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2.ひとめぼれ女王とすきやき王

 そんなある日のこと。


「女王、このままでは埒があかないどころか、我が国の財政に大きな影響を及ぼします。かの国と休戦協定を結びましょう」


 オカマメシー王国のお城で、シャモジ宰相が言いました。シャモジ宰相はたいそうお美しい男性で、道行く女装子たちが興奮して失神するほどの凛々しさです。

 しかし、ひとめぼれ女王はシャモジ宰相の申し出を足蹴にしました。


「冗談じゃないわよーぅ。あんなポン酢とゴマだれ臭い野蛮なメス共に遅れをとるだなんて、許さないわぁ! 奴隷のメス共への調教も甘いんではなくって? しっかり動かしなさいよ馬鹿たれがふっげふっげふっ」


 ひとめぼれ女王はたいそうお怒りのご様子です。あまりにお怒りなものだから、勢いよくかきこんだ鯛釜飯を喉に詰まらせてしまっています。白雪姫の鏡も絶賛するほどの美貌も歪んでしまわれて……。ああ、なんとお労しや……。

 ですがシャモジ宰相は尚も言いつのりました。


「それがですね、女王。なにやら前線では奴隷の女共がオナベー軍勢に取り込まれているようなのです。新たに兵を派遣しても、奴らは仕掛けるばかりか取り込んでいる様子で……」

「なーによそれぇー! あのすきやき王、よーくもやってくれたわねえ! シャモジ! こっちも仕返しよ! 向こうの男共を取り込んでおしまいなさい!」

「し、しかしひとめぼれ女王……っ」

「良いから言うことを聞く!!」


 ひとめぼれ女王はそのお美しいおみ足でシャモジ宰相の顔をぐりぐり踏み潰して命令しました。

 ……おや? シャモジ宰相がどこか嬉しそうなお顔を浮かべていらっしゃいます。




 その頃、オナベー王国のお城では。


「オタマ将軍、前線で保護したいたいけな子猫ちゃんたちは今どうしている?」


 すきやき王が尋ねました。長い足を優雅に組み、執務椅子の肘掛けに肘をかけゆったりと座るその様は、なんと凛々しくお美しいことか。妖艶というのは、まさにこの方のためにあるような言葉です。

 そんな彼の前に跪くオタマ将軍は、すきやき王ほどではないですが、道行く女子たちが赤面してしまうほどの美貌です。

 そのオタマ将軍は言いました。


「前線から少し離れた地域で療養させています。容態が落ち着き次第、陛下の意向通り、オカマメシーから遠く離れた地へ移動させようと考えているのですが、しかし少し困った事態になりまして」

「何だ」

「保護した娘たちが、何故か前線から遠ざかるのを嫌がっているのです。前線では、我が軍の兵と言えども危険な男共の巣窟だというのに……」

「何だって? く……っ子猫ちゃんたち、一体何故だ……! 何も前線でなくとも彼女たちの安住の地は沢山あるというのに……。く……っ我が軍のことだとしたら恥ずべきことだが、きっと彼女たちは男共に脅されているに違いない……!」


 すきやき王は額に手を当てながら、やたら良い声で唸りました。少々取り乱したせいで、手元の黒ごま坦々鍋が椀から溢れそうです。傍らにいた陛下お気に入りのバンビ一号が、さっと椀を持つ彼の手を支えます。

 すきやき王は不安そうに目を潤ませるバンビを安心させるように微笑むと、椀を机に置いて高らかに命令しました。


「前線の男共に伝えろ! 子猫ちゃんたちに危害を加えようものなら、お前たちを熱々の鍋で出し汁兵器にするぞとな! そして稲臭いかの国を、一刻も早く制圧しろとな!!」


 オタマ将軍はハッと敬礼し、急いで軍部の方へ向かわれました。

 すきやき王の傍らにいたバンビ一号が、彼にしなだれかかります。


「陛下、わたくし、怖いですわ。わたくしと同じ女性が、男性方にいいようにされて、あの見るのも汚い輩にこの国が乗っ取られるだなんて」

「あぁ僕のバンビ、不安そうにしないでおくれ。大丈夫だよ、彼女たちは必ず僕が守ってみせるよ。それにあの張りぼての女王の好きにはさせないさ。僕を信じておくれ」


 そう言いながら、すきやき王はバンビ一号の可愛らしいお口にお豆腐を食べさせました。瞬間バンビ一号の目はハート型になり、失神したのでした。




 そんなこんなで更に泥沼化を深めそうなオカマメシー王国とオナベー王国。

 しかし、ひとめぼれ女王もすきやき王も知らなかったのです。

 前線で何が起ころうとしていたのかを。

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