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物語の終わりを君と  作者: お芋のタルト
第四章『炎舞』

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第二節「光無き」② ・最高代員・

 「はい、確認が終わりました。冒険者証を更新しましたので、お受け取りください」


ギルドの受付嬢はにこやかに俺たちを祝福する。

俺とフィリイはカードを受け取ってその場で小さく震える。


「シェイム君!!」


「フィリイ!!」


お互いに冒険者カードを見せつけ合う。


「俺達も……」


「私達も……」


「「E級冒険者だ!!」」


その場で力強くハイタッチをする。

ここにたどり着くまでが楽な道のりではなかったため、その分大きな達成感がある。


改めて冒険者証を眺める。

そこにはしっかりと「E」の文字が刻み込まれていた。


【メルバイン】滞在7日目の今日、晴れて俺たちはE級昇格を果たした。

この6日間、俺たちは1日に5個というハイペースで依頼を達成していた。

この街に冒険者はほとんど居ないため、独占しても誰かの迷惑になることはない。


もちろん、この6日間もイギルとゴウと過ごした。

俺たちが依頼を行っている時はゴウが、ゴウが食料を確保している時は俺たちが、それぞれイギルの傍にいた。

俺とゴウが早朝のトレーニングに行っている時はフィリイがイギルと一緒にいたし、イギルが1人になることはなかった。


「E級になると、確か依頼の幅が広がるんだよな」


「そう!F級にはあんまり無かった魔物討伐系の依頼も多くなるから楽しみだね!!」


フィリイはキラキラと目を輝かせていた。


「シェイム君、早速E級の依頼受ける?!」


フィリイが興奮した様子で俺に迫る。

両手を忙しなく振っているのでなんか怖い。


お、落ち着け……!


