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モブキャラが主人公に成るためには?  作者: 醍麒
【第一章】初戦
17/47

『モブ』と「主人公」 ~それぞれの思い~

ん?目の前が真っ暗だ。何で?


そういえば僕は何をやってたんだっけか?


僕は記憶を少し巻き戻した。


********


そうだ。

僕はついさっきまで『主人公』である剣舞と闘ってたんだ。

それで、その後・・・・・・・・その後?


僕はその後どうしたんだっけか?


あれ?


記憶が無い。確か最後。僕は剣舞の頭に一発の拳撃を喰らわせたんじゃなかったか?


それからが分からない。


ん?


そういえば何か背中にフワフワした感触があるな。ってことは少なくとも今、僕はあの運動場の砂場にはいないということか?何故?


アァーー。


そんなん考えなくてもこの閉ざされた瞼を上に上げればいいだけの話じゃんか。何で僕は必死になって考えてんだよ。

馬鹿なの?馬鹿なんですか?僕は?


僕は、瞼が閉ざされた暗黙の世界で考えるのを止めた。 瞼を開けた光の世界で僕は考えることにしたのだ。


「んッん〜。」


まず目に入ったのは見覚えのある。ってか、毎朝見てる僕の部屋の天井が映し出された。


「は??」


思わずも声が漏れた。


いや。だっておかしい。普通だったら今までの流れからして剣舞と共に倒れた。あるいは剣舞に敗けました。

次→保健室。ってな流れではないのか?

その保健室の俺のすぐ側にヒロイン志望の美麗がいる。そんな流れではないのか?


自室の天井って。


ハッ!?まさかっ。


夢落ち。


第一話から僕は起きていなかったとでも?

あの決意が。美麗との出会いが。あの修行が(大したことしてないけど)。あの闘いが。

あの勝利が(勝ったと信じている)。

この第一章の話の全てが夢?


