表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
物語の終わりを君と  作者: お芋のタルト
第三章『暴露』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/69

『真の悪』④(1)・たとえ悪だとしても・

 心臓が慌ただしく血液を巡らせ、危険信号を大音量で発信している。

目の前にあるのは圧倒的な絶望。


正面に向かって立っている男は異様なまでの圧迫感を放っている。

もはや常人の域ではない。


男の名はルーディン=マークス。

【世界三大兵団】のひとつ、【政魔】の5番手である実力者。

そんな人物が俺の命を狙っている。


俺を、【()()】を殺そうとしている。


「魔物が攻めてきてるって聞いたからそっちを手伝ってたら、北の方から【天才の魔力】を感じるんだから少し焦ったよ」


彼は俺から片時も目を離さない。


「魔物の群れはほとんど壊滅させてきたから向こうは大丈夫だと思うんだけどね。死傷者はそれなりにいるみたいだけど……問題はお前だ」


マークスさんはゆっくりと歩き出す。


すぐ隣には血溜まりの中に倒れるフィリイがいる。

まだ息はしているが酷い出血だ、時間が無い。


彼女は、彼女だけは。

たとえこの命にかえても守ってみせる。


「遂に化けの皮が剥がれたな。逆に今までどうやって隠れていたのかが気になる。()()()の違和感は正しかったというわけだ」


マークスさんが言う「あの時」とは、おそらく初めてナゼルに会った時の事だ。

あの時騒ぎを収めた彼は俺と目が合った途端に表情を変えた。

やはりあの時感じた危機感は本物だった。


「貴方の狙いは俺なんですよね……だったらお願いします、彼女を助けてください。どうか、お願いします」


気を抜けば一気に体が崩れ落ちてしまう。

ゆっくりと地面に両膝、両手を着き、頭を地面に擦り付ける。


「この……通りです。どうか、どうかお願いします」


今の俺に、彼に勝てるだけの力はない。

【魔力】が覚醒し、これまでよりも強くなった。

しかし、それを持ってしてもマークスさんには敵わない。


思い込みではない、彼から感じる【魔力】が全てを物語る。

俺とは次元が違う。


今の俺は無力だ。

こうすることでしか彼女の安全を確保する術がない。


「……何を言ってるんだ、お前」


マークスさんは、呆れたように大きくため息をつく。


「そいつがお前にとってどんな人なのか、なんて知らん。ただ1つわかることがあるとするならば、【天才】に(かば)われる人間なんて【天才】と同様に無価値だと言うことだ」


「……マークスさんも、そう言うんですね」


ティリアは【天才】を匿う人間を無価値だと言った。

マークスさんは【天才】に庇われる人間を無価値だと言った。


【天才】を匿う人間、【天才】に庇われる人間などどちらも同じ。

【天才】に関わる人間に価値なんて無い、そう言うのか。


「俺は昔から……【政魔】に憧れてました。強い力と高い(こころざし)でみんなを守るかっこいい人達だって」


ゆっくりとその場に立ち上がった。


【天才】を憎む気持ちはよくわかる。

実際、俺だってこの前までそうだったから。


先代の【天才】は最終戦争を起こすという大罪を犯した。

だから【天才】は危険視されているんだ。


でも、それでもフィリイやセルスの街の人達は関係ないだろ。

【栄華学園】のみんなだってそうだ。

彼らに罪はない。


誰だって、明日を生きる権利を持っている。


それを奪うというのなら、【闇の一族】も、【政魔】も、正しいとは思わない。

彼らがそれを善というのなら、俺は悪でいい。


両手を広げ、後ろにいるフィリイを庇う。


「彼女だけは、必ず守る」


マークスさんを強い眼差しで見つめる。

彼は表情をピクリとも動かさない。

静かに動かないまま、俺を見ていた。


その時だった。

マークスさんを中心にして膨大な【魔力】が溢れ出した。

【魔力】を放出しているだけでその場に風が吹き荒れる。


「……()()、だ?【魔力】も未熟なお前が、俺を相手に()()って言ってんのか?」


マークスさんから溢れ出る【魔力】は留まることを知らない。

俺の何十倍もの【魔力】を放つ彼は右の拳をゆっくりと後ろに引く。

正拳突きとも言われる構えだ。


「守ってみろよ。お前諸共消し飛ばしてやる」


放出されていた莫大な【魔力】が拳一点に集中する。

その瞬間、【魔力】はさらに膨れ上がる。

【魔力濃度】が濃いのか、マークスさんの右手を包むように大きな半透明の青いオーラが見える。


それを見た俺の頭は「死」を直接結びつける。

あれを食らえば跡形もなく消える事くらい誰にでもわかる。


でも、それでも最後まで抵抗してやる。

何もしないまま終わるなんてごめんだ。


「消えろ、【天才】」


マークスさんが右の拳を正面に突き出した。

集約された【魔力】の塊が彼の目に映る全てを消し飛ばす。

迫り来る死を前に、俺は目を(つぶ)った。


「どうせ死ぬなら、あの時の夢みたいにフィリイに殺して欲しかったな」


最期にそんな事を思った。


そして次の瞬間、目の前が一瞬眩しく煌めく。

俺が見た景色はそれが最後だった。

少しでも面白いと感じた方はブックマークをお願いします。

評価やコメントなどもお待ちしています!

評価は広告下の☆☆☆☆☆から出来るのでお気軽に是非!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