「いや、今日はもう日が暮れるし止めとこう。それより、あいつらに……自慢しに行かないか?」


「そうだね!みんなどんな顔するかなー!」


フィリイは嬉しそうにギルドを後にする。

俺には、イギルがフィリイを祝福して俺に興味を示さない未来がはっきりと見えた。






 「へえ、良かったじゃん」


「もっとこう……あるだろ……」


イギルは俺の冒険者証を興味無さそうに鼻をほじりながら一瞥(いちべつ)する。


案の定、イギルは淡泊な反応を示した。

フィリイが冒険者証を見せた時は自分の事のように喜んでいたくせに。

まあ事前に分かっていたことなのでそこまでダメージは無い。


「短期間でよく頑張ったな!これはお祝いが必要だな」


ゴウは俺たちを偏りなく祝福してくれた。

その気持ちが暖かい。


「じゃあ明日は街で美味しいものいっぱい食べよっか!」


「え!いいの!」


「うん!お祝いする時は思いっきりじゃないとね!」


フィリイの提案にイギルは思いっきり顔を綻ばせた。


俺たちは基本的に自給自足の生活をしている。

決して美味しくないものを食べている訳では無いが、なんせ食材が似たようなものなのでどうしても味に変化が生まれにくい。

それに比べ、街には様々な食べ物がある。


幸いE級に上がるまでの依頼で小金貨2枚と大銀貨8枚を稼いだ。

こう考えるとやはり冒険者業は儲かるな。


まあ、普通はこんな短期間でこんなに依頼をこなすのは難しいんだけど……。


「よし、とりあえず風呂に行ってこい!」


ゴウは、はしゃぐ2人をなだめて夕飯の用意を始める。

まるで母親だ。


興奮冷めやらぬ2人は、スキップしながら温泉へと向かって行ったのだった。



 ○



 時は遡り、シェイムとフィリイがE級昇格に歓喜する数日前。


【サウルメ帝国】の帝都、【ガーダナハル】にある一際大きな建物。

その建物にはこの国の政治機関、【帝聴議会】が置かれていた。


【サウルメ帝国】は過去の【天才】である【帝君】によって興された国であるため、建国当初からその国のトップに立つ人間には武が求められた。

まだ【魔力】を【天才】しか使えなかった時代、【帝君】が求めたのは力ある者だったからだ。


そして、その風習は現在に至るまで引き継がれている。

この国のトップになるためには武力が求められる。


また、【サウルメ帝国】の政治は宗教的な側面を持っている。


この国の頂点に立つのは【帝君】。

その認識は後にも先にも変わらない。

その為、政治組織はあくまでも【帝君】の意志を聴き、それを民衆に伝えるという代換えの位置に当たる。


「失礼致します!」


部屋の戸を叩いて5人の男が勢いよくなだれ込んだ。

本来なら無礼にもなりかねない入室だったが、事は急を要する。


「【最高代員】様、本国にこのような(ふみ)が……!」


5人の内、1人の男が姿勢を低くしたまま一通の手紙を差し出した。

【最高代員】と呼ばれた男は豪勢なソファに横になったまま、気だるそうにその手紙を受け取る。


「……たかが手紙程度で押しかけやがって。お前らは手紙の一通も処理できない無能なのか?」


男が鋭い視線で睨むと、5人の男はその場で身を強ばらせてゴクリと喉を鳴らす。


彼らは【一等代員】と呼ばれ、この機関で2番目の地位を得ている。

つまり、あの男を除けばこの国で5本の指に入る屈指の実力者達。


そんな彼らが睨まれただけで臆する程、この【最高代員】の男には圧倒的な力があった。


「それがっ、その手紙の差出人が……あの【政魔】なんです!」


1歩間違えれば逆らったとして殺されかねない。

そんな恐怖の中、1人の男が勇気を振り絞って口を開く。


その場に訪れる僅かな沈黙。

男はゆっくりと手にする手紙を裏返す。

そこには、はっきりと【政魔】の印が押されていた。


「……【政魔】がこの国に何の用だ……?」


男はソファに胡座をかくと、ゆっくりと手紙を開封する。

それを見て【一等代員】達は胸を撫で下ろす。

どうやら事の重大さを理解して貰えたようだ。


男は静かに手紙に目を通していた。

そして暫くするとその手紙を勢いよく近くの机の上に叩きつけた。


それを見た5人の【一等代員】達は皆同じように首を縮めた。

何か無礼があったのではないかと怯えるが、男が引き裂けそうな笑顔を浮かべているのを見て混乱を起こす。


「……面白くなってんじゃねぇか」


「ど、ど、どのような内容が書かれていたのですか……?」


【一等代員】達は恐る恐る尋ねる。

すると、男はソファから降りて5人の目の前に立つ。


その大きな体で覆い被さるように距離を詰め、真剣な表情で話し出した。


「今から話す内容は、【サウルメ帝国】と【政魔】間の最重要機密事項だ。【一等代員】のお前たちなら、と思って話してやるんだ。……くれぐれも他言はするなよ」


5人は勿論だと何度も首を大きく縦に振る。


「……よし。【政魔】から求められたのは、ある人物の捜索とその情報提供だ。ただ、【政魔】直々の依頼だけあって探すのは普通の人間じゃない」


「普通じゃない、とは一体……」


妙に勿体ぶった話し方をする男に違和感を感じ、【一等代員】達は身構える。

どうやら捜索の対象は只者ではないらしい。


「捜索するのは今世代の【天才】、名を【シェイム】というらしい」


「……!」


男の言葉を聞いた5人は息が詰まるような思いだった。


新たなる【天才】は直ぐに殺す。

これは世界の総意であり、絶対事項。

しかし、【天才】がいつ産まれてくるかは人間には予測できなかった。


世界にあるどんな機関も、まだ【天才】が誕生していると確証を持って宣言していない。

しかし、今回【政魔】から受けた依頼には【天才】の情報ばかりか、その個人名まで特定してある。

さらにそれが()()【政魔】の情報となると信憑性は限りなく高い。

最早真実だと言っても過言ではない。


「12日前、【ヘルツ共和国】の【セルス】で【天才】が確認されたらしい。その【天才】が【政魔】の手を逃れて、今は【サウルメ帝国】の何処かにいるんだとよ」


そこまで話し終えると、男は腕を組んで悩むような仕草をする。

そして、ニタニタと徐々に口角を吊り上げていく。


「その【天才・シェイム】の居場所を特定しろ。期限は1日だ。」


「そんな!流石に無茶です!」


5人は男が突きつけた条件の非現実性に戸惑いを隠せない。

この広い帝国を1日で探し回るなど不可能だ。


「……なんだ、お前らは俺の言うことに従えねえって言うのか。それとも何か、俺の言うことがそもそも間違っているとでも?」


男から異様なまでの圧が放たれる。

重厚な【魔力】のオーラと言うべきだろうか。


「いいえ、そのようなことは……!」


【一等代員】達は死を覚悟した。


「……居場所がわかり次第、その場所に向かう馬を用意しろ。そこに……俺が向かう」


「なんと!【最高代員】様自ら向かわれるのですか!し、しかし、今回の依頼はあくまで捜索と情報提供までな筈、手を下すのは【政魔】に対する裏切りでは―――」


「馬鹿かお前」


男の鬼気迫る一言に、5人は今日何度目かの死を覚悟する。

ああ、今度こそ終わったと身を寄せ合う。


「相手は【天才】だぞ。しかも、1度【政魔】を振り切ったっていう()がついてんだ。そいつをもし俺が殺したとしたら、どうなると思う。……フハハハハハ、()()()()()()()に新たなる1ページを刻むとしよう!!」


男の名は()()()()()

民衆から【英雄】と呼ばれる、現【最高代員】。

【サウルメ帝国】最強の男である。

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