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仮題  作者: 谷川 ひろあき
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1話




かつて、一つの名も無き大国がこの地を統べていた。




大国には全てを統べる王がいた。


王は神獣を従える力を持ち、その力を家臣に授け、その家臣達が各々の地を守っていた。




年月を重ね、繁栄と衰退を繰り返していくうちに、家臣達は王から授かった恩恵を忘れ、我が領土と民を国とし内乱を起こした。


しかし温厚な王は、授けた力とともに国として分裂する事を許した。


結果大国は衰退し、変わって多くの国が生まれた。




そうしてできた国々は、最初こそ平穏無事に共存していたが、次第に領土や富を拡大しようと争い始める。



それを憂えた王は、家臣達の力を取り上げ、元に戻そうと考えた。


しかし時はすでに遅く、家臣達は力の源である神獣達を結晶化することにより、力をそのままとしたのだった。



大国の王はただ見守る事しか出来ず、嘆き、苦しみ、その生涯を閉じた。

その最後に、王はこう述べた。




「身は朽ちようと、魂は朽ちずここにあり。


魂は、のちに宿て意思を継がん。


生まれし者、その目が汚れなき真紅に染まる者なれば、世を繋ぐ真の王となり、彼の地に大いなる導きをもたらそう。


天の白き衣を纏えば清き恵みを、地の黒き衣を纏えば大きな災いをもって世を救わん。


いつかその導きがあらん事を…。」





そして幾年もの時は過ぎ…













罵声と轟音が怒涛の如く鳴り響き、火薬と血の混ざった匂いが立ち込める。




ここは戦場の最前線。




王国アレクサンドロスの領内であり、昔から物資補給のための重要拠点として使われていた街〈クインス〉

その重要性から、隣国で古くから敵対関係にある帝国ティグリスと、新たに参戦した新国家ヴィルトヘルムそれぞれの前線がこの街を落とさんとし、三国家の睨み合いが続く戦場のど真ん中である。



三国家は、いずれも大規模国家であった。



その中でも最も古くから存在するのは王国〈アレクサンドロス〉である。


アレクサンドル王家が統治するこの国は、水資源が多く、生き物も多種多様で豊かな自然に恵まれた国である。


そして1番の特徴は、魔法の存在だった。

もちろん他の国でも魔力保持者はいるが、その数と魔力量は桁違いであり、生活面はもちろん生産面や軍事面でもその力は絶大で、機械化と相まって強力な国家の一つとして成り立っているのだ。



そんなアレクサンドロス王国と隣接し、長きに渡る戦争を続けているのが、帝国〈ティグリス〉である。


この国は国土面積が最も広く、人口も比例して多い。そして地下には大量の採掘資源が埋まっており、その資源を生かした物作りが非常に盛んであった。


さらに特徴的なのが、この国の民は他の国に比べ強靭な身体の作りをしていたことだ。

例をあげるなら、普通の人が跳ぶことのできる高さが1mとすると、帝国民はその3倍以上の高さまで飛び跳ねることができる、まるで超人のような人種なのだ。

たくましい国民とたくましい大地が持つ揺るぎない力こそが帝国の争う力になる所以であった。



二つの国家の永い戦争に割って入ったのが、新国家〈ヴィルトヘルム〉である。


知識と技術を駆使し発展を続けてきた国で、資源や人口は少ないものの、他の国とは比べものにならないほどの科学力によりその地位を築き上げた。

以前は戦争に消極的であったが、資源枯渇や終わらぬ戦争状態を重く見た国家上層部の意思により、戦争への介入が始まったのだった。



どの軍も一歩も譲らぬ攻防を繰り広げていたが、戦局は街を保有する王国が優勢であった。


もともと拠点として使用していた事もあり、魔法陣による防御陣形を完璧に形勢、死角はない。


帝国は、永きに渡る攻撃に新国家が加わったことでそちらを意識せざるおえなくなり、戦力補充を十分に行うため一旦兵を引いていた。


新国家の攻撃は極めて単純で、日中に総力戦を行い夜には引くの繰り返し。

もちろんこれでは防御陣形をとっている王国に敵うはずもなく、戦闘をかき乱して終わる程度。



そんな攻防が、延々と続いていた。


その戦局を、一つの部隊が全て変えると誰が予想しただろうか。




ある日、いつも通り日中の攻防が終わった頃、新国家作戦本部には大隊規模の軍人が集まっていた。

本部内は慌ただしく作戦の準備に追われている。そして集められた部隊に作戦内容が伝えられるのであった。



「さて、これから我々はあの豚小屋の掃除にかかるのだが、箒と塵取りの準備は出来てるか?」


そう切り出す大隊の長。

その男の周りにいる曲者ぞろいの軍人達。


この大隊の名は〈センチュリオン〉。

国直属の守護部隊〈アルマータ〉と対をなす存在として、前線での戦闘はもちろん拠点の制圧や目標の暗殺まで幅広くこなす、新国家きっての精鋭部隊である。


その精鋭部隊が駆り出されたということは、確実に、間違いなく、即座に攻め落とす事を目的としているという事だ。



隊長は作戦内容を伝える。


「皆注目、では作戦伝達を行う。


今回は前衛、中衛、後衛の三小隊を三つ作った。

それぞれ隊員間で連携を取るように。


内容は単純だ。

まず後衛による貫通射撃により入り口と魔法陣上方に穴を開ける。

前衛は、入り口に注意がいっている間に上方にできた穴からそれぞれ拠点に進入、速やかに選定された順路通りに突破。

中衛は通ったルートの完全制圧と前衛のバックアップだ。


選定ルートだが、まず魔法陣を起動している魔導師を叩いて後衛の全面支援を受けれる様にする。

次に入り口の制圧し、袋の鼠にした後は一気に敵指揮本部を叩いて終わりだ。


作戦開始は1時間後だ。質問は…いらないな。

そうだ、もしかしたら豚に紛れて猪くらいは混ざっているかもしれないが、綺麗にたいらげてやれよ。以上、解散。」


ざっくりと、大雑把な説明。

しかし要点は十分に抑えられており、各隊の連携も取りやすく、応用も効く。

締めることのできる隊長だからこそ、こんな変わり種の多い隊を仕切られるのかもしれない。



作戦伝達を終え、粗末なほど乱雑に皆その場を後にする。

そして、作戦開始までそれぞれの時間を過ごすのだ。

レイル・ローランドも、そのうちの1人であった。

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