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雨の世界の終わりまで  作者: 七つ目の子
第四章:三人の旅
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第九十三話:綺麗な連携

 地下に捕まっていた女性達は、無事とは言えない状況だった。

 中に居たのは14人の成人女性と、4人の女の子。

 内2人の成人女性と1人の女の子が泡を吹いて倒れており、クラウスの殺意を浴びた結果だろうことが分かる。

 ただ、それ以外の15人も全員虚脱状態で、目が虚ろに泳いでいる状況。話しかけても何も答えが返ってこない。


「巷では、魂を抜く魔法、とか言われてる奴かな」


 相手を一時衰弱させなければ高い効果は認められないが、もしも成功すれば人格そのものを作り替えられてしまうと言われている禁忌の魔法。

 魔法が思った通りの超常現象を引き起こすことが出来る技であるのなら、人の人格を作り変えることもまた不可能ではない。

 魔法の力で相手の意思を遥か上回る意志でお前はこういう人間だと唱え続ければ、その人間は本当にその様になってしまう。

 それは単純な意識改革ではなく、脳の変質だと言われている。


 だとすれば、元の人格を知らない魔法使いでは元に戻すことなど、とてもではないが不可能だ。


「パパやママだけじゃなく、エリーさん、イリスさんまで出向いてようやくって所かな。……もしかして村で普通に暮らしてた女の人も全員……?」


 サラがそんな最悪の想像に思い至った頃、クラウスからぼそぼそと念が飛んでくる。

 念話は基本的に飛ばすのは比較的簡単で、受信するのは難しい。

 その為両親は互いに念を飛ばしあって会話しているのに対して、魔法使いではないクラウスにはそれが出来ない。

 忙しい時には下手に念話を使って混乱するよりも、長年磨いてきたアイコンタクトの方が効率が良いというのはクラウスとサラだけで、基本的には後衛の魔法使いが念話で前衛の勇者に指示を出すことが多い。

 そんなことは特に関係がないサラは戦闘中にも出来ればちゃんと連携取れるのにな、なんてことを思いつつ、その内容を注意して聞き取る。


『ぜん……を拘束、了。裸の女性二名……する?」

『いや、しちゃだめだよ』

『だめ? どういうこ、だ?』

『裸の人を縛ったからって興奮しちゃだめだから』

『は……?』


 クラウスから本気で分からないというトーンで疑問の声が聞こえてきてサラはようやく気付く。

 勘違いしたのは恐らく自分の方だ、と。

 念話は精度が悪いから短い言葉で言ってくれと昔から言っておきながらこれだ。

 これだから男女の中途半端な念話は嫌なんだと思いながら、頭の中を整理する。

 そういえば裸にされた女性が二人小屋に転がされいたことを思い出す。


『えーと、全員を拘束完了、裸の女性二名、どうする、で、合ってる?』

『ああ』

『そうだな、残念なお知らせなんだけど、この人達全員パパ達に見せないとまずいレベルなんだよね。それで、もしかしたら女の人全員連れてこられた人じゃないかって疑惑が私の中で出てる。

 だから、男は一纏めにして、女の人は女の人で別に縛っておいてくれる? 小屋の人は、縛られてるなら換気とお香だけ消し飛ばして後はそのままにしておいて』

『了解』


 なんでどうでも良い時はちゃんと聞こえるんだよ、と自分の念話の精度に文句を付けつつ、サラはサラで地下の女性達への対処を続ける。

 全員を眠らせ、不意に意識が戻った場合に暴れださない様に優しく拘束しつつ、蔦を利用して地上へとゆっくり運んでいく。


 そして、全員を運び上げた所で、女性陣を丁寧に洗い上げた。

 大体二日間、女性達は地下に閉じ込められていたのだろう、いや、それ以前にも何度も利用していたせいか、地下は酷い悪臭で、汚物に塗れていた。

 流石にこの作業をクラウスにやらせるわけにはいかない。

 小屋の方も、恐らく似たようなことになっていることが予想出来る。

 催眠効果のあるだろうお香は一刻も早く消さなければいけないが、それ以外はサラが自分でやるしかなかった。


 どちらにせよ、クラウスに最適な役割は見張りとなる。

 男達と村に馴染んでいた女性陣をクラウスが見張ってさえいれば、逃げ出されることは有り得ない。

 本気で殺気を向ければ勇者は全員昏倒するし、魔法使いは一瞬魔法が使えなくなる。

 ただそれだけで、彼らが諦める理由には十分だ。


『ほら、これが綺麗な連携でしょ?』


 サラは一人で全部を片付けてしまった幼馴染の代わりに、後処理のほぼ全てを自分の仕事だと言い切って聞かなかった。

 つまり、見張りというのはクラウスはもう何もするな、ということだ。

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