表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
物語の終わりを君と  作者: お芋のタルト
第四章『炎舞』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/69

第一節『第一歩』⑤ ・青年と少女・

 「おーい、パララウスの肉取ってきたぞー!」


「嘘だろ……?!」


「こんな事って……」


ゴウは目的の場所に着くと、大きな声でその場にいるであろう人物に呼びかける。

彼は先程狩ったパララウスを食べさせたい人が居ると言い、この場所にやってきた。

薄暗い森の中にあるこの場所。


しかし、その場所は俺とフィリイにとって見覚えのある場所だった。

そのため、その場にいるはずの人物を俺たちは知っていた。


「ゴウ兄ちゃん!!」


目の前にある組み立ての甘いツリーハウスの窓から、1人の少年が元気よく顔を覗かせる。


「遅くなって悪かったな、イギル!」


嬉しそうにハシゴを降りてくるのは間違いなく、あの生意気な少年イギルだった。

イギルとゴウが知り合いだったなんてそんな偶然があるのか?!


「え……?なんでシェイムとフィリイ姉ちゃんがここに居るんだ?」


「ん?お前らイギルと知り合いなのか?」


俺とフィリイの姿を見て、イギルは不思議そうに尋ねる。

正直俺もこの偶然に驚いている。


俺たちはイギルとゴウそれぞれに出会った経緯を説明した。

話を聞いた2人は同じような反応をしていた。


「不思議なこともあるもんだな!まさかイギルと2人が知り合いだなんて。イギルを助けてくれてありがとうな」


俺たちとイギルの出会いを聞いたゴウは、俺とフィリイに深く頭を下げる。

その姿はまるで我が子を守る親のようだった。


「いや、私たちは助けるだなんてそんな―――」


「ほんと、こいつ生意気だから大変だったんだぞ?」


慌てて否定しようとするフィリイを遮り、あの時の苦労を伝える。

本当に大変だったんだから仕方がない。


ゴウは「迷惑かけたな」と言った後ずんずんとイギルの方へ歩いて行くと、握った拳を少し強めにイギルの頭にぶつけた。


()ってえ!何すんだよ!」


イギルは脳天を押さえながらゴウを(まく)し立てる。


「盗みはするなって何回も言ってるよな?」


諭すようなゴウの説教に、イギルはすっかり勢いを無くしてしまう。

目線を下に向けて口をもごもごと動かす。


「ごめんなさい……」


「なんで盗みなんかしようと思ったんだよ」


「だってそうしたらゴウ兄ちゃんと一緒に食べられると思って……」


「食料は俺が調達してやるって言ってるだろ?」


ゴウの言葉にイギルは最後まで何か言いたげだったが、飴玉を飲み込んだかのように、イギルは苦しそうに言葉を誤魔化した。



 ○



 「この奥に天然の温泉が湧いてるんだ。俺たちは飯の支度をしとくから、先に汗を流してきてもいいぜ」


焚き火を調節しつつその周りにある肉の焼け具合を確認する。

串に通された拳2つ分もある肉達は焚き火の炎に炙られて表面の色を変え始める。


どうやらゴウが言うにはこの森の先に温泉があるんだそうだ。

この大きな岩の上に街があり、その中に森があるだけでも驚いたのに、今度はその中に温泉があると言う。

男性組がご飯を用意してる間に、フィリイは先に体を流せということだ。


ゴウの言葉を聞いたフィリイは、ありがとうと声を掛けて温泉のある方向へ歩き出した。


「じゃあ俺もフィリイ姉ちゃんと一緒に温泉行ってくる!」


肉を回していたイギルは元気よく飛び出してフィリイの後を追おうとする。

それを見た俺は慌ててその細い腕を掴む。


「ダメに決まってんだろ」


「なんでだよ!」


俺に捕まったイギルはまるで理不尽を受けているような目で睨む。


「なんでって……お前男だろ」


当然の理由をあえてそのままぶつけてやった。

なんでこんな当たり前の事言わなきゃならないんだよ。


「「「……は?」」」


俺が言葉を放った瞬間、その場にいた3人が凍りつく。

フィリイもゴウも目を丸くして俺を見る。

その体勢からピクリとも動かない。


なんだ、敵襲か?!

時を止める的な理不尽な【特性】を持った敵か?!