そんな馬鹿な。


「うん。ほんとっ馬鹿だね。」


僕がそんなことを思っていると横から声が飛んできた。


「へっ?」


僕は声の方へと首を動かそうとした。すると。


「痛っ。」


首筋に激痛が走った。


「まだ、駄目よ。体を動かしたら。てかっ、動かせないでしょ?」


「えっ?美麗?」


激痛を我慢して何とか首だけ右に寄せることが出来た僕の目には佐藤美麗が僕の勉強机の椅子に座っているのが映っていた。


「何で美麗が?ってか勝手に僕の頭の中を覗くな。」


「うん。ごめんね。何か聞きたくなくても勝手に聞こえてきたから。」


全く謝罪の色が伺えない。実にめんどくさそうに美麗は答えた。


「あっ、そうですか。それは此方こそ失礼しました。聞きたくないものを聞かせてしまい。」


僕も皮肉っぽく言い返す。それでもついつい聞かれてしまう僕の頭の中って。思考って。これではうかうか変な事を考えれないではないか。別に考えてないけどね。


「う〜ん。そう?考えてるんじゃない。変な事?」


またも美麗が僕の思考を読んだ。


「だから、僕の頭を読むんじゃない。あんたはエスパーか!!って痛っ!」


僕は全力でツッコミを入れた。そのせいで首が動いたらしく少しの痛みが首筋に走ってしまう。


「それより。何で僕は自分の部屋にいて美麗が僕の家に居るんだ?」


僕は首を動かさなくても見える、窓の外を眺めながら改めて問いた。窓の外はもう真っ暗だった。


「健生が倒れてから数人の男教師が駆け込んでいったの。それから貴方を担いで家まで送っていったの。私は一旦、家に帰ってから様子を見に来たのよ。住所は先生に聞いた。」


美麗は椅子の上で体操座りをしながら答えた。


「ふーん。そう。」


僕は短い言葉を返す。

救急車は呼ばなかったのか?まぁ、いいけど。大した怪我が無かったんだろうな。


さて。前置きはさて置きだ。

言わなければならないことがある。あの決闘が本当に行われていたとしたら。


「あのさっ。美麗?僕は剣舞に勝ったのか?」


僕は今までの空気を一変させるような声を発して問う。


「う〜ん?」


美麗は僕の問いに対して考え出した。僕としては直ぐに解答が返ってくると思ったので以外といえば以外だった。


そして、30秒程の時間を費やして美麗は口を開いた。


「結果としては多分、健生が勝ったんだと思う。でも、私達傍観者からは引き分けとして見た人が多いと思う。」


少しだが美麗は残念そうな声音であった。


「でも、私は健生が勝ったって分かったからね。水蓮君と同時に倒れたように見えたけど私には水蓮君が倒れた後も健生が立っていたのが見えたもの。」


美麗の声は前半よりも明るかった。


「ありがとう。」


素直に出た。


「あの時も。僕が困惑していた時も美麗が言葉をくれなかったら僕は闘わずして敗けていた。ありがとう。」


穏やかな声が自然と出た。そして最後に。


「約束守ってくれてありがとう。」


と最後のありがとうを口にした。


「えっ?約束?」


僕のそんなありがとうに美麗はきょとんとした表情を浮かべる。

だから、僕は教えてあげた。


「健生って呼んでくれてありがとう。」


「えっ?あわわわわ〜!?私、いつの間に。何か恥ずかしいよ。」


美麗は大袈裟なリアクションをとり、驚き。慌て。恥ずかしがった。

そんな美麗の動作が僕には可愛く見えた。

そしてそんな美麗と話せれていることがうれしかった。


「でも、これからは健生って呼ぶね。」


美麗は顔を赤らめて小さな声で呟いた。


「うん。美麗。これからよろしく。痛っ。」


僕は全身筋肉痛の体を無理矢理動かして右手を美麗に差し出す。

そんな差し出された手に美麗は

「こちらこそよろしく。」と言って僕の手を握ってくれた。

僕と美麗はこのような行為が照れくさく二人はうっすらと顔を赤色に染め微笑を口に刻み合った。


「ん?健生、それは何?」


ほわほわした空間はそんな美麗の一言で切り裂かれる。


「えっ?何が?」


僕と美麗の握られていた手もいつの間にか離されていた。


「それよ。それ。」


美麗はそう言いながら僕の差し出した腕らへんを指差した。


「ん?何?痛っ。」


今度は普通に油断した。普通に筋肉痛のことを忘れて首を美麗の指差した腕の方に動かしてしまった。しかし、そのお陰で僕は剣舞の最後の奇妙な行動についての謎が解けたのであった。


