(2)新年の慶事①~1000年ぶりの光の神子顕現す~
「我の元に来たれ。光の神子たる資格を持つ者よ」
私は、何かから発される声に従い、光の大神殿の中に入っていく。
「試練を進め。さすれば我と汝は出逢うだろう」
私しかいない白と黒に彩られた無機質な空間を、言葉に従いながら歩きていく。
「記憶の断片を集めよ。生れながらの『光の神子』よ」
「生れながら?」という事は、私は、地球にいた頃からすでに、『光の神子』と言う存在になる運命だったのか?
そんな疑問を抱きながらも、長い通路を目的地に向かって歩く私。
こんばんわ、今宮光莉です。
大晦日の夜に、皆して光の大神殿で、年越しの説法を聴きに来たと思ったら、白と黒の世界に連れてこられました。そして、訳も分からぬまま、何かの試練?らしきものを受けています。
「6属の理は断片となりて、相反する2対の頂を乞う」
廊下に並ぶ柱を通り過ぎるたびに、私は何かに語り掛けられている感じがしている。そのたびに、私の中に、”何か”が入り込んでは出ていく感じがしていた。その”何か”は、私の中に1行詩のような言葉を残していく。
廊下の終点にある扉が、また音もなく開いていく。まるで、私を招き入れるかのごとく。
私は、開いた扉を潜り、部屋の中へと足を踏み入れた。扉を潜る瞬間、最後?になるのかな。最後の一文が頭の中に刻み込まれる。
「光の神子よ、試練は教えた。あとは、歩んだ歴史を言葉に紡ぐのじゃ。さすれば、運命の扉は開かれるだろう」
『試練』に『歴史』に『運命の扉』。同じ「みち」と言う、全く違う言葉の意味を知れという事だろうか?いろいろな疑問が浮かぶ中、私は、部屋の中に足を踏み入れた。
結構大きな部屋だ。
私が入ってきた入口からでは、部屋の最奥が霞んで見えない。鏡の床に敷かれている赤絨毯、入り口から最奥まで、赤絨毯は続いているようだった。鏡の床は、左右それぞれ100メートルほどで途切れ、そこからせり上がるように、巨大な木の幹をいくつも並べたような壁がある。壁際には、一体どれだけいるのか知らないが、全身甲冑姿の騎士?が両サイドにずら~~と並んでいる。そして、何処までもある青空のように、天井があるのかないのかも解らない。
例えていうならば、『巨大な謁見の間』だ。
という事は、この謁見の間を進んでいけば、目的の者?物?に出逢う事が出来るのだろう。
意を決して、赤絨毯を1歩踏みしめた時、何処からともなく”声”が響き渡る。
「記憶の断片を集めし者よ。『記憶の断片』を繋げ、言霊と成して我に届けよ。さすれば、『運命の扉』は開かれるだろう。」
1歩赤絨毯を踏みしめるたびに、これまでに感じた数々の疑問を解決するような『言葉』が投げかけられていく。
そして絨毯の色が『赤』から『真紅』に変わった場所で、光莉は歩くのをやめた。そして、その場で『言霊』を紡ぐ。
「光の先には闇があり、闇は光に恋焦れ光は闇を愛す
天地の出会う場所には光あり、闇を求めれば天地同伴す
火は水を嫌うが水を恋する、水を吸い取り火となれば火は水と同化し、
6属の理は断片となりて、相反する2対の頂を乞う
我歩むべき試練は光と闇の彼方にありて、歴史を刻む
記した歴史は、我と汝の証となりて
遥かななる歴史の闇に閉ざされた運命の扉を開くだろう」
ここまでは、流れ込んできた『言葉の欠片』を繋げただけだ。しかし、これだけではだめだと私は思う。
私が何者なのか?
