(2)ヒカリの特訓②~チートな弟子たちのチートな実力~
「それでは、はじめ!」
「草の鎖!」
「風の戒め!」
審判役のカイベール先生の試合開始とともに、無詠唱で魔法を放つ2人。
まずは、風属性と地属性の中の植物操作でそれぞれが相手を拘束する事から試合が始まった。アイリーンには、地面から生えてきた草が両足に絡みつき、イグ君には、渦巻く風が体全体を拘束する。
それぞれの拘束魔法が相手を拘束するが、転移で抜け出し更なる魔法合戦へと発展していく。
突然始まった我らが17人による総当たり戦。第1試合のアイリーンさんとイグ君の試合から、いきなりの白熱した試合展開となっています。
おはようございます。ヒカリ=サギミヤです。
4日後に行われる期末試験という名の武闘大会に於いて、『どこまで力を抑えるか』を決めるために、弟子たちの今現在の実力を先生方に見てもらっています。
今回は、弟子たちの修行の成果を確認する目的もあり、全力全開で闘えと言ってあります。普段学園での授業では、周りに与える影響が甚大なため、3~5割程度の力しか出していません。つまり、授業中でも手を抜いていることになります。座学の方はともかく、体術や魔術ではどうしてもそうなってしまいます。
10分後。
「勝者、イグ!」
リングの上には、首筋に剣を当てられたアイリーンさんがいます。最後は単純に、剣技の熟練度の差だったようです。次の試合は、キーニャさんとコウタの試合ですが…。
「はじめ!」
「我望むは天神の怒り
風は大地を駆け、全てを薙ぎ払う
風神の怒りは、全てを無に還し
大地に道標となる空弾の轍となる
我求め感じるは、風神の息吹
我求め語らうは、風雅なる風神の舞
風よ瞬に駆け、我とともに全てを滅せよ
『空裂弾』」
試合が始まった瞬間、キーニャさんが、魔法を唱えながらコウタに向かって走り出します。両手には、黒曜鉄の双剣がしっかりと握られています。言霊魔法文字による詠唱です。確実に成長していますね。私のもとに来た当初は、2つ以上の事を同時に行う事は出来なかったキーニャさん。当然魔法の詠唱も、新代魔法文字でしかできませんでした。
「風と雷を纏いしは風雷の灯
我が双剣に宿りし聖なる刃と化せ」
先に放った『空裂弾』を盾代わりに、愛刀の双剣に風と雷の魔法付与を精霊に命令するキーニャさん。キーニャさんの命令にこたえて、風と雷の属性が双剣に付与され、一時的に聖剣もどきと化す。そのままコウタに向けて聖剣もどきになった双剣で襲い掛かるが、コウタは、愛用しているオリハルコン製ショートソードで受け流す。その際、完全無詠唱でリング全体の摩擦係数をゼロにする。キーニャさんは、いきなりリングの摩擦がゼロになったことで勢いよくこけてしまい、そのまま場外へと流れていった。よく見てみれば、コウタは、数センチ宙に浮いているのが見て取れる。
「勝者、コウタ!」
勝敗のカギは、完全無詠唱で魔法を発動できるコウタと、まだまだ無詠唱で魔法が使えないキーニャさん。ただそれだけです。さらにコウタは、私と同じ異世界の住人です。私が出来る事は、たいてい少しの鍛錬でできてしまいます。コウタは、いくつかの魔法を簡単なイメージだけで発動させます。この技術?は、異世界組ではないメーリアとテレサも出来るみたいです。
第3試合のコトリとスミレさん、第4試合のテレサとトラバーユ君の試合も同じ理由で瞬殺試合でした。
こうして、サクサクと試合は進んでいき、すべての試合が終わりました。
「先生方、どうでしたか?」
試合が終了すたあと、私は本来の目的を聞きます。15分ほど協議した結論は、
「君たち17人の実力は今確認したので、期末試験における手抜き量は、全力全開時の1~5%程度とする。ヒカリ君をはじめ一部の者は、1%でもたぶん瞬殺するだろうからさらに力をセーブしてもらいたい。君たちの試験は、今回の試合ですでに終わっているから、期末試験は楽しんでもらっても構わない。」
「ではそのようにします。ある魔導具を、実験的に使いたいと思うのですが、よろしいですか?」
「どんな魔導具だね?」
「今回の状況にはうってつけの魔導具です。
『懲罰の首輪』と言い、本来は何か法を犯した者のステータスや諸々の熟練度度合いを、実力の1~5%程度まで強制的に落とす魔導具です。今までは、どんな罪でもすぐに奴隷落ちだったのを防ぐ目的もあります。国王様からの相談で作ってみたんですが、何分実践投入するにはデータが足りないですので。今回の事はうってつけだと思った次第です。
この魔導具を、私たち17人が装着して試合に臨めば、たぶんほかの生徒たいとの術力が伯仲するはずです。まあ、私のようなバケモノには、懲罰の首輪を往けても結果は変わりませんが。」
