(3)魔術実技試験~本命の試験は手抜きの香り?!~
体術・武器術の試験も終わり、いよいよ本命である魔術の試験です。
試験項目は4つ。
1つ目は、遠距離射撃。50メートル間隔に置かれた小さな的に、ダーツの矢を当てる試験です。ダーツの矢に魔力を込めて、的に向けて投げるだけなのですが、これがまた難しい。魔力を込めすぎると、ダーツの矢が壊れてしまいます。壊れずに飛んでいったとしても、魔力のコントロールをしくじると、的や矢が壊れてしまいます。遠くに離れるほどコントロールが難しくなります。
2つ目は、魔法の相殺。試験官が放つ魔法を同じ魔力量でもって相殺する。案外これは難しいんですよ。試験官が、どれくらい魔力を込めたのかを瞬時に判断し、同じ魔力量で同系統、もしくは逆系統の属性でもって相殺しなくてはいけないからです。魔力量が同じでないと、うまく相殺できません。
3つ目は、魔術の同時使用。最低2つ以上の魔術を使い、正確に的に当てる。ただそれだけのことなんだが、慣れていないとこれがまた難しい。2つ以上の魔術を同時に制御するのは、とても大変で魔力の消費が、数が増えるごとに比例して多くなっていく。
4つ目は、最大魔力でもって撃つ魔術。今現在持っている最大攻撃魔法を放つのだ。
さて、”どうやって”手抜きをしようかな。特に4つ目は、ほかの受験生には悪いが、鼻歌混じりで手を抜かないと、テラフォーリアが消滅しかねない。まあ、ほかの受験生の威力に、少し色を付ける程度くらいで撃つしかないかな。
ほかの受験生の試験を傍観しながら、そんなことを考える。
そんなこんなで、私の番がやってえ来る。手渡されたのは、10本のダーツの矢。私は、無造作に10本の矢に魔力を込めて、的にめがけて適当に連続して投擲した。ダーツなぞ、地球にいたころにさかのぼっても一度もやった事がないのにも拘らず、適当に投げたすべての矢は、寸分違わず的のど真ん中に突き刺さった。
私の投擲を見て、|何処か遠い世界に旅立って(フリーズして)しまった面々。メーリアやテレサも固まってしまっている。
「これはやっちゃったかな?」
つい、本音が口から出てしまう。まあいいや。やっちゃったものは仕方がない。開き直ろう!
次の試験は、魔法の相殺である。
私に向かって属性が付与された魔法弾が飛んでくる。それも全方位から、別々の属性付与の魔法弾が20個以上もだ。
なぜ?
まあ、いいか。2つ目と3つ目の試験を、同時にやっていると思えば。
そう思うことにし、私は、”完全無詠唱”で、撃たれた数と同数の魔力弾を生成し撃ち返した。全ての魔法弾が完全衣相殺さて亡くなったのを確認して、試験官のほうを向いたら、周りにいた人すべてが|何処か遠い世界に旅立って(フリーズして)しまっていた。
「またやっちゃったかな?」
耳を欹てていると、いろいろを聞こえていた。
「あ、ありえない…。」
「あの数を一瞬で消滅させたぞ。」
「…あの子、今完全無詠唱で魔法を放っていなかった?」
「…そういえば、今の時代、完全無詠唱で魔法を放てる人って、そんなにいなかったような気がする。」
私のささやきは、完全に場の空気に消えていった。
次の試験は、魔術の同時使用でしたね、確か。さっきの試験でも同じような事をやったような気がしますが、まあいいです。私は、上空に召喚魔法陣を構築する。魔方陣から召喚される魔物は、ランダムなので何が出てくるのかは出てきてからのお楽しみだ。その後、魔方陣から魔物が召喚されるまでの時間を使って、光の矢・闇の矢・風の矢・火の矢・土の矢をそれぞれ1000本づつ出して、魔方陣を取り囲むように待機させた。
私は知らない。既に周り全員が、この異常な光景を見て|何処か遠い世界に旅立って(フリーズして)しまっていたことを。召喚魔法陣と言う最上級の魔法を発動させた後、魔方陣を取り囲むように、6つの属性を持った魔法の矢が、合計6000本待機状態でいるのだ。
さて、何が出てくるのかな?
魔方陣から出てくる魔物が何なのかが、楽しみで仕方がない私。
数分後、魔方陣から出てきた魔物は、3つの首を持ったドラゴンだった。『知識の坩堝』が、瞬時に検索してくれた結果、SSランクの『三つ首竜』だという魔物だと分かった。三つ首竜が成長し、突然変異を起こすと八岐大蛇という最強の竜種になるらしい。
だが今は、ただの魔法の的だ。
私は出てきた瞬間、待機していた6000本の魔法矢を一斉に放った。けたたましい轟音とともに、一斉に三つ首竜の襲い掛かる魔法の矢。悶々と湧き上がる煙が晴れると、全身傷だらけの三つ首竜がいた。しかし、既に死んでいるようで、ゆっくりと地面に落下してきた。これはこれでいい素材なので、私はすかさず空間収納に、三つ首竜を格納した。
「先生!起きてください!」
なかなか起きない先生に苛立ち、|何処か遠い世界に旅立って(フリーズして)しまっている人全員の背中に、特大の氷を入れてやった。次々と再起動を果たす面々。
「ヒカリ君。」
「何でしょうか?」
先程、ヒカリ君が作り出した魔方陣から、三つ首竜が召喚されたと思うのだが、倒したのかね?」
「はい、魔法の矢6000本を当てたら死にましたよ。いい素材になるので、私が確保しましたが、だめでしたか?」
「倒してくれたのには感謝するが、できれば、死体は学園に寄付してほしいのじゃが。」
「学園に寄付ですか?ちなみにどうしてですか?」
「ヒカリ君も言っていたように、三つ首竜は、薬などの素材としては最高級の素材だ。しかし、なかなか手に入れるのが難しいのも事実。それが1匹丸々手にはいる状況じゃから、この機を逃せば、次はいつになることやら。
まあ、そんな大人の事情何だが、どうかな?」
「まあ、いいですよ。欲しかったらその時に狩りに行けば済む話ですから。何でしたら不良在庫とかしている各種ドラゴンもお付けしましょうか?」
「そうしてくれるならありがたい。ではヒカリ君。試験が終わったら、事務棟横の『第1倉庫」まで来てくれんか。」
「ハイ分かりました。次の試験で最後ですから、そのあとに伺いますね。
あっ!そうだった。次の試験ですが、最大火力の攻撃魔法だと、いろいろとやば目な状態になるので、思い切り手を抜きたいのですが、いいですか?」
「試験に手抜きか!まあ、今の魔法でも相当だからな。こちらか、手抜きについてはお願いしなくてはいけませんな。」
で、最後の試験『最大火力の攻撃魔法を放て』だが、私は、思い切り手を抜きました。それでも、三つ首竜を瞬殺した魔法の矢に比べて1割ほど強めに放ちます。
その結果。
学園の敷地の片隅に、直径100メートルほどのクレーターが出来ました。
2週間後、カランの屋敷に試験結果が届きました。結果は見事合格です。もちろん、メーリアやテレサをはじめとした私の仲間は全員合格しました。
これで4月からは、晴れて魔術学園の生徒になります。




