(3)光莉先生の異世界魔法講座~魔法の勉強は、ちょっと難しいですね~
襲ってきた魔物を、サクッと殲滅した私と智美さんは、2人で決めた予定表に従うべく、違う世界に旅立ったままのみんなを起こす為の行動に出た。起こし方は簡単。頭から大量の水をかけるだけ。
「光莉ちゃんって、けっこう鬼畜よね。」
智美さんはこんなことを言ってのける。私は、水には濡れたくないので、”空中に浮いたまま”風の幕を頭上に張って防ぎましたよ。ちゃっかり智美さんも、風の膜を張って防いでいたではありませんか!
こんにちわ、今宮光莉です。
異世界テラフォーリアにある、コロラド王国の地方都市カランに来てから2日目の昼下がり、私たちはいきなりの大ピンチ!になるわけではなく、何時の間にやら魔法を覚えていた智美さんとともに、魔物の群れを殲滅してしまいました。
私もですが、智美さんの大概にしてほしいモノです。『広範囲殲滅魔法』ですか、氷結地獄。何時の間に覚えたんでしょうか?それと、唱えていた詠唱は、私も唱えていた『言霊魔法文字による詠唱』ですね。
「光莉ちゃん、空宙に浮く事も可能なの?もしかして、自由に空も飛べるの?」
「それくらいなら余裕ですよ。ぶっちゃけ知っている場所なら瞬間移動する事も可能です。」
この際だからできる事を暴露してしまいましょう。
「光莉ちゃん、せめて人間のままでいてね。」
「この程度の事なら、智美さんだってすぐに出来ると思いますよ。一緒に人間やめましょう。」
ぷかぷかと宙に浮きながら私は、智美さんとこんな事を話しています。ちなみに智美さんは、
「じゃあ、やってみようかしら。」
と言って、私と同じく簡単に宙に浮きます。そして、急にいなくなったと思ったら、しばらくして戻ってきました。手に大量の服を抱えて。
「智美さん、瞬間移動も出来るようになったんですか?」
「案外簡単ね、瞬間移動。」
智美さんは、プカプカと宙に浮きながら、みんなに乾いた服を配っています。
閑話休題
ここで、この世界で使う魔法についてのお勉強です。再起動させたみんなと一緒に勉強をしましょう。
テラフォーリアでは、『光・闇・風・水・火・地・無』の7属性と、上位として『空間・重力・時間・精霊』の4属性系11属性が、人が使用できる属性として知られています。これらの属性を単独もしくは、複数の属性を組み合わせて魔法を放ちます。当然のことながら、術者が持っていない属性の魔法は使うことが出来ません。
その上に、『神龍属性』と言う、『龍神の神子』と呼ばれる者にしか使用できない属性が存在しているらしいです。これは、全ての属性が仕える事が、最低条件だと、たくさん購入した本の中の1冊に書かれていました。『龍神の神子』については、私も詳しく知らないため(どの本にも詳しい説明がなかった)、ここでは割愛させていただきます。知らない事は、話す事は出来ません。推測で物を語るのは、あとで痛い目に遭います。
魔法に大事なのは、とにかく『イメージ』です。どんな効果を持つ魔法にするのか、どんな属性なのか、より細かい部分までイメージをふくらますことが出来れば、より高度な魔法を使うことが出来ます。
テラフォーリアの魔法は、ゲームでよくある設定(スキルが上がれば、使える魔法が増える)や、上級、中級、下級などの様な、魔法の威力自体に上下があるわけではなく、『術者のイメージ』と、『込められる魔力の質』によって変化していくのです。
次に『詠唱』についてお話しします。詠唱とは、術者が持つイメージを手助けする1つの手段です。ぶっちゃけると、イメージさえしっかりしていれば、『無詠唱』での発動も可能です。ちなみに、私と智美さんは、無詠唱で高度な魔法すら発動可能です。智美さんは『案外簡単』だと言っていましたが、『瞬間移動』は、高度な魔法に分類されています。
「ここまではいいですね。」
沈黙は、肯定と受け取ります。
「では、『詠唱』について詳しくお話しします。」
私は、詠唱の詳細を語りはじめました。
魔法の詠唱は、『言霊魔法文字による詠唱』・『古代魔法文字による詠唱』・『古代魔法文字による詠唱』の3種類があります。
それぞれ成立した年代が違い、最初の頃は、『言霊魔法文字による詠唱』だけでした。今から大体10万年ほど前の話です。当時魔法が使えたのは、何処の世界からテラフォーリアに来たのかは解りませんが、100人ほどの集団だったと記録に残されています。彼らとその子孫によって、古代のちに国がいくつか造られ、それなりに発展していたそうです。しかし彼らは、魔法の使用を彼らの子孫だけに限定していたため、民の反発を買い100年と持たずに滅んでいったそうです。
