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物語の終わりを君と  作者: お芋のタルト
第二章『初陣』

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第三節『最果て』⑤ ・底無し・

 「みんな、気をつけな。1つ来てるよ」


仙視(せんし)】を使うプルハが、眉をひそめながらメンバーに伝える。

戦闘開始の合図から15分が経過した頃だった。

どうやら近くに敵のクランが居るらしい。


「数はそんなに多くないみたいだね……前の道から5人ってとこかねぇ」


少し離れたところに敵の仲間が居ると告げたプルハは、不気味にニヤリと笑う。


「正面から来るとは運のない奴らだな。リン、頼めるか」


ディアスは落ち着いた様子でリンに視線を送る。


「は、はいです!」


リンは少し自信なさげだが、その目は真っ直ぐにディアスを見つめ返していた。


ディアスの合図で俺たちのクランはその場に足を止める。

時を同じくして、前方に敵の姿が現れた。


「おい、アイツらやっちまうぞ!」


5人の男達は手に武器を取り、真っ直ぐに俺たちの方へ走ってくる。

プルハはピッタリと人数まで言い当てていた。


「い、行きます!」


リンは背中に背負っていた長い棒状のものを勢いよく抜き取った。


あれは……杖だろうか。

どうやらリンは冒険者としては珍しく、戦闘に杖を使用するようだ。


自分の身の丈以上もある杖を地面に勢いよく突き、ゆっくりと目を閉じた。


しばらくすると、リンが放つ【魔力】が大きくなっていくのを感じる。

リンの周りの空気が、微かに揺らいだ気がした。


「【魔杖(まじょう)リタルス】初期形態、【魔力】解放」


そう言うと、リンは力強く目を見開いた。

瞬間、周囲の【魔力】が突然発火して彼女の身体は赤い炎に包まれる。

その炎は(まばゆ)い光を辺りに放ち、その場の人間の目を(くらま)ませる。


「燃えてる……のか……?」


いや、違う。

これは炎では無い。


炎と見間違えるほど濃い赤色で、そして勢いのある【魔力】のオーラだ。

彼女から大きな【魔力】が伝わってくる。


燃え盛るオーラの中で、リンは普段の様子からは想像もつかないような勇ましい表情をしていた。


「【煌 焔 火 球(こうえんかきゅう)】!!」


リンがそう叫ぶと、彼女を纏っていたオーラが一瞬にして杖の先に集中する。

拳ひとつ分程に凝縮されたオーラはよりいっそう強く光を放つ。


そして、その【魔力】の塊は5人の集団に向かって勢いよく射出された。

(まばゆ)い光を放ち、廊下を明るく照らしながら一瞬で駆け抜ける。


男たちの少し手前に着弾したそれは、次の瞬間大爆発を起こした。

爆散した【魔力】が瞬く間に辺り一面を赤一色に染める。


離れたところに居るはずの俺たちにも爆風が押し寄せてくる。

あまりの風圧に思わず腕で顔を覆った。

その場で踏ん張らないと簡単に吹き飛ばされてしまいそうだ。


規格外の威力に、真っ先に脳裏に浮かんだのは5人の敵の安否だった。

死者を出してしまったら元も子もない。

というか、人を殺すなんてとんでもない。


風が()むと、5人の男たちは後方に飛ばされ呆気なく倒れていた。

箒ではかれたように壁際に寄せられている。


……死んでないよなあいつら。


人形のようになった敵を心配そうに見ていると、リンは照れと罪悪感が入り交じったような仕草をとった。


「威力は最小限に抑えたんですけどね……」


あれで制御してたのか?

