影と少年
優しいあの人が好きだった。
あの赤く綺麗な髪、長くて細いが少しゴツゴツとした指、優しく話しかける声。
一目惚れだった。
もっと早く話しかけていれば、こちらに振り向いたのかもしれない。
そう後悔するのは、彼の指に婚約指輪がはめられた時だった。
それでも諦められないのは俺っちだった。
「……キース…。」
結婚してからも優しい彼、キースからもらったネックレスに触れる。
首輪替わり、愛人だと言ってくれた。
嬉しかった、凄く。
それでもやっぱり、もっと欲しかった。
キースが欲しかった。
ある日、キースは婚約者と一緒に寝るため、シャドウを己の形にして傍に置いてくれた。
キースと違う黒髪に少しドキッとした。
普通に、キースだと思いながら抱きしめて寝た。
「すき、だ」
次の日、そんな事を言われるなんて思わなかった。
シャドウは前、キースの命令にしたがって俺っちを犯したことがある。
俺っちはトラウマだった。
でもシャドウは凄く優しかった。
可愛い所もあったし、優しかった。
だからこそ、許せたんだろうね。
「……好き、なのかな……。」
一瞬だけ、心が揺らいだ。