表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
物語の終わりを君と  作者: お芋のタルト
第一章『運命』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/69

第二節『旅立ち』① ・初接触・


「おーいシェイム、一緒に帰ろうぜ」


放課後、人影の薄くなった教室で、ノディックがいつものように声をかけてきた。


「ノディックの家なんてすぐそこなのに、よく俺を誘うよな」


「お前の果てしなく長い帰り道を、一瞬でも彩ってやってるんだよ」


彼はウィトラー家の長男だ。

元貴族というだけあって、都心の一等地に大きな屋敷を構えている。


それに対して俺の家は町外れ。

徒歩三時間という狂気の距離だ。

毎日それを歩いて通っているのだから、遅刻の一回や二回、三回や五回、十回……くらいは大目に見てほしい。


「いい加減、寮に入ればいいじゃねぇか。お母さんからも許可もらってるんだろ」


「ばーか。家に一人になんてできるかよ。それに余計な金もかかるだろ。できるだけ負担はかけたくねぇんだ」


「相変わらず頑固だなぁ」


いつものやり取りだ。

ノディックとしては、俺が近くに住めば遊ぶ機会が増えて嬉しいのだろう。


「今日は先に帰っててくれ。用事があるんだ」


珍しく誘いを断つと、ノディックは口をへの字に曲げた。

少しの沈黙の後、今度はニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべる。


「ははん。さては例の夢少女に会いに行くんだな?」


「……は?」


俺の反応などお構いなしに、ノディックは舞台役者さながら大げさな身振りで語り始める。


「ああ、行方も知れぬ美しき姫君よ……私はあなたに会えぬ苦しみで――」


「やめろ」


今日遅刻の言い訳に使った話は、瞬く間に歪められて広まった。

夢の中で美少女と恋仲になっていた、という最低な形で。


一日中いじられ続け、マーラを問い詰めたが、返ってきたのは無表情のピースサインだけだった。


「ま、そういうことなら仕方ないか。じゃあまた明日なー」


ノディックはあっさりと教室を出ていった。

深追いしないのは、彼なりの気遣いなのだろう。


気がつけば、教室には俺一人。

静まり返った空間が、今日一日の出来事をどこか夢のように感じさせる。


「……よし」


小さく呟き、荷物を肩に担ぐ。

用事と言ったものの、大した理由があるわけじゃない。


ただ――


今朝の夢が、どうしても頭から離れなかった。

俺は導かれるように学園を後にした。





 街を抜けるまでの道は、人通りも多く、いつも通りだった。

だが二時間ほど歩くと、景色は一変する。

自然が増え、街灯もまばらになる。


今日は満月で助かった。月明かりが道をぼんやりと照らしている。

それでも、胸の奥に違和感が残っていた。


あの夢。

草原、夕焼け、そして――俺を殺した女。

なぜ、あれほど鮮明なのか。

なぜ、忘れられないのか。


「夜分に失礼いたします」


「っ?!」


突然、声がした。


正面を見ると、男が立っていた。

フードを深く被り、黒いローブに身を包んだ男。


 ――普通じゃない。


「お、俺に何か用ですか」


本能が叫んでいる。

この男を刺激するな、と。


「あなたの左腕……その腕輪。やはり間違いないようですねえ」


男の視線が、俺の腕輪に注がれる。

反射的に腕を隠した。

父の形見であるこの腕輪は、幼い頃から身につけている。


ただの賊にしては、雰囲気が違いすぎる。


「それが……何か?」


重心を後ろに移し、逃げる準備を整える。


「その腕輪を付けているということは――あなたには死んでもらわなければなりませんねえ」


その瞬間、俺は走り出していた。

街の方角へ、全力で。


だが――


「どこへ行くんですか」


「カハッ……!」


腹部に、凄まじい衝撃。

いつの間にか男は回り込んでいた。

一撃で、身体が言うことをきかなくなる。


分かる。

こいつは、学園の誰よりも強い。


「おやおや。まだ()()()()()が切れていないようですねえ」


意味の分からない言葉。


「しかも、()()【覚醒魔力】も発現していない……今が殺し時ですねえ」


男の足が振り下ろされる。


――だが、当たらない。


俺は、間一髪で飛び退いていた。


「何者だ……!」


逃げられない。

覚悟を決め、構えを取る。


男は、ゆっくりとフードを外した。


「申し遅れました。私は【闇の一族】、【十八将】が一人――ティリア」


月明かりの下、男は優雅に一礼する。


「あなたの命を頂きに参りました」


その礼儀正しさに、吐き気を覚えるほどの狂気を感じた。

少しでも面白いと感じた方はブックマークをお願いします。

評価やコメントなどもお待ちしています!

評価は広告下の☆☆☆☆☆から出来るのでお気軽に是非!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