第一話 前兆
・まずは今回の登場人物の紹介だったりする。
◎赤坂 薫(19才、♂)
無職で、バイトばかりやっている。ちょっと冴えない容姿であるが、
「将来は声優になってやる」という希望を持っている。とくに特技とい
ったものはないが、どのようなことにも顔を突っ込みたがり、どのよう
なことにも挑戦してしまうといった困った性格である。
動物が好きで、今回の事件もその動物好きが災いして起こる。
第一話 前兆
赤坂薫は、腕を組み物思いにふけりながら公園を歩いていた。
薫は今年の3月にに高校を卒業したばかりの、それでいて大学にも進学せ
ず、かといって専門学校にも行かずにずっとバイトをやっていた。
薫に言わせれば、「大学に行ったって、なにをするっていうんだ」と言う
ことだが、実は大学に行けるほどの成績を残せなかったこともあり、大学進
学を断念していた。そのうちに、専門学校への誘いや就職への勧めもあった
が、薫はきっぱりと断っていた。「自分の進みたい道がはっきりしないうち
は何をやっても無駄だよ」というのが理由だった。
そして、薫が高校を卒業して早くも10ヵ月が過ぎ去ろうとしている12
月の鳥取県米子市。外は風が冷たくなっている時期である。
団地のすぐ脇にある公園には寒いからかどうか、遊んでいる子供の姿もま
ばらだった。といっても、日本の公園は狭くて遊びにくいのも当然のことか
もしれないな、と思う薫だった。
しかし、薫はそんなことにかまう余裕がなかったのかもしれない。
『どうしたというのだろうか?』薫は思った。
何かが変だった。しかし、それが何なのかは分からない。分からないから
不安になる。ただの気の迷いかな?とも思った。
ふと、目の前に犬がいた。柴犬だった。どうして今まで気が付かなかった
のか・・・。たぶん自分の思いに沈んでいたからだろう、薫はそう思った。
「クゥーン、クゥーン」
犬は薫の足元で鳴いていた。どうやらお腹をすかせているらしかった。
「おー、よしよし・・・ん、どうした?」
しかし犬は、何も言わない。ただ鳴いているだけである。
「飼い主はいないのかな?・・・まぁいいや、来いよ」
薫は歩きだした。犬は、少し離れて付いてきていた。
「ちょっと待ってな」
薫は、にっこりしながら犬にそう言うと、駄菓子屋『河野屋』に入って行
った。そこでスナック菓子を買う。
「やっぱり駄菓子屋にはこんなものしかないか」
そして薫が河野屋から出てきた時、犬は姿を消していた。
「お?あれ・・・どこへ行ったんだ?」
しかし、薫の周りには誰もいなかった。
「何処にいったんだ?」
しかし、薫はすぐに、あの犬は飼い主の元に戻ったんだなと思った。
「まぁ、あいつにも飼い主がいるんだよな・・・」
薫は、ちょっと淋しくなったように呟いて、虚しく空を見上げる。
しかし、薫はその時妙な事に気が付いた。
「空の色ってこんなだったっけ?」
確かに、空の色が普段なら青いはずだが、紫色に見えた。
薫は目をこすって、もう一度空をよく見た。
「ん?やっぱり目の錯覚だよな。空が紫色な訳はないよな。ははは・・・」
笑って誤魔化す薫だった。
続く・・・
とりあえずで作成している話ですが
長くなりそうなので、連載で掲載
することにしました
末永くおつきあいください