間がかかりそうだから後回しにしていたけど【海賊船】を貰ったら試運転がてら行こうかなって」

「たしかに【サムライ】と【忍者】に心惹かれるものもあるのよねー」

「行くなら案内するでござるよ?」

「ぜひたのみたい」

「……ただ、アンタらひとつ忘れていない?」


 と、そこでみょーんさんがこめかみに指をあてて悩ましいという表情で僕らを睨んでいた。

 って、何事?


「学生組――期末試験、大丈夫なの? 時期的にもうすぐそこだと思うけど」

「…………えー、村長から重大発表があります。明日以降、ログイン頻度が落ちます」

「あー……アリスもちょっとこの前ログインし過ぎと怒られまして、ちょっとの間お休みするです。以前、ログイン限界までバカなこともしてしまいましたし」

「スマン。この時期のテストを落とすわけにはいかないんじゃ」

「アタイもニャ。まだまだ先だけど、受験も考えないといけニャいからニャ」

「学生組は全滅ですね」

「そうね」

「あーしは特に気にしてないしー」

「ログインしてもいいけど、ワタシたちがマンツーマンで面倒見るわよ?」

「最近、教員免許をとろうと思っていまして――家庭教師のバイトなんかもしたことがあります。教え倒しますよ」

「…………らったん帰りまー」


 そんなわけで、賞を取った喜びも、新たな冒険だという空気も霧散してただただ現実に引き戻される僕らなのでした。

 オチもつき、結局そのまま僕たちはしばらくログインできない日々が続くのであったとさ。

 さすがに、蔑ろにしちゃいけないところはあるからね。

今回の教訓:遊ぶのはいいけど、やることはちゃんとやりましょう。


というわけで、次の8章からは時間が飛んで12月に入ります。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ロケットパンチは男のロマン! [一言] じゃあ女のロマンは? おっぱいミサイルじゃないですかね、光子力的に考えて
[気になる点] 車田飛びが共通認識になっている…… [一言] 撮影のために何気なく村長にソロ撃破されているレイドボス() ヤタの属性やいかに
[一言] 結局、あれだけ苦労して撮った対リヴァイアサンの写真は、ロケットパンチの為に御蔵入りしたわけですな。
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