其処から空白の5万年を経て、彼らの子孫だった大賢者が、言霊詠唱を簡略化し、『古代魔法文字による詠唱』を完成させ世に広めます。これによって魔法文化が発達し、今日に至ります。
『新代魔法文字による詠唱』は、今から1万年ほど前に、魔力さえあれば魔法を使えるように古代魔法文字を改良して作られた詠唱で、現在最も主流の詠唱方法です。
歴史としてはこんなモノでしょうか。つぎに、それぞれの詠唱の特徴をお話ししましょう。
【言霊魔法文字による詠唱】
術者がイメージした現象をそのまま言葉にすることにより魔法を発動させる。すべての詠唱の原型としての役割もある。術者のイメージを言葉にするため、基本的な雛形は存在しない。術茶によって、同じ魔法でも詠唱文が違う場合がある。
【古代魔法文字による詠唱】
『我は求める~』から始まる詠唱
今から約5万年前、時の大賢者が『言霊魔法文字』を簡略化して世に広めた詠唱方法。造られた当初は、『言霊魔法文字が劣化したもの』との認識があったが、現在では、『言霊魔法文字とは別物』と認識されている。
【新代魔法文字による詠唱】
『我は願う~』から始まる詠唱
魔力さえあれば魔法を使えるように古代魔法文字を改良して作られた詠唱。現在では最も主流の詠唱方法。逆に、言霊魔法文字による詠唱文は、文献にも残っていない。古代魔法文字による詠唱文はそれなりに残っているが、細かいイメージが必要なため、あまり使われていない。
古代魔法文字で唱えたほうが、新代魔法文字で唱えた魔法よりも、威力が大きくなる(モノにもよるが2~10倍の威力差がある。言霊魔法文字で唱えた魔法は、古代魔法文字で唱えた魔法の10~100倍の威力がある)。また、使用する魔力量が一番多いのが特徴。(言霊魔法文字の使用魔力量を『1』とすると、古代魔法文字では『10』となり、新代魔法文字では『100』となる。
「詠唱については以上です。解りましたか?」
「…、まあ、大体のところはな。で、俺たちは、3つの内のどの詠唱を教えて貰えるんだ?」
皆を代表して、毅が私に質問してきます。私や智美さんが宙に浮いているのは、完全無視にしているみたいです。
「どれを使ってくれても構いませんよ。古代魔法文字と新代魔法文字は、詠唱文があるので比較的簡単だと思います。言霊魔法文字は、そもそも術者によって、同じ魔法でも詠唱文が違いますので、言霊魔法文字で魔法を使いたいのなら、自分で詠唱文を考えるところから始まります。」
「分かった。それで、目標はまさかとは思うが、向こうの方で”その場から動かず全力疾走”を続けている哀れなラリアークでいいのか?」
「ええ、魔法の目標、あそこで運動してもらっていたのですから。」
今まで完全無視していた30匹のラリアークの使い方を聞き、少し哀れに思えてきた毅。”誰”が、哀れなラリアークを、あそこに置き去り?にしていたのかは聞かなくても解ってしまう。
「1人2匹くらいずつあるから、魔法の訓練と、武器の慣らしを同時に行っていきましょう。足りなければ、何処かから調達してくるので、気にせずにガンガンと殺っちゃってください。」
いい笑顔で、とんでもない事を言い放つ光莉。小一時間ほど問い詰めたい気もするが、そんな事をやるだけ時間の無駄だろう。
「まあ、なんとかなるだろう」
と気楽に構えながら、光莉に合図を送る毅。
一番槍は毅になったようだ。
結果。
武器の方は、そもそも武術の訓練を受けてきた一部の者しかうまく扱えなかったが、魔法の方は、子供たちはあっさりと習得してしまうのだった。
ちなみに、それぞれの属性は、次の通りである。全属性持ちが6人もいるなんて、みんな結構チートだったんですね。
【今宮光莉】
光・闇・風・水・火・地・無・空間・重力・時間・精霊
【嶋村智美】
光・闇・風・水・火・地・無・空間・重力・時間・精霊
【武城毅】
光・闇・風・水・火・地・無・空間・重力・時間・精霊
【葛谷玲子】
光・闇・風・水・火・地・無・空間・重力・時間・精霊
【中条謙治】
光・闇・風・水・火・地・無・空間・重力・時間・精霊
【寺岡真奈美】
光・闇・風・水・火・地・無・空間・重力・時間・精霊
【鳥尾隆弘】
風・水・火・地・無
【高坂隆行】
風・水・火・地・無
【鍵沼大吾郎】
風・水・火・地・無・空間
【酉松真由美】
光・闇・風・水・火・地・無・空間
【青木猛】
闇・風・水・火・地・無・空間・精霊
【瀬宮多佳子】
風・水・火・地・無
【齋藤聡久】
闇・風・水・火・地・無・空間
【鴻池尚子】
光・闇・風・水・火・地・無
【高瀬沙希】
光・闇・風・水・火・地・無・空間
【松林真琴】
光・闇・風・水・火・地・無・空間・重力・精霊
【田野倉寿李】
光・闇・風・水・火・地・無・空間・重力・精霊
【東條仁美】
風・水・火・地・無