(6)光の神子の新年行事②~これが私のやり方です~
空も白み始め、あと30分ほどで太陽が顔を出すと言った時間です。私が『光の神子』となって、初めて本格的に行う神事『御霊初めの儀』が始まろうとしています。
あけましておめでとうございます。ヒカリ=フレクシア=イマミヤです。
大神官様から、『自由に進めてくれて構わない』と言うお墨付きもありますので、自由に進めていきたいと思います。
今、私がいる場所は、『光の大聖堂』の屋上にある『空中庭園』です。
普段は私専用の憩いのオアシスらしいのですが、年に4回(春分・夏至・秋分・冬至)、神事が行われる時間だけ一般にも開放される空間です。
今日は、冬至。1年の始まりの日です。
こんなただ”初日の出”を見るだけの神事でも貴族たちは、特権を駆使して自分たち以外はここに来れないようにしていたみたいですね。でも、その特権も去年までです。今年からは、1000年ぶりに現れた『光の神子』の初勅により、『すべての神事は、貴賤の差別なく参加できる』ようにしました。その結果、結構荒れたみたいです。主に貴族たちが。貴族たちが暴れたせいで、無条件で参加できていたはずの国王様一家や、州牧様一家も参加することが出来なくなりました。本当にバカですね。
で、現在空中庭園にいるのは、私と神官たちだけです。貴族たちは放っておいて、神事を始めましょう。
まず初めに、私はこんな事を宣言してみました。
「ここにいる神官様。少しの間、私の動きや思考とリンクさせる魔法をかけます。口で説明していくのは時間の無駄ですし、そのたびに神事を止めるわけにはいきませんので。」
「…そうですね。解りました。神事が終了するまでの時間ならば、魔法で操って頂いても構いません。」
大神官様からの了承を得たので、早速魔法をかけて神事を始めます。
庭園をざっと見渡し、ちょうどいい建物を見つけました。あれを中心に神事の空間を構築していきましょう。
私は、庭園のほぼ中央に造られている東屋を中心に、聖水で六芒星を描きます。気合一喝、聖水で描いた六芒星は、光の粒子を黒線に変え、白い石でできた床に刻み付けました。その後、空間収納にしまってあった普通の鉄剣に光・闇・風・水・火・地の加護を与えて聖剣とし、6つの頂点にそれぞれ神官を一人ずつ立たせて、聖剣を持たせて天に捧げさせます。
これで準備完了です。
私と大神官様と2人だけで東屋に入り、大神官様を補佐にして儀式を進めていきます。
”私の懐”から取り出したのは、何も書いていない数百枚の白紙の紙束。大きさは10センチ×30センチの短冊状です。それを大神官様に渡します。もう1度、懐から取り出したのは、ロール状に巻かれている白紙の紙です。私は、言霊を混ぜながら適当に祝詞を唱えるように、何かを読み上げていきます。するとあら不思議、私が持っているロール紙が勝手に広がっていき、広がった部分に、私が読み上げている言葉そのままに”書き写されて”いきます。まあ、このロール紙自体に、そうなるようにとある魔法がかけられているんですがね。
私が祝詞?を唱え終わると同時に、太陽が地平線から顔を出してきました。
初日の出の瞬間です!
自分でも驚いています!
まさかのタイミングです!
こんな事ってあるんですね。意図してやっていたわけではないので、本当に偶然の産物ですが、私の支配下にしていない神官さんたちは、すごく感動していらっしゃるご様子。
まあいいです。続きといきましょう。
私は地平線から顔を出した太陽に向けて、『神礼』をしていきます。私が神礼をすると同時に、支配下にある薪炭さんたちも神礼をします。それにつられて、支配下に置かれていない神官さんたちも、神礼をしていったのには驚きました。
『神礼』とは、私が、と言うか、私たち6人の龍神の神子が、『光の神子の降臨の儀』の時に、光龍神『フレクシア』の神像に向かってやった作法(両手を胸の前で掌が水平になるように組み、その場に正座をして一度深くお辞儀をする。その後、組んだ手をそのままに立ち上がり、そのまま深く一礼する。その後は、また正座をして深くお辞儀をする。これを5回繰り返えす)です。私が『神礼』と名付けました。これから先、私主催の神事の際には、参拝者や参列者を含めて、全員に1回は神事の中でやってもらう事になります。
神礼が終わると、私は、大神官様に預けた紙を聖水に浸しながら言霊を唱えます。すると、只の白い紙に、何やら不可思議な文様と文字が浮かび上がりました。
これで、私の初めての神事『御霊初めの儀』は、無事に終わりました。
神事が終了ると同時に、私の支配下に置かれていた神官さんたちを解放しましたよ。
「これにて、『御霊初めの儀』は終わりです。」
私の終了宣言の後、神殿内の私の執務室に向かい暫しの休憩です。朝食を食べないと、次の神事の最中に倒れてしまいます。大神官様と執務室にある応接間で朝食を食べている時、
神子様、先ほどの『御霊初めの儀』の際、私に預けられました紙の束、御札でしょうか?ですが、どういたしましょう?」
大神官様が、先ほどの紙の束について質問してきました。
「ん~、どうしよかな?そう言えば、次のミサの参加者はどうなっていますか?」
