第サン話 ジュラセンパドックの森
ほぅ、久しぶりに、結界に触れた奴がいるな。
上か。
大方ドラゴンが、加えた獲物でも落としたか?
美しい黒猫は、勝手に開いた出窓から、晴れ渡った空を見上げる。
森全体に掛けた結界がオーロラの様に色を変えている。
この結界はこの猫にしか見えない。
ふむ。
・・・、日光浴がてら見に行ってみるか。
…
鬱蒼とした木々の隙間からキラキラと日が差す。
さくさくと枯れ落ちた葉を踏みながら歩く。
木々の天井にぽっかりと、空が現れた。
その光の下には、男が倒れているようだ。
ここら辺では見ない格好である。
黒い服は所々破れており、
首にリボンの様な紐をつけている。
大方、召喚魔の一種であろう。
「にゃぁ(そなた)」
声をかけても、反応はない。
見れば、頭から血が流れ、
脚やら腕やら曲がらないであろう方へ曲がってしまっている。
ふむ。
「(#search 致命傷)」
魔法で状態をみる。
なるほど。
脚と腕が折れ、肺に穴。
あぁ、木が刺さっているな。
「ごぽ」
男が口から血を吐く。
ほぅ、まだ、生きているのか。
しぶとい奴だな。
「(#clear 致命傷)」
致命傷を取り除く。
折れた脚や腕が元の位置へ戻って行く。
肺に刺さった木が抜かれ、吹き出る血は
逆再生の様に男へと収まる。
「みゃう、みゃ(こんなものかな)」
叩き起こしても良いが、
涼しい森の風とぽかぽかとした暖かい落ち葉に免じて
少しばかり待ってやるとしよう。
具体的には、私が、この睡眠から、
目覚める、ま、で・・・。
黒猫は、くわぁと欠伸すると、
すやすやと眠ると男の横で丸くなった。