召喚
放課後の図書室で面白い本を探すのが、私の日課だった。
私は本が好きだ。特に小説。フィクションの世界に魂を飛ばしてしまえるほど、夢中になれる作品が良い。
その日も私は、広い図書室の奥に入って小説漁りをしていた。最近の学生は本などには興味を持ちにくいのだろう、まだ午後四時だというのに生徒はほとんどいない。……まあ、私自身も女子中学生であり、「最近の学生」なのだが。
短く切るのを面倒臭がったせいで膝下まであるスカートが、少しだけ足に絡みつく。もう慣れきったその感触を引き連れ、私は公開書庫に向かった。
公開書庫は一応公開されているのだが、入る人は滅多にいない。しかし、その静かさがまた良い。埃に黴が入り混じってくしゃみを誘う妙な匂いも、下手に触るとボロボロ崩れてしまうほど古い本があったりするところも、全て私の好みだ。
ずらりと並ぶ本の隙間を、ゆっくりと歩く。そして、目に留まった本をひとまず開いてみる。
いつものように。そう、いつものように。
ぱらりと表紙をめくると、題名と作者名が書かれている。――――――はずだった。
そこには魔法陣があった。ページ一枚にでかでかと描かれた、白く光る幾何学模様の円。
光る?本に電球が付いているわけでもあるまいに、なぜ?
…それ以上のことを考える暇はなかった。魔法陣の光は一瞬の内に強まり、私の身体を飲み込んだからだ。