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掲示板の皆さま助けてください  作者: いそがばまわる
7.ぶらりと、サモナー
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守護者と炭鉱夫……じゃなくてサモナー

 基本的に【サモナー】の戦闘スタイルは事前準備が最も重要な要素となる。

 召喚獣の行動パターンの組み立て、スキルの使用頻度の調整、プレイヤー自身のスキル設定など用意しておいた手札をどれだけ的確に使用できるかが肝だ。

 より使い慣れた人ならば10体以上の召喚獣を状況に合わせて使い分け、更には攻撃の組み合わせ、フォーメーションの指示まで的確にこなせるらしい。さすがにその領域にたどり着くには相当な練習量だけでなくそれこそ才能が必要だろう。【サモナー】以外にも、【テイマー】や【ネクロマンサー】なども似たような性質の職業で、かなり上級者向けの性能になっている。


「防御フォーメーション!」


 古代の守護者BF003……長いので、ロボット兵と呼ぼう。

 ロボット兵はその巨大な腕を振り上げて、突っ込んできた。背中のブースターを噴かせてとんでもない加速でって……え、世界観ファンタジーじゃなくてSFになった?


「ちょ、速すぎだってこれ! 緊急回避ィ!」


 地面を蹴り、泡魔法で自分の体を包む。そのままヘッドスライディングの要領で攻撃をかわした。

 土煙が上がり視界が若干悪くなるが……ロボット兵も次の攻撃へと移っている。今度は単眼が光り輝き、こちらを狙ってきているが……まあ、分かりやすい攻撃だこと。

 そこでようやく防御フォーメーションが完成した。こちらが遅いというよりは、ロボット兵の動きが速すぎるだけだが。あと、緊急回避でスキルの発動順序がズレたというのも関係している。


「とにかく多重構造バリア展開完了、次のスキルを準備開始」


 目の前にウィンドウが表示される。キーワードは『次のスキルを準備開始』だ。このワードで、手動での指示出しを行うためのウィンドウを表示するように設定した。

 マーメイドは防御後、水魔法による拘束を行うように、シーモンキーとジャックランタンで魔法弾による攻撃。僕は能力強化ポーションを使用し、次の攻撃のための準備を整える。あとは保険としてガントレットをいつでも発動できるようにしておくことだが……


「やっぱり、そううまくはいかないよね」


 多重構造バリアでも防ぎきれなかった。案の定そのカメラのレンズのような瞳から発射されたビームはバリアを貫通し、こちらへと迫ってきたのだ。

 ただし、バリアも何も効果がなかったわけじゃない。一層ごとに1秒程度のラグが起きていた。合わせて3秒もの時間があれば、回避はできる。


「ゲームである以上、攻略法は存在している。そして、こういうわかりやすい技を使った後ってのは隙がでかいって相場が決まっているからね」


 そういったセオリーが通じないこともあるが、今回は読み通り僕を再びロックオンしようと頭を動かして隙が出来ていた。なるほど、カメラのレンズのようなと評したが正にカメラのレンズであったのだ。

 ビーム攻撃後は一時的に目標を見失うと。冷静に考えれば視覚を得るためのカメラそのものにビーム兵器を合わせるとかどんな欠陥兵器だよとツッコミを入れたくなるような話だが、そういったことにツッコミを入れるのは野暮な話だろう。

 目からビームが出る。ビームを出したときに一時的に視界が悪くなるから、その後がチャンスという実にシンプルな能力だ。

 あとは背中のブースターと手の爪……おそらくは古代兵器と同じビーム刃の類。その二つを組み合わせた高速切断攻撃もあるだろうから、そちらに気を配るべきか。

 幸い、ボスの強さはプレイヤーのレベルと人数によって変動する仕様――つまり、一人で挑んでいるため相当弱い状態になっている。


「一手一手慎重に詰めていけば、倒せない相手じゃない」

『――――フンガー!』

「って、なんか叫んだ!?」


 合成音声っぽいが、ロボット兵が何かを叫んだ。同時に、ガッツポーズのような動きをした瞬間に、奴から蒸気が噴き出す。

 そして、体のラインが青白いモノから赤い色へと変化していく……なんか、ヤバそうな感じ?


