第2話:奴隷への種付け
私はロイド家の奴隷でコスモスと言います。
母がロイド家の交配奴隷だったので、私も産まれた時からロイド家の交配奴隷です。
ロイド家の御当主ロバート様は代々続くたいへん優れた火属性の魔宝使いだと伺っております。
かつて御始祖様はその強大な火炎魔宝で未開の森を焼き払い、今のクーニエル村を開墾いたしました。
その功績で御始祖様は王国から爵位を賜り、ロイド男爵領クーニエル村が出来たのだと伺っております。
それほどの大魔法使いである御始祖様の御血筋を引く旦那様で御座います。
飼っている交配用女奴隷が子を身篭れるようになると、旦那様自らが種付けし子を産ませます。
旦那様の種からは、初産に限り、魔宝石持ちの子が産まれる事が多いそうです。
母から聞いた話ですが、私の祖母も子を身篭れるようになると直ぐ旦那様に種付けして頂き、初産で母を生んだそうです。
母は魔宝石を持って産まれ、弱いながらも魔宝が使える魔宝使いでした。
母が子を成せる様になると直ぐ旦那様に種付けして頂き、魔宝石持ちである私を生みました。
旦那様は「交配が上手くいっている」と、産声を上げて泣く私の手が握り締めていた魔宝石の大きさを見て、お喜びになられたと聞いております。
翌年母は第2子のパンジーを産みましたが、パンジーは魔宝石持ちではありませんでした。
魔宝石持ちの第1子の私が子を作れない時、パンジーに種付けして血統を残すので、パンジーは潰されずに飼われる事になったそうです。
私が5歳の時、母は18~19だったと思いますが魔宝使い奴隷として、母は売られていきました。
「魔法使い奴隷はとても高く売れる。大きな雄牛10頭より高い」
旦那様はそう仰いました。
私は今月4月で13歳、母や祖母が旦那様に種付け頂いたのと同じ年になります。
私への種付けも、もうそろそろなのでしょう。
その日私はいつものように、クーニエル湖の湖畔に広がる広大な麦畑で多くの農奴と一緒に農作業をしていました。
農作業を終え、他の農奴たちと一緒に御邸へ戻ろうとした時です。
「あれ?」太ももになにやら違和感を覚えました。
目をやると、ズボンの股間から左腿にかけて、じわりと黒いシミが広がっています。
「そうか、旦那様から種付けして頂く時期が来たのだな」私はそう感じ、売られていったあまり顔も覚えていない母の事を思い出しました。
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母が売られていったその夜、5歳の私と4歳のパンジーは失った母の愛情を補うため、旦那様から『奴属の刻印』を頂きました。
ロバート・フォン・ロイドをあらわす鉄製のRRのコテ。
その鉄コテを旦那様の火炎魔宝で真っ赤に焼き上げ、私とパンジーの右肩に押し付けるのです。
皮膚と筋肉と魂が焼き焦がされました。
右肩に、見ただけで旦那様の所有物なのだとわかるRRの焼印が焼き付けられました。
火の精霊様により、魂へも『絶対隷属』の印が刻み込まれました。
旦那様の命令に絶対服従するという幸せな権利が与えられたのです。
旦那様が、言霊に載せて死ねと仰れば、私たちは自ら命を絶ちます。
殺せと仰れば、私たちはお互いを殺します。
何も考えず不安も感じず、旦那様に従っていれば良いのです。
潰されて肉になる時、家畜は涙を流します。私たちは指示に従い心安らかに死ねます。
それは、とても幸せな事なのだそうです。
私たち姉妹は刻印の夜から、言葉通りの意味で、身も心も旦那様の所有物となったのです。
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股間を濡らす血と母の事と刻印の事を考えていたら、サボっているように見えたのでしょうか?御邸と畑を結ぶ道路に立って監視していたいたロバートJr御坊ちゃまに怒鳴られました。
「コスモス、サボってないでこっちに来い!」
「直ちに参ります、御坊ちゃま」
駆け寄ると、御坊ちゃまの視線が私の股間に注がれます。
「ほー…よしコスモス、腰紐を解いてズボンを脱げ。皆の見ている中、今この畑で、父に代わって種付けしてやろう。俺の種は父よりも魔宝が濃いかもしれないぞ」
「申し訳御座いません、御坊ちゃま。この身は旦那様の御持ち物です。旦那様の交配のお許し無く、御坊ちゃまの御情けを頂く事はできないのです」
御坊ちゃまの目が釣りあがります。
「コスモス、奴隷の分際で主人に逆らうか!?」
「申し訳御座いません。旦那様から交配をお許し頂くか、旦那様から御坊ちゃまに私を下賜して頂いた後ならば、この体、ご自由にお使い下さい。『奴属の刻印』の為、今はまだ私の体は旦那様しか自由にできないのです」
突然、ムチが飛んできました。いつもの懲罰用の物でなく、家畜用のトゲムチです。
ムチは、膨らみ始めていた私の左乳房を通って右のわき腹まで、斜めに長袖シャツと皮膚と肉を引き裂きました。
下半身から流れ出ていた血より遥かに多いであろう血が、私の左乳房の下側から流れ出たと思います。
私は痛くてその場にうずくまりました。するとその背中に、又、ムチが飛んできました。
ムチは右肩から背中を斜めに走り左わき腹を抜け、布地と皮膚と肉を削り取りました。
「チッ!」
御坊ちゃまが舌打ちします。おそらく、焼印を押された右肩だけは精霊様の御加護でまったく傷がつかなかったのでしょう。
怒った御坊ちゃまが右肩にもう一度ムチを振るわれます。
あぁ、何で私の体は御坊ちゃまの種付けを受け入れられないんだろう?
それが出来るなら、こんなに痛い思いをしなくてもすむのに!
トゲムチでこれだけ肉を削られたから、この傷はもう治らないだろうし、体も普通には動かせなくなってるかもしれない。
痛くて苦しくて顔を上げると、クーニエル湖の湖面か夕日に赤く染まっています。
あそこに身を投げれば、痛いことから解放されるのだろうか??
あそこに身を投げれば、何もかも全部終わりに出来るのだろうか??
あそこに身を投げさえすれば。
私は駆け出しました。
刻印を刻まれた奴隷が、まさか逃げ出す事ができるなんて誰も思ってなかったのでしょう。
皆があっけに取られて何もできないでいる間に、少しでも湖に近付こうとがんばりました。
しばらくして後ろから筆頭奴隷のサモンさんの怒鳴り声が聞こえてきました。何人もが追いかけてくるようです。
でも大丈夫、湖はもうそこです。
躊躇無く、湖へ駆け込みました。
あまり湖畔に近いと、湖から引き上げられてしまうかもしれません。
痛い思いはもう嫌です。
ケジメが着く前に、御邸に連れ戻されるのだけは避けなければなりません。
近くに浮く倒木にしがみつき、ゆっくりと、湖の中心に向かって泳ぎ出しました。
私の左乳房と、背中と、左わき腹と右わき腹、そして良くわかりませんが下半身からもどんどんと血が流れ出ているのでしょう。
意識がだんだん遠くなってきました。
ようやく、あまり楽しい事の多くなかった人生を終わらせられそうです。
パンジー、1人にしちゃって本当にごめんね。コスモスは先に行きます。