馬鹿に加護を
「ではまず、君が転生する世界についてなんだけど――」
「ちょっとまて、今不吉な単語が聞こえた。」
転生って。俺のこの身体はどうなるんだ、おい。
「君の身体は構造は同じでも概念が異なるからね。勇者召喚の件みたく君の身体をこの世界に適用させるという手があるにはあるけど・・・。」
「けど?」
「ぶっちゃけコストがかかりすぎて無理。」
「ぶっちゃけ過ぎだろう神様!」
「いや、そんなこと言われてもこちとら非力で無力な神様だから。光の女神みたいに身体までこの世界に送ることなんて無理だから。」
「じゃあ、今あるこの身体は?」
「ここは神の住む所の中の私の部屋みたいなもので一種の精神世界。つまりここにいる君は魂だけだ。その身体はただのイメージでしかない。」
なるほど、どうりでさっきから地に足がついてないないような浮遊感があったわけだ。
だけど、だけども。
「転生ってことはあれだろ?赤ん坊から再スタートとかいうやつだろ?」
それは避けたい。
もうすぐ27歳にもなる大人が幼児ってどんな羞恥プレイだ。
「大丈夫。その心配は無い。」
いい物件がある。と、自信満々に言い切る神様。
・・・なんだろう。さっきは悪役よろしく笑いあった仲だが段々と信用できなくなってきた。
「さっき話しに出てきた光の女神というのはその名の通り光を司る神で実質、神の中でもトップクラスの力を持っている。」
「話からするにそいつが勇者を召喚したってことだな?」
「うん。でもそんな彼女でも勇者を召喚するのにかなりの力を消耗したようでね。しかも代償に信者の魂をひとつ生贄として消費している。」
「生贄って・・・悪人の俺がいうのもなんだがそいつ本当に女神か?」
「疑問はもっともだけど女神だよ。ま、こんなことは私達も初めてのことで驚いたが問題はそこじゃない。その生贄として『使われた』信者のことだがね・・・。」
こいつが言わんとすることがわかった。
「つまり、その信者を使って俺を転生させるというわけか。」
「そういうこと。彼の身体は自由に使っていいと女神からも言質をとっている。それについてはそこの女神の勇者騒動の被害者でもあるアーメス君を利用させてもらったけどね。」
そう混神――面倒だから略した――がいうのがはやいか情けない神様アーメスさんは突然立ち上がり気がつけば俺の目の前にいた。
その眼は負け犬の目ではなく、まだ冷静に勝ちを狙う執念に燃えていた。
「力のほとんどを失った私だがその残り少ない力を全て使い加護を君に授ける。期待しているぞ。」
「期待って・・・おっさんそんなにせっぱ詰まってるのか?」
「ああ。このままでは妻から離婚話が出るのも時間の問題だ。」
「・・・・・・。」
聞かなきゃ良かった。
やけに生々しい神様達である。
「おー。やる気満々だねアーメス君。あ、ちなみに私も全掛けだからそこんとこよろしく!ってなわけで話は大体終わったことだしレッツ転生。」
「は?」
気がつけば俺の足元に穴ができていて俺はそれに吸い込まれるように。
落ちていった。
「サポートには私がつくから困ったときはそうだんしてねー。」
この言葉を聞いた途端に俺の意識がなくなった。
これでプロローグとなる話は終わりになるはず。