「えっ?うそだろ?」


そこには。僕の腕の磁石のブレスレットには一発の弾丸がくっついていた。


**********


「やっと起きたか?クソ剣舞。」


一人の男性の声。


「ここは?お前の家か?」


「んだ?目覚めは遅いわりに頭の回転は早いのな?」


男性こと東坂防は軽く笑った。

今、剣舞はそんな防の家のリビングに設置されているソファに横たわっていた。

防は高校生にして独りで生活をしている。


「婀姫はどうしたんだ?」


剣舞は横に寝ていた姿勢から真っ直ぐと体を正し防に話し掛けた。


「あぁ。ついさっきまではお前にへばりついてたんだがそのまま寝ちまってな。今は俺のベットで寝かせてる。」


「お前の布団でか?」


俺は防を睨み言った。


「ふっ、ふざけんな。別に変な事は考えてねぇよ!ただ単に寝かす場所がなかっただけだ。それより次に聞きたいことがあるんじゃないのか?」


防は気を乱し剣舞の言いたいことを否定した。それと同時に話を逸らすために違う話題を持ち出した。


「分かってるよ。俺は負けたんだろ?鈴木に?」


「んだ。もっと気に病んでるかと思ったんだが全然、大丈夫そうだな。」


防はうしっしっしっ。と悪戯っ子のような笑いを最後に付け加える。


「そういえば。」


そこでふっ。と何か思い出したように防は声を発した。


「あの闘いの最後お前、勝負に急いで鈴木に全力の拳撃を放っただろ?」


「あぁ。やっぱお前には見えてたか?」


「あったり前だ。俺を誰だと思ってやがる。」


そう言って防は胸を張った。


「中学生に相応しない巨漢。」


ボソリッ。と俺は呟く。


「んだと!格好つけのナルシストが!」


「おまっ、お前、俺のことそんな風に思ってやがったのか!」


俺はソファから立ち上がる。


俺と防の間には今にもケンカが起きそうな空気が流れ出していた。


その時。


「ちょっと、剣に防。うるさいですよ?」


婀姫が眠そうな目を擦りながら登場した。


「おぉ婀姫。悪ぃ。うるさかったか?」


「あ、婀姫。」


俺と防に流れていた空気はそんな婀姫の登場によって無い物となった。


「剣。もう大丈夫なのですか?痛いところとかは?」


婀姫は俺に近付きぺたぺたと体を触ってくる。


「あぁ。大丈夫だ。ありがとな心配してくれて。」


俺はそんな婀姫の頭に手を置きゴシゴシと頭を撫でた。

そんな朗らかとした光景が気にくわない。(嫉妬した)防は先程の会話の続きで目の前の空気を壊さんとすべく口を開いた。


「けっ、剣舞。いいか?さっきの続きを話して?」


「ん?」


剣舞は婀姫から防へと視線を移す。


「あぁ続き?いいぜ。何だ?」


防の狙い通り剣舞は婀姫の頭から手を離す。

それを見た防はウッシッ。と内心でガッツポーズを作った。


「じゃぁ聞くが。何でお前はあの時 手を引っ込めた?」


「あぁ。それも見えてた?」


「まぁな。」


防はコクリッ。と首を縦に振った。


「実を言うとあの時。横から銃弾が飛んできたんだ。」


「銃弾だと?」


「そう。銃弾。恐らくあの時、刺客は鈴木が設置した罠に引っ掛かってなかったんだろう。それか掛かった後に起き上がったか。」


「刺客が飛ばした弾だったのか?」


「多分な。俺はそれを交わすために手を引っ込めた。まさかあの隙に鈴木が攻撃してくるとは思わなかったがな。油断大敵とはまさにその事だな。」


ドスッ。

剣舞は言い終わり、ソファに腰を下ろした。


「何が油断大敵だ。俺達は婀姫を護らなきゃならないんだぞ。一般人に敗けてどうする。」


防も剣舞の隣に腰を下ろす。


「そうだな。」


剣舞はそう言うが顔は少し清々しかった。


「でもさ。そういうのが鈴木を苦しめてたんだと俺は思う。俺達には婀姫を護るという使命があるけど鈴木(あいつ)らにはそういうのが無いんだ。知らず知らずに俺達は自分を鈴木(あいつら)よりも上位な存在だと思いこんでいたんじゃないか?」


「使命か?確かにそうかもな。」


防は以外にも素直に認め、納得した。


「だが。鈴木に敗けたのとそれは別だ。使命が分かってんなら鈴木なんかに敗けてんじゃねぇよ!明日から俺と一緒に修業するぞ。修業。」


再び唾を飛ばす防。


そんな防に剣舞は実に面倒臭そうに「へいへい。」

とだけ言った。


「そんなことよりもです。修業よりも先に御食事にしましょうよ?もう夜の8時ですよ?」


それまで黙っていた婀姫が二人の話に割り込む。

婀姫の言葉を聞いた二人は共にグ〜。という腹の音を奏でた。


「それもそうだ。飯にしようぜ。飯に。」


剣舞は陽気な声で言い立ち上がった。


「うっ。そうだな。婀姫が言うなら。食事にしよう。」


防も顔を赤色に少し染め立ち上がる。


「じゃぁ、剣と防はここで座っていて下さい。私が腕をふるった料理を出して差し上げます。防、キッチン借りますね。」


婀姫は嬉々とした声音でキッチンへと向かった。


「おいっ。婀姫。俺も手伝うぞ。」


防もそう言って婀姫の後を追う。


「そう言うことなら俺の腕も見せてやるぜ。」


剣舞も腕なんかを捲って同じくキッチンへと姿を消したのであった。


**********


「成る程ね。健生の仕掛けた罠に引っ掛かったかどうかは知らないけど。刺客が飛ばした銃弾が婀姫さんの座っていた椅子から発していた反磁波によって軌道をずらされた。軌道がずれた弾は健生のつけているブレスレットに反応してくっついた。」


そういうことだよね?


フンフン。と僕の推論を聞いた美麗は一人頷いていた。


「うん。多分ね。」


僕は相変わらずの寝たままの姿勢である。体が動かせれないのだ。


「でも良かったね。あの時、銃弾が飛んできて。」


「うん。そうだね。」


確かにそうだ。あの時 銃弾がたまたま飛んできたことにより僕は剣舞に勝てたんだ。

ってことはこういうことになるのか?


僕が剣舞に優っていたのは何も知力パラメーターだけではなかった。運のパラメーターも剣舞に優っていた。今思えば最後に僕が下した拳撃。当たり所が良かったから剣舞は倒れたのだ。

長年。平均で何もない生活を送ってきた僕に天がようやく味方をしてくれたのだ。


「なーんだ。結局この世界は平等じゃねぇか。」


僕は顔をニヤケさせ呟いた。


「健生。お腹減ったでしょ?私ここに来る前にドーナツ作ってきたんだ。良かったら食べる?」


美麗は自分の鞄から可愛くリボンで縛ってある袋を取り出した。


「あっ!?そっか!健生、手うごかせれないんだけっか。」


袋を取り出して気付いたのであろう美麗は失言したと言うように口元に手を当てた。


「うっ。じゃぁ食べたかったら私が食べさせてあげる?い、嫌じゃないなら。」


美麗は顔を真っ赤にし小さな声で健生に言った。


「あ、ありがとう。お願いするよ。」


僕も顔を真っ赤にして同じく小さな声で言った。


本当にありがとう美麗。


僕があの時、 立てたのは美麗との約束があったからなんだ。


『モブ』が『主人公』に成るため。というか僕に今まで無かったものを美麗は教えてくれた。

剣舞はそれを持っていたから『主人公 』に成れたんだろう。


『守る。』という鉄心を持っていたから。


「うまっ。」


僕はもう『主人公』に成れたのだろうか?



あともう少しだけ続きます。

どうかもう少しだけお付き合い下さい。(第一章は)

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