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雨の世界の終わりまで  作者: 七つ目の子
第十章:未来の為に
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第百二十二話:港町の戦士達

「そんなわけで、俺達はエリーに会いに来たわけだ。オリヴィア、お前もここに居るということはマイケルに勝てるようになったという事だな」

「はい。ちゃんと三連勝しました。実はお二人が出立してから割とすぐに勝てまして。でも、この間帰った時にはディエゴも前より強くなってましたわ」


 今まで二つの大きな大陸を回ってきて、ディエゴ以上の戦士はいなかった。

 元々能力だけでも優秀なディエゴだったが、彼は死の山にほぼ毎年来ていることもあって実戦経験も豊富だ。平均的な戦士の質そのものが、グレーズ王国は高い傾向にある。

 その中でも、オリヴィアは飛び抜けている。

 実戦経験の少なさや王女であるという為に無茶ができなかったことを踏まえてもディエゴに次ぐ2位だった彼女は、レインの訓練でディエゴと並んだ。更に弟が出来たことでその実力を存分に発揮しても良いのだと、無意識にかけていたリミッターを外すことに成功したらしい。

 

「さて、一度手合わせしようか。お前の今の実りょ――」

「ぜひお願いしますわ!!」


 食い気味どころか師匠の言葉に完全に被せて反応する彼女にレインが若干青筋を浮かべるが、目を輝かせているオリヴィアには届いていない。

 

「さて、エリー。お前とも後で模擬戦をしよう。まずは見ておいてくれ」

「はい! 師匠!」


 オリヴィアと同じ位目を輝かせながら元気よく返事を返すエリー。

 さて、とレインが剣を抜いたところで、彼女ははっと何かに気づいたようにあわあわとし始める。 


「あ、あ、し、ししょ、うちの町の兵隊の人達も呼んできて良いですか?」

「あら、そうですわね、わたくしが居ない時には彼らがエリーさんのお相手をしてくれてましたの」

「なるほど。それじゃ、待ってるな。サニィがいるから全員連れてきていいぞ」


 エリーに関してはやけに優しいレインが剣を収めると、エリーは元気よく頷いて兵舎へと走り出す。

 その間に、オリヴィアとの世間話に花を咲かせる。


「そうそう、エリーさんの武器なんですけれど、全部レイン様の案に決めたみたいですわ。『ふらんすぱん』とか可愛いのに……」

「えー!! エリーちゃんが決めたの!?」

「そうなんですお姉様。最初は少し迷ったみたいなんですけれど、英雄たちの情報が少しかいてありましたから、それを見たところ格好いいと……」

「ああ、レインさんの案は英雄たちの名前だもんね……、それなら、うん、それなら……」


 なんだか煮え切らないながらも、武器の名前が英雄たちの名前と同じものに決まったと聞いて渋々納得の様子を見せるサニィ。レインは腕を組んで余裕の表情をしているが、オリヴィアにはよく分かっていない。


「あ、あの、どうしました? お姉様?」

「いや、英雄達は格好いいからね。また後で宿屋『漣』で話すよ。今までの話」

「そうだな、オリヴィアには伝えないといけないこともある」


 オリヴィアは王女で教養もある。過去の英雄と言えば、魔王を倒したと輝かしい功績と、近くの国のボブだけはその生い立ちを知っている。

 でも、それだけでは格好いいとはならない。むしろサニィの口ぶりからは、憂いを感じる様なニュアンスが含まれている様にすら感じる。

 しかし、流石にこういう時ばかりは、彼女も空気を読むことができる。

 どういう話があるのかと少しだけ緊張すると、グレーズ王国の近況などを話ながら、エリー達を待つことにしたのだった。


 ――。

 

「師匠、うちの兵隊さん達です!」

「あなたが竜殺しのレイン様ですか、お噂はかねがね」

 

 15分ほどすると、エリーが150名程の兵達を連れて戻ってくる。

 皆が各々得意武器を持ち、いつでも戦闘できる準備をしている。

 それが町の守護兵の全てだと言うが、いざと言う時には即座に戦闘に移れる準備、と言うわけだ。


「ああ、俺がレインだ。こっちがサニィ、最近噂の聖女ってやつだな」

「あ、あはは、どうも。サニィです。あの、皆さん武器を持って少し緊張されていますけど、もっとリラックスしてて良いですよ。魔物は周囲に居ませんし、居ても私がすぐに気づきますから」


 相変わらず簡潔な自己紹介のレインと、杖を取り出し、肖像画にそっくりな様子を見せるサニィに兵達は大いに騒めく。

 竜殺しレインが来ているということは聞いていたが、噂の聖女がこの場に来ているとは思いもよらなかった。

 兵達はオリヴィアが王女であることも知っている。彼女が人外のディエゴを模擬戦三連勝でこちらに来たことも。もちろん絶対厳守の箝口令が敷かれているが、今の目の前に居るのは、グレーズ王国のトップ3と言うことだ。ざわめくのも無理がない。

 でへへと顔を緩める兵士も居れば、二人に握手を求める者たちまで。反応は様々だったが、皆が期待に満ちた目をしていることは誰の目にもはっきり分かった。

 その感情を読み取って、その小さな胸をえっへんとはるエリーと、巨乳を弾ませるオリヴィアが、なんとなく微笑ましかった。


 随分と人も増えてしまったので、町を出て北東にある平原に皆で移動すると早速レインとオリヴィアは剣を抜く。


「それじゃ、いつでも来い」

「お願いします! 全力で行きますわ! 『ささみ3号』!!」

 

 そうしてオリヴィアは、渾身の力で踏み込んだ。

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