「そんな魔導具があるのかね。確かにそれならば、面白い試合が見れそうだな。その魔道具の使用を許可しよう。それと、どうして結果が変わらないのだね?」
「ありがとうございます。
結果が変わらないのは、私のようなバケモノの魔力がほぼ無限大だからです。自らに、いくつかの枷をしていてもそれは変わりません。なのでただ単純に、『懲罰の首輪』という枷が1つ増えるだけなのです。
あと、この『懲罰の首輪』を嵌められた者は、自力では外すことができませんので、首輪の脱着は、先生の誰かがしていただけると助かります。それは、製作者である私にも言えますので。」
「あい解った。ところで首輪はいくつ用意できるのかね。」
「そうですね。いくつでも作る事は出来ますが、悪用を防ぐために今回の試験では、私たち17人プラス数人分で、30個ほど用意しましょう。
今回の実験がうまくいったら、サギミヤ商会の方で商品として売りに出す予定です。まあ、この『懲罰の首輪』の購入資格は、騎士団とかギルド、あとは、上位のランク持ちの冒険者とかになると思いますが。学園都市内にある各種学園のうち、戦闘系の学園には販売する予定ですよ。今回用意した『懲罰の首輪』についたは、そのまま学園側に寄付ます。首輪を脱着する権限は学園長にしておきますので、今後、オイタが過ぎる学生にでも、罰則の一環として嵌めてあげてください。」
「解りました。わたくしめの顕現で、うまく運用していきましょう、ヒカリ君。
それはそうと、何なら君たちはこの部屋の中ならばともかく、学園の授業の時はその『懲罰の首輪』を付けて授業をするかね。普段はセーブしているとはいえ、なかなかに大変だろう?」
「そうですね。それも面白いかもしれませんね。この首輪をはめられた状態でも、たぶんクラスメイト達には余裕で勝つことが出来ると思いますので。どうする?」
私は、みなの方を向いて確認を取る。
「おもしろそうだね。しかし、誰が脱着するの?ヒカリちゃんの話だと、私たちの誰かがそれをすると、その人が脱着が不可能になるんでしょ?」
「そうですね。毎回先生方に頼むのもアレなので、私たち17人とプラス数人が嵌める首輪だけは、特別製にしましょう。」
「どうするんだね?」
今までは、学園長と私が話していたのだが、ここにきてカイベール先生が口をはさんできた。
「今回の試験は、首輪の実証実験もあるので『懲罰の首輪』を嵌めることになります。しかし、普段の授業では、『懲罰の首輪』の類似品である『能力減衰の腕輪』というのを嵌めます。これは、『懲罰の首輪』と違い装着者自身が脱着可能となる魔導具です。さらにこの腕輪には、もう1つの特殊能力があり、装着している間は、装着者の望む負荷を与えることが出来ます。例えば『常時重力10倍』とかね。複数装着すれば、それだけかけれる負荷も多くなります。」
「そうだな。今後の授業では、お前たちはその『能力減衰の腕輪』というのを嵌めて受けるといい。」
「ありがとうございます。そうさせていただきます。
先生方は、これからどうしますか?私たちは、これから結界の外に遠征に行く予定です。先生方もお付き合いしてみますか?」
「そうだな。座学を担当している教官には無理があるだろうが、体術担当のアルフレド教官と、武術担当のケミイラ教官、あと私の3人はヒカリ君たちの訓練に参加させていただこうか。」
「解りました。では、アルフレド先生、ケミイラ先生、カイベール先生の3人以外の先生は、外の世界に送らせていただきます。今日から6日間ほどかけて遠征を行うので、ここにいる全員は一度外の世界に出て、4日分の食料と諸々とした雑貨類を準備してきてください。そうですね。集合時間は、外の世界の時間で3時間後。集合場所は、全員渡してある指輪で転移してこれるので、この広場でいいでしょう。
何か質問はありますか?」
これからの予定をみなに話した私は、言い忘れたことはないかと質問を受け付けた。これに対して、テレサが質問を投げかけてくる。
「ヒカリちゃん。服装はどうする?遠征の場所によっては、体操服にブルマではちょっとまずい場所もあるでしょ。」
服装については確かにすですね。言い忘れていたことでもあります。
「まあ、結構汚れると思うので基本は体操服にブルマでいいと思います。
遠征の目的地は、今いる高台から遠くに見える湖の畔を予定しています。湖の畔で2泊してから、再びここに戻ってくる予定です。
湖までは、片道2日なので途中平原のど真ん中で野営をします。2日目の午後あたりからは、森の中を歩くので、それなりの恰好を準備しておいたほうがいいと思います。体操服にブルマで遠征中過ごすのならば、別に準備する必要はありませんが。」
こうして私たちは、遠征の準備のため一度外の世界へと戻りました。




