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掲示板の皆さま助けてください  作者: いそがばまわる
7.ぶらりと、サモナー
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据え置きとネトゲでセオリーが違うこともある

しれっといつもと違う時間に投稿。


 毒状態。少しでもRPGに触れたことのある人ならどういった状態異常になっているかすぐにわかるだろう。ターン制なら毎ターン少しずつHPが削れ、アクションRPGなら時間経過で削れていくアレだ。ゲームによっては猛毒で恐ろしいほどの速度で削れる、毎ターン削れる数値が増える、そんなバリエーションも存在することもあるだろう。

 前置きが長くなったが、つまりはそういうことだ。


「削れる、HPがガンガン削れていくです!?」

「ガンガン、いこうぜ」

「いや、いっちゃ駄目なヤツですよコレ!?」

「アリスちゃん、落ち着いて。解毒薬使えばすぐに消えるから。あと、らむらむさんも煽るような発言しない」

「そ、そうでした……えっと、これは普通のポーションで、こっちは筋力増加薬で、こっちも筋力増加薬(強化版)で、これも筋力増加薬(更に強化版)で」

「いくつ筋力強化持ってきているの?」


 毒ガス地帯舐めていたわ。すぐに死ぬわけじゃないけど、一気にHPが削れて危険域に達することもしばしばあるので油断ならない。気づかないうちにHPが無くなったなんてことにならないように、危険域に達したらアラームが鳴るように設定してあったんだけど、さっきから何度も鳴り響くのでインベントリを開いて解毒薬使ってという行動を繰り返している。


「っていうかショートカットワードでも登録しておけばいいのに」

「忘れていたですよ……それがあったですね」

「いや、僕もさっき思い出したばかりなんだけどね」


 そもそもマーメイドの使う回復魔法で事足りていたから。ただ、このダンジョンだと使用頻度がヤバいので時々MPが尽きてしまうのが玉に瑕。だからこうしてアリスちゃんとらむらむさんは解毒薬を使っているわけだが。

 ちなみに、らむらむさんは余裕綽々で慌てるアリスちゃんの横で優雅に解毒薬を飲んでいる。正直、アイテム使用するだけでいいから飲むモーションはあまり意味ないんだけど……煽る目的だろうか?


「ふぅ、回復も済んでひと段落です」

「まだまだ先は長そうだなぁ……一気に駆け抜けたほうが早いかもしれない」

「そもそも、なんで、筋力ブースト、そんなにあるの?」

「職業が【僧侶】だとどうしても火力不足になるですよ。だから、それを補うのに持ってきているです。種類がいろいろあるのは、効果時間と強化数値の違いがあるからですね」


 そう言ってアリスちゃんは複数の筋力強化薬を見せてくる。なるほど、アリスちゃんがもってきている物は、強化数値が低いが効果時間が長いものと、強化数値が高いが効果時間が短いもの、そしてどちらも高い数値のものだ。ただし、最後のは1個しかないようだが。


「一番強力なのは高いので、出来れば使いたくないんです。これ一個だけ持ち出して、あとは倉庫に閉まってあるですよ」

「エリクサー病、だと、思うよ」


 エリクサー病とは、レアなアイテムをもったいないとインベントリや倉庫の肥やしにしてしまうことである。僕も覚えがある……まあ、ゲーマーなら結構な割合で発症しているだろうけど。ちなみに似たような言葉が複数あるが、だいたい同じ意味だ。


「でも死んだらなくなるかもしれないじゃないですか!」

「たしかに、装備品、以外は、ロストする、可能性も、ある」

「そもそも火力不足でも死にはしないと思うけど……って、今思い出したけどアリスちゃん――【僧侶】なら自前で解毒魔法覚えるよね?」

「……あ」


 アリスちゃんは顔を真っ赤にして、ステータス画面で使用可能スキルを確認している……まあ、まだ育っていないのならスキルが解放されていない可能性もあるんだけど……ここまで来るのにそれなりに職業レベル上がっただろうから、おそらくは――案の定見つかったのか、体をプルプルさせている。


「アリスとしたことが、こんなミスをするなんてです」

「普段、使い慣れて、いないと、そういうことも、ある」

「まあそんなもんだよねー……そもそも僕、【僧侶】って回復系統の魔法が使える職業ってことぐらいしか知らないけど、どういう職業なんだっけか?」

「村長さんの、言った通り、パーティーの、回復役。あと、ゴースト系、とか、アンデッド系に、有効な、魔法を、覚える」

「ぱっと思いつく僧侶そのままか」

「あとは、素の筋力は、低いけど、ハンマー系スキルを、覚える」

「なぜに」


 メイス的なものを持っているイメージがあるからだろうか?