そんな俺の考えは目の前にいるイギルを見た瞬間に間違いだと気づいた。

腕を掴まれたイギルはその場から動こうとしない。


しかし、その表情は引きつった笑顔で左の口角だけがピクピクと動いていた。

怒り、呆れ、羞恥、様々な感情が入り交じった様なその表情で俺を見つめる。


そして、微かに動いていた唇は次の言葉を何とか紡ぎ出した。


「おっ、おっ、お……」


「なっ、なんだよ」


「お、俺は()だ!!」


……?


一瞬、頭が真っ白になる。

イギルから放たれた言葉の意味を理解できない。


イ、イギルが女……?


「はあぁぁぁあ?!」


脳が先程の言葉を受け入れた瞬間、抑えきれない驚きが襲う。

理解したはずの事実をさらに聞き返す。


「お、おまっ、お前ほんとに女なのかよ?!」


「えぇぇえ?!シェイム君気づいてなかったの?!」


「おいおい、シェイム。流石にそれはどうかと思うぞ」


いや、逆になんでわかるんだよ!

一人称は「俺」だし態度だって活発な男の子そのものじゃないか!

声が高いのだって、てっきり声変わりがまだなのかと……。


「あ、いや、イギル。これは違くて、その―――」


「……最っ低!!!」


俺の弁明を待たずにイギルはそう吐き捨てると、フィリイの手を引き森の奥へと進んで行ってしまった。


その場には気まずい空気が漂い、焚き火がパチパチと乾いた音を虚しく響かせるのだった。



 ○



 フィリイとイギル改め女性陣が温泉に向かってから数分、俺とゴウは黙々と肉を回していた。

しかし、その静寂を破ったのはゴウだった。


「それにしてもイギルを男だと思ってたのはヤバいな」


「うるせぇ」


会ったばかりだというのに、何となくゴウには気を使うことなく話すことができた。

まあ、初めの出会いが罠に掛けられたところからだったから、俺が気を使うのもおかしな話だ。


「ゴウはいつからイギルと知り合いなんだ?」


「そうだな……。俺がこの街に来たのが半年くらい前だから、それくらいだな」


何気なく聞いたつもりだったが、イギルとそんなに付き合いがあった事に驚いた。

そりゃあ仲良くなるはずだ。

そんなゴウならイギルについて詳しく知っているかもしれない。


イギルが時折見せる表情や仕草には複雑な事情を抱えている様に感じる時がある。

家出をしている事と言い、少し気になっていたのだ。


「イギルはいつからここに居るんだ?」


ここ、とはもちろん俺たちの頭上にあるツリーハウスの事だ。

イギルが自分1人で作ったのだと得意げに言っていたのを思い出す。


「イギルがこの場所に来たのは三ヶ月前だ。元々俺は旅人で、決まった場所に住んでる訳じゃねえ。家を出たイギルが俺の所に来たのもあって、このツリーハウスを俺たちで建てたんだ」


「イギルが一人で建てたんじゃないのか?」


「一人で?そりゃ無理があるだろ」


「あいつ自分一人で建てたって言ってたぞ」


「本当か?まあ確かにイギルも手伝ってくれたから間違いとは言いきれねぇな」


ゴウはかっかっかとぶつ切りの笑い声を上げる。

その時のことを思い出しているのだろう、彼の表情は楽しそうだった。


「イギルはなんで家出なんてしてるんだ?三ヶ月って結構長いよな」


俺がそう問いかけると、ゴウはさっきまでの楽しそうな表情をスッと引っ込めた。

そして、急に落ち着いたトーンで真剣に話し始める。


「……シェイム、お前はこの街好きか?」


急にそんな事を聞いてくる。

ゴウは俺に目を向けずに、ずっと火を眺めていた。


「うーん、好き、かな。ここに来てまだ一日目だからまだそんなにはっきり思うわけじゃないけど、いい街だと思う」


最初は戸惑ったが率直な意見を述べる。

まだ日は浅くてもこの街の人達はいい人だ。

一日だけでもそう感じられた。


答えを聞いたゴウは、1度ゆっくりと瞬きをする。

その光景が、やけにゆっくりに見えた。


「そうか。……なら、早くこの街を出た方がいいかもな」


「……それ、どういう意味だ……?」


焚き火の微かな明かりに包まれる中、夜は更に深くなっていく。


炎に照らされるゴウの横顔が酷く悲しんでいるように見えた。


「……いや、今のは忘れてくれ」


それっきり、ゴウはその話をしなくなった。

次回から第二節「光無き」に入ります!


続きが気になる!と思った方はブックマークをお願いします。

評価やコメントなどもお願いします!

評価は広告下の☆☆☆☆☆からできますのでお気軽に是非!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