昔話 ~変革~
その日の学校。転校生がやってくるとの事。
何やら凄くレベルが高く美人だとかなんとか。
教室中の男子達は鼻を広げその転校生を待ち続けていた。
その一方、女子達はそんな男子に蔑んだ目を送っている。
とゆう何もない。一色の色に染まり飽き飽きしていたこの教室に新たな色が加わろうとしていたこの教室は大いに盛り上がっていた。
しかもその色は黒とか茶色とかそんな地味な色ではない。赤やピンクという派手で綺麗な色が加わるのだ。男子達は勿論。女子達も内心は楽しみにその転校生の登場を心待ちしていた。
実を言うと俺もその盛り上がる男子の中での例外ではなかった。美人と聞いてソワソワしない男子等いない。まぁ、その美人だという情報はアクマで噂なのだが。
しかし。俺はそれと同時に違う考えも脳内にチラツいていた。
こんな時期に転校生?
今、現在の季節としては梅雨に入りたての立夏。
来週からは、じめじめとした日々が続くと天気予報のアナウンサーが話していた。
それはそうとこの季節からは青春行事である部活動も終止符を打ち、我らが受験生が勉学に励み始める時期である。そんな時期に。転校生?
ガラーッ。
そんな想いは前のスライド式の扉音によってかき消された。
「はーい。皆静かに。」
担任の女教師の一言でそれまでワイワイ。ガヤガヤと騒いでいた教室の生徒達は自分の席へと戻る。
たちまち静寂を取り戻した教室に又も先生の声が響く。
「皆さん。今日からこのクラスに転校生が加わります。」
先生が教壇の上に手を置き声を発す。するとたちまち教室はざわついた。
「どんな子だろ?」
「先生。その子は可愛いんですか?」
「仲良くなれるかな。」
等という声が飛び通う教室は放課後よりも煩い。
「はい。はい。静かに。これじゃぁ、転校生の子も緊張してしまいますよ。」
先生が二・三度手を叩く。
ポツリ。ポツリと話し声が止み、本来の静けさに戻ると先生は言った。
「どうぞ。入っていいですよ。」
ガラリッ。
ドアがスライドされる。教室中の生徒らが皆、そこに注目していたのは言うまでもない。
ドアからその人物の姿がはみ出た時。教室中の生徒らは固唾を飲んだ。
黒板の中央。
そこに新たにこの教室に加わった人物が立つと突如となく柔らかな風が彼女を包んだ。
ブワッ。
まるで春風でも吹いたのか彼女のその長く艶やかな水色の髪はゆるやかに揺れた。
きれい。
その一言しか出てこない。
それは恐らくは皆。この教室にいる生物皆が思った言葉だろう。 それ程までに目の前に立つ彼女は美しかった。
タンッ。タンッ。
リズムよく黒板にチョークを踊らせ彼女は自身の名前を名乗った。
「赤坂 水月。どうぞ宜しく。」
そんな短い社交辞令を終えた赤坂さんは実に面倒臭そうに自身の席を訊ねていた。
「あぁ。赤坂さんはそうね。あの一番右の三番目の席に座ってくれる。」
「はい。」
一言。口を動かすと赤坂さんはその指示された席へと足を進める。
その度に長く腰まである鮮やかな色をした長髪が揺れ動き、甘い匂いがその行路に流れた。
その近くにいた男子生徒は彼女が過ぎると同時に顔を綻ばせ、ニタニタとした気持ち悪い表情を浮かばせる。
その当の本人は席に座ると鞄から教科書や筆記用具を取り出していた。 上下左右から注がれる視線はてんで気にせず彼女は自分だけの空間を作っている。
朝のHRはいつの間にか終わっていた。
鞄の中の物を全て出し終えた彼女は鞄を机の横に掛けると一冊の本をペラリッと開いた。その本はブックカバーが巻かれている為に何の本なのかは分からない。
HRが終わったというのに教室は相変わらずの静寂を保っていた。 俺もそれにならった。
新たに加わった色は一瞬で元あった色を自身の色に染め上げてしまった。
こんな時期に。受験勉強だけに頭を一杯にしないといけないこの時期なのに凄い転校生が加わった。
!?
俺が彼女に対しての想いを首を左右にブンブン。否定して無いものとしていると突然、彼女は本から目を離すと此方に。
俺の方へと視線を送ってきた。不意の出来事。
俺と彼女は目が合った。
なっ?
その彼女。赤坂さんは口許を小さく歪め笑ったように俺には見えた。
そして彼女は又も本へと視線を移したのであった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆
今日は一つの変革はあったにせよ俺に対しては特に何もない。いつもの日常が終わろうとしていた。
赤坂水月。
転校初日から同学年の男女供を魅了させ、全学年の大半の男供から告白されたらしい。
噂によると彼女がそんな男供の想いを拒む言葉は決まっていたという。
「私は貴方達とは違う。だから諦めなさい。」
彼女に想いを伝えた男子は皆そう言われたらしい。噂だが。
私は貴方達とは違う。
新鮮な断り方だな。俺は思った。
帰路の途中の信号機。それが赤へと変わった。
そんな時、俺は背後から声を掛けられる。
「君?君が天野流君で相違ない?」
そんな言葉がイヤホン越しに聞こえた。
大人の美声とでも言っておこうか。その声には聞き覚えがあった。ゆっくりとした動作で後ろに振り向く。
「何か?」
やはり。振り向いた先には赤坂水月が立っていた。
「私が先に訊いたのよ?貴方は天野流君でいいの?」
妙に攻戦的な言い方も彼女の魅力の一つである。
それはそうと。
「あぁ。そうだけど。何?俺なんかに用でも?」
耳に差し込んでいたイヤホンを外しながら俺は言う。カラスの大合唱は今日も快調だった。
「用があるから話掛けたのでしょ?」
貴方馬鹿?と言うように赤坂水月が呆れた声を出した。
「まぁ、いいわ。それより君が天野流君なら今から私と付き合って貰うわ。勿論。拒否権は無いわ。」
「ちょっ。まっ。は?何?」
いきなり腕を掴まれ引っ張られる俺。状況が全く理解できていなかった。
「オイ。せめて行き先だけでも教えてくれ。」
力づくで彼女の手を振り払い俺は問う。
「行くところは科学館。目的はそこで話すわ。」
彼女はまた腕を掴むと俺を犬のように引っ張た。
科学館?そんな所で何を?
「ちょっ。分かった。分かったから引っ張るな。それと短絡でいい。そこで何をするか教えてくれ?」
俺は再度。彼女の手を振り払うと早口で捲し立てた
。すると彼女は俺に顔を向けるとその小さな口を動かした。
「貴方の大切な物の鍵を開けに行く。」
意味深な。そして理解不能な言葉を俺に投げると赤坂水月は足早に歩き出した。
俺はそんな彼女の後ろを何も言うこと無しに追い掛けた。




