(6)光の神子の結婚~ヒカリからのプレゼント~
光の大神殿からカラン城までのパレードを終えた一行は、城内でそれぞれ与えられた控室で暫しの休憩を取っていた。現在の時刻は午後4時を回ったところで、披露宴が始まるのは午後6時からだ。
こんにちわ。ヒカリ=フレクシア=サギミヤです。
苗字が違うとお気づきになったと思いますが、これには少し複雑な理由があります。
『光の神子』になった時に、何とかして日本に帰れないかと、いろいろと試行錯誤をしてきました。
しかし、どう頑張っても無理でした。まず大きな問題として立ちはだかったのが、『地球のある空間の座標』が解らないことです。瞬間移動の原理は、移動元の座標と移動先の座標を、正確に理解する必要があります。それは、次元を超える時も同じ。ちなみに瞬間移動は、その性質上、次元の壁すらも超えることが可能です。
しかし、現実は不可能です。
まず、無数に存在している次元の中から、正確に私たちのいた地球のある次元を探し出すことは、現実問題不可能ですね。たとえ探し出せれても、今度は、地球がその次元の中のどこに存在しているのかが解りません。地球の天文学の分野ですら、正確な宇宙の大きさすら解っていなかったのですから。
次の問題として、私とタケシの立場があります。
私は『光の神子』であり、タケシは『闇の神子』です。この世界で結婚後は、女性側が男性側の名字を名乗る事になっています。それは婿養子として、男性側が女性側の家に来たとしても同じです。これに沿えば、私が『イマミヤ』から『タケシロ』に変わるだけなのですが、ここで、神子としての立場が邪魔をします。この世界の最高神である光龍神フレクシアの神子である私が、同一の存在とはいえ、下位神である闇龍神ダークネスの神子のもとに下るのは、宗教上問題があるのです。
そのため、『サギミヤ』を、結婚と同時に名乗る事にしました。
これは、私とタケシだけの問題だったのですが、知らないうちに他の神子たちにも広がり、神子の名字はすべて『サギミヤ』にしようという事になってしまいました。よって今後からは、すべての神子が、『サギミヤ』を名乗る事になってしまったのです。
まあ、別にいいのですが。
閑話休題
私とタケシが与えられている控室となっている客間は一際大きく、部屋の中には披露宴及びその後に行われるダンスパーティーできるドレスや小物が置かれている。部屋は、大きく5つの空間に分かれており、入り口を入って最初の部屋は、豪華な調度品に囲まれた応接間がある。この部屋を中心に、4つの扉が設けられ、窓際の扉には2つの扉があり、その1つはベッドルームへ、もう1つは、浴室とトイレへと続いている。廊下側の扉は、ベッドルーム側衣装室に、もう1つは簡易キッチンと、部屋付きの侍女が控えている場所へと続いているため、部屋というよりは1つの別宅といっても差し支えない造りになっている。
現在は、その客間の応接室となっている場所で、私とタケシ、あとは、ウエディングドレスのトレーンを持っていた4人の女の子とそのご家族がいます。
私とタケシは、それぞれ1人掛けのソファーに座り、4人の女の子は、それぞれの家族と一緒にソファーに座っています。家族といってもここにいるのは母親だけですが。
「今日は1日ご苦労様でした。後、披露宴での仕事が残っているのですが、まとまった時間が作れるのが今この時を置いてないので、ここで軽い打ち上げをします。」
私はこう言って、話を始めた。
「さて、あなたたち4人とそのご家族には、私からささやかですが贈り物があります。」
私が目で合図をすると、後ろに控えていた侍女さんが、それぞれの女の子と、私の前のテーブル前に、虹色の風呂敷に包まれた箱状のものを配っていく。私は、目の前のテーブルに置かれた包みを解く。風呂敷の中には、3段になった重箱があり、私は、その重箱を1段ずつ見えるように並べていく。
「今皆さんの手元に配ったものは、これと同じものが包まれています。家に戻られた後に、確認しておいてください。では、中に入っているモノを1つづつ説明していきますね。
まずは、私から見て一番左側、一番上にあった重箱の中身からです。この中には、3枚のチケットと、小袋が2枚入っています。
チケットの内容ですが、1枚目は、サギミヤ商会で扱っている商品を、1万テラまでの間でならば自由に引き換えることができるチケットです。引き換える品物については、後日サギミヤ商会のほうで確認してください。
2枚目のチケットは、ご家族全員分のダーカルへの旅行チケットです。ここカランからバーガルまでの往復の転移門使用と、バーガルでの滞在先となるバーガル鷺宮亭の2泊3日分の宿泊券。バーガル市内において、サギミヤ運送店が運営している観光ゴンドラの3日間乗り放題券。サギミヤ商会と提携している各施設、乗り物等に使用できる5万テラ分の金券がセットになっています。
3枚目のチケットは、転移門10回分の無料使用券です。
そして、一緒に入っている2枚の小袋は、ストレージアルスライムの布袋といいます。」
ストレージアルスライムの布袋と聞いて、母親たちが「本当にいいの?」といった顔つきになる。1つ25万テラもする高価な品物だからである。それが2枚もあるのだ。
「そんな高価なもの、本当に貰ってもいいのですか?」
さすがにそこのところだけは気になっているのか聞いてきた。
「別に構いませんよ。このストレージアルスライムの布袋が1つ25万テラもするのは、現状、これを製作できるのが、私とメーリアしかいないのが原因です。
では、次の重箱に行きますね。
2段目の重箱に入れてあるものは1つ、先日行われた『光龍降誕祭』で、加護を受けた者たちに配った『加護のネックレス』です。これは、トレーンを持っていた女の子にプレゼントするものです。
3段目の重箱には、各種回復薬を、入れてあります。内訳は、1等級の普通回復薬を12本。1等級の魔力回復薬を2本。5等級の魔力回復薬を12本。1等級の治療回復薬を2本。5等級の治療回復薬を12本です。
後、これらが入っているこの箱には、時間凍結の付与が施されてあるので、中に入っているモノは、蓋さえしてあれば、特に何もしなくても時間経過で劣化することはありません。また、箱が包まれていたこの風呂敷は、重量軽減の付与が施されてあるので、風呂敷に包める大きさまでのモノであれば、1/10程度の重量にしてくれます。
これが、私からあなたたちへの贈り物になります。どうぞ、受け取ってください。」
私は、こう言って締めくくった。
「光の神子様。」
「なんですか?」
「こんなにも高価な品物、本当に貰ってもいいのでしょうか?これをこのままそっくり売りに出せば、結構な金額になりますが。」
「別に構いません。これらは、私からのお礼の意味もあります。大事なお子さんを、丸1日お借りしてましたし、何よりも、1テラすら給金を出していませんから。
すべて私の手作りなので、気に入らなければ売りに出していただいても構いません。そこまでは私の関知するところではないので。」
「光の神子様のお気持ち、ありがたく受け取らせていただきます。」
皆が、ありがたく受け取ってもらえたところで、披露宴の時間がやってきた。私は、タケシと腕を組み、侍女に先導されて披露宴の会場へと向かいました。




