(1)ヒカリの誕生日~誕生日の日に婚約しました~
時間は遡る事4月15日。
そう、私の誕生日です。14歳になりました。
そして…、テラフォーリアに来てから2回目の誕生日を迎えました。1回目は、いろいろと忙しくてそれどころではなかったんですけれどね。
地球にいるの両親は、今頃どうしているのでしょうか?
きっと、私のことを心配して、夜も眠れないことでしょう。私、いや、私たちは、元気に暮らしています。手紙すら出すことが出来ない場所にいますが…。
今私が最も力を入れている事は、この世界に来てから得たこの力を使い、何とか地球との行き来が出来ないかということです。ほとんど無理な話なんですが。この事は、私の一生をかけて行うような一大事業ですね。
まあ、出来ないことに対して、くよくよ悩んでいても仕方がないので、前向きに生きていきたいと思っています。
おはよう?こんばんは?…まあ、どっちでもいいです。
ヒカリ=フレクシア=イマミヤといいます。
急遽決まった私の誕生日会で、まさかあんな事があるとは、思いもしませんでしたね。
私の誕生日会は、カランにある光の大神殿奥、光の神子の屋敷での広間で行われています。短い準備期間だったにも拘らず、部屋の中は綺麗に飾り付けられており、豪勢な料理が並べられていました。
そして、料理の中央に鎮座しているのは、これまた豪勢な誕生日ケーキです。
生クリームベースの白いケーキ(直径約50㎝)の上に、チョコクリームベースの黒いケーキ(直径約30㎝)が乗っかり、色とりどりの果物でデコレーションされています。飴細工で形作られた2匹の龍が持つのは、『ヒカリちゃん 14歳のお誕生日おめでとう BYサトミ』と書かれたプレートです。ご丁寧に、2色の蝋を捻じって作られた蝋燭が14本下段のケーキに立てられています。
これを作ったのは、…サトミさんですね。プレートに書かれた『BYサトミ』の文字が、キラキラと輝いていますよ。
まあいいです。
今日参加しているのは、いつものメンバーに加えて、サギミヤ商会カラン本店で働いている従業員の一部。今日の料理を担当したサトミさんとダイゴロウさん。後、神殿関係者で、この時間、暇なメンバーです。アイリーンたち弟子10人も参加しております。
誕生日に歌う歌を全員が合唱した後、蝋燭を吹き消すというイベントをクリアーした後、立食形式によるパーティーが始まりました。
私は、豪華な誕生日ケーキの後ろに置かれていた玉座のような椅子に座らされ、皆からプレゼントを貰っています。何処で嗅ぎつけたのか、玉座の後ろには、前日までに届いたプレゼントが、山のように積まれています。比喩表現ではなく、本当に山になっています。カランに住んでいる人全員から来ているんじゃないでしょうか。そんな感じがするほどに、山と積まれているプレゼントです。屋敷にいる神官さんの話では、生ものについては、目の前に並んである料理の材料になっているそうです。
プレゼント私もいよいよ佳境。ちなみに、プレゼントを手渡していく順番は、日ごろ、私とあまり接点がない順番となっております。そして、最後にプレゼントを渡すのは、…タケシでした。
タケシは、花束を手に持っています。タケシが持っている花束は、『ケコンギク』と呼ばれるテラフォーリア原産の花で、確か男女のイベントの際によく使われる花だったと記憶しています。タケシは、私の目の前まで進むと、いきなり膝を折り、国王様に謁見するような姿勢になりました。
そして…。
「ヒカリ=フレクシア=イマミヤさん。」
「はい、にゃんでひょうか?」
いきなり、いつも呼ばない本名で呼ばれ、私は噛んでしまいました。タケシは、長々と前口上をした後、花束を前に出して一言こう言いました。
「ヒカリ=フレクシア=イマミヤさん。俺と結婚してください!」
「・・・・」
私は、タケシが放った言葉の意味を咀嚼します。
そして、私は、瞬間沸騰機のように、全身がみるみる真っ赤になりました。頭の先っぽから煙がモクモク出ている感じがします。
「結婚!?私とタケシが!?」