 アリスちゃんもそのあたりの攻撃スキルに気が付いたのか、装備を変えている……おそらく覚えたスキルに対応した装備に換装しているのだろうが――ってオイ。


「アリスちゃん……それ、何?」

「この前手に入れたレア武器【バールのようなもの】です!」

「……え、なんて?」

「ですから【バールのようなもの】です!」

「…………らむらむさん、解説」

「武器カテゴリ、鈍器。その中でも、ちょっと、特殊で、ハンマーと杖の、スキルを、使える」

「へぇ……」

「あと、無駄に、頑丈」

「無駄には余計です」


 それはともかく、絵面が猟奇的になったんだが……出てくる敵を手に持った凶器で蹴散らしていく姿は、なにかいろいろな意味でドキドキさせてくれるんだけど。

 これでは僕のデッキブラシも霞んでしまうではないか。


「村長さん、十二分に、目立っている」

「しつこい敵もこの泡でゴシゴシこすると、ほーらこの通り」

「うわぁ、綺麗になったです!」

「……村長さんも、猟奇的」

「そんな馬鹿な」

「自分のやったこと、思い出して」


 ただ敵をデッキブラシの先端から発生させた泡(魔法)でゴシゴシこすっただけなのに。ダメージ量は少ないけど、こすることで細かくダメージを与えることができることに気が付いて、余裕があれば試しているだけなのに。


「まるで、やすりで、削るような、手口」

「手口とか言わないで欲しい。正直自覚はしていた」

「アリスも悪ノリしたです」

「だろうとは、思った」


 そんな軽口もそこそこに、いよいよボス部屋の前までたどり着いた。道中採掘もしてはいたのだが、欲しいアイテムもあっさり手に入るし、採掘中は無言になってウィンドウをタップするだけだったけど。

 らむらむさんのほうは、まだ必要個数には届かないし、他にも集めているアイテムがあるそうだが。


「ボスドロップも、欲しいかな」

「トドメ刺すです?」

「ううん、大丈夫。ランダムのほう、だから、周回予定」

「とりあえず事前情報はないわけで――ただ、こういうところのボスのセオリーってのはあるよね」


 僕はそう言いながら、ボス部屋へと入っていく。続いて、二人も入ってきた。

 ボス部屋に突入した僕らを待ち受けていたのは、巨大なトカゲだった。やはり、思った通りの姿だ。


「やっぱりこういう見た目だよね」

「お兄ちゃん、どうしてわかったですか?」

「こういう溶岩に落ちたらアウトで、道中爆弾の素材が手に入るダンジョンのボスとは巨大なトカゲ、そして爆弾が弱点と相場が決まっているんだ!」

「……村長さん、コイツ、爆破耐性、極だから、爆弾、効かない」

「そんな馬鹿な!?」


 RPGのセオリーは道中手に入れたアイテムやスキルでボスを攻略することだぞ!? こんな溶岩エリアで爆弾素材が手に入るようなところ、ボスは爆弾に弱いですって言っているようなものじゃないか! もしくは、毒ガスにちなんで毒攻撃が弱点とか?