『戦闘モード起動。侵入者ヲ排除シマス』

「……え、なにそのスロースターター」

『フンガー!』

「ちょお!?」


 とんでもないスピードで拳、ではなく爪が迫ってくる。先ほどまでは握りこぶしだったが今度は手刀になっていた。どうやら、より殺傷力の高い攻撃へと切り替えたらしい。

 慌ててかわし、マーメイドの拘束がそこで決まる。だが、関係ないとばかりにロボット兵は体を動かしている。マーメイドの拘束魔法は水のロープが敵の足元から複数飛び出てその体をがんじがらめにしてしまうものなのだが、多少は動きを鈍らせてもロボット兵は力ずくで動いていた。


「ヤバいだろコイツ……シーモンキーとジャックランタンも攻撃してくれているけど、焼け石に水だし」

『フンガー!』

「……やっぱりここは、ガントレットで吹き飛ばして無理やりにでも隙を作るしかないか」


 あとはできる限り立ち止まらないほうがいい。再びレンズが光り輝いている。しかも、先ほどよりもチャージが早い。

 なるほど……まず、頑張れば避けられるか防げる程度の攻撃を見せて基本パターンを明かしてからそのスピードアップ版で戦うって感じのボスか。

 それはともかくガントレットの発動準備はできた。一気に拳を振り抜き、巨大化させる。


「だらっしゃぁ!」

『フンガー!』


 唸り声? を上げながらロボット兵が壁に激突する。与えたダメージ量的に古代兵器の類はそこまでダメージを与えられないらしい。ただ、ノックバックが発動したということは追加効果は発生するのか……あと、落下ダメージ減少がなければなぁ…………思ったよりもダメージを与えられなかった。

 と、そこでロボット兵が拳を振り上げて、地面にたたきつける。その衝撃で僕の体が浮きあがってしまう。


「って何事!?」


 ふわりとどころではない。ブワッという効果音が聞こえてくるような感じでクルクルと宙を舞う。

 そして、頭から地面へと激突してしまった。


「痛みはないけど、気持ち的に痛い……HPも削れたし、落下ダメージの調整が無かったら今ので死んでいたかもな。ナイス調整」


 さっきとは言っていることの違う、手のひらくるっくるな僕。心なしかミナトがジト目で僕を見ている気もするが、それは無視して次の作戦を実行する。

 古代兵器の追加効果が発生するなら、コイツが使えるはずだ。【古代のガントレット】を【古代のアックス】へと装備変更する。手早くやらないと追撃を喰らうので、泡で滑りながら行う。


『フンガー!』

「また手刀……って、なんだと!?」


 振り下ろされた手刀が途中で止まり、横薙ぎの形へと変更される。なるほど、範囲攻撃だな。って言っている場合じゃない。

 体をそらし、イナバウアーのように奴の手刀をかわす。

 鼻先が掠るかと思ったんだけど……首がスパッとやられると思ったんだけど。


「首がフッ飛ばされてデュラハンになるかと思った」

「がお?」

「何言ってんだってツッコミを入れられた気がするけど、僕は引き下がらない。アックス発動からの――セイヤー!」


 手刀の後で隙が出来たロボット兵に一撃を叩き込む。案の定ダメージはそれほど出ていないが、防御力が低下した。さらに、ジャンプしながら振り下ろしたことで、背中のブースターにヒットしたことで、少し煙が噴き出した――なるほど、リヴァイアサンの時と同じで部位破壊でプレイヤー側が有利になるタイプだな。


「なら【サモナー】で来たのは正解だったな。基本的に召喚獣を狙う敵はいないターゲッティング、セット」


 視線を目標に合わせてキーワードを言うことで、召喚獣が敵の一部位を狙うように設定した。これにより、ロボット兵の背面ブースターを狙える。

 しかも視覚的に分かりやすくするためプレイヤー側にはターゲットしている場所にサークルが表示されるのでちゃんとロックオンできているかは一目瞭然だ。


「オーケー。ユニットBとCは砲撃開始!」


 別に名前で呼んでもいいのだが、出来るだけ短いワードがいいかなと召喚獣それぞれにアルファベットを割り振ってある。マーメイドがAでシーモンキーがB、ジャックランタンがCだ。

 指示通りにシーモンキーとジャックランタンが魔法弾でロボット兵の背面ブースターに攻撃してくれる。召喚獣には召喚していられる時間に制限があるが、プレイヤー側がスキルでその時間を延長することも可能だ。その場合、MPを消費してしまうがMP回復もペットのミナトがいるからある程度は保てる。


「ユニットAは支援開始」


 マーメイドの支援スキルにもいろいろと調整を入れてある。基本的には回復と防御系に特化させているが、こちらから指示を出した場合は水属性強化の支援魔法を発動するように設定した。

 これにより、自分たちの扱う水魔法の威力が上がる。そして、現在の僕の装備は水魔法を扱う場合、威力が増加するものが多い。さらに、シーモンキーの攻撃力も上がったことでロボット兵への攻撃が強化されたからか、ブースターから噴き出ていた煙が大きくなったのだ。