「神子様がお決めになられた通り、”貴賤を問わず”完全抽選方式で1200席(1列20席×60列)用意した座席すべて埋まっております。一番先頭の列には、国王一家と州牧一家、その護衛20人が座っております。
1つお聞きしますが…。どうして国王一家と州牧一家だけは、抽選せずにお入れになられたんですか?抽選に漏れた貴族たちが、その事について文句を言っておりましたが。」
「その事ですか。『私は国と対立しない』と、暗に伝えているだけですよ。その事に気づいているかどうかは別にして。」
「何故ですか?『光の神子』としてならば、別に国家と仲良くしなくてもいいでしょうに。」
「まあ、そうなんですが。私は神殿から外に出ないにはなりたくありません。私のもう1つの顔である『冒険者』をしていく以上、本拠地となる国家とは仲良くしていた方がいろいろといいですしね。ただそれだけの理由です。」
「ではなぜ、貴族は別枠なんですか?」
「貴族ですか?”上から目線”のおバカさんたちと、まともな会話は望めません。現に、こちらの都合も顧みず、真夜中に突撃してくるような連中ですよ。普通の考えを持ている者ならば、そんな時間には、訪問する事はしないでしょう?ましてや、逢う順番すらも守っていません。
そんな連中に、優遇処置など与える必要を感じません。」
済ました顔で、食後の果物をつつきながら言い放つ私に、大神官様は苦笑するしかありませんでした。
「…そう言えば、最初の質問の答えを頂いておりませんね。」
「そうでしたね。脇道に大きくそれてしまいましたね。
あの御札には、私からの強い念を込めてあります。骨折程度までならば、患部に紙を当てて一晩寝れば完治するほどの治癒魔法が施してあります。病気を治すまでの力はありませんがね。
お守りとして、肌身離さず身に付けておけば、フレクシアの加護により、1年間は大きな病気や怪我、自身に襲い掛かる不幸ごとを回避する能力があります。
記念にと言っては何ですが、今日のミサに参加できた人に1枚づつ渡してあげてください。私からのささやかなプレゼントです。次回以降は、私の気分次第になりますがね。」
「分かりました。では、御札は、そのように参拝者に1枚づつ記念として渡しましょう。そうですね。名目としては、『光の神子降臨記念』とでもしておきましょうか。」
「いいですね。それ。それで行きましょう。それならば、次回以降なくても、神殿としての言い訳にもなりますしね。
アッ!そうそう。『御霊初めの儀』で使った剣ですが。」
「あの剣がどうかしましたか?」
「あの6本の剣ですが。元はただの鉄の剣ですが、あれにはそれぞれ光・闇・風・水・火・地の加護が掛かっている聖剣になっています。それぞれが、Aランク以上の使い手が使用すれば、ドラゴンすら真っ二つにするほどの威力があります。
何時でも作ることが出来る物なので、今回作った6本の剣については、『光の神子』と、『コロラド王国』との友好の証として、国王様にそのまま下賜しようと思っています。」
「分かりました。では、この後の神事が終わった後に、剣を送る儀式を入れておきましょう。
そういえば。
昨日、フレクシア様からの『託宣』の時に、『今代の光の神子と水の神子は、歴代最強の力と魔力量がある』と追加で言われたのですが、本当の事ですか?」
「また、話が急に変わりましたね。フレアが言っていたのなら、本当の事でしょうね。私自身には、そんな自覚はありませんが。私もサトミさんも、翼の映えた蜥蜴程度ならば、鼻歌混じりで殲滅しますね。あいつらなら、何匹群れていても大丈夫です。」
私の言葉に大神官様は、乾いた笑みを浮かべていました。
新年に入り、最大の神事である『光龍神天啓の詔の儀』が始まります。今回は、『御霊初めの儀』で作ったお札を配る名目、『光の神子降臨記念』のため、『光の神子の降臨の儀』の時にやった事をもう一度行います。そのため今回だけは、6大龍神の神子全員が強制参加と相成りました。ちなみに、『御霊初めの儀』の時も、一応参加はしていましたよ。
神事も無事に終わり、『光の神子降臨記念』の記念品の贈与となります。まずは御札から。
今回も、大神官様を補佐係にして、『光の神子降臨記念品贈与の儀』が始まります。各参拝席の列につき2人(一番花道に近い席に座っている人60人)を指名し、雛壇上に上がってもらいます。指名された人は、王族だろうが貴族だろうが関係なく、雛壇の下で神礼を行い、履き物を脱いで雛壇に上がります。雛壇上は、基本”土足厳禁”となっていますので。
大神官様が、祭壇の上の供物を一緒に置かれていた御札を、神子たちに渡していく。ヒカリたちは、順番に御札を代表者に手渡ししていった。その後、今度は、王族と州牧一家が3人ずつ壇上に呼ばれる。光は、1人に1振りずつ聖剣を下賜していった。そしてヒカリは、下賜した聖剣の由来を話す。
「この剣は、先の『御霊初めの儀』において、儀式に使用していたモノです。各属性ごとの聖剣ですので、大切に使用してください。」
「神子様のお言葉とともに、ありがたく貰い受けまする。」
国王様が代表して感謝の意を述べ、神事はすべて終了した。
そして、休憩を挟んだ午後、私は、国王一家と州牧一家の訪問を受けた。




