(4)光の祭典~光龍神フレクシア降誕祭~
7月7日。
光の祭典において、最後に行われる神事であり、最も華やかで、壮言で、最大の神事『光龍神フレクシア降誕祭』が始まろうとしています。
朝、日の出とともに神事が始まると、カラン中が一気に神聖な空間に早変わりします。
今日は、コロラド王国にとって、記念すべき日になった。翌年からこの日は、『光の記念日』となり、国民の祝日に加えられる。そしてカランでは、光の大神殿の最大の祭典『光龍降誕祭』が始まる日でもある。
今日だけは、カランにあるすべての店が、旅館や屋台など一部を除いて営業をやめるている。今現在、ここカランには、住人約15万人のほか、参拝客が約5万人ほど詰めかけています。
宿屋の数は当然足りず、カランにある宿屋は、初日の前日、6月31日にはすべて埋まってしまいました。カラン周辺にある町や村の宿屋も、すべて埋まってしまっています。そのため、サギミヤ商会では、転移門が設置してある王都ロンドリアや、ダーカルなどの都市にある宿屋と協賛し、参拝客をそちらへと誘導しております。この施策のおかげで、参拝客の約8割が、宿を確保することができています。
おはようございます。はじめましての人もいるでしょうか?
今日から始まる『光龍神フレクシア降誕祭』の主役の1人、ヒカリ=フレクシア=イマミヤです。
今日は、カランの町が1つになる珍しい日でもあります。
すべての住民が参加をしている子の祭典。当然、悪さをしようとする人種も町に入り込むのですが、事前に住民に配ったとある魔導具のおかげで、そのような行為をすれば、たちまち降魔の森の最奥、いつも使っている湖のほとりへと強制移転していただくことになります。その後のことは知りません。運よく森から出れればいいのですがね。
閑話休題
日の出とともに、光の大神殿に向けて他の5つの大神殿から、闇龍神・天龍神・水龍神・火龍神・地龍神とその神子5人と、それぞれの眷属神の神子が乗った神輿が出発する。神子は、きらびやかな神子の衣装を身に纏い、それぞれの龍神は、神器にその身を変化させている。
光の大神殿へとまっすぐに伸びた大通り。通りの両端には黒山の人だかり。各代神殿から光の大神殿までは、幅5メートルほどの大きな赤い絨毯が延々と敷かれている。昨日の神事が終了した午後3時ごろから、今朝がたまでにかけて、町の人総出で敷き詰めたものだ。その絨毯の上を、神子たちの乗った神輿の行列は、光の大神殿まで、約2時間かけてゆっくりとした速度で進んでいく。神輿を担いでいるのは、今日この日のために選ばれた、大神殿の近くに住むカランの住民たちだ。日本の祭ならば、こう言った場合は厄年にあたる人が行うのだろうが、ここではそういった風習はない。そんな事をしたいたら、たくさんある神輿の担ぎ手が足りなくなるため、女子供以外基本は全員参加となる。
神々を乗せた神輿が、各代神殿を出発したころ、それを迎え入れる光の大神殿では、日の出前から行われている神事が大詰めを迎えています。
現在の光の大神殿は、前にある噴水広場を含めて、大きく着飾っています。光龍降誕祭に参加する参拝客は、宿をとったお客様の数から推計して約5万人。光の大神殿に来る参拝客は、最低でも1万人前後と推測されています。大聖堂に入ることは、当然ながら無理ですね。そのため、この広場も使用して神事を執り行うことになりました。去年まではこんなことはなく、せいぜい光の大神殿前の広場を埋める程度だったらしい。
しかし今年は、6大龍神の神子をはじめ、24人の神子が揃ってしまっている。このままいけば、数年後にはすべての神の神子が揃ってしまうはずだ。いや、私の趣味の1つを鑑みれば揃ってしまうだろう。何かを揃えるといった行為は、大好きなのだから。1つでも欠けると、自重なしに必死になってしまいそうである。
私の趣味はいいとして、現在光の大神殿の前は、仮設の雛壇が造られており、各神殿から敷かれている赤い絨毯が、雛壇の上を覆いそのまま建物の中まで伸びている。
神事は基本的に、大聖堂で行われるのだが、今回からは、大部分をこの広場に特設された雛壇上で行うことになっている。そのため、一部の招待客以外は、ここで行われる神事を見学することになるのだ。
招待客の内訳は、私を含めた神子の旧親族(初日に集まっていた者たち)。カランに住む人たち100人。参拝客から前日のくじ引きで選ばれた100人だけである。ここには新年の祝賀神事同様、「俺は貴族だから中に入れろ」などという貴族特権は通用しない。
そんな事をすればどうなるかは、新年の祝賀神事の時に身に沁みて解っていると思うのでいないと思っていたが、やはり特権を振りかざす貴族はいたようだ。そいつらの言い分を聞けば、
「王家と、センダレス公爵家、トラファーレ公爵家、ペンタフェンス伯爵家とエルフ族自治領領主は、なぜ中に入れるのか?私たちを同じ貴族だろうが。彼らと私たちとは、いったい何が違うのか?」
といったものです。違うの違わないも、ここに上がった貴族と王家は、すべて『私を含めた神子の旧親族』ですよ。神子様の晴れ舞台を、特等席で見学できる権利は、旧親族にはありますよ。特等席の切符を手に入れたければ、あなたの家族から神子様を出せだいいのです。神子になる資格があるのかどうかは別の話ですが。
