第四話 奇妙な再会
この話に登場する主人公、赤坂薫。
これからようやく彼の周りで何かが動き出す・・・。
◎今回は登場人物紹介はありません
では早速本編です・・・
日曜日、薫はこの日ふらりと散歩に出たのだが、それは昨日の夜に見た夢
が気になって仕方がなかったからだ。気になるといっても、それがどんな夢
だったのか、何が起こったのか薫は思い出せないのだったが・・・。
とにかく薫は、バスに乗り駅に出る。駅から電車に乗る。
席に座り、ぼーっと外を眺める。電車が動きだし、外は町の景色から次第
に海の見える景色へと変わる。青い空がだんだんと曇り空になってきている。
そして、何時間たったのか、どこへ向かっているのかも分からないままに
電車は鳥取駅に着いていた。
駅から出ると、真っすぐに海の方に向かって歩いた。
誰なんだろう、私を呼ぶのは?・・・いや、何なんだこの感じは・・・。
薫は家を出る前から何かに呼ばれていたように、ずっとある場所に向かっ
ていたのだった。しかも無意識にである。
その場所とは、薫は意識していなかったのかもしれないが砂丘であった。
しかし駅から砂丘までは、直線距離でも5キロはある。結局そこに辿り着い
たのは、駅を出てから1時間30分を軽く回ってからのことだった。
「うわぁー、やっぱり海はすごいなー」
海が見えたとたんに薫は、自分の物思いも断ち切って海に向かって駆け出
していた。
「あれっ、あの犬は・・・この間の・・・」
不意に薫の目の端に、この前公園で出会った犬が映っていた。しかもそい
つは、薫の方を見ているようだった。薫がその犬の方に寄っていくと、犬は
急に駆け出していった。
「おい、どうしたんだ?」
犬はちょっと離れてから、また止まって薫の方を見ていた。どうやらつい
てこいと言っているように薫には思えた。
「行ってみるか」
そっと独り言のようにつぶやいて、薫は歩きだす。犬もまた歩きだす。
「おまえ、名前はなんて言うんだ?」
薫は相手が答えないと分かっていても質問せずにはいられなかった。しか
し、意外にも答えは帰ってきた。
『ワタシノナハ、ロデ・・・』
犬はこちらを向くとそう言った・・・ように見えたが、実は薫の精神に直
接語りかけていたのである。
「お、おまえ・・・話せるのか?いや・・・まさか・・・うーん」
薫は驚いていた。犬と話をすることが薫にとっては初めての経験であり、
しかも日本語で話しているのである。薫は、言いようのない不自然さを覚え
ながらも、今まで呼び掛けていたものの正体が分かったような気がした。
『ハ、ハナセルサ』
しかしロデは話すのが難しいように、たどたどしく喋っている。
『オマエヲサガシテイタ、ドウカタスケテホシイ』
薫はロデと並んで走りながら、怪訝そうにロデの方を見た。
「助けるって、どういうことなんだ?」
『ソ、ソレハ、アトデハナス。イマハワタシニツイテキテクレ』
薫は迷った。しかしロデの瞳を見ていると、それは薫にも関係のある重要
なことだと感じられた。ロデはすがるような目で薫をじっと見つめていた。
「分かったよ。話は後で聞く」
そして、薫はロデについて砂丘の端の方に向った。
続く・・・