言葉の意味は理解しましたが、いきなりのことで頭がオーバーヒートしている私。なにがなんだか、考えがまとまりません。
「ほ、本当に、…私でいいの?私、まだ114歳だよ。?」
「ああ、生まれた時からお前のことが好きだった。地球では、『主人と使用人』の関係だったから無理だっただろうが、こっちではそんなものは関係ないからな。日本の法律ではダメな年齢だが、コロラド王国での法律ならば問題ない。この国では、『男女とも、子供ができる体になれば、結婚してもよい』となっているからな。
俺は、俺の心のままにヒカリ、お前を俺の嫁に迎えたい。ヒカリはどうだ?だめなのか?」
「イ、イ、いや。
私もタケシのことが好き!地球にいたころからずっと好きでした。できるならば、タケシと結婚したいと思っていました。しかし、タケシも言ってたけれど、いろいろな壁があったから、半ば諦めていたの。たしかにここでは、地球のしきたりや法律は関係ないものね。
タケシがいいのなら、私をタケシのお嫁さんにしてください!」
私は、こう言って花束を受け取ります。私にとって、人生で一番の誕生日プレゼントです。
しばらくして、会場中から拍手と祝福の声が。
こうして、私の誕生日の日に婚約した、私とタケシ。
その後はちょっと大変でした。
学園と弟子たちとの訓練、神子としてのお仕事をしながら、結婚式についていろいろと進めていくことになります。
まずは式場選びから。
これについては、すぐさま大神官様からお声がかかり、光の大神殿で盛大に執り行われることが決定しました。私としては、小ぢんまりとしたものでよかったのですが…。私とタケシの肩書が、それを許してくれませんでした。
私が『光の神子』であり、タケシが『闇の神子』であるという肩書です。
水の神子の時は、まだ神子になっていないときだった。そもそも結婚式はしなかったですから。独身(13歳)で神子になった私の結婚式は、ぜひとも盛大に執り行いたかったみたいです。
次に結婚式の日取りです。
招待客の関係上、光の祭典の前後がいいだろうという話になりました。私の予定と照らし合わせて、光の祭典が終わった翌日、7月8日となりました。学園の終業式が6月31日なので、6月いっぱいは私とタケシの体が空かないのです。
どうせ、まるっと1日かかるでしょうから。…1日で済めばいいのですが。
次に披露宴の会場です。
これについては、カトリア様からお声がかかりました。カトリア様といえば、ナリスタリア州の州牧でありテレサのお父上です。
つまり、披露宴の会場は、カランの北にそびえるカラン城で行うことになったのです。そのため、町のど真ん中にある光の大神殿から、町の北側にあるカラン城まで、隊列を組んで行進することが、この瞬間決定したのです。本当は嫌なのですが、市民に対する顔見世の意味もあるんでしょうね。
そして、最後の結婚式に着る服、つまりウエディングドレスとパーティードレスを作らなければいけません。
私が着るドレスと、タケシが着るタキシードについては、カランに本店を構える有名服飾店「オートクチュル」のオーナーが手をあげました。靴については、カラン一の靴職人が名乗りをあげ、ドレスに合わせる宝飾品は、カランに本店を構える宝飾店「カマンドール」が名乗りをあげました。費用については、3店とも、『カランを守護する龍人の神子様が着られる衣装なのに、代金など請求することはできません。無報酬で最高級のモノをご提供します。』と言われてしまった。
ドレスを仕立てる糸の素材である『スパイダークラブ』という蜘蛛と蟹が合わさったような魔物が吐く糸の収集と、靴の素材となる『白牛』と呼ばれる白く光沢の皮を持つ魔物を狩るお仕事は、カランの冒険者ギルドから指名依頼が出され、私の知り合いのSSランクの冒険者パーティが、無報酬で引き受けてくれています。
そうして、2か月があっという間に過ぎ去っていきました。
今日は、7月1日。
『光の祭典』と呼ばれる『龍皇教』最大の神事の幕が切って落とされました。