「これはチャンス! いくよ、フルアタックフォーメーション!」


 フルバーストが魔法による一斉攻撃なら、こちらは突進による一斉攻撃。もちろんそれぞれの属性を身に纏ってはいるが、物理よりの判定が出る。

 アックスの追加効果でロボット兵に防御力低下が発生しているので、こちらのほうが多くのダメージを見込めるのだ。

 三体の召喚獣が一斉に突撃し、ロボット兵がよろめく。その隙を逃さず、僕も駆け出した。


「水魔法連携、1番!」


 泡で滑り、ブラシの先端から発生した水流でさらに加速する。そして、先端が水のハンマーへと変化することで完成する速度と威力を掛け合わせたコンボ攻撃。

 この前、アリスちゃんとらむらむさんと一緒に攻略したダンジョンでどれほどの威力が出るのかも検証済み、奴の頭部へとクリーンヒットした。


「よしっ!」

「がう!」


 すかさずミナトが減ったMPを回復してくれた。立ち止まっていては攻撃を喰らう可能性があるので、泡で滑りながら奴の周りをグルグルと移動する。

 ソロで攻略する以上常に僕を狙い続けるが、それを逆手にとって一定の距離と速度を保って奴の攻撃のパターンを絞るのだ。やることは今は懐かしいベヒーモスと同じ。相手の行動パターンを予測して、出来る限り予想外の動きをしないようにこちらも一定の距離とスピードを保つ。


「とりあえず爆弾でHPを削っておくか」


 クラスター爆弾をばらまいて細かくダメージを与える。けっこう硬い上にHPも多いのでそれなりに長期戦になりそうだと思っていたが、どうやら爆破耐性は低いらしく思ったよりHPが削れた。

 これならギリギリまで爆弾で削れば勝てるだろう。手持ちの爆弾を投げながらボス部屋を反時計回りにセグ○ェイに乗っているかのように優雅に動き回る。


「…………意外と上手くはまったな」


 パターンがはまったおかげでボスのHPも残りわずかとなる。召喚獣たちも自動砲撃状態で適当に攻撃してもらい、僕は逃げに徹しつつ爆弾を置いていく戦法で難なく戦えるようになっていた。

 トドメは自分の手で刺す方がいいだろうし、装備をガントレットに変更する。


「せーのっ!」


 ロボット兵を殴り飛ばし、壁へと叩きつける。

 そしてすぐに一斉突撃の構え――なおかつ、僕自身も水流噴射と泡魔法を組み合わせて、敵のHPを削り取る擬似ドリルアタックを使った。


「これが水魔法連携、2番! 水流でジェット噴射のように飛び込み、ブラシの先端の泡を敵にたたきつける。加速の影響で泡が連続ヒットすることで通常よりも多くのダメージを与える一撃だ!」


 なお、擬似というだけあって防御貫通のあった『マジックドリル』よりも威力は低い。あくまで、少数のダメージを与える泡が連続ヒットすることで多くのダメージを与えるというだけなのだ。あと、加速により落下ダメージ的な何かが泡それぞれに追加されているのもあるのだろう。もっとも、言うほど威力が上がるわけじゃないが。精々が通常時の二倍とかそれぐらいである。泡ひとつにつき1ダメージが2ダメージになったとかそういうレベルだ。

 それでも召喚獣と共に一斉突撃したことで、ボスのHPが削れきって――ポリゴン片となって消えていった。


「……ふぅ、攻略完了!」


 こぶしを突き上げて、喜びをあらわにする。

 これで古代遺跡攻略完了!

 その場で跳ね回っていると、特徴的な電子音が流れてきた。


「………………うん? なんだこれ?」


 システムメッセージが流れてきていたんだけど……なんだろう、何かマズいことした?

 ちょっとビビったが、流れてきたのは奥義習得の表示……奥義、だと?


「え、条件は――こ、これは!?」


 習得したのは【サモナー】の奥義スキルなので、奥義も特殊な召喚獣だった。試しに召喚してみたら、そこに現れたのは――なるほど、条件も分かった。

 そして、その召喚獣の姿を見た僕は一つのアイデアを思い付いたのだ。

 これは……スクショコンテストに使えるって。

はたして、ロポンギーが手に入れた奥義とは? その条件とは? いったいどんなスクショをとるのか?

次回へ続きます。


次回で7章終幕。

8章は1章から出てはいたけど、あまりスポットが当たらなかった人にまつわるお話です。

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― 新着の感想 ―
[一言] >なにそのスロースターター ???「ンガンガフンフン ガガガガガガガガガガガガガガ」
[一言] サクサクと 読んでたのしい 小説
[一言] このタイミング……サモナーでボスのソロ討伐成立とか? だとするとソロ討伐したボスの限定召喚とかがになりそうだけど……
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