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物語の終わりを君と  作者: お芋のタルト
第二章『初陣』

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第二節『偽りの』③ ・F級依頼・

 【魔力】特訓2日目。

昨日と同じように俺たちは森の中にいた。


昨日の練習では人生で初めて【魔力】を操ることが出来た。

その感動は計り知れなかったが、実感は無い。


なんせ【身体強化】が出来たのはほんの2、3秒程度。

しかもほんの少しの雑念が入るだけで消える始末。

とても実践で使えるレベルではない。


そんなわけで今日も練習に励むのだが、頭がぼんやりしているため身が入らない。


なんでかって?

本当に、聞いてくださいよ。


昨日練習を終えた俺たちは、冒険者ギルドへ足を運び依頼を探した。

案の定、依頼は無くフィリイは残念がっていた。


しかし、そんなことは些細なことだ。

問題はその後。


「日中ずっと一緒にいるのに、朝わざわざ待ち合わせするの変じゃない?」


全てはフィリイのこの一言から始まった。

彼女は効率の面でも同じ宿に泊まるのがいいんじゃないかと主張した。


これには俺も賛成だった。

同じ宿に泊まっていれば時間も合わせやすいし、待ち合わせ場所に遅れることも無い。

ただ、あくまでも俺が賛成したのはここまでだ。


フィリイの提案に乗り、俺たちは同じ宿を取りに行った。

事件はその受付で起きたのだ。

宿の受付で部屋をどうするかと聞かれた。

もちろん俺は常識的な回答をした。


「2部屋お願いしたいんですけど――」


どう考えても普通の回答だ、だよな?

突拍子もないことを言い出したのはフィリイだった。


「あ、部屋はひとつで大丈夫です」


俺の言葉を遮ってフィリイはそんなことを言い出した。

慌てて彼女の方を振り向き問いただす。


「いやいや、流石にそれは――」


「だって、お金がもったいないじゃない。私たちまだ依頼達成してないから収入ゼロよ、ゼロ。それに、何かまずいことでもあるの?」


「まずいも何も、何かあってはダメというか――」


「シェイム君は、何かするの?」


「……いや、何もしないです、はい」


そんな透き通った目で俺を見ないでくれ!!


以上が、事件の一部始終だ。

できるだけ安い部屋を選んだためベッドがひとつしかない部屋。

お陰様で昨日は一睡もしていない。

まだベットが少し広めだったのが救いだった。


全く、年頃の男の子を舐めるんじゃないよ。


「うーん、シェイム君、今日はなんだか集中できてないみたいだよ?何かあった?」


フィリイはそんな呑気な声を掛ける。

何かあったかってか、大アリだよ。


1度目を開き流れる汗を拭う。

目線で何となくメッセージを伝えてみるが、フィリイは全く意に介さなかった。


「何でか()()()()()()()、集中出来ないみたいなんだ。今日はこの辺にして依頼見に行かないか?この時間ならまだあるかもしれないし」


俺自身の保身のための提案だったが、その案にフィリイは目を輝かせた。

そうだね、あるかもしれないよね!とウキウキしている。

ほんと、わかりやすい人だ。

彼女にはきっと裏も表も存在しないのだろう。



 ○



 冒険者ギルドに着いた俺たちは、依頼ボードの前に張り付いていた。

そこには紙がたくさん貼り付けられているが、相変わらずF級の依頼は見当たらない。


「やっぱりダメかー」


予想通りの結果に、そんなに落ち込むことは無かった。

フィリイも半ば諦めた表情をしている。

彼女にこんな顔をさせたくない。


「もう1回探してみるか」


そう気合いを入れ直した時、おそらくE級の冒険者なのだろう、男がE級依頼をボードから引っ張っていった。

依頼書はピンで止められていたため、引っ張られた紙の上あたりは縦に裂けていた。

ああやって紙を受付に渡せば依頼を受諾したことになる。


男を暫く羨望の眼差しで追った後、再びボードに目を向ける。

そして、ついに見つけた。


「フィリイ、あった!」


慌ててその紙を引っ張り取る。

さっきの男が持っていった依頼の下に、F級の依頼が隠れていたのだ。


俺は高々とその依頼を掲げる。

フィリイはおおー!とはしゃいでいる。

どうだと言わんばかりに胸を張り、フフんと鼻を鳴らしてから誇らしげにその依頼に目を通した。



・F級依頼・

荷物を運ぶだけの簡単なお仕事!

基本的には安全です!

依頼主:アルマ

報酬:銀貨10枚

受諾条件:なし



俺は腕を組み、頭を悩ませる。

なんとなく怪しいと思うのは俺だけか?

()()()にはの文字がなんとも()()()

何かを誤魔化しているような気がしてならない。


「フィリイ、残念だけどこの依頼はやめといた方が――」


顔を上げると、そこにフィリイの姿は無かった。

いつの間にか手に握っていた依頼書も消えている。


まさか――


「シェイム君〜!」


フィリイが笑顔で俺の元へ走ってくる。

そんな、嘘だろ。


「依頼、受諾してきたよ!」


そう言って満面の笑みを浮かべる。

挙句の果てには堂々とピースサインを向けてくる始末。


「そうか。それは良かった。あはは、あはははは」


「シェイム君、どうしてそんなに笑ってるの?なんか怖いよ……?」


「あははははは」


「シェイム君が壊れた?!戻ってきてよー!」


フィリイが俺の肩を大きく揺する。

案外力があるのか、首がガクンガクンと揺れる。

その後も冒険者ギルドには、俺の乾いた笑い声が響き渡っていた。

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