貴族たちの言い分はどうでもいいことなので、きれいに横に流しましたよ。私には関係にないことですので。もちろん、強行突破を図ったおバカさんには、しっかりと制裁を受けていただきました。今日のところは、この町で殺生をしたくなない気分なので、降魔の森の最奥へと強制的に引越しをしていただきました。
王様も結構腹グロですね。1か月以内に職務に復帰しなければ、爵位を剥奪すると宣言なされたのですから。お貴族さんは腐るほどいるので、少しくらい減ってもいいらしいです。
さて、どうでもいい話はここまでにしておいて、そろそろ各大神殿を出発した行列がここに到着します。すでに先頭が見えております。どうも、5つの行列が同時にここに到着するように、タイミングを計りながら歩く速度を調節しているみたいですね。
純白の衣装に身を纏い神輿を担いだ男衆が、各大神殿とココ光の大神殿とを結ぶ通りから同時に姿を見せ、指定の位置で神輿を下します。神輿を降り、敷き詰められた赤絨毯の上を優雅に歩く神子たち。ちなみに今回の神子の衣装は、いつもの西洋風?の服装ではなく、どこか和風?の服装になっています。はっきり言えば、古の平安貴族の服装ですね。
男子は擬宝珠を被った唐衣をアレンジした感じの服装です。タケシとケンジは、白い着物風の服に、真っ黒な唐衣を纏い、腰から長く伸びる束帯もどきには、黒色の生地に複雑な文様が色とりどりの糸で刺繍されている。その他の男子は、宿直のような服装をしている。
私を含めた女子の服装は所謂十二単もどきであり、それぞれ似合う色の十二単を着ている。宝冠と呼ばれる頭にのせる王冠みたいなものには、神子になってるそれぞれの神を意匠化したものが彫り込まれている。女性の「束帯」に当たる装束として「物具装束」もちゃんとあります。
こんな感じになってしまったのは、大部分が私の趣味によるところが大きい。だが、この服装が、これより先『光龍降誕祭』で神子たちが着る正装になってしまう。まあ、きらびやかな感じの衣装ですからね。
話が横道にそれてしまったので戻ります。
さて、神輿から降りた神子様たちが、光の大神殿前に特設された雛壇に上がり、『神礼』を光の大神殿に向かって一斉にします。そのあとで、光の大神殿の中から、私を除いた光の眷属神の神子が現れ、メーリアやアイリーンといった女性陣が、舞を踊りながらとある図形を雛壇上に描いていきます。
魔法が存在しない地球ならば、『奈落』と呼ばれる舞台装置の出番なのですが、ここには便利な魔法があります。メーリアたちが踊りながら描いていたのは、転送魔方陣です。魔方陣が描き終わると、雛壇上にいるすべての神子が魔方陣を囲むように円形に並び、再度神礼をして3度目のお辞儀したままで動きを止めます。すると、魔方陣が淡く輝き、中心に1人の女性…私なんですが。光の神子が現れます。
つまり、光龍神が、この地にご降臨遊ばれたという『演出』をしてみました。はっきり言うと、私が脚本・演出をした町中を巻き込んだ壮大な演劇をしていたのです。本音を言うと、いろいろと"あれ"な感じになってしまうので、建前を前面に押し出しておりますが。
ここまでのつかみは上々ですね。
私は、出現した魔方陣の上で、恭しく意味が全く分からない祝詞のような文章を、高らかと読み上げています。本当に、何を言っているのか全く理解していません。観客…、基、参拝客のみなさんは、そんな私の発する言葉を、真剣に聞いております。
私が唱えるありがたいお言葉が終了した瞬間、私は、無詠唱で魔法を発動した。私を中心に、白・黒・緑・青・赤・黄色の6色の光が波となり、会場全体にいきわたっていく。光が会場中にいきわたると、そこには淡く光り輝く者たちがちらほらといるのが確認できる。私は、会場に散らばっている神官たちに目配せをして、淡く光り輝く者たちを雛壇上に集めてもらう。
何が起こったのかが解らずに、唖然としたまま神官に連れられてくる彼ら。
ここから先の神事は、はっきり言って行き当たりばったりの思い付きだ。この場を支配し、事を進めているのは紛れもなく私。私が今この場で思いついたやり方で、神事を進めていく。
まずは、壇上に連れてきた者をその場で跪かせ、胸の前で腕の前で腕を交差させた。そして、新たな魔法を用意する。祝詞に混ぜて言霊を唱え、発動させた魔法で、私の前で跪いている者たちに、『加護のネックレス』を転送させて付けた。いきなり首元に現れたネックレスに、皆驚きの顔をしている。
驚きついでに、魔法でそれぞれの血を一滴拝借し、ネックレスに付けられている水晶石に勝手に付着させる。瞬間水晶石が光り輝くが、すべては神事の一環だと、皆が納得しているみたいだ。
今彼らの首に付けた『加護のネックレス』は、今日このために、密かに準備していた一種の魔導具だ。そして、彼らを選んだ基準は、『神に愛されているか』という1点のみ。つまり近い将来、ここで選ばれたものの中から、「神子がいるといいなあ」という思いから選んでいる。
そんな思いはさておき、渡すは、とりあえず神事の終了を宣言したのだった。あとは、大聖堂の中で、今選んだ者を含めた数百人のみで、残りの神事を執り行うだけだ。