その問いの答えはすでに出ている。『生れながらの光の神子』なんだと。
つまり私は、生まれた瞬間から、テラフォーリアに来ることが決められていたのだ。
だから私は、ここに宣言する。
『運命』によって導かれた存在に出逢うために、私は最後の言霊を紡いだ。。
「我、『光の神子』となりてここに宣言す」
この言葉で私は、自分が何者かを『世界』に宣言する。自分でも驚くほどに透き通った声音が、空間を支配していく様子が解る。
「光の神子はここに誓う
定められた運命を受け入れ、『試練』にあがらわず、『歴史』に惑わされず、『記憶の断片』を繋げ『運命の扉』を開く事を」
次に紡いだのは、流れてきた記憶から拾った言葉。
「神々の頂点に立ち光龍『フレクシア』よ
我『光の神子』は、1000年の時を経てこれより汝の傍らに立つ事を誓う」
そして最後に、大切な言葉を言霊にして紡いだ。
「我『光の神子』が願い望むは、傍らに寄り添う半身なる光龍の顕現
我と共に未来を歩め、我の命終わる時まで我の側で顕現し続けよ
『願い届ける神の降臨』」
言霊を紡いでいる間に、いつの間にか玉座の目の前まで来ていた私。
最後の言葉を投げかけると同時に、玉座に1体の龍が現れる。白い躰に金色の瞳、頭に生えているのは、老木に幼な感じの長い2本の角。
「あなたが、光龍『フレクシア』ですか?」
その轟々しさに圧倒されながら、私は言葉を紡ぐ。
「いかにも。我がすべての神々を束ね、光を加護する存在、光龍『フレクシア』だ。
今代の光の神子よ。
若き神子に問う。『汝が求める光』とは何か?」
「………。」
いきなり問われて、答えを見いだせない私。しかし、フレクシアからの質問ははさらに続いた。
「若き神子に問う。『汝が進む光』とは何か?」
「………。」
「若き神子に問う。『汝が放つ光』とは何か?」
「………。」
全ての質問に、答えられずにいる私。しかし、『答えられない』と言う『答』が、これらの問いの『正解』だった。フレクシアは、そんな私に優しく問いかける。
「若き神子よ。」
「ハイ、何でしょう?」
「『答えられない』が『答』か。また面白い答え方をするの。
気に入った。今代の神子は実に面白い。
魔法すらも独学で使いこなし、また、感性もとても豊かだ。
「ところで、そなたは名をなんと申す?」
今更ながらの事を聞かれる光莉。そう言えば、まだはっきりと名乗ってはいなかったなと、おどけて笑い、緊張が一気に解けていく。
「ふふふ。そう言えば名乗っていませんでしたね。私は今宮光莉。こちらでの呼び方ではヒカリ=イマミヤとなるのかな1000年の時を越え、再び光龍『フレクシア』の神子となります。」
「今宮光莉と申すのか。我の神子となるため、そなたに新たな名を送ろう。今より其方は、我の名を冠して『ヒカリ=フレクシア=イマミヤ』と名乗るがよい。我な名を冠している者は、『光の神子』と認識されておる。
ヒカリよ、そなたは言霊で『我の命終わる時まで我の側で顕現し続けよ』と願った。我はその願い敵えようと思う。我の顕現時の姿を思い浮かべ、我に新たな名を付けろ。」
ヒカリは、『セーラー服を着た2足歩行をする三頭身の白猫』と言う姿を思い浮かべる。身長は30センチくらいが可愛いかな。
猫だから語尾は『ニャ』。女の子だけど、一人称は『ボク』。私の事を『ヒカリちゃん』と呼んでいる。などと、少し中二病丸出しの妄想を少し入れてみる。
そして名前…、この子の名前は『フレア』。
そう呟いた瞬間、玉座にいる白き龍神の姿が、光莉の思い浮かべたとおりの姿になる。さらに、光莉の服装が、何処か轟々しい感じの服装に代わる。
絹以上に肌触りがよく光沢のある布で造られた衣裳。純白の着物に黒い袴を重ね、その上に7色の薄い布を十二単のように重ねる。黒地に金糸と銀糸で龍神をモチーフに刺繍された帯を結び、その帯は、結び目から先が広くなって2メートルほど地面をする感じに伸びている。黒いニーソックスを履いた足には、黒檀の靴底に豪華な金細工の施された黒革を施したサンダルを履いている。
元々腰まで伸ばしたあった髪の毛は、後頭部で纏められて、大きな金細工の簪で留められている。
そして何故か、私の背丈よりも長い黄金の錫杖を持っている。
「フレア、この服装は何?」
「ヒカリちゃんが今着ている服は、『光の神子』として活動する時に着る『制服』みたいなモノニャ。ボクからのプレゼントニャ。コマンド1つで簡単に、普段着と切り替わるように設定したあるニャ。」
そんなことを言いながら、3等身でセーラー服を着た白猫が、ポテポテと歩いてきた。かわいらしい手には、水晶のような透き通った透明の球体を持っている。
