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第6話 『真紅の破壊者と黒の咎人』を語る

今回は伊月ともやさん作『真紅の破壊者と黒の咎人』

作品URL https://ncode.syosetu.com/n6178dn/の紹介です。

 夢の図書館 クロスベル主任の事務室 ────


 私と部下の二人ベルとクリムは、いつものように応接用のテーブルを囲んで座っていた。マルちゃんは、自分の部署が忙しいらしく本日は欠席とのことだった。たぶん最近はいつも遊びに来ていたから、仕事が溜まっているのだろう。


「さて、今日はベルが題材を用意してくれたのよね?」

「はい、主任! 今日はこれです!」


 ベルが嬉しそうにテーブルに置いた一冊の本を、私は拾いあげると表紙を見つめた。


 ──────────────────────

 タイトル:真紅の破壊者と黒の咎人

 作  者:伊月ともや

 ジャンル:ローファンタジー

 ──────────────────────


「あら、これは……あの棚では、珍しいローファンタジーね」


 私はそう言いながら、この部屋の棚を一瞥する。あの棚は(あるじ)が気に入った物語が納められている棚であり、八割ほどはハイファンタジーだ。その中でローファンタジーである、この作品は珍しかった。


「まぁアクションも多いし、ベル(貴女)が選びそうな作品ではあるわね。とりあえず、概要の説明をしてくれるかしら? この物語は長いから、序盤の『暁編』や『裏の教団編』だけに絞りましょう」

「は~い、わかりました」


 ベルは飛び跳ねるようにソファーから立ち上がると、意気揚々と概要の説明を始めた。


「この物語は魔犬によって家族を失い魔力がない少女と呪われた少年が出会い、『嘆きの夜明け団』という魔法の専門組織で働くことで共に成長していく物語です。悪魔や魔獣が出てきたり、時には人同士で争ったりと、とにかくバトルが熱いんですよ!」


 私はため息を付きつつ、念のために確認をする。


「つまり、ベルがこの物語を題材にしたのは、戦闘描写が良かったからかしら?」

「はいっ!」


 この子は、本当に好きなもの一辺倒ね。まぁいいでしょう……物語はそれだけではないということを、教えていけばいいだけだもの。でも、その前に少し概要の補足が必要かしら?


「魔法の専門組織ってことだけど、そんな仕事をしているのかしら?」

「えっと……確か? なんだっけ?」


 私はもちろんわかってて聞いているが、ベルは思い出せなかったのか首を傾げている。今日はマルちゃんがいないからか、機嫌が良いクリムが代わりに答える。


「ベルちゃん、主人公たちは『魔具調査課』ってところで働いてるんだよ」

「あぁ、そうそう……仕事内容は強盗だっけ?」


 クリムは呆れた表情で、首を横に振りながら


「強盗とか言っちゃダメだよ。名前の通り、許可の無い『魔具』を回収している課で、『魔具』って言うのは……コレみたいな物だよ」


 と言って、ポケットから『魔法の栞』を取り出した。


 確かに『魔法の栞』は魔法の道具ではあるわね。ところで、どうしてベルは震えているのかしら?


「ぼ……僕たちも狙われちゃう!?」

「ベル、感情移入しすぎよ」



◇◇◆◇◇



 概要の説明が終わりベルも落ち着いたところで、それぞれの意見を出すことになった。司会進行は、そのままベルに任せてみることにした。


「それじゃ……まずクリムから、感想をお願いっ!」

「うん! クリムは、やっぱり主人公のアイリスと、クロイドの恋の行方が気になります!」


 アクション好きのベルもだけど、クリムも相変わらず恋愛話が大好きなようだ。ベルはすでに耳を塞いでいた。司会進行がそれでどうするの!?


「ベル、ちゃんと聞きなさい。この物語はどちらかと言えば、プラトニックな感じだから大丈夫よ」

「うぅ……頑張ります」


 気を取り直して、ベルが改めてクリムに尋ねた。


「それで、どこが気になるのさ?」

「だってお互いどう見ても好き同士なのに、付き合ってないとかおかしいでしょ!? もっとイチャイチャすべきですっ!」


 そんなに力説されても困るけど、まぁ確かに読んでる限りでは、あの二人はどう見ても好き同士よね。


 続いて、ベルが意見を述べた。


「僕は、やっぱりバトルシーンを推すよっ! アイリスが剣とクロイドの魔法を使って、一緒に戦うシーンはカッコいいもの!」


 そう言いながら何かと戦うようなポーズを取っている。クリムはその姿を呆れた様子で見つめていた。


「う~ん、やっぱり一人だとイマイチだな~。あっ、そうだ! クリムがアイリス役ねっ」

「えっ? ちょ……あっ」


 無理やり立たされたクリムは、ベルにあちこち触られて顔を赤くしながらマネキンのように固まっている。ベルはクリムにポーズをつけると、彼女を主人公(アイリス)に見立てて、自分は後ろに回って背中を預けるような感じでポーズを取る。ベルの方が小さいから、私からは見えないけど……。


挿絵(By みてみん)


「こんな感じで、互いの背中を護っている感じがいいんだよっ!」

「う……うん、そうだよね」


 思う通りのポーズが取れて子供のようにはしゃぐベルと、恥じらいながらぎこちなく返事をするクリムを見つめながら、私は紅茶を飲みつつベルが役目を忘れていないか尋ねる。


「確かにそういう感じはいいわよね。でも……そろそろ司会進行に戻ってもらってもいいかしら?」

「えっ、あぁそうでした!」


 クリムと共にソファーに腰を掛けると、今度はベルは私に向かって尋ねてきた。


「主任はどこがよかったですか?」

「そうね、やっぱり私は彼女たちの成長に注目してるかな。復讐を考えながらも潔癖と言えるほど正義を突き通すアイリスと、それを支えるクロイドのコンビは素直に素敵だと思うし、今後の活躍を見守りたい気になるしね」


 私の言葉を確認するかのように、クリムとベルは頷いている。その後も物語談義は進んでいった。



◇◇◆◇◇



 そろそろ頃合の時刻だったので、私は時計を指してベルに終了を知らせる。


「あっ、そろそろいい時間ですね。じゃまとめていきますねっ!」


 ベルはそう言いながら、メモに話し合った作品の要点を書きはじめた。


 ────────────────────────

 ・バトルシーンがアツイ!

 ・日常パートや潜入パート、戦闘パートなど様々なシーンが楽しめる

 ・様々な登場人物がいて、それぞれの人間ドラマがある

 ・恋愛要素があり、今後の進展が気になる

 ────────────────────────


 書き終わったメモを受け取った私は、内容を見て問題ないことを確認するとメモをベルに戻した。


「それじゃ、参考にしつつまた良い作品を探してきてねっ」

「はいっ!」


 ベルとクリムの二人は元気よく返事をしてから、いそいそと部屋から出て行った。私は次の勉強会のことを考えながら


「次はクリムに司会をやってもらうかしら?」


 と呟きつつ、ティーセットを片付けるのだった。


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