あんなに強力な【魔力】見たことないぞ。


「どうだ、これがリンの【爆破(ばくは)の魔力】だ」


気がつけば、ディアスが誇らしげな表情を見せていた。

他のメンバーも同様に俺たちを見ている。


「とんでもないな」


「リンさん凄い!!」


こうして実際にリンの実力を目の当たりにすると、彼女がB級冒険者であることも、【月華聖団】のメンバーがみんな頼りにしているのも納得がいく。

そして何より、みんなの顔を見れば彼女が愛されているという事がすぐにわかった。


念の為安否を確認しに行く。

幸い5人は気を失っているだけだった。

このまま乱雑に転がしておくのも可哀想なので、壁に寄りかかるように座らせておく。

どことなく彼らは悲しそうな表情をしている気がした。


「こいつらの味方が来ないうちに、ここを離れるぞ」


ディアスの指示により、俺たちは再び陣形を組んで歩き出す。



 ○



 「リンさんの()()、【魔装(まそう)】だったんですね」


歩き始めて暫く経った頃、ふとフィリイがリンに話し掛ける。

彼女はじっくりと舐めまわすようにリンの杖を観察していた。


材質は鉄のようなもので出来ており、長細い棒の先端に1つの円が付いている。

そして、3つの細長い菱形の装飾が、円に等間隔に刺さっている。


【魔装】とは、それ自体に【魔力】を流す事で様々な特殊効果を発揮する装備の事を言う。

【魔装】は自らを扱う人間を選ぶと言われ、使用者との相性が悪ければ効果を発揮しない。

言い換えるならば、【魔装】に認められた者だけが使用者になることができる。


【魔装】にも認められているのだから、リンは本当に凄い人だ。

しかし、フィリイに【魔装】の事を指摘された彼女は芳しくない表情を浮かべた。


「私は……弱いんです」


少し俯いたかと思うと、今度は顔をあげてフィリイに笑顔を見せる。


何故だろうか。

その笑顔が泣いているように見えたのは。


フィリイはその言葉に対して、何も返さなかった。


「全員止まってくれ」


ディアスの声は既に緊迫していた。

俺たちはすぐにその指示に従う。

何故ディアスがそのような指示をしたのかを直ぐに理解したからだ。


進む道の先に、冒険者が数人佇んでいる。

彼らの目は確実に俺たちを捉えていた。


「ディアス、後ろもだ」


シルバがディアスに囁く。

ちらりと後ろに視線をやると、そこにも数人の冒険者が見て取れた。

いつの間にか囲まれていたようだ。


「くそっ、あたしの【仙視】が使()()()()時に、タイミングの悪い奴らだね……!」


プルハが悔しそうに呟く。

どうやら、【仙視】にはクールタイムがあるようだ。


「リンはここで休んでいてくれ。俺とミーリックは正面、シルバとプルハは後方をやるぞ。シェイムとフィリイはリンの護衛を頼む」


ディアスの的確な指示で、全員すぐさま戦闘態勢に入る。


ディアスは大剣、ミーリックは大槍。

シルバは細剣、プルハは短剣と盾。


こういう咄嗟の時に指示を出せるのを見ると、やはりリーダーはディアスなんだと実感する。


「さっきは俺たちの仲間が世話になったな」


前方にいる男のひとりが語りかけてくる。

いや、こちらの反応を待っている様子はない。

まるで自分自身と対話しているようだ。


「お前らはここでリタイアだ!!」


男が叫ぶと同時に、前方後方共に俺たち目掛けて駆け出した。

それと同時にディアス達も敵に向かって走り出す。

できる限りリンから遠い場所で戦闘を行うためだろう。


この状況から察するに、恐らくリンも今は【爆破の魔力】を使うことができないのだと思う。

ならば尚更2人で確実に護らなければならない。


意識を彼らの戦いに集中させる。

【月華聖団】は人数不利なのにも関わらず、戦況は優勢だった。

もしかするとリンを守らなければという心配は杞憂だったかもしれない。


少し油断をした、その時だった。

プルハの叫び声が聞こえる。


「しまった!」


プルハの横を1人の冒険者がするりと抜けた。

剣を上段に構えて、俺たちの方に向かってくる。


俺たちがリンを守りながら戦っているのは一目瞭然。

彼女がこの【クラン】の中核にいる事など相手も理解している。


向かってくる冒険者はフィリイよりも俺の方が近い。


「ようやく俺の出番か」


剣を抜いて戦う――はずだった。


「え?」


突如、俺の体は不安定な場所に投げ出される。

向かってくる冒険者とその後ろにいる【月華聖団】のメンバーが、視界を猛スピードで(のぼ)っていく。

メンバーは皆、驚愕と焦燥に駆られた表情をしていた。


いや、これは皆が上っているのではない。

俺が、()()()()()()()


視線を足元に移す。

そこにあったのはただただひたすらに闇。

俺を支えていたはずの地面は、忽然と姿を消していた。


なんだ、どういうことだ、何が起こった。


訳も分からないまま、底の見えない暗い穴へと落ちていった。

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