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一話

愛し子と聖女がバトったらどうなるかなぁ、という思い付きで書き始めました。さくっと読んでください。


 愛し子はその通り、神に愛された娘だ。


 彼女が現れた国は神託によって繁栄を約束され、万が一にでも虐待しようものなら神罰によって滅ぶという。


 そして愛し子が現れし時、聖女も生まれる。


 愛し子は神託を、聖女が祝福を。この二人の娘を各国は血眼になって探し求めた。


 シルヴィア・シントラーは今代の愛し子だ。


 彼女が生まれた時、季節外れの花々が咲き乱れ、どこからともなくうつくしい旋律が流れ、かぐわしい香りがしたというのだから疑いようがない。伝承にある通りの出現に、産婆が腰を抜かして祈りを捧げたほどだ。


 この時まだ目が開いていなかったシルヴィアだが、きらきらしたものが降ってくるのは見えていた。彼女が生まれ出て最初に認識した言葉は産婆の「ありがたやありがたや」と天上からの『うぉぉおおおおー! 生まれたー! パパだよー!!』という、なんとも残念な神の声であった。


 シントラー家の娘が愛し子という報告はすぐさま王宮にもたらされ、元は平民であったシントラーは公爵位を賜った。シントラー夫妻は驚き、爵位を辞退したが愛し子の生育と教育のためと説得され、これを受けた。さらに辞退すれば娘と引き離されるとわかったからである。


 とはいえ一代限りの公爵家、しかるべき領地はなく、住居は王宮の一角に用意された城になった。シントラー夫妻はわきまえた人で、けして出しゃばらず、シルヴィアと名付けた娘の成長を楽しみにひっそりと住んでいた。


 そんな両親とパパに愛されたシルヴィアは愛し子にふさわしい器量を兼ね備えていた。


 長い黒髪は艶やかで星々のきらめく銀河のよう。白い肌は透きとおり、黒い瞳は未来を見通した。いつも微笑みを忘れず、誰に対しても親切でやさしく親身になって接した。


 なにせ天上のパパときたらシルヴィアに近づく人への評価が極めてからいのだ。下心を持って近づく貴族の動向など神にはお見通しとばかりにぺらぺらと教えてくる。


『こやつはこんな顔をしておるが実はえげつない商売をしておるぞ。なぁに、シルヴィアに手を出そうものならパパがやっつけてやるからな』


 パパがやっつける=神罰である。シルヴィアは目の前の人物が翌朝とんでもない有り様で発見されないよう嫌悪を見せなくなった。何重ものオブラートで包まれた悪事は止めとけを伝え、フォローに回った。うっかりロリコンに話しかけられた後など、原因不明の病でロリコンのアレが腫れあがり使い物にならなくなったくらいである。危険人物がいなくなったのはいいが、もうちょっと人権を考慮してあげて欲しい。ロリコンはいまだ病に悩まされ、人前に出られなくなっているそうだ。


 スラム街に疫病が流行した時など十歳のシルヴィアが自ら足を運び、病の原因を突き止め特効薬と対処法を神託によって人々に伝えてみせた。


 愛し子の悪口でも言った人々をパパが排除しようとしたのではと、この時のシルヴィアは戦々恐々だったのだが、単に貧困による栄養失調と不潔が原因だった。パパなら害虫退治の感覚でやりかねないのが恐ろしい。『シルヴィアはやさしいなぁ。さすがパパの娘だ! よし、それじゃあ貧乏脱出大作戦しよっか』という神託を、なんとかそれっぽく翻訳して伝えるのがシルヴィアの役目であった。


 心やさしくうつくしい姫君。影の苦労を知らぬ人々は愛し子を歓迎した。やがて国中に評判が広がったところで、満を持した王家は王太子とシルヴィアとの婚約を発表した。


 いかに愛し子とはいえ元は平民。貴族、特に王家との繋がりを得たい高位貴族の不満を抑えられるだけの材料が揃うのを待ってのことである。


 王太子のカインはシルヴィアより一つ年上の第一王子。二人は共に成長し、共に学び、少年と少女の初々しい恋模様を王宮だけではなく国民全員が見守っていた。




パパのモデルは心配性なお父さんです。

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― 新着の感想 ―
[一言] このパパとっても愉快すぎる笑笑
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