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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

異世界召喚系

『勇者』様、助けてください

作者: ひつじかい

 その世界は、古代より魔王が幾度となく現れ、人間を苦しめていた。


 魔王が現れると、神によって異世界から勇者が遣わされた。


 しかし、一部を除いた人々は、それを知らない。




「これで、帰れる!」


 今回異世界から召喚され魔王を倒したのは、成人――この世界での――したばかりの少女だった。


「早くお城に帰りましょう!」


 魔王を倒したら帰してくれると言うのを心の支えに頑張って命を奪って来た少女は、仲間を振り返った。


「そうだね」


 優しく笑うのは、彼女を召喚した国の王子である。


 王族として、異世界の者だけに任せる訳にはいかないと、付いて来てくれたのだ。





 城に帰ると、ささやかながら祝賀会が開かれた。


「めでたいのう。勇者殿のお陰じゃ。……しかし、これで最後じゃな」


 乾杯の酒を飲み干した国王が、そう言った時、グラスが落ちた音がした。


 見れば、勇者が酸素を求めて口を動かし・痛みでもするのか胸を押さえて倒れた。


 心配するものはいない。


 予定通りだったからだ。


「やれやれ。漸く、下賤の者の機嫌を取る事から解放されたわい」


「しかし、まあ、馬鹿は扱い易くて助かりますね」


 国王と王子は機嫌良く笑う。


「これで、そなたが世界を救った勇者じゃ」


「下賤の者との旅を我慢した甲斐がありますね」


 これが、この世界を救った勇者の毎度の末路である。


 帰して貰えないどころか命を奪われ、功績すら奪われる。


「ヒッ!」


 悲鳴に振り向くと、死んだ筈の勇者が立ち上がっていた。


「生きていたのか!」


「馬鹿な! 毒を飲ませたのだぞ!」


 バタバタと、給仕の者が倒れて行く。


「アンデッドです! 恐らくリッチと思われます! お逃げください!」


 宮廷魔導師がそう叫び、騎士の一人が神官を呼んで来ると駆けて行った。


 斬りかかろうとした騎士達が倒れる。


「何をされた?!」


「弱い者は、見ただけ・近寄っただけも命を落とすのです!」


 その時、勇者が『勇者の剣』を手に、魔導師に襲いかかった。


 斬り落とされた首が絨毯を転がる。


「神よ! 彷徨う者に安らぎを!」


 駆け着けた神官が神聖魔法を詠唱したが、何故か発動しなかった。


 勇者は、国王ごと剣を床に突き刺し、その顔を踏み付けた。


「ゲセンノモノ ニ コロサレルキブン ハ ドウ?」


「ガハッ!」


 口から血を吐き出した国王は、暫くして動かなくなった。


 勇者は国王から剣を抜くと、王子には目もくれずに走り去った。





 多くの人々が殺され街がゾンビで溢れる中、王子達は勇者召喚を試みていた。


 しかし、魔法陣は光るものの、直ぐに消えてしまう。


 原因不明だった。


「王子様ー!」


「どうして、助けてくれない?!」


「魔王を倒したんでしょう!?」


 王子が魔王を倒したと信じている民衆は、アンデッドを倒してくれない王子の元へ押しかける。


「死にたくない!」


「イヤーーッ!」


 扉の向こうで悲鳴が上がり、扉が壊されゾンビが雪崩れ込む。


「ユウシャサマ キテアゲタヨ」


「マオウヲ タオシタチカラ ミセテゴラン?」


 勇者は『勇者の剣』を手に、王子に近寄った。


「く、来るな!」


「勇者様……助けてください」


 人々が助けを求めるが、彼には何も出来ない。


「ブザマダネ ナマエダケノ ユウシャサマ」


「コノクニモ コノセカイモ ワタシガ ホロボシテアゲル」


「テンバツナンテ オマエタチニハ モッタイナイ」


 勇者は魔王を倒した時と同じように、『勇者の剣』の真の力で、王子を斬り殺した。

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