「フレア、その球体は?」
「これかニャ。これは、ボクからヒカリちゃんにプレゼントする『知識の坩堝』と言うアイテムニャ。光の神子しか使う事の出来ないアイテムだニャ。」
知識の坩堝をフレアから受け取ったヒカリは、使い方を瞬時に理解する。理解したというか、フレアから受け取った瞬間に、ヒカリの中に球体が吸収されたのだ。
「これで、光の神子になる儀式は全て終わったニャ。」
「そう言えば、智美さんたちは何処にいるの?」
「他の5人は、それぞれの龍神の試練を請け合わって、既に集合しているニャ。あと終わっていないのは、ヒカリちゃんだけニャ。」
「じゃあ、すぐにみんなの所に行きましょう!」
「分かったニャ。」
私は、皆が集まっている空間に、フレアごとジャンプした。
「遅くなってごめん。」
「遅かったね、ヒカリちゃん。…それに…、何?その神子みたいな服装は?」
普段着のままのサトミが、ヒカリの着ている服に対して突っ込みを入れる。
「この服ですか?『光の神子』になった時に、フレアから貰ったんです。」
「フレアと言うと、ヒカリちゃんの側にいる猫ちゃんのこと?」
「はい、かわいいでしょ?サトミさんのも可愛いですね。」
今この場には、ヒカリたち6人にほかに、6人?6匹?の小動物の姿をした6柱の神がいるのだ。
「じゃあ、とりあえず誰がどの神の神子になったのかを把握しましょう。」
そうヒカリが切り出す。自分以外は何も知らないヒカリは、ただ把握しておきたいからだったのだが。
「まずは私からですね。私はこの白猫のフレア、光龍『フレクシア』の神子である『光の神子』になりました。光の神子になった時に、名前を『ヒカリ=フレクシア=イマミヤ』に改名しました。今後は、こちらの名前になりますので、フルネームで呼ぶ時は気を付けておいてください。
次はサトミさん、お願いします。」
たまたま右隣に陣取っていたサトミに声をかけるヒカリ。
「私は、水龍神『ウンディーネ』の神子『水の神子』になったよ。改名した名前は、『サトミ=ウンディーネ=シマムラ』だね。ちなみにこの子が、『アクア』だよ。」
そういって、サトミは、右肩に座っている手のひらサイズの妖精に視線を向けた。妖精の姿は、何処かの絵画で見た美女の顔つき。鰭のような大きな耳を持ち、青い髪を腰までたなびかせている。背中には、蝶のような水晶の翅を持っている。人見知りが激しいようで、皆の視線が集まると、サトミの髪の毛の中に隠れてしまった。
「次は俺だな…」
全員がそれぞれの神と、神子になったのかを簡潔に話していく。
ちなみに、誰がどの神の神子になったのかは次ぎのお通りだ。
【ヒカリ=フレクシア=イマミヤ】
光龍神『フレクシア』の神子である『光の神子』
『フレア』と名付け、セーラー服を着た三頭身の白猫で、光龍神を顕現させている
【タケシ=ダークネス=タケシロ】
闇龍神『ダークネス』の神子である『闇の神子』
『ムーンベルト』と名付け、学ラン姿の三頭身の黒猫姿で、闇龍神を顕現させている
【リョウコ=シルフィード=クズタニ】
天龍神『シルフィード』の神子である『風の神子』
『シルフ』と名付け、50センチ前後で、4枚の翅をもつ碧の髪をしたエルフミミの女の子として、天龍神を顕現させている
【サトミ=ウンディーネ=シマムラ】
水龍神『ウンディーネ』の神子『水の神子』
『アクア』と名付け、小さな水の妖精姿で、水龍神を顕現させている
【マナミ=イフリート=テラオカ】
火龍神『イフリート』の神子である『火の神子』
『サラダン』と名付け、真紅の瞳をしたモフモフの純白の毛並みで、尻尾の先に小さな炎が揺らめいている姿で、火龍神を顕現させている
【ケンジ=ノーム=ナカジョウ】
地龍神『ノーム』の神子である『地の神子』
『ハク』と名付け、デフォルメされた2足歩行をする4等身(耳の長さが1頭身分ある)白いウサギ姿で、地龍神を顕現させている
「じゃあ、早速だけど元の世界に戻ろうか!戻ったらそのまま、神殿にでも突撃かましちゃう?」
「それ面白そうね。それならば、全員、ヒカリちゃんみたいな格好になった方が、さらに面白くなるんじゃない?」
「そうね。じゃあ、皆着替えちゃいましょう。」
何か面白いイタズラを思いついたヒカリに乗っかるサトミ。呆れながらも暴走状態の2人に従う面々。ヒカリ以外は、これと言った神子の衣装はなかったため、急遽この場で光莉が着ていた衣裳をまねて作り出す。
こうして、神子たちによる、洒落にならないイタズラが決行されるのだった。




