第7話:所有の刻印
・・魔宝を試してみましょう、手伝いますから体を起こして下さい・・
(はい)
ボクはコスモスのわきの下に手を回すと、ゆっくりと抱き起こした。
ローブの外に出たコスモスの裸身を朝もやを通した朝日が照らし、柔らかな陰影で体の凸凹を浮かび上がらせた。
すなわち、控えめに膨らんだ乳房と、その乳房の下を走るエグリ取られた肉の溝を。
地面に敷いたローブの上で、上半身を起こし二人抱き合う格好になる。
・・ローブの魔宝効果で傷の痛みは減っていると思います・・
(はい)
・・今、私が着ている服をコスモスにお貸しします。これも魔宝による効果で、傷の治癒が期待できます・・
(ありがとう御座います)
ボクは桜色のネッカチーフをはずし、桜色のカーディガンを脱ぎ、『防岩のベスト』を脱いだ。
これでボクの身を守るのは、高機能インナーの上に着た『聖絹の長袖Tシャツ』だけだ、寒い。
コスモスは下半身にレギンスを履いているだけで、上半身は全てむき出しの状態だ。
まずはコスモスの裸の上半身に『防岩のベスト』を着せる。
コスモスはまるで着せ替え人形のように、体の力を抜き全てをボクの成すがままに任せてくれる。
ベストのボタンを留める時、うっかりふくらみかけの場所に触れてしまったのは内緒だ。
耐物理、耐魔宝・耐毒効果のあるこのベストを直接身に付ければ、物理防御効果による傷の悪化を防げる上、魔宝布による治癒効果も期待できる。
次に、桜色のカーディガンを着せてあげる。
このカーディガン、腰の保温を考えてお尻の下まで届くよう丈を決めたんだけど、コスモスの方がボクより少し身長が高いらしい。
カーディガンのスソは、コスモスのお尻の途中までをガードするに留まった。
ベストもカーディガンもV字で首元や胸グリをカバーしないので、ネッカチーフを首に巻き、前で折り返して生地を広げ、ベストの下にしまって首や胸グリの傷を隠した。
着せ終わると再びコスモスを抱きしめた。
・・私が支えていれば立ち上がることができますか?・・・
(はい。お願いします)
一晩寝たおかげで、少しは体力も回復している。
コスモスを抱きかかえ、ESPを併用して立ち上がらせた。
立ち上げてみて分かったんだけど、やはりコスモスは135cmのボクよりも少し身長が高い。140cm位ありそうだ。
・・今の私の衣装は私には寒すぎ、ローブが必要です。抱きかかえて支えますから、ゆっくり、ローブの上からどいて下さい・・
(分かりました)
・・はだしのようですが、大丈夫ですか?・・
(冬以外はいつもはだしで農作業をしています)
・・体を自分の力だけで支えた時、痛みはありませんか?・・
(カノン様の服のおかげで、ずいぶんと楽です。これなら一人で歩けそうです。)
・・痛みが無く良かったです。ローブを取るため、一度抱擁を解きますね・・
(分かりました)
コスモスから離れた僕は、ローブを拾い、ごみを払った。
このローブ、耐魔宝の『聖金の糸』『聖銀の糸』だけでなく耐物理の『白金の糸』『白銀の糸』までも織り込んであるんだ。
なまじの物理攻撃は通じないので、泥とかごみとかを全く寄せ付けないのだ。便利。
桜色のとんがり帽子をかぶり桜色のローブを着込む。
これで寒さ、太陽光、魔宝攻撃、物理攻撃にある程度は耐えられるだろう。
当面接触テレパスを使い続けるので、体力の消耗は少ないほうがいい。
大きな木にもたれかかり、コスモスを手招きする。
歩くだけなら傷は痛まないのかな?ニコニコしながら近付いてきて、もう指定席となったボクの左隣にきてボクの左腕に腕をからめ、同じ木によりかかる。
コスモスの組んだ腕を通し意志を伝える。
・・体力を温存するため楽な体勢になります。ボクはこの木に寄りかかったまま座わります。コスモスもボクを見て同じように座り、ボクを抱きしめて下さい・・
(わかりました)
大きな木の幹を背によりかかり、ボクの左にコスモスがすわった。
ボクは左手をコスモスの腰に、コスモスは右手をボクの腰に回した。
接触面積が増え、接触テレパスが捗る。
ボクの右手をコスモスの前にかざす。右手には、大粒の魔宝石を持ったリングを3個はめてある。
・・右手中央中指がルビーのリングです。抜いてください・・
(はい、カノン様)
コスモスの左手が躊躇無く伸び、ボクの右手のルビーのリングに触れた瞬間、石に触れようとしたコスモスの指先にバシッと火花が飛んではじかれた。
ボクには衝撃は全く無かったのだけれど、弾かれたコスモスは結構痛かったようだ、顔をしかめている。
(カノン様。この石には占有の刻印魔宝がされているようです。)
・・そういえば『所有の刻印』を私にあわせ書き換える儀式を行っていました。・・
・・ランクは一つ落ちますが、『所有の刻印』を与えてない石もありますからそれを試してみよう・・
ボクはローブの左胸にある『心臓の扉』から『強欲の胃袋』を取り出した。
この宝石が大好きな皮袋の中には、おじい様からファーストクラスの石をいただくまで使っていた、セカンドクラスの石がフルセット入っている。
当然ルビーもある。
袋の口を広げコスモスに見せる。
・・皮袋の中に赤いルビーが見えますか?・・
(はい)
・・では、ルビーのリングを手に取ってください・・
(はい)
今度は石が拒絶することなく、コスモスの手に渡る。
・・では試してみましょう、コスモスが『自分の石』以外で魔宝を使えるかを・・
真剣な顔で、コスモスがうなずいた。