「毒も、耐性ある――っていうか、環境に、適応するなら、素材がとれる、その二つは、弱点に、ならない」

「そもそもオンラインゲームにそのセオリーは当てはまらないですよ」

「そうだったこれコンシューマーじゃなかった……」

「BFOは、オンラインゲーム」


 第一、その手のギミックやるならストーリークエストでやるよね……普通のダンジョンなら事前に準備して挑むよね。無自覚だったけど、内装が僕好みで興奮していたらしい。

 今度は僕が顔を赤くしてプルプルする番であった。


「うぉおおお」

「お、お兄ちゃん――らむらむさん、何をするつもりです?」

「なんか、いじりたく、なって」

「ダメですよ? 今そういうことしたらダメな場面ですからね、ほら、ボスも迫って――って忘れていたです! ボスが攻撃してくるですよ!」

「うわー恥ずかしい――水魔法連携、1番!」


 泡を発生させ、前に走る。泡で滑り、水を噴射する魔法で加速し、最後に水で出来たハンマーを叩きつける魔法コンボ。最近練習している小回りの利く加速方法を模索する中で開発した、攻撃用コンボだ。

 元々は泡と水噴射による加速案だったのだが、小回りが利かないのが難点だった。だが、加速して攻撃を叩きつけるとダメージが増加するので攻撃用のコンボに使っている。

 1つのワードで自動的に複数の魔法が連続発動する――言うなれば公式マクロだろうか?

 そして、このトカゲに1つ言いたいことがある。


「水弱点なのか」

「そりゃ、こういう、ダンジョン、だし」

「あ、お兄ちゃん。攻撃して落ち着いたなら下がっていてほしいです。適当に大技撃ちますので」

「じゃあ離脱する」

「あたしも、必殺の――ごめん、ファンブル」


 直後に、らむらむさんが消し飛んで隣にいたアリスちゃんも壁にたたきつけられた。


「な、なにをするです!?」

「とりあえず蘇生薬使っておくね」

「……ごめん、なさい。出目が、悪かった」

「そういえば【遊び人】でしたね――ってなんで【遊び人】なんですか!?」

「今更今更」

「そういう、気分」

「らむらむさんももう少し悪びれようね」


 なお、ボスは今も攻撃中。

 火炎放射なんてベタな攻撃をしてきているが、僕がマーメイドを、アリスちゃんがイフリートを召喚することで防御をしている。水と炎の二層バリアである。対抗属性もしくは同属性の魔法によっては属性攻撃の類は完全防御可能なのだ。ボス敵の攻撃は強力なので二層構造以上にしないと防げないが。ちなみに、ドラゴン種の攻撃だとバリアが破壊されるので回避推奨。


「それじゃあ、もう一回、逝ってくる」

「お兄ちゃん、一応下がっておきましょうか」

「だね」

「あ、ファンブル?――」


 直後に、再びらむらむさんは吹き飛んだ。ただし、今度はボスを巻き込んだのでダメージを与えることに成功していたが――いや、むしろ今の一撃で吹き飛んだよオイ。

 爆破耐性あるはずと思ったが、【遊び人】の自爆は判定が違うのだろう。っていうかアホみたいな火力だったあたり、最後は何か変な出目が出たらしい……とりあえず再び蘇生薬、と思ったがアリスちゃんが今の経験値でレベルアップし、ちょうど蘇生魔法を習得したのでそちらで蘇生。


「……死ぬかと、思った」

「実際死んでいたよね」

「最後のなんですか」

「…………ファンブルは、ファンブルだけど、珍しいやつ。効果範囲の、敵、即死」

「相手ボスでしたよ!?」

「ボスも、関係、なし。ただ、本当に、激レア……ボスを、即死させるのは、【遊び人】限定」

「確率とか聞きたくないなぁ……」

「お目当ての素材は出たですか?」

「……ファンブル」

「出なかったわけね」


 この後、ログアウトするまでらむらむさんの周回に付き合った。

 まだまだ素材が必要だと、別のダンジョンに旅立った彼女の死んだような瞳が印象的だったけど……あの人はいったい何を作るつもりなのだろうか?

今後も若干更新不定期になるかも。

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― 新着の感想 ―
[一言] 毎日の楽しみが減るのは残念ですが、無理せず続けていただければ幸いです。
[一言] 100話おめでとうございます!
[良い点] エクスカリバールじゃないですかw [気になる点] ファンブルは既に致命的失敗なのに、まだ一段上あるかwww
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